【アンケート調査】不動産オーナーに聞く!賃貸の原状回復時によくあるトラブル5選
退去時の原状回復についての問題は、賃貸物件を運営するうえで避けて通れません。トラブルが大きくなると原状回復に支障が出るだけではなく、最悪の場合訴訟にまで発展する可能性があります。
この記事では、原状回復時に多いトラブルについて、全国100名の賃貸不動産オーナーにWebアンケートを実施しました。
多くのオーナーが頭を悩ませる原状回復問題と賃貸経営に及ぼす影響を知り、今後の対策に活かしてはいかがでしょうか。
原状回復時に多いトラブル5選
出典:GMO賃貸DX WEBメディア編集部独自調べ(N=100)
原状回復時に多いトラブルについてのアンケート結果は以下のようになりました。
- 第1位:床の傷・凹み(26.3%)
- 第2位:シミ、カビ(24.3%)
- 第3位:喫煙によるクロスの汚れ(17.5%)
- 第4位:ペットがつけた傷(8.8%)
- 第5位:敷金の返還トラブル(7.6%)
物理的なトラブルが多く見られますが、契約面での問題も散見されます。詳しい内容についてそれぞれ見ていきましょう。
第1位:床の傷・凹み
床の傷や凹みについてのトラブルが全体1位という結果でした。
基本的に経年劣化の範囲内であれば貸借人の負担にならず、貸借人の故意や過失については原状回復の対象となります。この線引きがあいまいな場合、どちらが負担するのかという問題が発生してしまう可能性は高いです。
- 入居時に記録を残していないため誰がつけた傷か判断できず、どちらが費用負担するか揉める
- フローリングの日焼けや家具の設置による凹みは家主負担となり、ひどい場合修理しなければならない
- 貸借人が勝手に修繕した部分について、退去時に再修繕が必要となりトラブルとなる
床の傷や凹みについては、貸主借主ともに入居時にどの程度ついていたか把握しておき、退去時の負担についても明文化しておくことが必要です。
第2位:シミ・カビ
シミやカビについてのトラブルも、退去時の問題として多いケース。シミやカビの原因でよく見られるのは、結露の問題です。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、結露を放置したことで拡大したシミやカビは貸借人の負担とされています。しかし、構造上の問題で発生した場合は貸主負担という判例もあることから、対応が難しいのも事実です。
風呂場や洗面所、押し入れや窓枠など、結露の発生しやすい場所については、入居時に貸借人へ換気を促すなどの注意喚起をしておくとトラブル回避に繋げられるでしょう。
第3位:喫煙によるクロスの汚れ
喫煙によるクロスの汚れも、退去時に問題となることの多い事案です。近年では喫煙者は減ってきたとはいえ、令和元年時点で成人の16.7%、30~60代の男性では30%以上の喫煙者がいます。
タバコに含まれるタールによって、クロスが茶色く汚れたりにおいが染みついたりするなどの問題が発生します。
喫煙者にとって喫煙は日常生活の一部であることから、喫煙による汚れは経年劣化という主張も理解できなくはありません。
しかし、平成23年以降に改定された「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、喫煙の汚れは日常で発生するものを超えていると判断され、貸借人に原状回復義務が生じるとされました。そのため、理解の相違が生じてしまい、トラブルに発展するケースが想定されるのです。
この点についても、入居時にガイドラインをはっきり明示しておき、喫煙による汚れは貸借人負担ということを理解してもらうとよいでしょう。
第4位:ペットがつけた傷
ペットがつけた傷の原状回復も、問題となるケースが多い傾向にあります。
ペット禁止の物件であれば飼育自体が禁じられているため、ペットのつけた傷はすべて貸借人の負担としても何ら差し支えありません。問題となるのは、ペットの飼育を認めている物件での経年劣化との線引きや、破損の程度が大きく高額請求となる場合です。
日常生活でつく程度の傷や汚れ、また一般的なクリーニングで取れる臭いなどであれば、経年劣化の範囲内です。しかし、飼い主は気付いていなくても、他人から見ればひどい傷や臭いであるケースもあるため、認識の違いからトラブルに発展するケースがあります。
また柱や壁などが破損するほど大きな傷や複数箇所に及ぶ傷、においが染みついて取れないといった場合に、高額となる原状回復費用の支払いで問題が生じかねません。
