お問い合わせ
特集記事Feature

<11コツ目>空室対策7|部屋の写真は広角レンズで撮るべき?

前回は空室が発生した場合の募集メディアの選択について、ご紹介いたしました。
今回はどういった広告の内容に効果があるか、そのコンテンツ(情報のなかみ)作成について、考えていきたいと思います。

ご承知の通り、不動産の広告はその前提として誇大広告が厳しく制限されています。
この制限をクリアした上で、お部屋探しのお客様の目を引き、かつ、賃貸物件としての必要な情報が可能な限り揃っているような広告が必要となります。

目次

    不動産広告の制限

    まずは不動産広告の制限について、おさらいしたいと思います。

    不動産の広告ですから、ここに制限をかけるのは宅地建物取引業法、そして、各地の不動産公正取引協議会(例えば東京は公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会)が定める不動産の表示に関する公正競争規約が代表的なものです。

    近年、これに加え賃貸管理業法でもサブリースにかかる広告上の規制が追加されているため、管理物件がサブリースである場合、これにも注意しなければなりません。

    不動産広告の制限としての主なポイントは以下の通りです。

    誇大広告の禁止

    ここには言葉通りの「大げさに表現」と言う意味の誇大広告だけでなく、以下のようなものを含みます。

    ・おとり広告
    存在しない物件だけでなく、存在していても実際に取引できない物件を広告に掲載する事は禁じられています。一番多いケースは成約済みの物件であるにもかかわらず広告掲載を終了していないケースです。
    このケースはこれが意図的でなくても罰則の対象となります。

    ・不当な二重価格表示
    実売価格に比較対照価格を併記する場合等において、消費者に誤認させるような表現は禁止されています。

    ・不当な比較広告
    恣意(しい)的に自らに有利な選択基準など、不公正な基準によって比較された広告は禁止されています。

    ・禁止用語
    根拠なく「最高」「日本一」「格安」「破格」等を使用できません。

    ・その他①
    言葉の定義が決まっていたり、ルールが決まっているものがあります。
    「新築」「LDK」などは定義が決まっています。

    ご説明するまでもないですが、駅から徒歩の表現は分単位で、1分80mとなっており、端数が生じた場合は切り上げと決まっています(徒歩30秒と言う表現はダメ)。

    ・その他②
    記載しなければならないものが記載されていない場合も規制の対象になります。

    (1)礼金や敷金だけでなく、損害保険や家賃保証会社の加入が条件になっている場合はその旨だけでなく費用も記載する事が必要です。

    (2)更新料だけでなく、家賃保証会社の更新時に費用がかかる場合はこれも記載が必要です。

    (3)その他、鍵交換費用・24時間サポート費用・ルームクリーニング費用・除菌費用等が契約の条件となっている場合にもその旨だけでなく費用の記載も必須となります。

    広告開始時期の制限賃貸の場合に実際のケースはあまりありませんが、新築物件で建築確認申請中やその前の段階で広告を出す(青田売りならぬ青田貸し?)事は出来ません。

    その他

    貸主からの事前承諾が必要である事や、取引態様を明示して自らの立場を明確にする事が求められています。

    アピールと正確性

    よく賃貸管理会社間で議論される話題の一つとして、募集する部屋の広告を出来るだけ良く見せてお客様に期待させるのが良いのか、それとも出来るだけ正確に見せるのが良いのかと言う議論があります。

    具体的な例としては、写真が分かりやすいと思います。
    良く見せる派は広角レンズで撮影して少しでも部屋を広く見せようとします。

    正確に見せる派はもちろん標準レンズです。
    良く見せる派は部屋の印象が良く見える部分の写真に偏ります。

    正確に見せる派はもちろん印象が悪くなる部分も掲載します。
    正確に見せる派がこうする理由にはその次のステップ「内見(内覧)」との関係が影響しています。

    そこで、両派の言い分を確認したいと思います。

    良く見せる派の言い分

    ・ただでさえ空室物件が大量にあるのに、少しでも良く見せて目立たないと、そもそもその部屋の空室に気付いてもらえない。

    ・お客様が部屋を選ぶ基準にはその部屋の仕様や立地だけではなく、実際にはその部屋に住んだ時の印象も重要である。このため、出来るだけ良い印象を頭に置いてから住み始めてほしい。

    正確に見せる派の言い分

    ・お客様がお部屋の広告を見て良い印象を持ってから、期待の膨らんだ状態で内見した際、実際の部屋の印象が、より悪い方に傾きやすい。つまり、がっかりさせてしまった事でかえって成約率が下がる。
    ・仮に内見をされないで入居された際も同様で、広告のイメージと異なる事でクレームになりやすい。結果としてテナントリテンション(長期入居)対策としてみると逆効果になる。

    どちらの言い分ももっともだと思います。
    私の経験では良く見せる派には賃貸仲介経験者が多く、正確に見せる派には賃貸管理実務のみをやってきた方が多いように思います。

