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<20コツ目>「水漏れ」「雨漏り」「水詰まり」その1

前回のコラムでは入居者からのお電話で、「水が出ない」というご連絡を頂いた場合の原因について、ご紹介いたしました。
水に関連するトラブルは、「水が出ない」と言う事と、その対角に「水が漏れる」「水が詰まる」等のトラブルがあります。

今回から数回に渡って、これに「雨が漏れる」と言うトラブルを加えて「水漏れ」「雨漏り」「水詰まり」について考えてみたいと思います。

まずは雨漏りから。

 

目次

    原因

    水漏れと聞くと水道や下水道の配管から水が漏れるのを指す事が多いと思います。
    これに対して雨漏りは文字通り雨が漏れる事を指します。
    ただ、賃貸管理会社に連絡をしてきた入居者からすれば、例えば天井から水がしみてきた時に、その水が雨なのか上下水道なのか判断が付かないケースもあります。
    賃貸管理会社は両方の可能性を考えながら、原因を探る必要があります。

    ①屋根・外壁のひび割れ

    建物は築年数が経過するに従い、屋根や外壁が傷んできます。
    雨が漏れないように当然防水措置は施されていますが、永久的なものでは無いため、耐久年数を超えるとその効果は徐々に薄れてきます。
    屋根や外壁の多くには防水塗装が施工されていますが、時間が経つと塗装面がひび割れを起こし、ひび割れの位置にもよりますが、ここから雨が建物内に入って雨漏りとなります。
    外壁材には比較的耐久性の高いサイディング(パネル)のような材料でひび割れを起きにくくするものもありますが、その場合でもパネルの継ぎ目のコーキング剤が劣化すると隙間ができ、その継ぎ目から雨が浸み込みます。

    私の経験では、これらの屋根が外壁の中でも斜壁(傾斜壁)と呼ばれる外壁が斜めになっている部分(マンションのバルコニーの下部等に多い)は特に雨漏りが発生しやすいと思います。
    斜壁は防水性の高い屋根と違って基本的に壁材なので、屋根ほど防水性が高くないため、雨が漏れやすくなるからです。

    ②陸屋根の防水シート

    マンションの屋上は、ほとんどがアパートのような傾斜した屋根ではなく陸屋根と呼ばれるフラットな屋根となっています。このフラットな部分には雨水が浸み込まないように通常、防水シートが敷かれています。
    さらにフラットな屋根とは言っても、雨が降っても水が溜まらないように弱い傾斜があって、この傾斜によって屋上の排水口に雨水を集め、ここから雨どいを伝って下へ流す構造になっています。

    水は通常、傾斜が強いほど早く流れます。
    ところがマンションの屋上は傾斜が非常に弱いため、水の流れが遅くなり、屋上で発生したゴミ(飛んできた砂や草木・ゴミ、鳥のふん等)をうまく流せず、結果として屋上の排水口はよく詰まります。排水口が詰まると、詰まったあたりから雑草が生えはじめ、劣化した防水シートを雑草の根が付き通し、ここから雨漏りが発生する事になります。
    雑草が生えるくらいですから、このような建物の屋上はいつも水が溜まっており、防水シートの裂け目から発生した隙間に時間をかけて雨水が浸み込むため、大量の雨水がいつの間にか雨漏りを発生させることになります。

    雨の翌朝、高いところからマンションの多く立ち並んでいる街を見回すと本当に多くの陸屋根にプールのように水が溜まっているのを見る事が出来ます。

    ③窓

    ・窓そのものは、サッシとして一体化された商品として、基本的に防水性が高くなっています。
    しかし、このサッシの一番外側の窓枠部分と建物本体との間、特に外壁側のほとんどはコーキングを施して防水しているケースが多く、このコーキング剤の劣化によりひび割れを起こし、ここから雨漏りが発生するケースがあります。

    ・天窓(トップライト)や傾斜窓など、傾斜している屋根の途中に取り付ける窓(ロフト付き物件などで見かけますよね)も、雨が漏る事があります。
    原因は上記のコーキング剤の劣化だけでなく、そもそもサッシ自体の劣化により、本来、防水性の高いはずのサッシ本体から雨が漏れてくる事もあります。

    ④ダクト類

    建物にはいくつかのダクト(建物の内外に空気を通す配管設備)があります。
    具体的には換気扇(台所、トイレ、浴室)の空気を外に逃がすダクトやマンションの内壁にあるような24時間換気のためのダクトなどです。
    これらのダクトは雨漏りを防ぐために外壁側にベントキャップが付いていたり、弁によって雨の侵入を防いだり、室内側を少し高くして勾配によって雨が入り込まないように工夫されています。

    ところがこれらの設備が破損したり、何らかの原因(あるいは施工不良)で逆勾配になる事により雨漏りが発生します。
    特に台風のように風圧が非常に強くなると、設備が破損せず、勾配に異常が無いような場合にも、雨漏りが発生する場合があります。

    ⑤その他の要因

    上記でも少し触れましたが、台風や大雨、地震等の自然災害は雨漏りの発生するきっかけになります。また、建築当初の施工不良や施工ミス、設計ミス等も雨漏りの原因になる事があります。

