電子契約とは?仕組みやメリット、おすすめのサービス比較を紹介
不動産契約の際に利用できる電子契約の導入は増加傾向にあります。これまで不動産契約は店舗に足を運び実施するのが一般的でしたが、コロナ禍の外出自粛の影響を受け、足を運ばずに契約できる「電子契約」に注目が集まっています。
当記事では、電子契約に関するポイントや導入により発生するメリット・デメリットについて解説します。近年の情勢を受けてIT化の検討を前向きに進めている方はぜひ参考にしてください。
電子契約とは?
『電子契約』とは、電子化した契約書(電子契約書)をインターネット上で取り交わして電子署名を施すことで契約を締結する方法のことです。従来、契約する内容を記載した紙面を取り交わし、押印することで締結していた契約書に比べ、物理的なやり取りが少なくなる点が大きなメリットです。オンライン上で完結できる電子契約は、IT化を促進する現代にマッチした契約の方式といえるでしょう。
紙の契約書に慣れていると導入のコストがかかったり、従業員が受け入れ態勢になっていなかったりして大変な面もあります。しかし、近年では導入がしやすいようなクラウドシステムを構築したサービスの種類も増えてきており、自社に合った導入方法で手軽に導入しやすくなってきています。
電子契約に関する宅建業法改正が2022年5月までに完了
2015年8月に行われたIT重説の社会実験の開始から約7年。ついに電子契約に関する宅建業法の改正が完了します。初めの頃は、書面を郵送して実際にサインをもらってからでないと不動産の契約ができませんでしたが、2022年5月までには電子媒体の契約書を使って契約を締結することが可能になるでしょう。
2021年5月までに施工される改正の内容は以下の2点です。
- 重要事項説明書と契約書を電子文書で渡せるようになる
- 宅地建物取引士の押印が不要になる
以上のように押印が不要になり、重要事項説明書が電子媒体で渡せるようになれば、対面で取引をする必要がなくなり不動産業界の活動範囲が大きく広がるでしょう。これにより、不動産を探す一般の方の取引のしやすさが向上して、不動産事業者と顧客の双方にとってメリットが発生する期待が見込めるでしょう。
電子契約における電子署名の仕組み
紙の契約に比べて浸透しきっていない電子署名ですが、有効性は法律で明記されています。電子署名がされた電子文書については、押印した契約書と同様の効力が認められます(電子署名法第3条)。
しかし、単にデジタルファイルを取り交わすだけでは、法的に有効な契約とは認められません。電子ファイルの契約書に、『電子署名』と『タイムスタンプ』を付与する必要があります。この2点をもって有効な契約成立とみなすべく、容易に改ざんができないような制度が法律で定められています。電子署名やタイムスタンプが、信頼できる第三者により証明されたものであればあるほど、電子データの証拠力は高くなり、裁判などでも有効な証拠として認められやすくなります。
※関連資料:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A
電子証明書の発行
電子署名が正当なものかを証明するのが『電子証明書』です。『電子証明書』は、認定された民間機関が発行でき、誰が作った電子署名なのかを特定可能になります。紙の契約書に押印してPDF化しただけのものでは、この要件には該当しません。単に契約書を電子化(PDF化)しただけで、電子署名の仕組みを利用していない場合には、有効な契約として認められにくく、いざ法律上のトラブルが起きた際に、法的な根拠とすることが難しくなります。
タイムスタンプの付与
『タイムスタンプ』とは、電子契約書を作成した時刻を保証する仕組みです。電子署名では『誰が』『何を』契約したかを証明できますが、『いつ』という時間情報を証明することはできません。それを技術的に補完するのがタイムスタンプです。
タイムスタンプはデジタル署名と同様の技術を用いて、タイムスタンプに記録される時刻以前に電子データが存在したこと(存在証明)と、その時刻以降に電子データが改ざんされていないこと(非改ざん証明)の2点を、客観的に保証しています。紙の契約書の場合には、単に契約書内に締結日が書いてあればよいので、紙の契約書を意識していると、勘違いしてしまうかもしれません。紙の契約書をPDF化しただけではタイムスタンプの効果はないのです。
電子署名とタイムスタンプが揃ってはじめて、『誰が』『何を』『いつ』契約したのかを証明でき、電子契約が安全に成立することになります。
電子契約と書面契約の違い
電子契約と書面契約ではそもそもアナログとデジタルという面で根本的に違いますが、利用していく中で最も違いを感じやすいのは『保管方法』でしょう。税務関連の帳簿書類には7年間の保管義務があり、それらを書面で保管しておくとかなりのスペースが必要になってきます。しかし、書面ではなく電子的に保管することが出来れば、PC上に記録するだけでよくなるので保管場所を確保する必要が無くなります。
以下はその他、電子契約と書面契約の違いを一覧にした表です。
書面契約 | 電子契約 | |
形式 | 紙・文書 | 電子データ |
押印 | 印鑑・印影 | 電子サイン |
本人性の担保 | 印鑑証明書 | 電子証明書 |
