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取材記事Interview

【リーダーインタビュー】高橋誠一様|街のお米屋さんから、一大不動産企業グループの社長へ。その成功の軌跡を辿る

三光ソフランホールディングス

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。今回お話いただいたのは、全国賃貸管理ビジネス協会(以下、全管協)の会長であり三光ソフランホールディングス株式会社の代表取締役社長である、高橋誠一様です。GMO ReTech 代表取締役社長の鈴木がインタビュアーとなり、一代で巨大企業グループを築き上げた高橋様の成功までの軌跡、そして全管協の取り組みなどをお聞きしました。

目次

    努力と挑戦を続け、家業の米屋を埼玉一に。

    Q.まずは、高橋様の原点をお聞かせください。

    私の仕事人生は、家業の米穀店を継いだところから始まりました。でも、実は私、学生時代は「絶対に継ぐものか」と思っていたのです。当時私の夢は億万長者になることで、「億万長者になる仕組みを知りたい」とナポレオン・ヒルやカーネギーの本を読み漁っていました。そして学んだのが、「仕組みなんかない、どんな仕事でも努力するしかないのだ」ということ。

    とはいえ、「米屋から億万長者になるのは大変だよなぁ」と考え、電気系の会社に入り5年で起業しようと決めていました。そして内定まで貰ったのですが、結局その計画は頓挫してしまいます。

    なぜかというと、大学卒業の半年前に、米穀店の社員2人が退職することになったからです。この2人が辞めると店は回らないのに、数ヶ月経っても求人募集に応募はこない…。そして、父が「もう店は売る」と言っていることを義姉から伝え聞きました。

    そこで「決断の時だな」と腹をくくりました。内定先に謝罪し、卒業前日に父へ「俺が継ぐよ」と話したわけです。
    ただし、継ぐための条件として次の2点を伝えました。

    • 大卒の初任給の5割増しの給料を出してほしい
    • 自由なやり方で働かせてほしい

    自分なりに熟慮して出した決断でしたね。

    Q.“自由なやり方”とはどんなことですか?

    “自由なやり方”とはどんなことですか?

    父のやり方から、ガラリと変えました。そのことで父とは喧嘩ばかりで大変でしたが、結果として継いで1年で利益の5割アップを実現したのです。逆に言うと、それまで本当に無駄が多かったのですね。

    たとえば、以前は毎朝何十軒もの家に「今月は何kg要りますか?」と御用聞きに回り、その後店に戻って米を袋に詰め、午後に配達・集金していました。毎日最低2~3回は、同じ客先に出向いていたわけです。

    そこで、あらかじめ袋詰めした米5kg・10kgを、御用聞きの際に持って行くことにしました。そして「今月は18kg欲しい」と言われたら、「精米した米の美味しさは2週間が限度なので、ひとまず10kg買ってください。残りは2週間後に持ってきます」と提案する。すると、お客さんは喜んで納得しますし喜んでくれます。そして、私は出向く回数を1回に減らせるというわけです。

    この方法に切り替えたことで、時間やガソリン代が大幅に浮きましたね。そして浮いた時間は、新たな仕事のために使ったのです。

    Q. 具体的に浮いた時間で何をされたのですか?

    エリア外の新築住宅や団地を回り、新規開拓をしたのです。そして、販売エリアの拡充に伴い、店舗数や社員数も少しずつ増員していきました。

    新規開拓の際は、他の米穀店が朝9時から1軒1軒回っていた中、私は社員を連れて朝8時に行き1時間以内にすべて回り切りました。すると、他店は一俵も売れないため、そのエリアを私どもで占めることができるわけです。

    そんな風に顧客作りに励んだところ精米が追い付かなくなったので、土地を借りて工場を建て、精米量を11倍に増やしました。そしてもちろん“米の美味しさ”にもこだわり、「一番美味しいお米を売ってください」と全国の米処を回りました。最初は全く相手にされませんでしたが、翌年も足を運んで頭を下げたところ、新潟コシヒカリなど人気のお米を大量に仕入れられるようになりました。

    こうして、精米体制も美味しいお米も揃った。そこで今度は、団地の自治会4つに営業をかけたところ、毎週日曜に販売会を開催できることになりました。その結果、売上はさらに伸びましたが、週7日仕事で私の休日はゼロに。それでも不思議と、疲れよりも販売する面白さのほうが勝っていたように思います。

