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<3コツ目>高齢者が室内で亡くなってその賃貸物件の資産価値が上がる!?

私が2019年から関わっている会社が管理しているアパートは、高齢者が室内で亡くなっても資産価値が上がります。

そんなバカな!
と言う、皆さんからのリアクションを期待します。

今回はこの話です。

目次

ノビシロ

これを実現している会社は株式会社ノビシロと言い、神奈川県藤沢市にあります。
管理しているアパート(まだ1物件ですが)も藤沢市にあり、小田急線の六会日大前駅と言う、比較的小さな駅にあります。

ノビシロの社長の鮎川さんは、元々、エドボンドと言う賃貸仲介会社を経営しており、以前より高齢者にご紹介出来る物件を探す事に苦労していました。
この課題を解決すべく新会社を設立し、経営メンバーに介護事業者や医師などユニークなメンバーを加え、事業を開始しました。
私の役割は賃貸管理業周辺です。

アパート自体は古いアパートを改修して、1階はバリアフリー、各戸には見守りIoT、隣地に増築(新築)してカフェを併設、カフェの上(2階)には訪問介護と訪問医療と言う、言わば「鉄壁な」高齢者対応物件に仕上がっていますが、大事な部分は実はそこではありません。

この物件に大学生等の若者に高齢者の家賃の「半額で」入居してもらい、月に一回、アパートのみんなでお茶会を開催し、日常的には若者から高齢者に声がけしてもらう、これが肝(きも)です。

それだけです。

こう言ってしまったら身も蓋もありませんが、そこのノウハウが意外にいろいろあって、ここまでずいぶん苦労しました。

入居者死亡による資産価値の下落

まず、前提として高齢者が室内で亡くなって資産価値が下がる件について確認しましょう。

一般の賃貸住宅では、室内で(高齢者でなくても)入居者が亡くなると、これが心理的瑕疵(事故物件の扱い)となり、次の方が入居する家賃が下がるケースが多くあります。

家賃が下がると、仮にその物件を売却する場合(この売値が資産価値です)、売値が下がります。
【例】
■前提条件
① 家賃6万円 → 入居者死亡により、家賃が5万円に下がった場合
② 利回り6%

■資産価値
通常の場合 6万円×12か月÷6% = 1200万円
事故物件  5万円×12か月÷6% = 1000万円

■結果
200万円の値下がり

その上、この実質的な影響以外に売却時の重要事項説明で、この心理的瑕疵を「告知」をする必要がある事から相場通りで売れなくなり、利回りそのものも少し上げて売らなければならないケースもあります。
【例】
■前提条件
① 家賃6万円 → 家賃が5万円に下がった場合
② 利回り6% → 7%

■資産価値
通常の場合 6万円×12か月÷6% = 1200万円
事故物件  5万円×12か月÷7% = 約857万円

■結果
343万円の値下がり

室内でお亡くなりになる方には、お悔やみ申し上げますし、本当に不幸な話なのですが、大家さんから見た場合、このインパクトが大きなため、若い方よりもお亡くなりになる可能性が高い高齢者の入居を最初からお断りしてしまうと言う事になってしまっています。

人の死の告知に関するガイドライン

この室内の入居者の死亡と言う課題を解決すべく国も動きました。

令和3年10月に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」 →
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

このガイドラインによって、あやふやだった入居者の死亡の際の事故物件としての線引きがある程度明確になって、賃貸管理業者や宅地建物取引業者は胸をなでおろしたのではないでしょうか?

その取り扱いには十分注意をしなければなりませんが、このガイドラインは相当踏み込んでおり、いわゆる「特殊清掃」を実施した物件でも、(原則として)3年経過後は告知不要となります。
これにより、賃貸管理業者や宅地建物取引業者は売主(または貸主)や買主(または借主)に対しても、説明しやすくなりました。

ガイドラインについて、一般の方々にはまだご存じの無い方が多い状況ですが、普及が進めば、高齢者の入居の障害がある程度低くなるのではないでしょうか。

ただし、高齢者の場合は部屋でお亡くなりにならないとしても、痴呆が進んでしまったり、いざと言う時に身寄りの方にも連絡が取れない場合が多くあり、こういった事情も入居を阻んでいる一因となっています。

