<19コツ目>水が出ない
前回のコラムでは入居者からのお電話で、「お湯が出ない」というご連絡を頂いた場合の原因について、ご紹介いたしました。
お湯の次は「水」と言う事で、今回は「水が出ない」と言う場合の原因について、考えてみたいと思います。
お湯が出ないのも困りますが、水が出ないのはもっと困ります。
水が出なくなるとお風呂や調理・洗い物が出来ないだけでなく、何より困るのはトイレではないでしょうか?
今回はこういった水の出に関するトラブルの原因について、ご紹介できればと思います。
設備のトラブル
①水道管
まず、一番分かりやすく想像しやすいトラブルは水道管の破損です。
水道水が蛇口に来る手前の時点で水道管が破損して、途中で水が漏れてしまうと蛇口からは水が出ません。
破損した水道管の位置が地上の建物内であれば、水が漏れた状況が見えたり、水漏れの音がしたりするので比較的発見しやすいですが、破損した位置が地面の下になってしまうと、水が漏れた事が把握しずらいため発見が遅れがちです。
このため、まずは水道メーターを確認すると良いかと思います。
水道管が破損すると、水が出ないにもかかわらず、水道メーターは回り続けているはずです。このことから、どこかで水道管が破損している可能性が高い事になります。ただし例外的に、水道を引き込んでいる道路から水道メーターの間の水道管が破損してしまうケースもありますが、この場合は水道メーターは回らないので発見しにくいかと思います。
また、水道管が寒さで凍結してしまう場合も水が出なくなります。
このため、寒さが予想される場合は(前回のコラムでご紹介した水抜きと同様)予め水を少しだけ出しっぱなしにして、凍結を防ぎます。万一水道管が凍結してしまった時には、お湯をかけて溶かそうとすると、水道管が破損する場合があるため、徐々に凍結した部分を解凍する必要があります。
②貯水タンク(受水槽)
貯水タンクにトラブルが発生しても水が出なくなります。
・ポンプの故障
受水槽ポンプが故障すると水が出なくなります。
このため、通常は各受水槽にポンプが2基ずつ設置されたうえで交互に作動されています。
仮に1基が故障しても、残り1基で作動するようになっているため、急に水が出なくなると言う事はあまりありません。
ただ、最初の1基が故障したあと、修理の見積もり等で時間が取られてしまうと、残りの1基に普段以上の負荷がかかり、残りの1基もすぐにダウンする事があるので、最初の1基が故障した場合はなるべく早めにポンプの交換、または修理する事をお勧めします。
・停電
ポンプは電気(動力)で作動するため、停電等で電気が止まってしまっても、水が出なくなります。
電気が止まった場合、通常は警報音が鳴るので近くに誰かいれば停電を発見できますが、この警報音がそれほど大きな音ではない設備もあるため、発見が遅れる可能性もあります。
・安全装置
上記の停電の他に、満水・減水警報装置が働く場合があり、その場合もポンプがストップして水が出なくなります。
この装置そのものが故障するケースもありますが、通常、満減水警報が発報するのは地震によりタンク内の水が波立ち、誤作動してしまうケースです。
この事から、一定程度の地震が発生したら、警報装置の鳴動の有無とは関係なく、貯水タンクが設置されている管理物件の点検をする事をお勧めします。
なお、貯水タンクを利用した給水方式には大きく2種類あり、1階(あるいは地下)付近にある受水槽から各部屋の水道に直接圧力ポンプで給水する方法と、受水槽からいったん、屋上にある高置水槽にポンプで水を汲み上げ、この高置水槽から各部屋に水を自然落下させる方法があります。
何らかの原因でポンプから水が供給されなくなると、この圧力ポンプ方式の場合はすぐに水が出なくなるので発見が早いですが、高置水槽からの給水方式の場合、高置水槽が空になるまでは水が出るため発見が遅くなります。
高置水槽の場合、発見が遅いうえに空になった高置水槽に水が溜まるまで安定した水圧の水が出ないため、完全復旧にかかる時間も圧力タンク方式よりも余計にかかるので注意が必要です。
③増圧給水装置
貯水タンクが無いにも関わらず、水道の本管側から直接各部屋にポンプアップする方式が増圧給水装置による給水方式です。
