ハウスパートナー 川﨑 斉社長|千葉県仲介件数No.1――20年で30店舗・管理2万戸を築いた「現場叩き上げ社長」の成長戦略
不動産業界の変化と将来性について、業界全体を幅広い視点で捉え、明確な方向性を持って業界を牽引するトップリーダーたちが、今後の不動産業界の進路を語る特別企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、千葉県を拠点に賃貸仲介・管理・売買を展開する株式会社ハウスパートナーの川﨑社長。音楽系の専門学校からIT関連の仕事を経て不動産業界に入り、二店舗目のオープンスタッフから20年かけてプロパー社長にまで上り詰めた。千葉県仲介件数No.1、管理戸数約2万戸、30店舗展開という急成長を牽引するその経営哲学と今後のビジョンについて、詳しくお話を伺いました。
音楽の道から不動産へ――プロパー社長が歩んだ20年
まずは不動産業界に入られた経緯と、社長就任までの歩みを教えてください。
▲株式会社ハウスパートナー 代表取締役社長 川﨑 斉 氏
音楽系の専門学校を卒業後、当時普及が進んでいた衛星放送関連の仕事や、通信自由化に伴う事業に携わっていました。IT分野の出身ではありませんが、周囲と比べるとパソコンの扱いには比較的慣れていたと思います。結婚を控えたタイミングで、「より安定した業界で働きたい」という思いから不動産会社に入社し、気がつけば20年以上が経ちました。
二店舗目の立ち上げメンバーとして入社し、当初は身の回りの業務を任されるところからのスタートでした。まさか20年後に自分が社長を務めることになるとは、当時は想像もしていませんでした。入社後は賃貸仲介の営業を皮切りに、店長、部長、取締役と段階的にキャリアを重ねていきました。
その後、東京エリアの社長を務めた時期を経て、一度その職を離れ、専務取締役としてCRM部門の立ち上げに注力しました。現在は東京・千葉両エリアの社長を務めるとともに、ホールディングス全体の社長も兼任しています。
入社当初は想像していなかったとのことですが、社長に就任された経緯はどのようなものだったのでしょうか。
当社はこれまでの成長過程の中で、経営体制の変遷を重ねており、複数回にわたり社長が交代してきました。外部から着任された方が、短期間で組織の特性や文化を十分に把握し、トップとして舵取りを行うことには難しさもあります。そうした点を踏まえ、今回お声がけをいただいたことが就任の背景にあります。20年以上この会社に在籍していますから、現場の実情も社員のことも深く理解しているつもりです。その点を評価していただいたのだと受け止めています。
千葉県NO.1の仲介件数を支える「店舗展開」と「現場力」
現在30店舗、年間仲介件数16,000件という規模ですが、どのように拡大してきたのですか。

当社は、管理受託によるストックビジネスの拡大と機動力ある仲介営業の相乗効果で成長を続けております。地道なオーナー開拓により自社管理物件を積み上げ、他社が介在しない独自物件を確保することで、優位性と安定収益を実現しています。千葉県ではまず、常磐線沿線と総武線沿線を重点的に展開してきており、現在はほぼ出店希望エリアへの展開を終えた段階です。出店の進め方は非常にシンプルで、「次はこの駅」という方針をあらかじめ定めておき、テナント募集が公に出る前の段階から街の動きに目を配り、「あの物件が動きそうだ」と察知すれば、オーナーに直接お声がけして、解約が出たタイミングで確保するということもあります。特別な手法を用いているわけではなく、社員による地道な情報収集と行動の積み重ねに尽きます。
出店戦略はどのように決めているのでしょうか。
ここ10年の目標は50店舗体制の構築です。おおむね年間2店舗のペースで着実に展開を進めていく方針です。当社の特徴のひとつは、特定のエリアに縛られていない点にあるかもしれません。「千葉県内のみ」といった形で商圏を限定してしまうと、どうしても成長に制約が生じます。
その点、当社は特定の商圏に縛られず、市場性に応じて出店エリアを柔軟に選定しています。市場性があると判断したエリアに、迷わず出店していく。そうした自由度の高さが、当社の強みにつながっていると考えています。
急成長を支える社員の「強さ」の源泉は何だと思いますか?
「ハウスパートナーの社員は非常にエネルギーがある」と評価いただくことが多いです。人材育成にも注力しており、宅地建物取引士の資格取得については高い水準で求めています。宅地建物取引士取得も支援しており、休日を使って懸命に学んでいる社員の姿も少なくありません。
店長候補の育成は、最も重要な経営課題のひとつです。「まだ早いかもしれない」と感じる段階であっても、思い切って任せ、その上の役職者がしっかりとフォローする体制を徹底しています。賃貸仲介に限らず「幹部候補の育成」、それが強さの源泉だと思います。店長同士の連携についても、月に一度の定例会議にとどまらず、日常的に活発な情報交換が行われる風土が根づいています。
急成長企業のリアル――組織づくりと時代への適応
300名規模の組織運営において、特に重視している取り組みは何ですか。