    影響

    雨漏りが発生したあと、雨漏りだけ止めれば問題が解決する訳ではありません。
    その影響について少し整理してみました。

    ①内装や物品の汚損

    雨漏りの直接的な被害としては、内装に水がかかり汚損されてしまう事や家具家電を含めた室内の物品に被害が及ぶ事です。
    特に入居者が保有するパソコン等の精密機器や、高価な衣料品に水がかかってしまうと大きな被害となる場合もあります。

    ②漏電

    特に天井からの漏水の場合、天井部分の開口部である照明器具の取り付け部分から漏れた水が落ちる場合が多くあります。
    照明器具や電気コードに水がかかる訳ですから、最悪の場合、漏電火災の恐れがあり、非常に危険です。

    ③結露

    漏水が止まっても、壁材の石膏ボードや目に見えない部分の水が抜けきっていないと、その後、室内の湿気が収まらず、結露が発生してしまう場合があります。
    上記に挙げたような直接水がかかってしまう事による被害を避けられても、その後発生した結露によって、高価な衣料品にカビが生えてしまう事もあります。
    また、結露によって発生したカビは健康被害を及ぼす可能性もありますので、十分注意が必要です。

    さらに結露による被害はこれに留まりません。
    室内扉など木製の室内建具類が反り返って、開閉に支障が生じたり、ドアノブ等の金具部分が錆びてしまったりします。

    ④躯体

    雨漏りが発生した物件の構造が木造であった場合、この木造部分の木材に水がかかり、雨水が浸み込んでしまうと木材が腐ってシロアリが発生する恐れが高まります。
    以前、私が経験した木造アパートでは、各室の出窓が造作出窓(一般に見る既製品の出窓と異なり、大工が出窓を造作する)になっていました。

    この出窓の雨仕舞(あまじまい:建物内部に水が入り込まないようにする仕組み)が悪かったため、雨が降るたびに徐々に各室の出窓から雨水が入り込み、シロアリが発生し、結果的に躯体(柱や梁)の強度が下がったため、アパートの出窓が付いている壁面全体をいったん取り壊して、作り直さざるを得なかったケースがありました。
    何人かの入居者が入居している中でこれを行う訳ですから、大変な工事となりました。

    対策

    対策は大きく2つに分かれるかと思います。
    1つ目は、雨漏りが発生しないように、もしくは発生しても被害を最小限に留めるための予防的対策、そしてもう1つは雨漏りが発生した後の対応をスムーズに行うための対策です。

    ①日常点検と保守

    管理物件の共用部分の定期清掃の際の点検項目として、雨漏りに関連する項目を追加したり、物件の共用清掃のメニューの一部として陸屋根の屋上清掃を(頻度は少なくても)加える等の対策を行います。
    また、毎月、清掃のために訪問している清掃担当者では、少しずつしか変化しない外壁のひび割れの進行には気付きにくい事から、これとは別に年単位で定点観測(屋根や壁の同じ部分を定期的にチェックする)が出来る仕組みを追加するのも一案です。

    ②長期修繕計画

    防水塗装や防水シートの耐用年数はある程度推測できます。
    これらを賃貸管理物件の長期修繕計画の項目に加え、先にオーナー様のご理解を得て置く事で、オーナー様も修繕積立等の対策を立てることが出来るため、工事のための大きな費用が発生しても慌てる事はなくなります。

    ③初動対策

    賃貸管理部門の中で、雨漏りが発生した場合の初動対策を立てて置く事も、スピーディーな解決につながり、結果的に被害が拡大する事を抑えるだけでなく、入居者満足度の向上や、費用の削減につながります。例えば、入居者からの最初の連絡の時点で、電気ブレーカーを遮断して頂く事で漏電火災の発生する可能性を下げる事が出来ます。
    さらに言えば、入居者から雨漏りが発生したと言う連絡が来なくても、大きな台風や地震の発生後に一斉点検をする体制を整えて置く事で、入居者から多くのお電話を頂く前から、作業の優先順位を間違えない行動を取る事が出来ます。

    ④火災保険

    雨漏りによる被害は火災保険の保証対象になる代表的なケースとなります。
    あらかじめどのような保険に入っているか、あるいは入っていない場合は入って頂くように努める事も重要です。
    あらかじめこのような確認をしておくことで、保険会社への事故速報もスムーズになり、結果的に保険会社からの保険金の支払いも早くなります。

    ⑤再発防止

    例えばどこか1室で雨漏りが発生した場合、同じ原因で他の部屋で雨漏りが発生する可能性は無いか、さらに言えば、同じ構造の他の管理物件で雨漏りが発生する可能性は無いか検討する事で、被害を最小限に抑えられます。

    ⑥オーナーや入居者への啓蒙

    日頃からオーナー様には雨漏りが発生するとどうなるのか(入居者に対して家賃を減額する必要があるケースもあります)と言う事をお知らせし、入居者へは緊急入室の可能性などのご説明をしておく事も、雨漏りの発生後に自社の対応をスムーズにする効果があります。

    まとめ

    今回は雨漏りについて、ご紹介いたしました。

    雨漏りは一度発生すると、被害も大きな場合が多く、入居者にも多大なご迷惑をおかけする事になります。ただ、一方ではあらかじめ定期的な防水工事等を施工しておく事で、発生を防止する事も可能なトラブルです。

    日頃から計画的に対策を進めて置く事で、考えようによってはオーナーや入居者の信頼を獲得できやすいトラブルと言えるのではないでしょうか。

    以上

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