安全性の担保 | 割印・契印 | タイムスタンプ |
保管方法 | 書棚 | サーバー上 |
電子化によって契約書をペーパーレス化し、バックオフィス業務を減らせるのが電子契約の強みと言えるでしょう。
電子契約が持つ法的効力
電子契約は正しい使い方をして証拠力のあるものとして認められれば、法的に有効力があるものとして認められます。実際に『電子署名法第3条』では、適切な電子署名がされた電子文書は印鑑を押した紙の契約書と同等の効力があるとしています。
ただし、紙の契約書と違って電子契約書の場合は改ざんのリスクがあるので、法的な有効性を維持するために完全性が必要とされます。完全性を示すために必要となってくるのが電子署名とタイムスタンプです。これら2つが電子契約書とセットになっていることで初めて法的な効力を発揮します。
電子契約導入のメリット
電子契約を導入することで以下のようなメリットを受けることが出来ます。
【電子契約導入のメリット】
- 業務効率化
- 紙代・印紙税などのコスト削減
- 利用者の利便性向上
- 社内のペーパーレス化
電子契約にすることで印鑑を押す手間が省けたり、確認作業でわざわざ他の社員に書類を回す労力を削減したりできます。また、電子契約と書面契約の違いとして保管方法があり、電子化することによって書類等の保管場所が必要なくなるのも大きなメリットの一つです。
業務効率化
電子契約を導入することで契約書の捺印を電子化できるため、捺印のために出社したり顧客に来店してもらったりしていた時間を大幅に削減することが出来ます。具体的に、不動産の売買や賃貸の契約の際に必要とした、対面や郵送での紙の受け渡しや、複数の関係者間で契約をする際の煩雑なやりとりなどの手間を減らすことが可能になります。
電子契約は一般業務の効率化を実現するだけでなく、従来まで発生することのあった『契約書の締結の遅れ』の対策にも繋がるので、顧客にとっても自社にとってもメリットが大きいシステムです。
紙代・印紙税などのコスト削減
電子契約を行う場合は、印紙税を支払う必要がありません。印紙税法の第2条には『文書等の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務を負う』との規定があるものの、電子契約での電子データのやりとりは『課税文書の作成』には該当しないと判断されています。
電子契約であれば書面契約のように用紙を準備する必要がありませんし、収入印紙を貼る必要もなくなります。『印紙税法』に基づくと、課税対象となる文書20項目を作成する場合には、課税をされる決まりがあり、課税額は数百円から数十万円と幅広く決められております。これらの課税が電子契約の場合は発生しないため、コストの大幅な削減を実現します。
利用者の利便性向上
電子契約で取り交わした内容は、インターネット上で確認することが出来ます。電子契約を導入していれば不動産賃貸借契約の更新のタイミングで、契約内容を確認する際に書類を探す手間を省くことが出来るでしょう。これは顧客にとっても同じことで、家の中で保管していた契約書をわざわざ探す手間を省けるので、双方にとって利便性が向上するシステムとなります。
社内のペーパーレス化
電子契約を導入すれば、従来使っていた書面の契約書のほとんどをデータ化することが可能です。電子契約は保管場所がクラウドサーバー上になるので、社内のペーパーレス化を促進します。ペーパーレス化が進むと、書面の保管場所が必要なくなるので社内の空間も広く使いやすくなり、快適な職場環境づくりの援助にもなります。
また、紙を無駄に使わずに済むことで環境面にも配慮した取り組みへと繋げることも可能ですし、近年注目されてきているSDGsの取り組みとしても意味があるものとなるでしょう。
電子契約導入のデメリット
電子契約には業務効率化やペーパーレス化による保管場所の確保など多くのメリットがありますが、一方で以下のようなデメリットもあります。
【電子契約導入のデメリット】
- 導入に関わる工数の増加
- システムトラブルによる業務停止
デジタル化する分、機械の不具合が発生したりシステムを利用するための知識が必要になったりします。従業員によっては導入を嫌がる可能性もあるので、それらを見据えて事前に教育や研修を済ませておくことが大切になってくるでしょう。
導入に関わる工数の増加
電子契約を導入後、業務の一部として馴染ませるには利用する人が使いこなせるように研修・教育をする必要があります。従来のやり方から一変して新しいシステムを導入すると、それを利用することになる社員の方たちは受け入れるのに心理的な抵抗が生まれたり、利用できるようになるまで時間がかかってしまったりします。
さらに、書面と電子では管理方法も変わってくることから、管理方法についても新たに見直す必要が出てくるでしょう。電子化が進むほどマニュアル化は避けられない追加業務なので、効率が上がる反面それを立ち上げるための工数がかかる事は把握しておいてください。
システムトラブルによる業務停止
クラウドなど外部のサービスを使う場合は、システムトラブルによる不具合が発生して業務が停止してしまうリスクがあることも知っておかなくてはいけません。電子化に伴いシステムトラブルのリスクはついて回る課題点ではありますが、基本的にシステムの提供会社がトラブルの際は対処してくれます。
