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<6コツ目>空室対策2|やはり日当たりは入居年数に影響する(検証してみた)

前回は賃貸管理会社の空室対策に必要な要素を“魚屋”にフォーカスして空室対策を考えてみました。

さて、今回は賃貸管理会社がなかなか力を入れようとしない空室対策、「テナントリテンション」です。
私はテナントリテンションが空室対策の最終兵器だと考えています。
このため、複数回に分けてお届けしたいと思います。

目次

    テナントリテンション

    まず、テナントリテンションと言う言葉の意味から確認していきたいと思います。

    テナント(tenant)は借主(入居者)の事です。英語には借主に当たる単語がいくつかあるようですが、どちらかと言うと、借りている「人」にフォーカスが当たっている言葉のようです。
    また、リテンション(retention)は維持とか保持と言う意味です。
    合わせると“入居者の保持”となります。

    つまり、空室対策においてリーシングが入居者を募集して成約すると言う事だとすれば、テナントリテンションは、入居者にいかに長く住んでいただくかと言う事になります。
    テナントリテンションがうまく行けば、入居者の解約が減る訳ですから、空室対策につながります。

    入居期間と解約率の関係

    仮に年間の(入居者の)解約率が25%の管理会社があった場合、平均入居年数は何年でしょうか?

    これは簡単に求められます。
    25%=1/4ですから、平均入居年数は4年です。

    この2つの数値は逆数(2つを掛けると1になる数値)の関係だからです。
    ※ただし、正確には計算時に契約中の入居者がいれば、平均入居年数は延びます。

    テナントリテンションはこの入居期間を延ばす事なので、単純に言えば入居年数を倍にすれば空室率は1/2になります。

    現状分析

    それではまず、様々な要素に対して入居年数がどうなっているのか現状分析から始めましょう。
    今回は木造かつ単身者向け住居(1K、ワンルーム)を主体にしたデータを使って分析しました。

    (1)男女別

    まずは性別によって差が出るか調べたところ、男性の方が2割くらい長くなりました。

    ただ、後述するように集計結果には様々な要素が絡み合っているので、このデータの結果だけを見て、なぜ男性の入居年数の方が長いのかと言うはっきりした説明は出来ないと考えています。
    あえて、一つだけ仮説をあげると、今回調査したデータの一部がファミリータイプであるため、ファミリータイプの契約者が男性である比率が高く、また、このタイプの平均入居年数が長い事から、結果として男性の入居年数が長くなっているのかもしれません。

    (2)法人個人別

    契約者の法人個人別は入居年数に大きな差が表われました。
    法人契約を大きく分けると、入居する本人が部屋を探して法人契約するタイプと、会社が部屋を探して社員寮として設定し、社員の入れ替わりがあってもその部屋を契約し続けるタイプがあると思いますが、今回のデータはおそらく後者のタイプが多かったものと思われます。
    あくまでも傾向ですが、この後者のタイプは、例えばその部屋が最寄駅から離れていても、会社(勤務先)の近くにあるケースが多いのではないかと考えられます。

    つまり最寄駅から遠い物件のテナントリテンションの対策としては、その物件の近くの法人契約が有効になるのではないかと言う事です。

    (3)部屋タイプ別

    この結果は、おそらく多くの方の予想通りの結果なのではないかと思います。
    ファミリータイプは単身者と異なり、家族の一人が引越をしたくても、同居する他の家族の都合(例えば子供が通学する学校との距離など)も考慮する必要があり、結果として単身者と比較して、多少入居年数が延びるのではないかと思います。

    (4)専有面積別

    専有面積(広さ)別ではグラフを見ると、真ん中(20~25㎡)に谷間(入居年数が少ない)が見られます。
    この理由を私は2つの要素が絡み合った結果なのではないかと考えています。

    一つ目の要素は主に25㎡未満の結果に築年数の影響が出てしまっているのではないかと言う事です。
    この面積帯はそのほとんどが単身者タイプとなりますが、築古の単身者タイプに20㎡未満の比較的狭いタイプ(浴室も3点ユニットバス)が多く、逆に築浅になるほどバストイレ別が多くなり面積も広めになってくるからです。
    後ほど述べる築年別のデータを見ると分かりますが、築古になるほど平均入居年数は長くなります。
    つまり、25㎡未満 → 築古 → 居住年数が長い。
    この影響がこの面積別の結果に表れていると言う訳です。

    二つ目の要素は40㎡以上の結果に顕著に表れていますが、40㎡以上の部屋はそのほとんどがファミリータイプであるため、この前の項でご説明したファミリータイプと単身者タイプの入居年数の差が専有面積別データにも反映されていると言う理由です。

    (5)方位別

    そもそも賃借や所有に関わらず日当たりが良い部屋は、昔より部屋の評価が高く、賃貸の場合はその分、家賃が高かったりしますが、今回、改めて入居年数で確認してみても、日当たりの良い部屋の方の入居年数が長くなりました。