    Q. 億万長者に必要な「努力」を、まさに実践されたのですね。

    そうですね。その後、国がブランチ(支店)を認める制度を作ったことから、スーパーマーケット内に支店を出してさらに売り上げを増やしていきました。

    そして私が35歳になった頃には43店舗まで増え、埼玉で一番の米穀店へと成長したのです。

    「億万長者」を目指し、不動産の道へ。

    Q.不動産業に進出されたきっかけを教えてください。

    不動産業に進出されたきっかけを教えてください。

    私が、ちょうど27歳の頃です。真夏のうだるような暑さの中、不動産会社の社長へ米を配達したところ衝撃を受けました。

    私が汗だくになりながら重い米を運ぶ一方で、その社長は涼しい部屋でアイスコーヒーを飲みながら、テレビで甲子園を見ていたので。店の外には、ピカピカに磨かれた新車のクラウンが停まっていました。

    そこは社長一人、社員一人の小さな会社だったのに、仕事をせずテレビを見ていられる時間があるくらい儲かっている。それを見た私は、「自分はこの社長の倍働くから、倍稼げるはずだ」と不動産業界への進出を決意したのです。

    それからすぐに、毎朝4時起きで勉強して宅建を取得。そして、米穀店の細かな業務は当時20名ほど雇っていた社員にすべて引き継ぎ、私一人で不動産事業を始めたわけです。

    Q. どんな事業からスタートしたのですか?

    まずは不動産仲介から始めました。近所を回ってチラシを配り、家を売りたい客・買いたい客を探したのです。すると、裕福な方が多いエリアだったこともあり、始めて1ヶ月で1,200万円の物件の仲介が決まりました。

    しかし、「住宅ローンを組んで買います」と言われても“住宅ローン”自体がわからない。見習い経験ゼロで始めたので、宅建で学んだこと以外は何も知らないわけです。

    そこで銀行に行き、「住宅ローンとは何ですか?」と質問しました。もちろん窓口の方は「不動産会社の社長さんですよね?」と驚いていましたが、丁寧に仕組みを教えてくれました。やはり、知らないことは知らないと正直に言う姿勢は大事ですね。私の場合はこれがきっかけで窓口の方と仲良くなり、以来さまざまな相談に乗ってもらえるようになったのです。

    そうこうして1年ほど不動産仲介を続けた結果、気づいたのが自分の給料分は稼げるものの、計画的に大きく儲けるのは難しいなということ。そこで、次は「建売」事業へ進むことに決めました。

    Q. 建売事業には、どう進出されたのでしょうか。

    畑を耕しているおじいさんに、「ここはあなたの土地ですか?売ってもらえませんか?」と直接声を掛けました。すると50坪1,000万円で売ってもらえることになったので、まずここに2棟建てようと。

    しかし、銀行に融資を頼んだところ「建て売りの実績がないから」と断られてしまい、仕方なく私の兄弟4人に200万円ずつ借り、残りは自分で捻出してなんとか1,000万円を揃えました。

    こうして土地は購入できましたが、建物を建てる資金がない。そこで大工さんに事情を話し、「物件が売れたら必ず支払うので、まず一棟建ててくれませんか?」と頭を下げたところ、「大変なんだな。いいよ」と。こうして1棟建ててもらってすぐ代金を払い、2棟目も同じ方法で建ててもらいました。

    そして次は、良さそうな土地を3区画見つけたので信用金庫へ融資を頼みます。すると偶然、窓口にいたのは私の後輩だったという縁もあり、あっさりOK。さらにその後、同級生から10区画分の土地を売ってもらい、銀行からも融資してもらえるようになり…と、周囲の助けもあって順調に事業は拡大していきました。

    資金ゼロの状態からここまで儲けられるのか、と不動産業の面白さを実感しましたね。しかし、ちょうど35歳の時に建売事業からは手を引き、注文住宅事業に切り替えました。建てたら建てたぶんだけ即売れるような状況で、「何かがおかしいな…」と違和感を覚えたからです。

    卓越したリスク回避能力で、事業の転換・成長を実現。

    Q. どこに違和感を覚えたのですか?

    どこに違和感を覚えたのですか?