また、外部のサービスでは契約書等の個人情報が含まれた書類関係も全てクラウドの方へ保管されるので、セキュリティ面に問題が無い会社のシステムを選ぶということも大切になってきます。もちろん、ITのシステムを利用するうえで『絶対に安心のシステム』は無いので、定期的にバックアップを取ったり、自社のPCにデータを残したりして対策をするように心がけると良いでしょう。
おすすめの電子契約サービス3選
これから電子契約の導入を検討している方は、『操作性・(アフター)サポート・コスト』の面を意識して決めることをおすすめします。機能性なども大切ではありますが、まず社内で即戦力として使えるように従業員の抵抗感なく使えるシステムを導入すべきです。以下は、それらを踏まえて厳選した3種類のおすすめのサービスです(それぞれの数字は2022年2月末時点での情報です)。
- 弁護士ドットコム株式会社「クラウドサイン」
- GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社「電子印鑑GMOサイン」
- 世界180カ国、43言語(※)で署名を利用できるDocuSign社の「DocuSign(ドキュサイン)」
クラウドサイン
引用:クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス (cloudsign.jp)
日本の法律に特化した弁護士監修のクラウド型電子契約サービスです。さまざまな外部サービスと連携でき、使いやすいのが特徴で、多くの企業や自治体に活用されています。
このサービスでは、契約交渉済の契約書をアップロードし、相手方が承認するだけで契約を結ぶことができます。書類の受信者はクラウドサインに登録する必要が無く、契約のスピードアップやコストの削減を実現します。
【クラウドサインの特徴 】
|
DocuSign(ドキュサイン)
引用:ドキュサイン|電子署名、デジタル・ビジネス、ペーパレスソリューション (docusign.jp)
DocuSignでは、一連のアプリケーションとインテグレーションを活用することで、全ての合意プロセスを自動化できます。DocuSignの電子署名は100万社以上のお客様と数億人のユーザーにご利用していただけている点が強みです。
また、世界180か国以上、44言語で署名できることから、世界中で信頼されているソリューションとなっています。
【DocuSignの特徴 】
|
電子印鑑GMOサイン
引用:電子契約なら電子印鑑GMOサイン|導入企業数No.1【50万社】 (gmosign.com)
電子印鑑GMOサインは、『電子文書 + 電子署名』で締結するクラウド型の電子契約サービスです。従来の紙ベースの契約書の製本や郵送などの作業を省けるため、契約スピードが劇的に向上します。
また、印紙税や郵送費、保管費用などのコストを削減でき、契約締結や管理に関するコストを大幅に削減することが可能です。GMOサインは同水準の他社サービスと比較しても、1送信あたりの送信料をほぼ半額に抑えつつ、標準で利用できる機能が充実しています。
【電子印鑑GMOサインの特徴 】
|
まとめ
他業種と比べても閉鎖的な情報展開、アナログな業務内容などのようにITとは遠い存在とされてきた不動産業界ですが、IT化は近年徐々に進められてくるようになりました。IT化が進む中で注目されているのが『電子契約』です。
電子契約は、不動産の売買・賃貸に関する契約を電子化した契約書で取り交わすことが出来るシステムです。電子契約化が進むと、契約書の管理がしやすくなり業務効率が高まります。さらに、利便性が向上することで契約スピードが速まるので、自社だけでなく顧客も喜べるシステムとなっています。
当社では、無料でダウンロードできる資料『不動産賃貸経営における電子契約の活用ポイントを解説!』をご提供しています。
今後、リモート化や利便性の向上が謳われる時代になればなるほど電子契約のシステムは重宝されるようになってくるので、今まで検討していた方もぜひ前向きに導入を再検討してください。
関連記事:不動産賃貸借契約の電子化のメリット~社会実験を経て広がる「オンライン化」導入の見通し
この記事のポイント
- 電子契約に関する宅建業法改正が2022年5月までに完了!
2022年5月までに電子契約に関する宅建業法改正が完了することで、非対面での不動産売買契約や賃貸契約が実現します。これにより、不動産事業者の効率が大幅に向上するだけでなく、顧客側も店舗へ行かずオンラインで入居申し込みができ、遠方でも足を運ばずに契約を済ませることが可能になります。
- 書面契約が電子契約に変わることで大幅な業務効率化が実現!
電子契約で契約ができるようになることで、対面でのやり取りが不要になるだけでなく、印刷や紙へ押印する手間が省けたり、今まで使用していた書類の保管が不要になるメリットがあります。
- 利便性は高まるが、周りの理解や協力も必要!
従来のやり方が定着している従業員にとって、新たなシステムの導入は負担になることも…。そのため、しっかりサポートをすることが大切です。システムに関する研修を設けたり、わからなかったらすぐに聞けるような環境を作り、電子契約導入への手助けを行いましょう。