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大解剖!「賃貸仲介業界のリアル」

株式会社S-FITの代表取締役社長であり、賃貸管理リーシング推進事業者協議会の副会長でもある紫原 友規氏の連載が新しくスタートします。この連載「徹底調査!賃貸仲介の『イマ』」では、賃貸仲介業界の現状と未来をみなさまにお届けいたします。

記念すべき初回は「大解剖!賃貸仲介業界のリアル」。賃貸仲介業界の現状や抱える幅広い課題、そしてこれからの「業界が目指すべき方向」について、語っていただきました。賃貸仲介業界に関わるすべての方々にとって、必読の内容です。ぜひ、最後までご覧ください。

目次

    連載の背景

    まずは今回、連載を引き受けていただいた背景をお聞かせいただけますでしょうか。

    「賃貸仲介業界」をより良くしていこうとしても、個社で出来ることには限界があります。
    より良くしていくためには、この業界に関わるみなさんで、一緒に取り組んでいく必要があると思っています。

    その観点から、私の考えや経験を発信させていただけるというのは非常に良い機会です。今回の連載が少しでも業界全体で取り組んでいくきっかけになれば良いと考え、連載を引き受けさせていただきました。

    株式会社S-FITについて

    株式会社S-FITの会社概要をお聞かせください。

    株式会社S-FITは賃貸仲介事業をメインで行っており、個人のお客様から法人仲介まで幅広いニーズに対応し、年間仲介件数の実績は、約2万5000件に上ります。また、不動産開発事業、賃貸管理事業、介護施設の運営、海外投資家向け事業をグループ会社で取り組んでおり、賃貸管理事業ではグループ全体で約9,000戸を管理しております。

    これらの多角的な事業展開により、お客様の多様な不動産ニーズに応えるワンストップの不動産ソリューションを提供しています。今後は不動産DXへの注力をさらに強化し、「不動産市場の課題解決企業」として新たなサービスを提供することに尽力していきます。

    10月には管理会社のティケィ管理サービス株式会社を完全子会社化されましたが、どういったお考えがあったのでしょうか。

    今後はより一層力「賃貸管理」にも力を入れていこうと考え、ティケィ管理サービス株式会社(以下、TK社)の子会社化を決定しました。TK社は1985年の設立以来、40年以上にわたり賃貸管理事業を中心に運営してきた企業で、西川口・蕨エリアで1,000戸以上の物件を管理し、地域に密着した賃貸管理サービスを展開しています。TK社の管理物件の入居稼働率は90%を超え、オーナー様から厚い信頼を確立しています。

    私たちは、TK社が築き上げてきた地域密着の賃貸管理ノウハウとS-FITのリーシング力やDX化による組織化・仕組み化を融合させることで、業務効率化と顧客サービスの向上を図っていきたいと思っています。また、不動産DXを一層推進し、オーナー様の質問や要望に迅速に対応できる体制を構築することにも力を入れていきます。オーナー様の様々な課題を解決し、管理戸数の拡大に注力してまいります。

    賃貸仲介業界の現状と課題

    賃貸仲介業界の現状と課題についてお伺いできますか。

    賃貸仲介業界は多くの課題に直面しています。これまでのやり方を一言で表現するならば、「人海戦術」というのが適切でしょう。デジタル化の波が押し寄せる中、業界全体がその変化に追いつくことが出来ていません。

    物件の空室確認を行い、写真を撮影し、不動産ポータルサイトなどに物件を掲載する。それを出来る限り早く行いながら、掲載中の物件がまだ空いているか?条件が変わっていないか?等を、毎週確認する。やっと掲載している物件にお問い合わせをいただき、返信をしてもお客様とは連絡が繋がらない。こういった業務をずっと人が介在してやり続けているのです。ものすごく煩雑で、人手も時間もかかる作業ですよね。

    お客様に新鮮な情報を提供することはとても大事です。ですが、「お客様に対してどのような価値を提供するか?」という視点ばかりが大事にされてしまい、実際にお客様に価値を提供する働き手、不動産会社側に対する視点があまり大事にされてこなかったのではないかと感じることもあります。

