不動産テックとは~サービスカオスマップから読み解く市場規模と可能性

進化するテクノロジーを活用して不動産業界に変革をもたらす不動産テック。その取り組みは、不動産管理会社の業務効率化から新しいビジネスモデルの創出まで、あらゆる領域において不動産業務の一新を促す大きな可能性を秘めています。

先行し導入が広がるアメリカでの推進事例と比較しながら、日本国内における不動産テックの現状および課題、今後の不動産テック市場拡大の可能性を考察していきます。

不動産テックとは

不動産テックとは

不動産テックとは「不動産」×「テクノロジー」の略称で、進化するIT技術をもって不動産業界・管理会社の課題である「労働生産性の低さ」「情報の不透明性」などの変革を促すと注目されているものです。

不動産管理会社の業務効率化を図るサービスや取り組みそのものを意味する用語として使用されることもありますが、不動産テックが指し示す領域は「働き方改革」「新しいビジネスモデルの創出」など広範にわたり、テクノロジーを用いて改革を目指す取り組みはすべて不動産テックに含まれるといえます。

不動産テックにおけるテクノロジーには「AI(人工知能)・IoT・ブロックチェーン・VR/AR・ロボット」などが該当し、これらを利用したビジネス・サービスが不動産テック(または不動産テック企業)として位置づけられます。

不動産テックの定義

一般社団法人不動産テック協会(RET)では、不動産テックの定義を下記の通り示しています。

「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。」

不動産テック事業に携わる人材を会員として迎え研究を行うほか、日本における不動産テックの現在を示す「不動産テックサービスカオスマップ」を通じた情報提供を行っています。

日本国内で不動産テックが求められる背景~導入で何が変わるのか?

日本国内で不動産テックが注目されている背景には、現状の不動産業界をとりまく課題があります。

  • IT導入の遅れと労働生産性の低さ
  • 情報の非対称性・不透明性
  • 働き方の変革・新しいニーズに対する遅れ

不動産テックはアメリカでの成功事例を受けて着手されたものが多数ありますが、日本国内では未だ適正で円滑な取引を促進するあまり、「宅地建物取引業法35条」により重要事項説明書の説明を宅地建物取引主任者に限っていることや、「不動産流通標準情報システム(レインズ)」により物件の情報が不動産業者間に絞られて提供されていることから、一般的には情報が公開されていないという現状が見られます。

しかし、不動産情報の透明性を維持するネットワークを張り巡らせたアメリカも、元々は日本と同じ状況にありました。このことから、日本国内における不動産業界全体の変革も、十分に可能なムーブメントであると考えられるでしょう。

IT導入の遅れと労働生産性向上の可能性

日本の不動産業界でIT導入が遅れている例としてたびたび取り上げられるのが、重要事項説明の問題です。

賃貸借契約を結ぶ際などに、従来は対面で説明を行う必要がありましたが、近年ではスマートフォンやパソコンを使って重要事項説明を行うIT重説の取り組みが進んでいます。しかし、依然としてIT重説可の物件は少なく、スムーズに賃貸借契約を結びたい利用者のニーズに対応できているとは言い難い現状です。

関連記事:IT重説とは~対応物件普及の背景にあるメリットと課題

また、不動産管理会社における業務の生産性向上も課題とされており、社内に保管しているデータが紙媒体であったり、入金の照合作業に何時間も取られてしまっていたりといった事態も見られます。

人的ミスが発生しやすい入金の照合作業ではバーチャル口座の利用などが検討される余地もあり、請求情報と入金状況が自動で紐付くようなITサービスの導入が求められています。

情報の非対称性・不透明性

日本の不動産業界で情報の非対称性を作り出している要因に、「不動産流通標準情報システム(レインズ)」の存在があります。レインズには膨大な不動産取引データが保管されていますが、現状では不動産業界側の人間のみが参考にするデータベースとなっており、不動産情報の非対称性を作り出す一因を担っているのでは?とされています。

