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<17コツ目>賃貸不動産経営監理士?

賃貸管理業には大きく2つの側面があります。
1つは不動産業からの側面、もう1つは建設業的な側面です。

不動産業的な側面には、法令順守や入居者対応などのソフト的なイメージがあるように感じます。
また、建設業的な側面には、建物の維持保全のようにハード的なイメージがあるように思います。

今回から、数回に分けてこの建設業的な側面について考えてみたいと思います。

目次

    建設業は賃貸管理業の先輩

    建設業がいつ始まったかは別にして、長い歴史がある事は想像に難くありません。
    これに対して、賃貸管理業が本格施行(登録が無いと営業できない事業)されたのは、令和4年6月ですから、まだたったの2年です。

    従って賃貸管理業と同様に、建物を扱う事業者として建設業を先輩として見習ってみるといろいろと参考になる部分があります。

    しっかりした設計図のない賃貸管理業

    建設業には設計図書(図面や仕様書など施工内容を詳しく記した書類)がありますが、賃貸管理業にはあまり詳しい図書は無いように思います。
    賃貸管理業で設計図書に当たるのは、維持保全の(詳細な)仕様書や保全計画書ではないかと思います。

    私の経験上、これまで、建設業並みに詳しい維持保全の仕様書や計画書を見た事がありません。
    建設業の粗利益に比べ、賃貸管理業の管理受託手数料は微々たるものではありますが、数十年管理させて頂く事になれば、これは大きな金額になります。

    従って、受託後の賃貸管理の現場の作業を明確化するためにも、現在より仕様や計画を詳細に検討してもよいのではないでしょうか?
    また、維持保全計画の一環として、賃貸住宅の長期修繕計画などもあれば更に計画的な賃貸経営のサポートにつながるのではないかと思います。

    これらの計画は、例えば小さなアパートで実施するとしたら、大げさに見えるかもしれません。
    その場合は、仕様書や計画書のボリュームを建物の大きさに応じて、少なくすれば良いと思います。

    重要な事は賃貸住宅を、商品として健全に保ち続けると言う目的に沿った図書が必要だと言う点です。
    そうでなければ、行き当たりばったりの対応になってしまい、結果として健全な賃貸経営が出来なくなるのではないでしょうか?

    建設業に見る4大管理

    建設業に関わっている方々には基本中の基本ですが、施工管理には4大管理と言う考え方があります。
    施工管理を品質管理、工程管理、原価管理、安全管理と言う4つに分けて管理をすると言う考え方です。

    ①品質管理

    建設業で定められた品質を満たしているかと言う事を確認します。
    これは賃貸管理業で言えば、お客様の期待水準を満たす事が目標になるかと思います。そして、この場合のお客様はオーナーと入居者です。

    ②工程管理

    建設業では、予め作成された工程表を基に工事を進行し、最終的に期限までに完了させる事を言います。
    これを賃貸管理業に当てはめると、予定された維持管理計画通りに作業を実施し、突発的な修繕等に対しても、速やかに対応できると言う時間への意識ではないでしょうか?

    ③原価管理

    建設業では予算が決まっているため、その予算内ですべての工事を完了させる事を言います。そのため、適切にコストダウンや作業の効率化を実施します。

    これに対して、賃貸管理業では維持管理業務以外の予算が決まっていない部分が多くあります。
    このため、発生した事象(故障や破損等)に対して、すみやかに見積もりを取り、お客様にご納得頂ける妥当な金額と説得材料を用意して、ご了承を得ながら作業を実施する事が賃貸管理業では必要になってくると思います。

    ④安全管理

    建設業では一度でも労災事故が発生すると、作業員が大けがをしたり、工事が中断されたりするため、安全管理も重要な要素になっています。

    これに対して、賃貸管理業では建設業ほどの大事故や作業の中断は無いかもしれませんが、多くの維持管理や修繕作業を入居者の居住中に実施しなければなりません。
    このため、維持管理や修繕の作業員だけでなく、入居者の安全面への注意や、生活への影響も配慮しなければならない点で、安全管理も重要になってくるのではないでしょうか?

    ⑤5大管理

    以上の4つの管理に、環境管理も加えて、最近では5大管理と言われる流れもあるようです。

    賃貸管理業でこれに当たるのは、共用部分の照明のLED化等による節電や、家電リサイクル法の遵守、雨水利用による節水、断熱材や緑化による低エネルギー対策等がこれに当たるのではないかと思います。

    管理と監理

    建設業では「管理」と「監理」を使い分けて使用します。
    施工管理、施工監理となります。
    特に監理を「さらかん」などと呼んで明確化しています。

    施工管理は上記に挙げたような4大管理を関連付けて全体を調整しながら、どちらかと言えば主体的に作業を進める事です。
    これに対して施工監理は、この作業が問題なく進んでいるか、不備や不具合が無いかを客観的に確認し、必要に応じて施工管理者に図書どおりに進んでいない部分を指摘して、未然に問題の発生を防ぎます。

    こういった考え方は企業や公益団体の会計業務における監査のシステムと似ています。
    企業や公益団体では、自らが作成した財務諸表に問題が無いかを監査人が確認します。
    監理、監査のいずれも、通常はこの業務が出来る資格者でなければ、その業務を行う事が出来ません。

    このような客観的な視点、あるいはダブルチェックのようなシステムが賃貸管理業にはまだまだ不足しているのではないかと思います。

    賃貸不動産経営管理士は生まれたばかりですが、次は賃貸不動産経営監理士が必要となる時代が来るかもしれません。

    建築士と建築施工管理技士の違い

    建築士と建築施工管理技士は資格者取得者でなければ出来ない業務(独占業務)が重なっている部分もありますが、その目的を大きく分ければ、建築士は設計と監理(設計士と言う資格は無いんですね)、建築施工管理技士は施工管理と言う事になります。

    従って、賃貸不動産経営管理士は役割としては建築施工管理技士に近いのではないかと思います。

    現在のところ、賃貸管理業界で建築士(つまり設計や監理)に当たる資格はありません。
    年々、建物に関する規制や建物の老朽化による対応の難易度も増している中で、今後、維持保全計画の重要性も増してくるのではないかと思います。

    賃貸不動産経営監理士と言う資格は無くても、今からもっと維持保全に注目しておく必要があるかもしれません。

    まとめ

    今回、賃貸管理業の先輩である建設業と比較しながら賃貸管理業を見てきました。
    こうやって比較してみると、賃貸管理業は不完全な部分が多く、歴史も浅いため、まだまだ、生まれたばかりの赤ちゃんのようにも見えます。

    また、別の視点で見ると、不動産業と建設業、その他にも様々なクレーム対応や、オーナーの資産の活用提案など、その必要な知識の幅広さから賃貸管理業に関わる人にはゼネラリスト(幅広い知識とスキルを持った人)としての素養が求められるのではないかとも思えます。

    覚えなければならない知識は多くて大変かもしれませんが、業界がまだまだ未成熟である分、賃貸管理業界はブルーオーシャン(ビジネスチャンスの広がる市場)だと思います。

    以上

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