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<12コツ目>空室対策8|空室対策としてのリフォーム工事

賃貸管理会社の空室対策について、ここ3回はリーシング業務の流れに沿って、その対策をご紹介してきました。
今回はこの流れからいったん外れて、原状回復を含めたリフォーム工事について、考えていきたいと思います。

リフォーム工事を先にご紹介しなかったのは、ここ3回のコラム、すなわち解約受付から募集広告作成のポイントについて、確認した上でリフォーム工事と言うものを考えたかったからです。

<9コツ目>空室対策5|場当たり的な空室対策ではいつまでも苦労する
<10コツ目>空室対策6|賃貸物件も鮮度が大事?
<11コツ目>空室対策7|部屋の写真は広角レンズで撮るべき?

それでは空室対策としてのリフォーム工事を考えていきましょう。

目次

    リフォーム工事の目的別分類

    まず、リフォーム工事を行う目的は次の4つに分かれると思います。

    ①原状回復

    原状回復の定義については、国土交通省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に記載されています。

    「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)

    建物は時間の経過により、人が住んでいてもいなくても、自然に劣化、損耗していきます。
    その上、ここで取り扱うのは賃貸住宅に関するものですから、賃借人に賃貸する事を前提に建てられています。従って、賃借人が入居者として普通に住んで傷んでいく部分については通常損耗として、家賃に含まれます。
    原状回復はこれを超えたものとなりますから、以下のように定義されています。「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・損耗を復旧すること」

    ②機能の維持

    給湯器やエアコン(部屋の標準設備として設置されているもの)等の設備、また扉や窓の建具などは、賃借人が通常使用が出来る事を期待して家賃を支払っているので、居住中はもちろんのこと、これから賃借人を迎え入れる空室も通常使用できなければなりません。
    これらの中で故障している設備だけではなく、老朽化や摩耗が進んでいる設備についてもリフォーム工事の一環として施工されます。

    ③外観の維持

    上記の原状回復と境目が難しい部分はありますが、台所の油汚れや、壁クロスの破れ等、通常使用が出来る場合でも、次に入る賃借人に嫌悪感を抱かせるような外観については、修復・清掃する必要があります。

    ④グレードアップ

    長期間の空室が予想されたり、実際に長期間空室が続いてしまった場合には、リフォーム工事によりグレードアップを施して、部屋の魅力を増して募集すると言う方法があります。

    家賃を上げるため?空室期間を短縮するため?

    上記で分類されたリフォーム工事のうち、空室対策としてのリフォーム工事はどれでしょうか?
    もちろん、上記①~③については当たり前のように施工しなければ、そもそも空室を埋められません。

    ただ、通常、空室対策としてリフォーム工事を行う場合には上記④のように何らかのグレードアップ工事を行う事を指します。この場合、混同されがちなのは、工事の目的が空室対策なのか、家賃をアップするためなのかと言う部分です。
    グレードアップ工事には当然それなりの費用がかかりますから、大家さんとしては、家賃を高くしてその費用を少しでも回収したいと考えます。
    しかし、空室対策として施工したリフォーム工事で家賃を上げてしまったら、おそらく空室は解消されません。

    なぜでしょうか?
    実は空室期間が長い部屋のほとんどの家賃がその時の家賃相場より高く募集している(あるいは結果として高くなってしまっている)からです。
    つまり、グレードアップ工事をして家賃を上げてしまったら、その時の家賃相場よりさらに高く募集する事になってしまうからです。

    このことを言い換えれば、空室対策としてのリフォーム工事は、その工事を施工する事によって、大家さん(または管理会社)がその時に募集している家賃(多くはこれまで貸していた家賃)を維持するために行う工事であって、決して家賃を上げるための工事ではないと言う事です。

    以上の事から、家賃を上げるためのグレードアップ工事は、家賃相場が以前と変わらないエリアであれば、それなりに可能ですが、空室率が高いエリアではハードルが相当高い事になります。

    空室対策になるリフォーム工事の種類

    ①デザインや見た目のインパクト

    通常の空室では全体に白いクロスを貼ってありますが、代わりに、一部をカラークロスにしてアクセントを付けたり、全体をグレードの高いものにして高級感を演出するものです。
    また、その一部のクロスを写真やイラストを使った目立つものにしたり、扉や照明器具を特徴のあるものにして、他の空室と異なる事を印象付けたりする事もあります。

    ②設備の付加

    これにはいくつか種類があります。

    ・利便性向上
    これは導入が一番簡単なため、多くの空室対策として利用されています。
    インターネット(無料利用)、カラーモニター付インターフォン、ウォシュレット、宅配ロッカー等、多岐に渡ります。

