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10年後はセルフ契約が主流!?

株式会社S-FITの代表取締役社長であり、賃貸管理リーシング推進事業者協議会の副会長でもある紫原 友規氏の連載、「徹底調査!賃貸仲介の『イマ』」では、賃貸仲介業界の現状と未来をみなさまにお届けいたします。

第四回目は「10年後はセルフ契約が主流!?」です。今回は賃貸仲介会社がお客様へ提供する価値やコミュニケーションの変化、それに伴う仲介会社の業態変化についてお話いただきました。ぜひ、最後までご覧ください。

目次

    賃貸仲介会社の提供価値

    現在、賃貸仲介会社がお客様に提供している価値はどのようなものだとお考えですか。

    一言でいうと「お客様の物件選択、情報整理をサポートすること」です。以前と比べて、最近は賃貸仲介会社とお客様の「情報の非対称性」が減少しており、豊富な情報を誰でも簡単に手に入れることが出来る状態になっています。そのため、賃貸仲介会社の営業担当者から提案された物件ではなく、お客様ご自身で「物件を探し、納得して決めたい」という方々が増えています。

    そのようなお客様が営業担当者に求めることは、「自身が見つけた物件の空室確認、内見のスケジューリング、入居条件の確認などがスムーズに出来ること」になってきています。

    お客様ご自身で「物件を探し、納得して決めたい」というトレンドは進んでいくとお考えですか。

    そうですね。今後はこのトレンドが更に進んでいくと思います。10年後にはもっと進んでいるのではないでしょうか。その頃には「お客様自身で物件を探す」だけでなく、物件の内見から審査、契約に至るまでの一連のプロセスを、営業担当者をほぼ介さず、お客様自身で出来るような世界観まで実現すると考えています。

    そのような世界観が実現した際は賃貸仲介会社の提供価値はどのようなものになるのでしょうか。

    未来の賃貸仲介会社が提供する価値は、「お客様が簡単に物件を比較・検討・選択することができ、契約プロセスをスムーズに進められるシステムを提供すること」です。物件に関するあらゆる情報をシステム上で整理しておくことが出来れば、お客様自身で情報を比較検討し、取捨選択していくことが容易に出来るようになります。

    現在の賃貸仲介会社が提供する価値は「お客様の物件選択、情報整理をサポートすること」であるため、営業担当者のコミュケーションは重要な要素ですが、こういった仕組みを提供することが出来るようになれば、コミュケーション能力の重要性は低くなっていきます。

    10年後の賃貸仲介業界

    お客様自身でほぼ完結できるようになると賃貸仲介会社の業態も大きく変わる必要があります。

    その通りです。お客様が物件選択から契約までを営業担当者をほぼ介さずできるようになると、賃貸仲介業界のビジネスモデルは大きな転換期を迎えます。

    お客様の物件の探し方、賃貸仲介会社の提供価値が変わることは間違いありません。その変化を受け入れ、ビジネスモデルを変革していくことが必要です。変化は一気に起こるわけではなく、徐々に進んでいきます。その過程で、どのようにサービスや役割を変えていくかが重要になります。S-FITもこの変化に対して、ビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでおり、どのようにビジネスに落とし込んでいくか、どこにビジネスチャンスがあるのかを模索しています。

    その役割を主に担うのは、不動産会社やポータルサイト、不動産テック企業などどこだとお考えですか。

    正直なところ、まだわかりません。私の中ではいくつかの候補はありますが、まだ確信は持てていません。ポータルサイトが役割を担う可能性もありますが、このビジネスモデルの場合は管理会社との取引が重要になってきます。ポータルサイトの主な取引先が賃貸仲介会社であることを考えると、当面、そうなる可能性は低そうです。

    一部の大手不動産会社の中には、既に変化を見据えて取り組んでいる会社もあります。ビジネスの転換を進めるには、大きな投資が必要です。それは利益を圧迫しますが、「取り組んでいかなくては自分たちが生き残ることは出来ない。」ということが見えているのでしょう。

    こういった話は極論を求めたがりますが、何度も言うように変化は「徐々に」起こっていきます。全てデジタルで解決しようとする人たちの中には、極論でビジネスを進めてしまうケースが多く見受けられます。「世の中はこう変わる!」と決めつけてビジネスを作っていってしまう。その結果、世の中の変化が追いついてこられず、失敗するのです。タイミングを見ながら「徐々に変えていくこと」が重要です。

