<30コツ目>入居者から解約理由をお聞きするのは何のため?

<30コツ目> 入居者から解約理由をお聞きするのは何のため?過去2回のコラムで、賃貸管理業の運営に関する指標や数値について考えてきました。
→ <28コツ目> 空室率はどうやって算出する? 戸数?面積?賃料?
→ <29コツ目> 2種類の収支(オーナーと賃貸管理会社)を把握していますか?
今回は入居者の解約と、賃貸事業の収支の良し悪しを大きく左右する入居者の入れ替え時の収支について考えてみたいと思います。
解約理由
テナントリテンションと解約理由
過去に何度かお伝えしてきたように、賃貸住宅の経営の中でリーシングと同じくらい重要な要素がテナントリテンション(入居者の保持)です。テナントリテンションを成功させるためには、入居者が積極的に長く住みたいモチベーションを感じる(利便性や環境、物件内コミュニティ等)事と、もう1つは住んでいる部屋を解約したくならない事ではないでしょうか?長く住みたいモチベーションをどう作るかについては、過去のコラムでお伝えしてきました。解約したくなる要因を減らすためには、入居者からの解約連絡があった時に解約理由をお聞きする事が重要となります。
解約理由の選択肢
解約になる理由には外的なものと内的なものが考えられます。外的な理由は、転勤や就職、結婚や実家に戻る等、様々な外部要因の事です。内的な理由は、近隣の入居者とのトラブルや管理会社の対応への不満、住んでいる部屋が手狭になったなど、管理会社や建物、環境等の内部要因の事です。
仮に入居者に解約理由をお聞きしたとして、その理由が転勤だった時に、お聞きした賃貸管理会社の方が、転勤が理由なので仕方が無く手の打ちようがないと考えてしまうとテナントリテンション的には少しもったいない気がします。賃貸管理会社として、解約理由が近隣とのトラブルや管理会社への不満であった場合には対応するのに、解約理由が転勤であった場合には、近隣とのトラブルや管理会社への不満は無かったと言い切れるのでしょうか?
本当は賃貸管理会社への不満があって解約するにもかかわらず、あえて転勤とお申し出頂いているのかもしれません。しかしながら、解約受付は賃貸管理会社が限られた時間の中で多くの説明をしなければなりません。説明する賃貸管理会社の側も、また、入居者にとっても解約理由を確認するのに長い間を使う事は避けたいところです。こういった事情から最小限の項目を追加するのはいかがでしょうか?
解約理由に加えて、賃貸管理会社への評価を例えば5段階で評価して頂く訳です。それに加えて、任意でその理由をお聞きするようにします。この程度でしたら、そこまで双方の負担にはならないのではないでしょうか?
今回のテーマは数値や指標です。賃貸管理会社は個別の解約理由に追われないようにしながら、これらの理由(選択肢は出来るだけ少なく)や評価を集計して活用するようにします。
解約数
解約数を把握すれば、解約率が分かります。
年間解約数÷管理戸数=解約率(年間)
解約率が分かれば、以前お伝えした通り、概算の平均居住年数が分かります。
解約率÷1=平均住年数
→ <6コツ目> 空室対策2|やはり日当たりは入居年数に影響する(検証してみた)
入居者に長く住んで頂く事は、空室率の低減と言うメリットだけではなく、家賃収入を維持できると言うメリットもあります。管理物件が老朽化してくると、一般的には家賃が下がってきます。そのような中で、長く住んで頂いている入居者は以前の家賃で入居され、そのままの金額で契約更新を重ねている方も多いため、家賃が高い水準を維持できる事になるからです。
入替収支
前回のコラムでもお伝えしましたが、入替収支とは入居者の1入れ替えごとの収支(解約から次の入居まで)の事です。基本的にはオーナー様の立場での収支となります。
収入項目
礼金等
賃貸借契約時に入居者から一時金として頂く収入となります。場合によっては、契約事務手数料や鍵交換費用も収入として計上されます。
敷金償却
敷金は入居者からお預かりして、解約の際にお返しするものですが、予め敷金償却が設定されている契約は、解約時に一定額または全額償却され、入居者には戻りません。しかしながら、仮に解約償却と言う名称であっても、税務上は入居者から受け取った時に計上する必要があります。
したがって入替収支上も、敷金償却の設定のある物件は、入居者から敷金をお預かりした時に償却費を計上いたします。
違約金
賃貸借契約の中で、違約金の設定されている物件(短期解約や解約の通知期間の違反)について、入居者に違反が認められた場合は、入居者から違約金を頂戴する事になります。
支出項目
仲介手数料(オーナー負担の)
賃貸仲介の手数料の全部または一部がオーナー様の負担になっている物件については、この仲介手数料を支出の項目に加えます。
広告料
リーシングのポータルサイト等に掲載する費用や、チラシやのぼり等以外に、賃貸仲介業者に支払う広告費も含まれます。
入替修繕費用
入居者入替時のリフォーム費用から、退出する入居者の負担する原状回復費用負担金を指し引いた費用が支出項目となります。
空室負担
空室負担は、明確な費用として見えないので忘れがちですが、解約する入居者の解約日の翌日から、次の入居者の契約開始日(賃料発生日)の前日までの、家賃を空室負担として支出に計上します。
上記の収入をプラス、支出をマイナスとして合計する事により、1入れ替え当りの収支が決定します。私が賃貸管理業界に関わったのは、今から約40年前ですが、その頃はこの入替収支がプラスの時代でした。つまり、礼金等の収入が、支出を上回っていました。この事は、入替が多ければ多いほど、賃貸事業の収支が良かった事を表しています。入居者の居住期間が短ければ短いほど良かったと言う異常な時代でした。
現在は入替収支がプラスとなる物件はほとんどないと思います。ワンルームであっても、マイナス数十万円となる物件もあり、居住期間が短いと簡単に収支が悪化してしまいます。
まとめ
今回は入居者の入れ替え時に取り扱う数値のポイントとして、解約理由と解約率、それに入替収支について考えてきました。リーシング力の向上のために様々な施策が実施されていますが、つまるところ、結果として入替収支が改善されなければ意味がありません。賃貸管理会社はオーナー様に対して、費用対効果の見合った収支の改善提案をする事が求められます。