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<7コツ目>空室対策3|仲介担当者によって入居者の入居期間は倍以上異なる!

今回は前回に引き続いてテナントリテンション(入居者の保持)について、考えてみたいと思います。

テナントリテンションとは → https://chintaidx.com/media/榎のコツから覚える賃貸管理6/

前回のコラムでは長く住む入居者をデータでご紹介しましたが、今回はこの結果に加えてこれ以外の傾向も加え、どんな人が長く住むのかを考えたいと思います。

目次

    前回確認したデータの傾向

    まず、前回ご紹介したデータの傾向を確認したいと思います。

    ①法人契約と個人契約では法人契約の方の入居期間が長い
    ②ファミリー向けか単身者向けではファミリー向けの方の入居期間が長い
    ③入居時の年齢では30代以上の方が、それ以下よりも入居期間が長い

    以上が主な傾向でした。

    その他の様々な要素が与える入居期間の傾向

    また、以前実施した調査によって上記以外にいくつかの傾向を発見しました。

    (1)入居月では春に入居した入居者の入居期間が長く、秋に入居した方が短い

    以前の調査では3月に入居した入居者は9月に入居した方より26%も入居期間が長いと言う結果が出ました。

    (2)出身地(前住所)では東高西低

    あくまでも関東地方の管理物件での結果になりますが、入居者の前住所(出身地)では北海道や東北地方の出身者の入居期間が長く、中部地方から西のエリアは中国地方を除いて入居期間が短いと言う結果が出ました。

    さらにこれより入居期間が短かったエリアがあり、それは前住所がお膝元の関東地方でした。

    この関東地方を都県別に調べてみると、東京都の入居期間がダントツに短く、東京都以外の県の平均値より24%も短いと言う結果が出ました。

    (3)仲介会社による差がある

    入居者をご紹介頂いた賃貸仲介会社を調査すると、賃貸仲介会社によっても入居期間に大きな差が出ました。
    さらにこのデータを分析していくと実は仲介会社と言うより、その仲介会社に所属する担当者による差がこの大きな原因になっていると言う事が分かりました。
    しかも担当者によって平均入居期間に2倍以上の差がありました。

    もちろんここでは個別の社名や担当者名を挙げる事は出来ませんが。

    ご紹介頂いた入居者の入居期間が短い担当者の傾向としては、日頃から多くの入居者をご紹介頂いている担当者の中にこのタイプが多かったようです。
    管理会社として多くの入居者をご紹介頂く事自体は大変うれしいのですが、対応の難しさを感じました。

    また、賃貸仲介会社の所在地では、管理物件に近い賃貸仲介会社からご紹介頂いた入居者の方の入居期間が長く、管理物件から遠いほど短いと言う結果も出ました。

    長期入居者インタビュー

    次に、長く住む入居者の方々はどんな(性格の)方なのか?を知るために、許可を頂いた長期入居者数名にインタビューを実施しました。
    ほとんどの方の入居期間が20年以上と言う超長期の入居者です。

    インタビュー内容の詳細は省きますが、結果として、その傾向は男女で若干異なっていました。

    男性は静かな環境を好み、家賃については特に問題を感じておらず、几帳面ではあるけれども、それが周りに影響を与えるような神経質なタイプではなく、むしろ謙虚な方が多いイメージでした。

    女性は特に静かな環境にこだわっておらず、また几帳面なタイプではありませんが、家賃については明確に安くしてほしいと言う希望がありました。

    また、男女共通の項目としては、その入居しているほとんどの物件の専有面積が15㎡前後と言う比較的狭いワンルームでしたが、その狭さに対しての不満はなく、職場の近くである事が長く住んでいる大きな理由となっていました。
    性格的には自身の品物か管理物件の設備かを問わずモノを大事にするタイプで、自分の興味のある事以外の情報にはあまり情報収集に積極的なタイプではありませんでした。

    性格検査(エゴグラム)

    さらに超長期入居者の性格を知るために、さまざまな種類のある性格検査の中からエゴグラムを選んで、入居者がどのタイプに当てはまるか推測もしてみました。

    エゴグラムは心的エネルギーを5つの自我状態に分け、グラフ化するものですが、実際に各々の入居者にテストする事は難しいため、今回はインタビュアーの感想でその傾向を推測しました。

    5つの自我状態とは以下の通りです。

    ①CP(Critical Parent:支配性)
    厳しい心。自分の価値観を正しいものと信じて譲らず、責任を持って行動し、他人に批判的である。
    この部分が低いと、怠惰な性格になる。

    ②NP(Nurturing Parent:寛容性)
    優しい心。愛情深く、他人を思いやって行動し、世話好きで保護的で親切である。
    この部分が低いと、冷淡な性格になる。

    ③A(Adult:論理性)
    論理的な心。現実を重視しており、知的で計算力が高く、聡明で頭脳明晰で合理的である。
    この部分が低いと、非合理的な性格になる。

    ④FC(Free Child:奔放性)
    自由奔放な心。明るく好奇心旺盛でユーモアがあり、自我中心性で自己中心的である。
    この部分が低いと、閉鎖的で暗い性格になる。

    ⑤AC(Adapted Child:順応性)
    協調性的な心。他人からの評価を気にし、言いたいことを言わずに我慢してしまい、従順で遠慮がちである。
    この部分が低いと、マイペースな性格になる。

    ※出典:『TA today : 最新・交流分析入門』実務教育出版

    結果は超長期入居者の男性はNP(寛容性)とFC(奔放性)が強く出て、女性はA(論理性)が強く出ると言う結果になりました。

    エゴグラムは比較的有名な性格検査ではありますが、その妥当性はあまり高くは無いようですので、あくまでも傾向を知るための参考としてご覧頂ければと思います。

    長く住む人とは?