また、不動産会社が独自で情報を有していることも多く、業界全体で情報の不透明性が指摘されるケースもあります。本来であれば、売主から売却を依頼された物件情報は早く買い手を見つけるためにレインズへ登録する必要がありますが、利益獲得のために自社だけで物件情報を囲い込み、保有している現状があるのです。

日本の不動産業界における情報の非対称性の問題は、間接的に囲い込みという不透明性の問題も作り出しているといえるでしょう。

一方アメリカでは、こうした非対称性や不透明性を解消すべく、「MLS」という日本のレインズに似たデータベースが構築されています。このMLS最大の特徴は、誰でも手軽に不動産情報にアクセスでき、レポートの出力ができることです。透明性が担保された結果、MLSに掲載される不動産情報は膨大なものとなり、情報がMLSに集約される状態ができあがっています。

日本の不動産業界の不透明性や情報の非対称性を解消する方法として、アメリカのMLSの取り組みはひとつの成功事例といえるでしょう。

働き方の変革・新しいニーズに対する遅れ

不動産テックが注目される背景には、昨今の新型コロナウイルスの影響にともなう業務形態の変化や働き方改革なども該当します。あらゆる局面で「非対面」が求められる現在では、従来そのままの業務形態維持は難しく、テクノロジーを用いたオンライン内見やIT重説への取り組みが推進されています。

関連記事:IT重説のやり方・導入方法~順守すべきルールと実施サポートアプリ・ツール

また、不動産会社の人件費削減や業務効率化を目的としたRPAの導入など、他業界に比べて遅れをとってきた業務のデジタル化に注力する企業が増えてきています。既存業務にデジタルの要素を取り入れることを働き方改革として前向きに捉え、社内のデータ管理や経理作業を効率化する動きが活発化しているのです。

不動産テックサービスカオスマップ

不動産テックサービスカオスマップ

日本の不動産業界が長年抱えてきた問題は不動産テックによって改善に向かっています。その現在の進捗は、一般社団法人不動産テック協会が作成する「不動産テックサービスカオスマップ」から全体像を把握できます。

引用元:一般社団法人不動産テック協会

カオスマップに示されたサービスには、さまざまなカテゴリが存在します。

管理業務支援不動産管理会社のPM業務を効率化し、経理担当者の負担を軽減する
仲介業務支援不動産会社の仲介業務を支援するサービス。
仲介業務に必要な顧客関係管理(CRM)と物件情報が紐付く
AR・VRAR・VRを活用したサービス。
ライブチャットによるオンライン内見サービスなどで、ユーザーは離れた場所から内見することが可能
IoTIoT機器を活用したサービス。
玄関の鍵をスマートフォンで解錠することが可能
スペースシェアリング不動産や空きスペースのシェア・マッチングを行うサービス。
オンラインで駐車場を検索・予約できる
リフォーム・リノベーションWeb上で利用者とリフォーム業者のマッチングを提供するサービス。
エリア別でリフォーム業者を検索・問い合わせが可能
不動産情報物件情報を除いた不動産に関連するデータを提供・分析するサービス。
マンション周辺の地震・洪水・液状化などの災害データを検索・ダウンロードが可能
ローン・保証不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較をしているサービス。
物件価格や頭金などの入力で手軽に住宅ローン比較が可能
クラウドファンディングwebプラットホーム上で個人を中心とした投資者から資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス。 1口数万円から地域再生プロジェクトに携われるなど
価格可視化・査定不動産価格・賃料、将来見通しなどを査定するサービス。
住所・駅名を入力するだけでマンションの参考価格が分かる
マッチング物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス。
空き家の解体有無に合わせてシェアハウス運営or駐車場運営など
物件情報・メディア物件情報を集約して掲載するサービスやプラットホーム。
目的別で不動産情報の収集が可能