当社では、月に一度の全社集会のような場は設けていません。現在は、営業スキルや店舗運営のノウハウといった実務的な研修よりも、コンプライアンス教育に重点を置いています。具体的には、ウェブを活用した全社向けのコンプライアンス研修のほか、店長や幹部クラスを集めて顧問弁護士による講習を定期的に実施しています。営業や店舗運営に関する実務面については、現場の店長がそれぞれ高い専門性を持っています。一方で、事業を継続していくうえで求められるルールやリテラシーについては、全社としてしっかりと浸透させていく必要があると考えており、その点に経営として注力しています。
組織の規模が大きくなるほど、対応すべき課題も比例して増えていきます。各階層で対処しきれない問題は最終的に私のもとに上がってきますが、それは経営者として引き受けるべき役割だと捉えています。組織をつくり上げていくことは決して容易ではありませんが、それもまた私の仕事だと考えています。
働き方の変化に対応するために、制度面でどのような改革を進めていますか。
急成長を遂げてきた過程において、かつては労務管理の面で十分に整備が行き届いていない部分もありました。働き方についても、現在とは異なる状況にあった時期もありました。私自身も現場での経験が長いことから、働き方に対する価値観の変化に戸惑いを感じる場面もありました。
しかし、今の世代の社員が安心して働ける環境を整えることが、組織としての持続的な成長には不可欠だと考えています。労働時間に対する意識も大きく変化する中で、法令遵守を前提とした制度設計に継続的に取り組んでいます。就業規則や勤務体制の見直しも進めながら、時代の変化を踏まえた柔軟な対応を経営として重視しています。
賃貸仲介の先へ――管理・売買・基幹システムで描く次の成長曲線
賃貸仲介以外の収益の柱について、詳しく教えてください。

もともと賃貸仲介を祖業とした会社ですが、近年は売買事業にも本格的に取り組み始めています。専門のスタッフを採用し、投資用の収益物件に加えて、従業員約300名の組織力を活かした実需向けのマンション売買仲介にも事業領域を広げてきました。
興味深いのは、賃貸のお客様とのやり取りから売買の相談につながるケースが想定以上に多いという点です。お客様へのヒアリングの中で、「親が所有しているマンションがあり、売却を検討している」といった話が自然と出てくることがあり、そのまま成約に至るケースも珍しくありません。振り返ってみると、これまでは、そうした潜在的な商機を十分に拾いきれていなかったと感じています。
管理戸数は現在およそ2万戸弱で、入居率は97〜98%の水準を維持しています。新規店舗を出店するたびに、そのエリアの管理物件をあわせて開拓していくというサイクルを着実に回し続けています。
基幹システムの刷新やペーパーレス化など、全社的なDXにどのように取り組んでいますか。
現在、大規模な基幹システムの開発を進めています。既存の賃貸管理ソフトをベースに、自社のオペレーションに最適化したカスタマイズを施し、オーナー向けアプリ、入居者向けアプリ、ペーパーレス化の仕組みをすべて一つのシステムに統合するという構想です。完成までにはおよそ2年を見込んでおり、現在はまさに関係者との協議を重ねながら構築を進めている段階です。
あわせてRPA(業務自動化ツール)も導入しており、経理処理の一括化をはじめとする定型業務の効率化に活用しています。デジタル領域の専門メンバーと連携しながら推進しており、投資規模やスケジュールを踏まえた意思決定に注力しています。
50店舗・売上100億へ――現場叩き上げ社長が見据える未来
今後の事業展開について、どのようなビジョンを描いていますか?