    さて、これまでさまざまな調査結果について報告をしてまいりましたが、これらの結果と、その他の調査結果を含め、私なりに賃貸住宅に長く住む人とはどんな人なのかをまとめてみました。

    以下がその結果です。(主に単身者向けタイプ)

    (1)毎年の年収に増減が少ない人

    前回コラムの勤務先の業種調査にその傾向が表われていましたが、毎年の年収が上下しやすい業種の方の居住年数は短くなる傾向にあります。
    また、毎年のように報酬が上がっていく人は、もっと広い部屋に引っ越したり、物件を賃借しないで所有する方向に進み、退職や転職で報酬の下がった人もまた、家賃の安い物件に引っ越されてしまいます。

    つまり、この結果を踏まえると一般的に良いお客様とされる年収が上がっていきやすい業種の入居者は長く住んで頂けない傾向にあるため、空室リスクから見た場合、こういったお客様はありがたいと言えないかもしれません。

    (2)住むことにあまりこだわりのない人(他に興味のある人)

    これは超長期入居者へのヒアリング時にたびたび経験しましたが、何かに熱狂的に興味のある人(特に印象が強かったのはプロ野球のあるチームのファン)はそちらにお金をかける傾向があるので、住むことそのものにはあまり興味が無いようです。

    引越自体にもお金がかかりますし、そこに時間もかけたくないようです。

    (3)住んでいる場所から離れられない理由のある人

    この理由で典型的な例は入居している物件が勤務先の近くであると言う理由です。
    その他にも入居している物件が介護をしているご家族の近くにあったり、同居しているお子様の学区内(この場合は卒業が解約理由となりますが)である事が引っ越しをとどまらせる理由となっているようです。

    さらにこの離れられない理由そのものを賃貸管理会社から仕掛ける(理由をつくる)事も可能です。
    その具体例(コミュニティ)については次回、ご紹介したいと思います。

    (4)周辺環境に満足している人

    ある調査の結果ですが、入居者の物件選択の3大要素は家賃・(勤務先から等の)利便性・周辺環境です。
    周辺環境は3大要素の一つですから、その満足度が高ければ高いほど、解約をする動機が低くなります。
    ただ周辺環境に満足すると言う理由だけでは、そこまで長期入居にはつながらないと思いますが、この他の長期入居の理由を補足する大きなポイントにはなると考えています。

    (5)モノを大切にする人

    これは超長期入居者へのインタビューの際にたびたび経験した例ですが、これがなぜ長期入居になっているかと言う理由について、私はその入居者の気質にあるのではないかと考えています。
    それはいわゆる職人気質です。
    昔気質(むかしかたぎ)の大工さんや料理人は道具を大切に扱います。
    どちらかと言えば頑固な性格で、新しいものを取り入れたがりません。
    つまりこう言った気質が新しい住居や環境に変えたがらない(つまり引っ越しをしない)ので、結果としてこういった職人気質の方が入居すると長期入居につながっているのではないかと思います。

    (6)はじめて賃貸住宅に住んだ人

    上述した出身地(前住所)のところで述べたとおり地方から初めて関東地方(と言うより東京圏と言う認識の方が近いですが)に引っ越してきた入居者の入居期間が長く、前住所が東京(から東京への引っ越し)の入居者の入居期間が短い事にヒントがあると思います。

    これはアンカリングの影響ではないかと考えられます。
    アンカリングは認知バイアスの一種で人々が初めての経験や選択に対して強いイメージを持ち、その後もその経験や選択を重視する傾向がある事です。

    具体的な事例としては、初めて車を購入した人はその後も同じメーカーを選ぶ傾向が強かったり、初めて作ったクレジットカードはその後も長く利用すると言った例が挙げられます。
    もちろん、初めて住んだ物件に良い印象を持ってもらう事が前提となりますが。

    まとめ

    今回は賃貸住宅に長く住む人について、少しマニアックに考えてみました。

    長く住む人のペルソナ(典型的なユーザーの姿)がイメージ出来たのではないでしょうか?

    次回はいよいよテナントリテンションの施策について考えてみたいと思います。
    テナントリテンションの施策としては大きく3つの方法があると思っています。

    長く住んでいただくためのサービスを充実させる方法、これと裏腹に居住期間の短い入居者に制限をかける方法、そして、そもそも長く住むタイプの入居者に入居して頂く方法です。

    ぜひご購読下さい。

    以上

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