以下では、この12カテゴリの中でも特に注目度の高い「管理業務支援」「仲介業務支援」にフォーカスして、不動産テックの事例・サービス内容を具体的に紹介していきます。

管理業務支援における不動産テック

不動産の管理業務では、たとえばお客様から毎月の家賃の入金を受ける業務に不動産テックを導入することができます。

  1. お客様が加盟店HPで注文
  2. 決済画面にてバーチャル口座などの支払い情報を自動でメール送信
  3. お客様が支払いを実行
  4. 入金データをバーチャル口座管理画面で確認
  5. お客様へサービス提供

不動産管理会社におけるお客様からの入金は毎月定額を振り込んでもらうことになるため、自動引き落としなどの設定からインターネット決済を経由したバーチャル口座への入金に変更してもらう必要があります。お客様の負担がなるべく少ない方法でバーチャル口座導入を考えるのが肝となるでしょう。

関連記事:不動産賃貸契約電子化のメリット

仲介業務支援における不動産テック

不動産会社の仲介業務にはさまざまな契約シーンがあります。従来は紙媒体での契約が主流でしたが、書類の作成に時間がかかるうえ、契約者の確認・捺印も必要であり、非効率な業務となっていました。そこで電子署名の技術を応用した電子契約サービスの活用で業務効率化を図る需要が高まってきているのです。

電子契約可能な契約には、賃貸借契約や駐車場契約、転貸契約などが該当し、これらはすべてオンラインで契約を完結できます。また、対面での説明が必要だった重要事項説明も、ビデオ会議ツールを利用して遠隔で行うIT重説を選択することが可能です。

専用アプリやWebサービスを提供するベンダー企業にカスタマイズの要望を伝え、自社のシステムとAPI連携を図るなど、複数のサービス間における連携にもシームレス化・進化の余地が見られます。

不動産テックの市場規模と可能性

不動産テックの市場規模と可能性

注目を集める不動産テックですが、今後も市場規模やサービス導入の流れは拡大していくと推測されます。

公益財団法人不動産流通推進センターが発表した2020年の統計では、2018年の国内総生産(GDP)における不動産業が占める割合は11.3%となっています。このように膨大な市場規模であるにも関わらず、株式会社NTTデータ経営研究所が行った動向調査「第2回 企業における不動産テックの取り組み動向調査」では「不動産テックの認知度自体が3.9%」という結果(NTTコムリサーチ登録モニターが対象)になっています。

興味深いのは認知度が3.9%でありながら、不動産テックを認知している企業が実際に不動産テックに取り組んでいく割合は43%に達したことです。さらに、同調査の3.9%の回答者に対して行った「不動産テック動向への危機感」についての質問は約7割の回答者が「危機感を感じる」と回答しています。残りの約3割の回答者は「コア事業と関係がないため危機感を感じない」と回答していますが、この原因には不動産テックの定義や取り組みを正しく認知していない可能性も考えられるでしょう。

2つのデータから考えられることは、不動産テックの取り組みは一部の企業で推進されているに過ぎず、情報取得に格差が見られること。そしてこれから業界全体へと浸透していく可能性が高いということです。不動産テックの取り組みが業界全体に波及していくことで、「コア業務に関係がないため危機感を感じない」と回答していた不動産事業者の態度も変容へ向かうでしょう。

まとめ

急速に注目を集めている不動産テックですが、未だ認知度自体は高いとはいえない現状にあります。つまり、国内総生産の約1割を占める不動産業界の市場規模はほとんど未開拓といっても過言ではありません。ゆえに、不動産テックをいち早く導入する効果は大きく、導入によりさまざまなリターンが見込めます

「自社の定型業務をいかに効率化するか」といった視点から、不動産テックとは何か、どのようなメリットが見込めるのかをイメージし、アプリやサービスの導入を検討してみましょう。

記事を監修した人

弦本卓也
大学卒業後、2011年に大手不動産会社に入社し現在まで不動産メディアづくりや組織づくりに従事。不動産に興味を持ち個人でも戸建てや区分マンション、商業ビルなどの売買を経験。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて現在は株式会社を2社経営。投資家として若手実業家の支援なども手がけている。

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2020年10月28日 | Posted in コラム記事 | タグ: , , , , Comments Closed 

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