高齢者は優良入居者

一方で、こういった事情とは逆に高齢者の入居は、賃貸住宅の経営にプラスであると言う考え方もあり、私はそちらの考え方です。

賃貸住宅の経営では空室率の大小が収益に大きな影響を及ぼします。
一般的には空室率の大小を決定づける要素は、部屋が空いたらいかに早く次の入居者に入って頂く事(= リーシング力)と言われますが、これと同じくらい重要な要素がいかに入居者の解約を減らす事(= テナントリテンション:入居者の保持)です。

【例】
■前提条件
① 6年に2回の解約、空室日数1か月
② 6年に1回の解約、空室日数2か月

■空  室  率
① (1か月×2回)÷72か月(=6年)=2.8%
② (2か月×1回)÷72か月(=6年)=2.8%

■結果
空室率は同じ

私の経験では、賃貸住宅に入居する高齢者は、他と比べ入居期間が明らかに長くなっています。
つまり、高齢者の入居はテナントリテンションにプラスであると言う事です。
高齢者が長期入居する理由はいくつかあります。
① 転居を考えても高齢を理由としてそもそも引っ越せる先が少ない
② 転職や転勤の機会が少ないので、これを理由とする引越が無い
③ からだも動きにくくなり、引っ越すのが億劫(おっくう)になる
④ 年収があまり変わらない(実はこの要素が一番大きいと考えています)

こう考えると高齢者入居の障害を取り除いて積極的に入居してもらう事が、賃貸住宅の経営にプラスだと言う事になります。

老人ホームの場合

話は変わりますが、一般に高齢者の入居と言えば、まず老人ホームが思い浮かびます。

老人ホームは室内で高齢者の方が亡くなった場合に、資産価値は下がるでしょうか?

答えはNoですよね。

では、老人ホームと一般の賃貸住宅の違いは何でしょうか?

住居としての本質的な違いはほとんどありません。
その目的が高齢者の専用住居であるかないかの違いではないでしょうか?

老人ホームは高齢者専用であるため、利用者が室内で亡くなられる比率は高くなっています。
施設のタイプや所在地によってその比率は大きく異なりますが、調べてみると東京都社会福祉協議会が令和4年に発表した特別養護老人ホームを対象にした調査報告がありました。
これによれば、施設の退所(解約)理由のうち、施設内での看取り死亡が54.5%、医療機関への転院(その後、死亡を含む)が40.3%、在宅復帰が1.1%、残りがその他でした。

ノビシロハウスの場合

冒頭にご紹介したノビシロでは、入居者の方が部屋の中で人生を全う(まっとう)される事を推奨しています。
実際、(主治医の立ち合いで)看取りを部屋で行いました。

若者が高齢者の半額で入居し、月例のお茶会をするノビシロモデルの本質は高齢者が終(つい)の棲家(すみか)に出来る共同住宅を目指すものです。

さらに言えば、このノビシロハウスの入居者は高齢者とこれをサポートする若者だけに限定していません。
実際に若い身体障害者の方も入居されています。
ノビシロハウスで目指す住宅は高齢者専用住宅ではなく、可能な限り多様な入居者を受け入れられ、その生涯を終えるまで住める住宅です。

最後に

日本も本格的に高齢者社会に入ってきており、様々なタイプの高齢者施設が存在しています。
ただ、調査すると意外にもその入居期間は長くない(3~4年程度)ので、民間の賃貸住宅の高齢者の長期入居とのギャップを感じます。
高齢者施設のタイプによっては、リハビリがうまく進んで要介護度が下がった事を理由に施設を退去しなければならなくなった例もあるようです。

現在ある高齢者施設は、その「機能」によって振り分けられ、その機能に応じた高齢者を対象にしているように思います。
多くの機能を保有する施設であるほど、高価であるようにも感じます。

私は高齢者が増加する中でこういった機能重視の考え方が近々限界を迎えるのではないかと思います。

平均寿命は延び続け、「元気な」高齢者も増え続けている今、こういった方々が可能な限り長く住める、また、多機能でなくても安心してその住まいで人生を全うできる共同住宅には大きなニーズがあると思っています。(実際、ノビシロハウスは入居待ちです)
そのカギとなるのは、コミュニティではないかと思います。

こういったコミュニティのある住宅は、室内で高齢者が亡くなっても資産価値が下落しないと思います。
以上

ノビシロハウス →
https://www.nobishiro.co.jp/

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