    今後、初期費用や物件探し、契約に必要な時間はどう変化していくのでしょうか。

    既に、初期費用も契約に必要な時間も少なくなってきています。昔は敷金2か月、礼金2か月といった物件も多くありましたが、昨今はほぼ存在しません。情報がオープンになったことにより、物件探しに必要な時間も減ってきました。こういった流れは、より加速していくのではないでしょうか?少なくとも私がお話している世界観が実現すれば、物件探しや契約に必要な時間は今よりも格段に短くなり、プロセスの効率化が進むでしょう。

    コミュニケーションが必要なマーケット

    いずれ、コミュケーション能力の重要性は低くなるというお話がありました。

    徐々にその方向に向かっていきます。しかし、「不動産のように同一の商品が存在しない分野」では、営業担当者とコミュニケーションを全く取らずに、決断を下すのが難しいのも事実です。

    現状のポータルサイトを見てもわかる通り、情報が増えれば増えるほど、その中から自身にあったものを選択するのは難しくなってきます。ポータルサイトはお客様に合った物件紹介を最適に行おうとしていますが、まだあまり上手く行っているようには見えません。そういった点も踏まえ、「徐々に変わっていく」と考えているわけです。

    コミュケーションの重要性が残るマーケットはありますか。

    もちろん残るマーケットはあります。物件比較から契約までを簡単に行える仕組みが提供されるということは、裏を返せば、その仕組みを使いこなす必要があるということです。そういった仕組みを使いこなすのがあまり得意でない方は、営業担当者とコミュニケーションを取りながら、物件を選んでいくことでしょう。

    また、個のニーズに合わせたサービスを求める高級賃貸のお客様も、引き続き営業担当者とのコミュニケーションを重視するでしょう。高級賃貸市場ではお客様の詳細な要望を聞き出し、それに応じた提案をすることが求められますので、このマーケットでもコミュニケーションの役割はとても重要です。そういったことを踏まえると、今後は高級賃貸のマーケットに優秀な人材が流れ、競争が激化していくことも考えられます。

    賃貸仲介業界の変化

    営業現場での生成AIの活用は進んでいますか。

    S-FITでは生成AIの活用は進んでいますが、ChatGPTなどを直接営業担当者が使いこなす形ではなく、営業の煩雑な業務を代行させる用途で活用しています。これにより、営業担当者はより優先度の高い業務に集中できるようになります。一方、プロダクトやサービスを作る企画職では、新しいアイデアやコンセプトを生み出すためにChatGPTなどを使いこなしています。

    物件比較から契約までを簡単に行える仕組みには生成AIが活用されるのでしょうか。

    そうですね。優れた営業担当者がお客様のニーズに基づいて行っている「物件提案ロジック」をAIに組み込むことで、お客様は自分に合った物件をより簡単に見つけることが可能になります。このような営業のノウハウをシステム化し、お客様との対話に活用することができれば、「パーソナライズされた提案」が可能になり、お客様の物件探しをより効率的かつ満足度の高いものにすることが期待できます。

    このような変化が起こっていくと10年後の賃貸仲介業界はどうなっているとお考えですか。

    前回お話したように、淘汰が進んでいる状態になっていると思います。規模が大きくない賃貸仲介会社は、いまよりもかなり数が減ってしまっているのではないでしょうか。テクノロジーの進歩とお客様のニーズ変化のスピードは年々加速しているため、変化に適応できない会社は生き残りが難しくなります。

    これは賃貸仲介会社に限った話ではありません。賃貸仲介業界に関連するビジネスを行っている会社で、取引会社数といった数の論理でビジネスを構築している会社も、厳しい状況に直面すると想定しています。変化に適応し、新しいビジネスやデジタル変革に投資することが生き残るための鍵となってきます。

    まとめ

    「賃貸仲介会社がお客様に提供する価値の進化」「コミュニケーションの役割の変化」、そして「賃貸仲介会社の業態変化」という三つのテーマを中心にお話しをさせていただきました。10年後にはセルフ契約が主流になる可能性が高いということで、不安を覚えた方も多いかもしれませんが、私は時代の流れを考えると「必ず起こる」と確信しています。

    私たち賃貸仲介業界の関係者は、時代の変化を踏まえ、未来への道筋を今からしっかりと描いていかなければいけません。賃貸仲介業界のさらなる進化と発展を、一緒に目指しましょう。

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