お問い合わせ
特集記事Feature

<32コツ目> マンションは賃貸と分譲で計画修繕の範囲が異なるのをご存知ですか?

今回は賃貸住宅の計画修繕について、考えてみたいと思います。

計画修繕と言えば、分譲マンションの計画修繕をイメージしますが、賃貸マンション(アパートも含む)の計画修繕は少し異なります。

目次

    分譲マンションと賃貸マンションの計画修繕の違い

    まず、分譲マンションと賃貸マンションの違いを確認しましょう。

    分譲マンションと賃貸マンションの違い

    ①分譲マンションは原則として入居者が所有者で、賃貸マンションは原則として、入居者と所有者が異なります。

    ②分譲マンションは区分所有で、賃貸マンションはワンオーナーである事が多いです。

    ③分譲マンションは区分所有者が修繕積立金を積み立てて、計画修繕に回しますが、賃貸マンションにはこういった制度をあまり見かけません。

    その上で、分譲マンションと賃貸マンションの計画修繕の違いは以下の通りです。

    分譲マンションと賃貸マンションの計画修繕の違い

    ①分譲マンションの計画修繕は原則として、共用部分のみ(専有部分は各区分所有者が単独で行う)だが、賃貸マンションの計画修繕は共用部分に加えて専有部分も対象となる

    ②分譲マンションは、区分所有者の合意を得ながら進めるので、建物の現状維持が中心となるが、賃貸マンションは単独オーナーのため、建物の価値向上のためのグレードアップ等、自由度も高い。しかしながら、経費節減のため、ほとんどお金をかけられないオーナー様も存在する。

    建物の維持管理全体の中での計画修繕の位置づけ

    次に賃貸マンションの建物の維持管理全体から見た計画修繕の位置づけはどのようになっているでしょう?まず、計画修繕に類似した言葉で大規模修繕と言う言葉があります。この2つは、賃貸管理の現場では混同して使われるケースも多いため、ここでは以下の通り定義したいと思います。

     

    計画修繕 ・・・予め長期修繕計画を立てた上で、この計画に沿って進める修繕
    大規模修繕 ・・計画修繕かどうかに関わらず、単に建物全体に関わるような大規模な修繕の事

     

    【建物維持管理】

    賃貸マンションの計画修繕の種類

    共用部分の計画修繕

    ①建物の躯体(屋根・外壁・廊下・階段・バルコニー等)の修繕(塗装や防水等)
    ②給排水設備(受水槽、上下水道管、浄化槽等)の修繕・交換
    ③電気設備(エレベーター、キュービクル、共用照明、オートロック、インターネット、電話、テレビの共聴設備等)の修繕・交換
    ④消防設備の修繕・交換
    ⑤その他(植栽や外構・敷地内駐車場の整備、集会室・エントランスの模様替え等)

    専有部分の計画修繕

    ①室内設備(給湯器、エアコン、流し台、浴室内、照明器具、洗濯機置場等)の交換

    ②間取り変更

    賃貸マンションの計画修繕の注意点

    オーナーの理解と修繕積立

    ①貸主の維持保全義務
    民法第606条では、賃貸人(オーナー様)は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うと言う条文があります。完全なメンテナンスフリー(修繕の必要が無い)の建物など、世の中に存在しません。建物を賃貸している数十年の間に建物は少しずつ傷んできます。例えば、建物の屋上から水が漏れ、下の階の居室に水漏れ事故が発生してから、屋上防水工事をするような事になると、被害にあった入居者にご迷惑をおかけするだけでなく、オーナー様にも室内復旧のための修繕費用や賠償費用がかかってきます。そのような事にならないよう、水漏れ事故を未然に防ぐために予め、屋上防水工事を実施しなければなりません。オーナー様にはこのあたりを十分にご納得頂くようにしたいものです。

