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<2コツ目>賃貸管理会社の電話を取るのがAIに代わるのも時間の問題

おそらく一定規模以上の管理物件を擁する賃貸管理会社は、ずいぶん前から、お客様からの電話対応でコールセンターを利用していたのではないでしょうか?

と言っても私が現場にいた30年くらい前は、24時間コールセンターに委託していた訳ではなくて、夜間のみとか休日のみ委託しておりました。

それが現在では365日24時間コールセンターに一次受付を委託している管理会社が増え、その依頼内容や一次受付だけではなく一部の対応まで委託している管理会社も増えつつあります。

今回はコールセンターの現在の状況や、将来どうなるのかと言うあたりを考えてみながら、本来、お客様からの電話受付について何が求められているかを考えてみました。

※賃貸管理会社の経験の長い方は、以下の「以前の状況」や「現在の状況」を読み飛ばして下さい。

目次

     

    以前の状況

    ここで言う「以前」とは約10年前からコロナ禍前までの期間です。
    もちろん管理会社ごとに異なりますが、大きな流れと言うイメージで記載しています。

    (1)365日24時間委託

    上記でお伝えした、コールセンターへの委託時間が、夜間や休日のみから365日24時間に変わってきたのは比較的最近ではないかと思います。
    コロナ禍をきっかけに切り替えた会社もあるのではないでしょうか?

    そもそも管理会社で電話を受けているとパターンの類似した電話が多くかかってきて、そのほとんどは「難易度」低めです。であれば、管理会社ですべて受電すればいいのですが、問題は電話がかかってくると、それまでの事務作業が止まってしまい、効率が悪くなることです。
    さらに特定の曜日や時間になると電話が取り切れないほど集中してしまい、緊急で重要な電話を取ることができない可能性も出てきます。

    電話(一次対応)をコールセンターに委託することで、こういった受電率の向上や事務作業の効率化につながります。

    (2)一部の現場出動業務の委託(駆けつけサービス)

    特に夜間の電話の場合、緊急な用件が多くあります。
    そのうち、鍵に関するクレームや、水漏れ事故等は管理会社が行くだけでは解決せず、専門業者の対応が必要になるケースがほとんどです。
    お客様にとっては、解決のできない管理会社の担当者が行く事より、鍵を開けてくれたり、水漏れを直してくれる専門業者の方が重要です。
    駆けつけサービス会社に委託することで、最初から専門業者を走らせて、管理会社は翌日対応と言う事も可能になります。

    こういった理由から、夜間だけでなく24時間、一定の現場業務について管理会社の代わりに直接駆けつけサービス会社が行くと言う対応にしても良いのではないかと言う事になり、これが定着してきました。
    今ではこの専門業者の領域が広がり、専門業者の対応でトラブルが完結するケースが日々増えています。

    (3)IVR(自動振り分け)

    管理会社には本当にいろんな方から様々な用件の電話がかかってきます。
    また、その件数も膨大で、管理戸数が1千戸を超えると、年間数千件の電話がかかってくることもあります。

    そこで登場するのがIVRです。「お電話ありがとうございます。空き室の確認については1を、設備の故障については2を・・・」と言う例のシステムです。

    これは(自社で受けるのか、コールセンターに流すのかを含めた)電話の振り分けに留まらず、お客様からかかってくる様々な電話のたらい回しを避けたり、温度高めのクレームの電話について、経験の浅い担当者に取らせないようにするために導入されました。
    ところがどんどんその選択肢が増え過ぎる事により、お客様もイライラを増し、逆にその温度感がさらに高ってしまうケースもありました。

    現在の状況


    ここで言う「現在」とはコロナ禍から現在と言うイメージです。
    管理会社各社にお聞きすると、ここのところ、管理会社から見たコールセンターの業務に対する考え方が変わりつつあるように感じます。

    (1)アウトバウンドコール

    以前はお客様からかかってくる電話を取るのがコールセンターの主要な役割でしたが、今ではこの部分をインバウンドコールと呼び、逆にコールセンターから入居者等のお客様に発信する電話をアウトバウンドコールと言います。
    アウトバウンドコールの内容は(サービスのセールスを含め)お客様のお役立ちのためのコールが主体となっています。
    最近ではアウトバウンドコールの導入が管理会社に定着してきました。