これらの点について入居時に書面で説明するなど、退去時のトラブルを防ぐ対策が求められます。
第5位:敷金の返金トラブル
上記のような物理的な問題ではなく、契約上のトラブルも起こり得ます。なかでも多いのは、過失の見解の相違による敷金の返金についてです。
敷金は、原状回復の資金として利用された残金は貸借人へ返金される、というのが一般的な理解です。
ただし、オーナーとしては原状回復と考えていても、貸借人は経年劣化と捉えていれば費用負担の面でトラブルに発展しかねません。また、貸借人側が支払う必要のない費用を敷金から引かれている、修繕費の明細がなく請求が不明朗であるというケースも、敷金のトラブルとして少なくありません。
トラブル回避の対処法としては、契約時と入居時に修繕についての契約書を交わす、退去時にお互い立ち会ってチェックする、原状回復にかかった費用の明細を出すなどが挙げられます。
原状回復時のトラブルが賃貸経営に及ぼす影響
出典:GMO賃貸DX WEBメディア編集部独自調べ(N=100、複数回答)
原状回復でトラブルが起きた場合、次に挙げるような問題が発生して賃貸経営に重大な影響を及ぼすといったアンケート結果が出ています。
- 第1位(同率):次の入居者を募集できない
- 第1位(同率):資産価値の低下
- 第3位 :キャッシュフローの悪化
第1位(同率):次の入居者を募集できない
最大の問題点として、半数以上のオーナー(55名)が次の入居者を募集できない点を挙げていました。
原状回復のトラブルが発生して修繕が進められない場合、次の入居者を入れる時期の目途が立たず、募集がかけられないという問題が発生します。
原状回復にかかる期間は、修繕の程度にもよりますがおおむね1ヶ月程度と考えればよいでしょう。
原状回復が終わらないと入居希望者の内見もできず、次の入居者が住めないため、入居者を逃してしまう可能性があります。トラブルがあると原状回復に取り掛かり始めるのが後ろ倒しされてしまい、機会ロスを生む期間が延びてしまうのです。
第1位(同率):資産価値の低下
「次の入居者が入居できない」と同数の方が、資産価値の低下を懸念されています。原状回復がうまく進められないと、資産価値の低下を招く恐れが高まると考えるオーナーが多いと言えるでしょう。
貸借人との間で責任の所在があいまいになり、オーナー側の原状回復費用の負担がかさんでしまった場合、必要最低限の出費で抑えたいと思うのは当然のことです。だからといって、ほとんど修繕せずに賃貸に出すのは得策とは言えません。
入居希望者から見てあまりにも状態がひどいと思われる場合、家賃を下げないと借り手の付かないというケースが考えられ、結果として資産価値が下がってしまうでしょう。
原状回復によって資産価値を高めるというより、適切な修繕を実施して資産価値を下げないようにすることが、オーナーには求められるのです。
第3位:キャッシュフローの悪化
トラブルによって原状回復ができない、また修繕に取り掛かるのが遅れた場合、物件のキャッシュフローが悪化する可能性が否定できません。
まず、原状回復できない状態では賃貸に出せず、家賃が入ってこないので収入が止まります。そして、貸借人に費用を負担してもらえず、オーナー側の負担が増えてしまった場合、支出面でも大きな痛手となります。
トラブルを抱えた物件と認識された場合、仲介業者からの待遇にも影響が出てしまうことも考えられ、家賃を下げないと入居者が回ってこなくなる可能性も否定できません。
空室率の上昇は、キャッシュフローの悪化に直結します。できるだけリスクを回避するためにも、入居時に書面で契約を交わすなど、貸借人と原状回復でトラブルとならないよう対策を講じておく必要があります。
まとめ
原状回復に関するトラブルは、賃貸経営を続ける上で避けて通れない問題であることは間違いありません。国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、入居時や退去時の費用負担を明文化して共有するといった対策を取っておくことが重要です。
また、オーナー側としても修繕すべきところは手を抜かず、現状より優れた物件にアップデートすることで資産価値の維持や空室率の低下に繋げられるでしょう。
ご自身の物件でどのように対策を講じればよいか、このアンケートを参考に検討することをおすすめします。