まずは50店舗体制の構築と、売上高100億円の達成を目標としています。営業エリアは千葉・東京・埼玉を中心に展開しています。なかでも東京都内には出店余地が大きく、人口規模の観点からも、さらなる成長が見込めるエリアと捉えています。将来的には川崎エリアを足がかりに神奈川県への進出も視野に入れつつ、まずは都内での出店拡大を優先していく方針です。
賃貸仲介市場の先行きをどのように捉え、どのような備えを進めていますか。
賃貸仲介の手数料収入に依存したビジネスモデルは、今後の市場環境の変化を踏まえると、構造的な見直しが求められる可能性があります。継続的な成長を実現していくためには、新たな収益基盤の強化が不可欠です。そのため、売買事業の拡充と管理物件の拡大を、これまで以上に推進していく方針です。
現在の市場環境としては、家賃相場が上昇傾向にあり、既存入居者の住み替えが抑制される傾向から、空室率は低い水準で推移しています。入れ替わりの件数は減少傾向にあるものの、成約単価の上昇により、収益面では一定の水準を維持しています。管理物件の入居率も97〜98%を維持しており、解約後も速やかに次の入居が決まる状況が続いています。
一方で、こうした市況が長期的に継続するとは限りません。だからこそ、市場環境が安定している今のうちに、次の収益の柱を着実に育てていくことが重要だと考えています。
まとめ

音楽の道から不動産業界へと転身し、二店舗目のオープンスタッフとして入社してから20年を経て社長に就任された川﨑氏。その歩みは、ハウスパートナーの成長の軌跡と重なります。特定の協会やエリアの制約にとらわれることなく、一店舗ずつ着実に展開を重ねてきました。そうした積み重ねと現場に根差した実行力によって、千葉県における仲介件数トップの実績を築き上げています。
取材を通じて印象的だったのは、「特別なことは何もやっていない」という言葉です。その言葉の裏には、基本を愚直に積み重ねる姿勢があります。20年で30店舗・管理2万戸という実績は、そうした積み重ねの成果といえるでしょう。賃貸仲介市場の変化を見据え、売買事業や管理領域への展開を進めるとともに、基幹システムの刷新にも取り組んでいます。現場を知り尽くした社長のもと、ハウスパートナーは次の成長フェーズへと歩みを進めています。
本記事取材のインタビュイー様

株式会社ハウスパートナー
代表取締役社長
川﨑 斉 氏
音楽系の専門学校卒業後、IT関連の仕事を経て不動産業界へ。ハウスパートナーの二店舗目のオープンスタッフとして入社し、賃貸仲介営業、店長、部長、取締役を歴任。ハウスパートナー東京社の社長、専務取締役としてCRM部の立ち上げを経て、東京・千葉両社の代表取締役社長およびホールディングス社長に就任。千葉県仲介件数No.1、管理戸数約2万戸、30店舗体制の急成長企業を、現場を知り尽くしたプロパー社長として率いる。
会社紹介
株式会社ハウスパートナー
https://www.h-partner.com/
株式会社ハウスパートナーは、千葉県を拠点に東京・埼玉にかけて賃貸仲介・管理・売買を展開する地域密着型の不動産会社。2002年頃の創業から約20年で30店舗、管理戸数約2万戸、従業員約300名、年間仲介件数16,000件を達成し、千葉県仲介件数No.1の実績を持っています。年間二店舗ペースでの出店を継続し、当面の目標は50店舗・売上100億円。現在、大規模基幹システムの開発やペーパーレス化を推進中。