    どちらが正解と言う事ではありませんが、私自身は良く見せる派に近い考えです。
    ただし、都合の悪い部分もそれなりに出した方が良いと思います。
    悪い部分を出す理由は、実際に内見時や入居時のお客様のがっかり感を防ぐだけではなく、都合の良い事だけが記載されている広告を疑う顧客心理も考慮した方が結果に出るからです。

    また、空室市場が供給過多の状況にあるため、お客様は物件だけではなく、管理会社や仲介会社の信頼性を見る目も以前より厳しくなっていると思うので、あえて悪い部分も出す事は重要だと思います。

    そして、良く見せる派を支持した理由は、そもそも広告をする目的がお客様に最初の行動、つまり、電話やメールで内見の予約をしてもらう事にあるからです。正確な情報を提供する事よりも、お客様に行動を起こして頂く事がより大きな目的になるからです。

    ちなみに正確に見せる派の言い分にあったテナントリテンション(長期入居)的にマイナスであると言う視点は、実際にはそれほど入居期間に差が無い事が以前のコラムでご紹介した調査で明らかになっています。

    画像や映像

    日本の空室は白いです。

    一般に海外の賃貸住宅は天井や壁の内装もそのままにして次の募集をする事も多く、その色も白だけでなく様々で日本とは大きく異なります。
    これに対して日本の空室は、少しでも汚れていれば壁紙を貼り換え、それもほとんどが白です。
    これには日本人の特性として新品が好き(使用感のあるものを好まない)な事に一因があるように感じます。

    空室が白である事は、想像力の豊富なお客様にとっては、白い空室を見る事で自分がそこに住んだ後のいろんなイマジネーションが広がるため、望ましい事だと思いますが、それ以外の多数のお客様にとっては、白い事で清潔感は感じるけれども、入居後の具体的なイメージは湧きにくいのではないかと思います。

    一方でメディアは日々進化し、それぞれの広告に写真を多く掲載する事ができ、動画配信も簡単にできるようになりました。
    だからと言って、この広告に延々と白い部屋の写真を掲載したり、動画を投稿してもあまり効果は無いと思います。

    このため、今後必要となってくるのは、賃貸管理会社や賃貸仲介会社がお客様に空室(白い部屋)に入居して頂いた後のイメージを、広告を通じてプレゼンテーションする事だと思います。
    実際、いくつかの会社がAR(拡張現実)技術を使って、仮想で家具を配置したり、

    照明を追加する事で、より入居したあとのイメージをリアルにできるツールの提供が始まっています。
    今後、この技術以外にも入居後の具体的なイメージを表現できる様々なツールが出現するのではないかと考えています。

    ただ、新しい技術(ツール)さえ使えばいいのではなく、どういったターゲットに何をプレゼンテーションするかと言うような企画力がより重要になってきます。

    その部屋に住んだら、こんな生活が出来ると言う具体的なイメージをお客様に持って頂く事で、他の白い部屋との差別化が図れるのではないでしょうか?

    ストーリー

    上記の画像や映像のプレゼンテーションにもつながる事ですが、お客様に入居後の具体的なイメージを持って頂く方法として、ストーリーを想起して頂く方法があります。

    ストーリーと言っても、起承転結があるようないわゆる物語の事ではなく、賃貸物件に住んだ時の様々な場面を想起してもらうと言う事です。
    これを文字(ジャーナル的に)表現します。

    例えば、お客様がその賃貸物件に住み、朝起きて窓を開けた時の空気を感じたり、その部屋で音楽を流して、美味しいコーヒーを飲むと言うように五感に伝わるようなイメージです。

    これらを不動産ポータルサイトで表現するのは難しいと思いますが、SNS等を使えば可能になります。

    もちろん、これを実現するためには、これまでにご説明した不動産広告の制限をクリアする事や、そもそも費用対効果が合うのかと言う課題はあります。
    しかしAIの登場などで作成の難易度や作成費用は劇的に下がっているので、課題はクリアできると思います。

    まとめ

    今回はコンテンツ作成のポイントについて、ご紹介いたしました。

    コツとしては、広告の制限を守った上で、やはり広告は目立つ事が重要で、特に「白い」部屋を画像や映像、そしてストーリーを使って、いかに活きている部屋に見せるかと言う事が成約率を上げ、空室を減らす事につながると思います。

    技術的には新しい技術がこれからもどんどん登場するため、外注するか内製化を図るかを別にして、新しい技術の知識を得続ける事自体も大変な時代になります。

    ただ、これをあきらめ、ただ不動産ポータルサイトに掲載だけをして、家賃の上下だけで成約率を調整するのではいずれオーナー様が離れて行ってしまう時代が来ると思います。

    以上

    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    CONTACT

    GMO ReTechでは、賃貸運営を楽にする
    をミッションにしております。
    賃貸業務でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に関して
    お気軽にご相談下さい。

    キーワードKeywords
    キーワードKeywords
    業務効率化や売上アップにつながる「お役立ち資料」をチェック!無料ダウンロード
    無料でWeb相談
    無料ダウンロード