    はっきりとはわかりません。ただ、冷静に周りを見回したときに漠然とではあるのですが、空気がおかしかった。うちだけではなく他社でも飛ぶように売れており、「儲かり過ぎではないか?」と。そこで、自分の直感に従って手持ちの土地は売り、銀行からの借入金もすべて返済しました。

    そうして注文住宅に切り替えてから3ヶ月後に、第二次オイルショックが到来。石油不足で建築資材が届かなくなり、建築がストップする。その結果、当時の建売会社はほとんど潰れました。私の会社だけ、間一髪で助かったわけです。

    そこから5年後、1986年あたりに今度はバブルがやってきました。物価が膨らみ、1億円で買った土地が3億円で売れるようになったと。そこでまた同じように「そろそろ儲かり過ぎだ、危ないな」と感じた私は、不動産売買から一旦手を引くことに。

    そして今度はより“安定性”を重視して、小さな利益を積み重ねていける「賃貸管理業」と、地主さんの相続対策を手伝う「コンサル事業」に切り替えました。すると1991年3月、相続コンサル会社「株式会社財産ドック」を設立したのとほぼ同時に、バブルが崩壊したのです。とたんに大手不動産会社が次々と倒産しましたが、当社は逆に右肩上がりで成長していきました。

    Q. なぜ相続対策に目をつけたのでしょうか。

    当時地主さんの相続税は7割で、資産が10億円あっても相続時は3億円しか手元に残りませんでした。これでは、2代目3代目の地主さんがいなくなってしまう。私に何かできることはないだろうか、と考えたのです。

    そこで税理士に「相続税を半分に減らせないか?」と相談したところ、教えてもらったのが“ローンでアパートを建て、家賃収入を得ながらローンを返済していく”方法。この方法は実際に相続コンサルで多くの地主さんへお勧めし、相続対策に非常に役立ちました。

    そしてこの方法は、現在当社が勧めている個人年金構築プラン「お金持ち大家さん」の元になっています。

    Q. 不動産事業・コンサル事業と、ここから事業の多角化が進むわけですね。

    そうですね。1999年には「メディカル・ケア・サービス株式会社」という介護施設事業もスタートし、2006年には全国81棟にまで規模を拡大して上場を果たしました。ただ、2013年には上場を廃止して、完全子会社にしました。

    完全子会社化したのは、もっと自由に展開したかったから。上場していると、何か新しいことを始める時にどうしても株主総会で議題にかけないといけませんし、また、先行投資による利益の落ち込みでも株主様はなかなか納得してくれません。自由なやり方には責任が伴いますが、それでも私は自由が良かった。そこで、銀行に資金を借りてMBO(マネジメント・バイアウト)を実行したわけです。そして2017年には300棟を超える規模となり、介護施設のベッド数で日本一になりました。

    ですが、日本一を達成すると集中力がなくなってしまうと言いますか…。ちょうどその頃、学研ホールディングスさんから「日本一の介護施設を作りたいので買わせて欲しい、」という話がきたので、株式を売却しました。学研の社長さんとは、今でも2ヶ月に一度ほどお会いして情報交換をしています。

    Q. 「アパマンショップ」を創業されたのは、いつ頃でしょうか。

    「アパマンショップ」を創業されたのは、いつ頃でしょうか。

    ちょうど2000年頃です。アパマンショップの現社長から、「日本一の不動産業者ネットワークを一緒に作りましょう」と声を掛けられました。「家族経営の小さな不動産会社でも生き残れるように、日本中の不動産会社で力を合わせましょう」と。

    そこで、「全管協」の前身である「全国賃貸管理業経営会」の支部長たちに声をかけたわけです。15名の支部長に地元の不動産会社を約10社ずつ紹介してもらい、1ヶ月後には140社が集まりました。

    その後ネットワークは急速に拡大し、立ち上げから1年5ヶ月後には上場を果たすまでになったのです。

    チャレンジは、難しいほど面白い。

    Q. 以降さらに広く事業を展開されてきたわけですが、近年面白さを感じた事業はありますか?

    2018年あたりから京都と宮古島に賃貸アパートやホテルを作っているのですが、これらのエリアは夢があって楽しいですね。

    宮古島へ展開したのは、アパマンショップの社長から「宮古島は賃貸の部屋が足りず困っている」と聞いたため。宮古島では、毎年高校卒業後に500人が島を出ていくものの、大体10年後には家族を作って戻ってくるそうです。また、一人で戻ってくる方も実家ではなく一人暮らしを選択するので、賃貸の部屋が必要になると。

    そこで、ひとまず賃貸アパートを3棟建てたところ、なんと一週間ですべて埋まってしまいまして…。「これはすごい」と建設数を大幅に増やすことになり、現在は計350室ほど完成しています。今後もさらに増やしていく予定です。