    (2)リーシングコールの委託

    空室の客付け(仲介)を取り扱う不動産会社からの物件問合せ(リーシングコール)をコールセンターに委託する管理会社も増加傾向にあります。これはもともと一部の管理会社が以前から導入していました。

    実はこのリーシングコールは管理会社にとって大変重要なコールです。コールのやり取りの良否によって空室物件の成約が左右される恐れがあるからです。
    このため、これまでは管理会社が直接電話を取っていました。

    ただ、リーシングコールのやり取りの良否は熟練を要します。

    管理会社にとっては、こういった熟練した社員を育てても、季節要因(春はその他の季節に比べ、倍以上の電話がある)や時間帯等、かかってくる電話本数の大きなブレ(増減)がある事から、熟練した社員が足りなくなったり、遊ばせてしまったりします。
    このため、社内に熟練した社員を育てても一概に内製化する事のメリットを享受できる訳ではないため、徐々に外注化が進んできた訳です。

    最近の動き

    最近の動きとは言っても、一部では10年くらい前から進めている会社もあるようです。ここではどちらかと言えば、賃貸管理業界で近い将来に注目されそうな動きを挙げたいと思います。

    (1)マルチチャネル対応

    最近の若い入居者の方は電話より、SNS(やチャット)等、テキストベースのコミュニケーションに慣れており、お客様からのご連絡にも、こういったニーズが増えてきています。
    これに対応するため、今後はマルチチャネル(電話、SNS、メール、チャット等)に対応するコールセンターが増えています。

    SNSやメール、チャットのようなテキストベースのチャネルは連絡を受ける側にとっても以下のような数々のメリットがあります。

    ①一度に複数の相手とコミュニケーションを取る事が出き、業務効率が上がる
    ②上記同様の理由で優先度や緊急度の高い案件から対応できる
    ③同じ案件を複数の担当者でシェアできるため、熟練度や専門性の高い案件について、対応の精度が上がる。
    ④テキストだけではなく、画像や動画、図等を挿入出来るため、コミュニケーションの理解度が深まる
    ⑤電話の場合、やり取りが音声なので、音声から文字起こしをする必要があるが、テキストベースのチャネルはこの手間が省け、しかも精度が高い。
    ⑥コミュニケーションがテキストベースのため、言った言わないのトラブルになりにくい。

    こう言った理由から、特にコロナ禍以降、管理会社や委託先のコールセンターで、マルチチャネルの導入事例が増えてきています。

    (2)自動文字起こしとテキストマイニング

    自動文字起こしはかかってきた電話の音声から自動でテキストに変換する技術です。
    これは、以前から議事録作成アプリ等で利用されていましたが、生成AIの登場後、これが文脈を含め読み取るため、精度の向上と共にサマリー(要約)の作成など、これまでより「圧倒的に」使えるものになってきました。

    自動文字起こしにより作成されるテキストデータに加え、上記オムニチャネル化により集まってくる膨大な量のテキストデータを合わせ、テキストマイニングも進んでいます。

    テキストマイニングはテキスト(文章)とマイニング(採掘)を合わせた造語で自然言語処理の分野で注目されている技術です。
    膨大なテキストデータを分析してキーワード(例えばネガティブワード)や傾向を分析する事で、対応精度の向上に留まらず、クレームの予防策のヒントやリスクの最小化、業務の効率化に役立てようと言う訳です。

    (3)感情分析

    感情認識AIと言う言葉があります。
    文字通り人間の感情に的を絞って、これを読み取ろうとするAIです。

    コールセンターの場合、動画や画像と違って、音声と文章(テキスト)から感情を読み取る必要があります。音声であればそのトーンから、文章であれば個別ワードや文脈から人間の感情を読み取ろうとします。

    これによって、多くのコールの中から、温度感が高めのコールについて、印(フラグ)を付けたり、経験値の高い社員が対応する事で対応精度が上がります。

    (4)Voice BOT

    チャットボットは皆さんもご存じだと思います。
    チャットボットは自動でチャット対応ができるプログラムですが、チャットボットだけでなく、Voice BOTも能力が向上しています。