    市況の変化

    市況が大きく変化したと感じるものはありますか。

    大きな変化は、昔から言われていた「情報の非対称性」が、「より一層減少した」という点ではないでしょうか。今やお客様は豊富な情報を簡単に手に入れることができます。不動産ポータルサイトを見れば非常に多くの物件が掲載されていますし、物件名を直接検索すれば物件の詳細情報もすぐに見つかります。気になる物件の現地に行かなくてもGoogleマップを見れば、おおよその雰囲気や周辺環境を把握することが出来ます。

    これにより、以前のように不動産会社が情報を一手に握る時代は終わりを告げ、市場はより透明性の高いものへと変化しており、正しい状態に向かっていると感じます。

    その結果、お客様の方が営業担当よりも物件情報を詳しく把握されている、ということもあります。
    もちろん、営業担当の方が不動産全般に関する知識やエリア全体については詳しいです。ですが、お客様は自身の希望条件に該当する物件を徹底的に調べているため、その条件の物件に関する知識でいえばお客様の方が詳しく把握されている、となるわけです。

    他に変化を感じることはありますか。お客様の探し方などはどうでしょうか。

    多くのお客様が「不動産ポータルサイトを見て問い合わせをする」という流れは変わっていないですね。ですが、問い合わせ後の動きは変わってきていると思います。他の不動産会社の方々と話しをしていても、不動産ポータルサイトなどからの問い合わせは増えているが、問い合わせからの成約でみると確率が落ちてきている。という話題はよく挙がります。

    お客様からお問い合わせをいただいても、なかなか連絡が繋がらないということが多いのですが、私はその理由は2つあると考えています。

    1つ目は、問い合わせしたことで満足をしてしまうケースです。情報が少なかった時代は不動産会社に問い合わせをし、情報をもらわないと検討を進めることが出来ませんでした。現在は不動産ポータルサイトの情報量が増えたことにより、不動産会社から情報をもらわなくても比較、検討をお客様自身で出来るようになってきています。試しに問い合わせはしてみたが、そこで満足してしまっているのではないでしょうか。

    2つ目は連絡を取るツールの多様化です。現在はお客様と連絡を取るツールがたくさんあります。少し前までは、連絡を取る手段と言えば電話かメールとはっきりしていましたが、今はそんなことはありません。お客様も電話には出ない方、メールはほぼ見ない方等、人によって様々ですので、そういった点も関係していると思っています。

    都市部と都市部以外の違い

    都市部と都市部以外で賃貸仲介の違いはありますか。

    都市部と都市部以外では大きな違いがありますね。賃貸仲介業務のみで収益を上げ、事業として成り立っている会社は都市部が中心です。都市部以外では管理がメインとしてあり、賃貸仲介だけの市場は限定的だと思います。

    都市部の会社は仲介事業で収益を上げることを目的にやっていますが、都市部以外では自社物件を決めるという役割を持っていることが多いのではないでしょうか。つまり、都市部は仲介事業。都市部以外は自社管理物件の客付業務。賃貸仲介の定義、役割が違うのです。

    当社も首都圏で管理物件が約9,000戸ありますが、それを自社の仲介部門で仲介しようとしても比較対象となる物件が市場に多く、自社の管理物件がお客様のご希望に全て当てはまるということには絶対ならないわけです。やはりお客様のご希望が第一です。そうすると、自社管理物件というのはご提案の選択肢の中に1割も入らない。それだけ提案できる選択肢が多いのです。

    これが都市部以外だと、自社管理物件がお客様のご希望の条件の中に8割から9割も入ることがあります。先日、私がお話しを伺った不動産会社は自社管理物件が非常に多く、自社管理物件での契約率がなんと9割を超えていました。

    賃貸仲介業界の進むべき方向

    賃貸仲介業界の進むべき方向についてどのようにお考えでしょうか。

    現在、部屋を借りるプロセスには多くの手間やハードルが存在しており、これらを一つずつ取り除き、よりスムーズで簡単に部屋を借りることが出来るようにする必要があるのではないでしょうか。