    なお、宮古島のアパートは台風被害を防ぐため鉄筋コンクリート造がほとんどですが、当社が建てたアパートは木造です。木造は建設坪単価が安く、賃料を下げられます。ただし木造ではあるが、「どんなに猛烈な台風でも飛ばない木造アパートを作ろう」と研究に研究を重ね、台風にも負けない耐久性の高いアパートを建てました。結果、当社の木造アパートは一棟も台風による被害は受けていません。

    やはり、難しいことにチャレンジするのは面白いですね。

    安心・安全・快適に住める“新たな賃貸時代”を目指して。

    Q. 高橋様が会長を務めている「全国賃貸管理ビジネス協会」について、教えてください。

    全国賃貸管理ビジネス協会引用元:全国賃貸管理ビジネス協会

    全管協は、現在約1,800社が加盟している賃貸仲介・管理会社のネットワークです。約350万戸と日本一の管理戸数を誇り、会員企業の収益向上・管理物件の拡大を目指してさまざまな取り組みを行っています。

    たとえば、収益アップに役立つ周辺ビジネス商品を会員価格で販売したり、140万件もの少額短期保険を提供したり。また、会員同士で空室対策・教育・経営・税務などのノウハウ共有をしてもらえるよう、情報共有セミナーも毎月開催しています。ビジネスは、成功している人のノウハウを知って真似することが重要ですから。真似ができるというのは、一つの才能ですよ。

    私が全管協を設立したのは1991年。当初は「全国賃貸管理業協議会」という名称で、全国の賃貸管理業者の有志とともに、管理業の近代化・入居者の保護・家財保障の共済・物品の共同購入などを目的として立ち上げました。16社からスタートしたのですが、全国を飛び回ってセミナーを開催するうちに続々と会員が増え、日本中に支部が誕生しました。

    そして2001年、社会貢献を目的とする公的団体「財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)」が設立されたことにより、「全国賃貸管理ビジネス協会」に名称を改め、ビジネスノウハウの構築と会員の発展に寄与する“ビジネス団体“として生まれ変わったのです。

    Q. 「日管協」と「全管協」とで、役割が異なるのですね。

    「日管協」と「全管協」とで、役割が異なるのですね。

    そうですね。ただ、全管協も行政や地方自治体と連携し、社会貢献に尽力しています。12~13年前からは「自由民主党賃貸住宅対策議員連盟」の総会にも参加し、賃貸業界が抱える課題や要望などの申し入れを行っています。

    最近でいうと「賃貸マンション等の『大規模修繕積立金』を課税対象外としてほしい」と申し入れ、一定の条件をもとに認められることとなりました。

    今までは、たとえば「年間100万円ずつ10年積み立てて、1,000万円のリフォームをしよう」と考えても、所得税が引かれるため10年後には700万円しか残らず、プラスで資金投入が必要だったわけですが、それが不要になると。

    これは、人口減少が進む日本社会において大きな課題である、賃貸住宅ストック(既存住宅)の長期活用の実現に向けた大きな一歩であると言えます。

    今後も全管協の会長として、「安心・安全・快適」な住環境をご提供し、住まいに関わる皆様と一緒に“新しい賃貸時代”を切り拓けるように。そして、三光ソフラングループの代表として、生まれ育ってやがて老いるまでの生涯にわたる幸せをサポートし、活力ある社会をつくれるように誠心誠意、努力していきたいと考えています。

    まとめ

    時代の一歩先を読む力、そして変化を厭わずに挑戦し続ける姿勢で、日本の不動産業界を牽引し続けてきた高橋氏。その人生には、自社の事業を継続・発展させるため、そしていちビジネスマンとして仕事を楽しむための大きなヒントが隠されているのではないでしょうか。
    まとめ

    インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人(写真左)

     

    本記事取材のインタビュイー様

    高橋 誠一 氏
    三光ソフランホールディングス株式会社 代表取締役社長
    父がはじめた米屋を継いだのち、1978年埼玉県に「三光ソフラン株式会社」の前身「三光不動産株式会社」を設立。1990年には不動産賃貸管理会社「株式会社アップル 」を設立、賃貸仲介業「アパマンショップ」店舗数第1位にまで育てる。1999年には介護事業に進出、200棟を超えるグループホームを運営。 土地、建物の分譲・仲介、リフォーム事業に加え「お金持ち大家さん」の個人年金づくりのコンサルティングを行うほか、サブリース事業、医療コンサルティング、海外事業など広く展開。 全国賃貸管理ビジネス協会会長として、協会会員の成功を後押しすべく、業界最大のネットワークを駆使して売上・収益アップのための周辺商品開発などの先頭に立っている。
     
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