    Voice BOTは文字通り、チャットではなく音声としてお客様とコミュニケーションが取れるプログラムです。

    例えば、管理会社でクレームを受ける時のテクニックの一つとして、お客様の発した言葉に対して、言葉を変えて返答すると言うものがあります。「エアコンが故障したんだ。」と言われ、これが夏であれば「それはお暑いですね。」と言うように返答することで、お客様は管理会社が理解してくれていると感じます。
    普通はこの返答を人間が行いますが、上記(3)の感情分析でお客様の温度感を検知した上で、Voice BOTが抑揚をつけて返答するとどうでしょう。
    これまでよりお客様の満足度が上がるかもしれません。

    (5)コンタクトセンター化

    上記(1)~(4)を含め、コールセンターはその領域を広げ、単なるコール(=電話)センターでなく、その名称もコンタクトセンターへと変貌を遂げています。

    AIの進化が進む中、今後、コンタクトセンター事業には多くの新規参入が予想されます。

    将来の予測と課題

    ここからは私自身の妄想を含めて、未来予測とその課題について触れたいと思います。

    (1)コールセンターが無くなる?

    これまでコールセンターと言えば(人間の)オペレーターが対応するものと決まっていましたが、AIの急激な進化により近い将来、オペレーターがAIに代わって行きそうです。
    AIが知識だけではなく、感情を認識したうえで適切な対応が出来るようになれば、オペレーターが人間である必要は無くなるからです。

    おそらく近い将来に、お客様は、簡単な用件であれば電話の相手が管理会社の社員か、AIかの区別がつかなくなるでしょう。

    これらが実現すると人間のオペレーターを抱えるこれまでのコールセンターは必要無くなり、コンタクトセンターシステムを提供するIT企業が取って代わるのではないかと思っています。

    (2)社員の受付業務経験の不足

    これは現在でも言える事ですが、管理会社の受付業務をコールセンターに委託する範囲が増えるにつれ、管理会社の社員が自ら受付する機会が減り、結果として受付業務の経験値が下がります。この経験は以下(3)(4)で求められる社員のスキルの基礎となるものでもあり、災害発生時のBCP(事業継続計画)等、万一AI受付システムが利用できなくなった場合にも必要となるため、欠かす事は出来ません。
    このため、短時間で社員の経験値を上げるための疑似体験サービスが今後登場するのではないかと思います。

    (3)社員に求められるスキル1 シナリオライター

    仮に受付業務のすべてがAIに代わると人間(社員)は何をすべきでしょうか?
    私は、AIが返答するためのシナリオを書く担当者が必要になるのではないかと考えています。

    いくらAIが自分で考える(=生成AI)と言っても、人の心の綾(あや)を検知して適切な回答を出すまでには相当時間がかかると考えています。
    従って、それぞれの管理会社に応じた回答のシナリオを書く担当者が必要になると考えています。
    経験豊富なプロのシナリオライターが業界に生まれて、その外部プロのアドバイスを聞きながら担当者がシナリオを書く事になると考えています。

    (4)社員に求められるスキル2 ホスピタリティ

    良し悪しは別にして世の中では貧富の差が広がっています。
    そうすると今後大部分の管理会社の受付はAIに代わっていくものと思われますが、一部の富裕層向け賃貸住宅については、ホスピタリティを持った(人間の)社員が対応するものと思われます。今後、人間が対応すること自体がステイタス化するのではないでしょうか。

    最後に

    今回はコールセンターの進化をベースに賃貸管理会社のお客様からの受付業務について考えてきました。
    私は、これら受付業務の大部分が近い将来AIに取って代わると予想しています。

    一方、受付業務に対して対応業務はどうでしょうか?

    対応業務についても、様々な監視カメラやセンサー、またドローンやペッパー君のようなサービスロボット等、費用対効果はまだまだですが、技術的には進化しているので徐々に現場に入ってくるのではないかと思います。
    ただし、その前にこの対応業務の分野については、外国人労働者の参入が進むのではないかと予測しています。

    受付業務も対応業務も無くなったら、私たち賃貸管理会社に残された仕事は何か?

    それはAIが考える事の出来ないような空室対策をはじめとする管理物件の収益を最大化するためのアイデアを出すようなクリエイティブな仕事や、様々なシステムを使いこなす仕事、そして、お客様であるオーナー様や入居者様に対するホスピタリティが必要となる仕事ではないでしょうか?

    以上

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