    ②オーナー自らが居住していない事
    分譲マンションでは、各室の居住者が協力して修繕積立金を積み立てるため、1室ごとの積立金額はそれほど高額ではありません。これに対して賃貸マンションは1棟分を一人のオーナーが積み立てなければならないだけではなく、分譲マンションには無い専有部分の全室分の修繕費用を積み立てなければならないため、なかなか金額のご理解を頂けません。オーナー様自らがその賃貸マンションに居住されていない事がほとんどである事もあり、必要以上にコストカットされがちです。

    ③計画修繕の実施がリーズナブルである事
    上記のとおり、毎月の修繕積立金は高額にはなりますが、もし、修繕積立をせず、水漏れや故障の発生の都度、事後対応をするようになると、計画的に修繕を行うよりもさらに多額の費用がかかる事になります。このため、オーナー様には、よりリーズナブルな計画修繕の必要性をお勧め頂く事で結果的にオーナー様には喜んで頂けるのではないでしょうか?

    ④積立の早期開始
    ほとんどのオーナー様は賃貸マンションの新築時に建築資金を借り入れられます。また、同様に中古賃貸マンションを購入される場合にも多くのオーナー様がその資金を借り入れられます。このため多くのオーナー様より、この返済が終了して、資金に余裕が出来てから修繕積立をしたいと言うご相談があります。しかしながら、これを認めると、通常、オーナー様の資金の借り入れ期間が20年以上である事が多いため、計画修繕の一度目の工事のタイミング(新築の場合10~15年)に間に合わない事になってしまいます。このあたりをご理解頂き、なるべく早めの積み立て開始をお願いした方が良いと思います。

    専有部分の計画修繕

    ①タイミング
    賃貸マンションの専有部分の計画修繕は、ほとんどの入居者が居住中のため、一度に全室進めると入居者にご迷惑がかかります。その上、養生(修繕時に入居者の家財が汚れないようにカバーを施したりする事)等の費用や、入室のための時間の調整や入室許可の手間がかかります。このため、専有部分の計画修繕はいっせいに全室修繕(交換)する事以外に、入退去の発生により空室になった部屋ごとに修繕を進める方法も兼ねながら進める方が現実的です。オーナー様とは、予め、入居者の入れ替えごとに計画修繕を実施する内容を確認した契約を締結した上で、工事を進める事になります。

    ②工事の対象
    専有部分の計画修繕のご説明をオーナー様に実施する際、必ずと言って良いほどご質問される事があります。それは、「この計画修繕によって家賃はいくら上がるのか。」と言うご質問です。オーナー様にとってみれば、次の入居者を募集するために費用をかけるのだから、家賃は上がって当然と思われるのも仕方ありません。しかしながら、この工事の実施したからと言って、家賃を上げる事はできません。なぜなら、前にご説明した通り、エアコンや給湯器・流し台等を交換したとしても、古いものから同様の新しい商品に交換しただけでは機能に大きな変化もなく、見た目も家賃に反映するほど大きなインパクトは無いからです。専有部分の計画修繕で家賃を上げたい場合には、間取り変更等のグレードアップをする事が必要になります。

    まとめ

    今回は賃貸住宅の計画修繕について、ご紹介してきました。私が賃貸管理の仕事をしている事もあり、業界外の知人から、賃貸管理の相談を受ける事が多くあり、その中で計画修繕の相談を受ける事もあります。その際、ほとんどの知人から計画修繕が共用部分のみであると思っていたと言われます。私たち賃貸管理業に携わるものとして、賃貸マンションの計画修繕の理解と普及を今後さらに進めていかなければなりません。

    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    CONTACT

    GMO ReTechでは、賃貸運営を楽にする
    をミッションにしております。
    賃貸業務でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に関して
    お気軽にご相談下さい。

    お問い合わせはこちらから
    キーワードKeywords
    キーワードKeywords
    5/27(火)「GMO ReTech AI/DX勉強会 2025」開催
    セミナーに参加(無料)
    詳細はこちら