この方式で水が出なくなる原因も基本的には②貯水タンクの原因と同様です。
④給湯器故障
各居室に設置されている給湯器が故障した場合にも水が出なくなる可能性があります。この場合、お湯以外の水は通常に出るため発見が早くなります。
設備以外に起因
①水道料金の未納
当たり前の話ですが、水道料金を滞納すると水道局の方で水道を止めてしまう事があります。
②開栓手続きの不備
入居したばかりの入居者が水道局への開栓手続きをせずに水道を使用しようとすると水が出ない場合があります。
通常は水道局や賃貸管理会社の指示に従って、入居者の方で水道の元栓を開くと水は出るようになりますが、直前に入居者していた方が上記のように水道料金を滞納していたりすると水道局の方で水道メーターが外しており、元栓を開いても水が出ない場合があります。
③元栓
比較的良くあるケースですが、入居したばかりの他の居室の入居者が間違えて水道の元栓を閉めてしまうケースがあります。
この場合、この入居者に悪意は無いので大きなトラブルにはなりませんが、まれに悪意で元栓を閉める人もいるため、対応に苦慮する場合があります。
④断水
近隣の水道工事や貯水タンクの定期清掃等で断水が必要になる場合があります。
この時に断水のお知らせ通知が入居者全員の目に触れれば問題はありませんが、この事に気付かない入居者から連絡が入る場合があります。断水の時間帯にはトイレも使えなくなるため、断水のお知らせは可能な限り全入居者に届くように工夫が必要です。
水の出が悪い、濁っている、ゴボゴボと音がする
ここまでは急に水が出なくなるケースを中心にご紹介してきましたが、実際の場面では、水が完全に止まってしまう前に前触れのような徴候が発生するケースが多くあります。
①水道管の詰まり
・ゴミつまり
水道の蛇口付近やトイレの給水タンク付近等にはストレーナーと呼ばれるゴミを取るためのフィルターが設置されています。
年数が経過するに従い、徐々にこのフィルターが目詰まりを起こすため、清掃する必要があります。通常は工具を使用してこのフィルターを確認、清掃する必要があるため、実際にはあまり清掃されません。
また、さらに時間が経過するとフィルターそのものが錆びて目詰まりを起こしてしまい、水の出が悪くなることもあります。
・錆こぶ
現在では給水管は塩ビ製になっていますが、古い物件の場合、給水管に金属製の管を使用しているケースがあります。
金属製の管が使用されている場合、管が古くなると内部に錆びが発生してこぶのようになってしまい、最終的には錆で水を止めるほどになります。こういったケースでは専門業者に管内の検査(ファイバースコープ等)を依頼し、結果に応じて給水管の交換や引き直しを行うか、薬品を使って管の内部を洗浄、コーティング(ライニング)する必要があります。
・施工時の材料(接着剤等)
特に新築時に発生しやすいのが、施工時の材料が給水管内に詰まってしまうケースです。
新築物件にも関わらず水圧が弱い場合は、管の内部に詰まりが無いか、施工会社に確認をした方が良いかもしれません。
②減圧弁
一定以上の高層マンションのような場合、各部屋の水圧を一定に保つため、減圧弁が設置されます。
この弁が老朽化すると圧力の調整機能が働きにくくなり、水の出が一定で無くなってきます。このため、交換する必要が生じます。
以上のようなケースでは、水の出が悪くなるだけでなく、配管からゴボゴボと言う音がしたり、蛇口から出る水をよく見るとゴミや錆びが混ざっている事も多く、これらのケースも水道設備に何らかのトラブルが発生している可能性があると考えて良いかと思います。
まとめ
今回は水が出ないと言うテーマでその原因をご紹介してきました。
水が出ない原因については、前回のお湯の出と同様に様々な原因が考えられます。
大きなポイントは
①管理物件の築年数
②入居者が入居して間もないか
③受水槽の設置物件か
の3つではないかと思います。
電気・水道・ガスと言うインフラは、止まってしまうと日常生活に大きな影響を及ぼすため、他のトラブルよりも緊急性が高くなります。
このため、物件ごとの情報をより正確かつ詳細に保存した上で、予め緊急に動いて頂ける専門業者を把握しておく必要があります。
以上