    やっぱりそうか、と思うと同時に建物の新築時に日当たりを考慮する事の重要性を改めて感じた結果となりました。

    (6)業種別

    この集計結果には実は少しバイアスがかかっています。
    業種データをしっかりと取り始めたのが比較的最近なので、この結果は最近の傾向であるとしてご覧ください。

    その上で内容を確認すると全体として感じたのは、収入や勤務地が安定的な業種に携わっている入居者の入居年数の方が長いと言う事でした。
    また、この事はこの後の分析を進める上でも重要なポイントとなってきます。

    (7)構造別

    構造別もデータを取りたかったのですが、今回分析したデータの約8割が木造と言う事で木造に偏っている上に、築年数により偏りがあり、また、徒歩にも偏りがあったので、今回は割愛いたしました。

    (8)築年別

    築年別の結果については、ほぼ想定通りの結果となりました。

    入居年数の短い人が頻繁に解約して入れ替わり、逆に入居年数の長い人は入れ替わりの頻度が低いため、年数が経過して入居者の入れ替わりが進むほど、平均入居年数が長くなるのは当然の結果だからです。
    ただ、グラフを見るとその上限が築20年くらいになるのかもしれません。

    (9)(駅からの)徒歩別

    最寄駅からの徒歩(距離)が入居年数にどのように影響するのか調べてみました。
    駅から近いほど入居年数が長くなるだろうと想定していましたが、結果は徒歩による差はほとんどなく、どちらかと言えば駅から遠い部屋の入居年数の方が長くなると言う結果になりました。

    ただ、この結果にどうしても違和感を感じたので、以下の通り徒歩と築年数を掛け合わせて再集計してみました。
    そうすると想定外の結果となりました。

    横軸の築年は、築古になるほど入居年数が長くなる事が前の結果で出ていましたが、築年ごとに徒歩分数を見ていくと、それぞれ大きな差がある事が分かります。
    この原因を私は以下の理由ではないかと考えています。

    ①築10年未満では徒歩16~20分の入居年数が短い
    新築物件は中古物件と比較して数が少ないため、新築プレミアム(その物件の最初の入居者だと言う特別感)が付いています。
    この新築プレミアムに入居者が惑わされ、その物件がたとえ駅から遠くても契約してしまい、入居した後で後悔すると言うケースです。
    実際、入居者の解約理由の中に「駅から遠いので解約する」と言う方が一定数います。

    ②築20~30年では徒歩5分以内の入居年数が長く、築30年以上になると逆に徒歩21分以上の入居年数が長い。
    これはバブル時代が関係しているのではないかと考えています。
    バブル時代(築30年以上)は景気の良さもあり、部屋の家賃が毎年のように上がって、しかも貸手市場であったため、空室が少ないので駅から遠い物件でも選択肢が無かったため賃借し、その時に入居した一定数の方たちが結果としてその後も長く住んだと言う仮説です。
    一方、バブルが弾けた後(築20~30年)は、需給バランスが逆転し、部屋の家賃も下がったため、駅近くでも借りることができ、その中の一定数の方々がその後も長く住むことになったのではないでしょうか?

    (10)(入居時)年齢別

    最後になりますが、入居時の年齢別に入居年数を調べてみました。

    10代20代とそれ以外の世代との間に平均居住年数が1年ほど違います。
    これは最初にお伝えした今回のデータが単身者主体である事と関係しています。

    20代までは就職や転職、結婚などのライフイベントが多くあり、どうしても部屋を解約するきっかけが多くなりますが、30代以上から入居する方はこういったイベントの機会が少なくなるからではないかと思います。

    ※上記のデータ数そのものは数千以上のデータ数になりますが、入居年数は複合的な要因で左右されるので、あくまでも参考として頂ければ幸いです。
    また、入居年数の算出は過去1年間の解約者と調査時点に契約中の入居者については調査時点までの入居日数として、この2つを足し合わせたものとなります。

    まとめ

    今回はテナントリテンションを考える上で、まずデータの現状分析を行ってみました。
    いくつかの要素については入居年数と因果関係がありそうです。

    9種類の分析を行いましたが、ポイントとなる項目は、法人か個人か、ファミリーか単身者か、方位、築年、そして入居時の年齢であるように思います。
    さらに言えばこの中で方位と築年はこちらでコントロールできませんが、その他の要素は人間に関わる事のため、多少のコントロールが出来そうです。

    実は少し前になりますが、20年程度同じ部屋に住み続けた入居者に、何名かヒアリングをした事がありました。

    次回は今回の分析結果と、このヒアリング結果を踏まえ、どんな人が賃貸住宅に長く住むのか、そして、テナントリテンションにはどんな方法があるのかについて、考えていきたいと思います。

    以上

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