    物件の案内を例に挙げると

    • 「物件の内見をしたい」場合、内見をするための鍵を取りにいかなければならないのですぐにご案内することが出来ない。
    • 管理会社が定休日の場合は鍵を借りることが出来ず、内見が出来ない。
    • 管理会社ごとに鍵の管理方法が違うため、それぞれに合わせた対応をしなくてはならない。

    などが、手間やハードルになります。

    実際に、お客様が「この部屋を借りたい」と決めた場合も、申込や審査、契約に関わる書類のフォーマットや申請方法が管理会社ごとに異なり、煩わしいことがたくさんあります。フォーマットが違うことにメリットがあれば良いのですが、いまのところメリットは感じられません。

    現在の不動産会社の営業担当は、携わる業務が非常に多くなっています。お問い合わせを受けたら返信をして、様々な物件を提案して、案内の予定を調整して、案内の日程が決まったらそれに合わせて鍵を取りに行く。このように、人に頼った業務が多いとコストを下げることは難しいと言えます。

    「部屋を借りるプロセス」を、よりスムーズで簡単にすることは、お客様のためになるのはもちろん、実は、我々不動産会社のやることを減らすことにも繋がり、結果的に賃貸不動産業界のためにもなります。誰も不利益を被らないよう、賃貸不動産業界全体で協力しながら、手間やハードルを減らしていきたいです。

    実は、大前提としてこのような煩雑さを生み出している理由の一つに「住居に関する保護」が挙げられるのではないでしょうか。入居者を守る点では非常に良いことなのですが、結果的に入口をものすごく厳しくしてしまい、各々が不利益を被っているケースも少なからずあると思います。

    オーナー様は審査で入居希望者様の属性をしっかり確認し、保証会社も利用いただいているのにかかわらず、万が一の時は誰が保証するのか、といった防御策まで取られるケースがあります。それに伴い、我々不動産会社の契約時の負担も増えていますし、何より入居希望者の条件によってはなかなか審査に通らないということもあります。

    すぐに何かを変えることは難しいのですが、「住居に関する保護」のバランスを見直すことにより、各々がよりメリットがある状態にすることが出来るのではないでしょうか。

    S-FIT社で取り組まれている改革があれば教えてください。

    実は今朝も、ある支店に行って「大規模な業務改革を行っていく」という話をしてきました。支店の従業員は生粋の営業マンですので自分のスタイルが出来上がっています。今までずっと、そのスタイルでやってきているわけです。そのスタイルを変えるということは、とても骨が折れるものなので、「改革の始まりはとても大変だが、それでも改革を行っていく」という事を伝えました。

    今までも様々な改革は行ってきたのですが、それは「もっと良くしていこう。」という前向きな発想でやってきました。しかし、今回の改革については「時代に迫られている」という側面が強いので、理解を得るのも容易ではありません。

    大きな背景としては、あらゆるコストが上がっているという点です。他の業界であればコストを価格に転嫁することは出来ますが、賃貸不動産業界は仲介手数料や管理料に価格転嫁をするのはなかなか出来ないのが実情です。それと冒頭でお伝えした「情報非対称性」が、「より一層減少した」という点も影響していると思います。

    このような背景があり「今すぐに改革をしていかなければならない」という状況になってきています。そのため、より生産性を上げ、例えば10人でやっていた仕事を5人でも出来るようにする。という発想が必要になってきます。営業担当がやる仕事、アウトソーシングで対応する仕事、デジタル化で対応する仕事と切り分け、営業担当は今まで以上に接客業務に集中出来るようにしていきます。

    最後に

    最後に読者のみなさまにメッセージをお願いします。

    今回は簡単にではありますが、賃貸仲介業界の現状、課題、そしてこれからの方向性についてお話しをさせていただきました。賃貸仲介業界は大きな変革の時を迎えており、この変化に適応し、改革を遂げることが必要です。次回の連載では、これらの課題と解決策、私たちが目指すべき未来についてさらに深く掘り下げていきます。

    私は、賃貸仲介業界がより良い未来へと進むために、みなさんと共に歩んでいくことを楽しみにしています。更なる賃貸不動産業界の発展を、一緒に成し遂げましょう。

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