    ・セキュリティ向上
    セキュリティが向上する設備を追加して安心・安全をアピールするものです。
    監視カメラや人感センサー付警告灯、警報器、集合玄関のオートロック導入等がこれに当たります。

    ・特定用途への変更
    これはリフォーム工事そのものに重点がある訳ではなく、空室物件を特定の用途で利用できるようにするために必要な部分を施工するものです。
    例えば、高齢者入居を促進するために見守り設備を設置したり、ペットの飼育を可能にするためにドッグランやキャットタワー的なものを設置したり、楽器演奏を可能にするために、お部屋の防音工事を施すようなケースがあります。

    ③ブランディングや世界観の演出

    上記①に近い部分もありますが、それをさらに大きく変更する場合です。
    例えば物件名称や物件ロゴを考えたり、館銘板やシンボリックなものを造ったり、室内だけではなく屋根や外壁、共用部分にもリフォーム工事を実施して、物件全体のイメージを変えるケースがあります。

    需給バランス

    空室対策としてのリフォーム工事では、そのタイミングやエリアにおいて、需給バランスを見極める事も重要になります。
    需要の無い時や場所に、いくら魅力的なグレードアップ工事を実施しても効果はありません。

    例えば、乗降客の少ない駅からさらに徒歩でも20分以上歩くような物件に高価なリフォーム工事やセキュリティ強化の工事をしてもあまり効果はありません。

    逆に都心の駅から近い物件に大型のウォークインクローゼットを設置しても、希少性はあるので、人気は出るかもしれませんが、おそらくそのクローゼットで必要となる面積を通常の居室を広げるために使った方が空室対策になると思います。

    また、グレードアップ工事と言う規模ではありませんが、このコラムの「5コツ目」で取り上げたインターネット無料物件にした場合の効果は賃貸住宅の築年数によって大きな差が出ました。

    <5コツ目>空室対策1|データドリブンで考えたら魚屋がピッタリ来た!

    以上のように需給バランスに合わせたグレードアップ工事を心掛けましょう。

    持続性

    空室対策としてのリフォーム工事では、その持続性にも注意する必要があります。
    例えば比較的汚れの目立つ高価な壁クロスを利用してリフォーム工事を行うと、入居者の入れ替えごとに貼り換えの必要が生じてしまう事になりかねません。
    また、その費用負担を賃借人にお願いするとしても、ご納得頂く事は難しいかと思います。

    さらに工事の中で特殊な材料を使用しているような場合に、その材料の取り寄せに時間がかかったり、限られた施工業者しか施工できない関係でリフォーム工事の期間が通常より大幅に長くなってしまうと、空室期間を短縮するために行った工事であるにもかかわらず、逆に工期が長くなってしまうので本末転倒になりかねません。

    このため、将来入居者が入れ替わった場合の事も考えて施工内容を検討する必要があります。

    募集メディアとの関連性

    リフォーム工事が完了した後、どのように募集を行うのかも大切なポイントになります。

    以前、お伝えしたように賃貸住宅の空室の多くは大手の不動産ポータルサイトからの問い合わせで成約になります。
    このため、空室対策としてのリフォーム工事を実施したお部屋に不動産ポータルサイトから問い合わせて頂くためには、こだわり条件と呼ばれる詳細検索のどれかの項目につながるものにするか、インスタ映え(写真映え)するようなリフォーム工事を行って、写真を目立たせるかしなければ見つけてもらえません。
    従って、不動産ポータルサイトで募集をする場合は、これらに気を付ける必要があります。

    また、グレードアップや個性的なリフォーム工事を行った場合は、別のメディアで募集する方法もあります。
    これらがインスタ映えするのであれば、文字通りインスタグラムを含めたSNS広告や動画広告を利用するのも効果が期待できます。

    リフォーム期間

    テーマが空室対策としてのリフォーム工事ですから、空室期間をいかに短くするかと言う事が重要になります。
    リフォーム期間も入居者からの家賃収入は無い訳ですから、これも空室期間の一部となります。
    従って、このリフォーム期間を1日でも短くする事が空室対策としても重要となります。これは特にサブリース会社にとっては自らの収益にも直結する事になります。

    まとめ

    今回は空室対策としてのリフォーム工事について、考えてきました。
    これをリーシング業務の流れの中で取り扱うことには多少違和感を抱かれるかもしれません。

    しかし、リフォーム工事をただの原状回復で取り扱うのと、空室対策としてリーシング業務を補強するものとして取り扱うのでは大きく異なります。
    長期間空室になりやすい物件ほど、まずはリフォーム工事に目を向ける事が結果的に空室対策として継続的な効果を生む事につながると思います。
    以上

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