大和不動産 小山陽一郎社長|入居率97%超を誇るさいたま市のトップ管理会社が実践する「チーム制×資産コンサル」経営
不動産業界の変化と将来性について、業界全体を幅広い視点で捉え、明確な方向性を持って業界を牽引するトップリーダーたちが、今後の不動産業界の進路を語る特別企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、さいたま市を拠点に賃貸・管理・売買を展開する株式会社大和不動産の小山陽一郎氏です。電鉄系不動産会社でのキャリアを経て祖父が創業した大和不動産へ入社し、現場を一通り経験したのち40歳で社長に就任。管理戸数さいたま市トップクラスを誇る同社が実践する「チーム制」「ジョブローテーション」「資産コンサルティング」の全貌について、詳しくお話を伺いました。
現場を知る経営者の原点
まずは不動産業界に入られた経緯と、大和不動産でのキャリアについてお聞かせください。
▲株式会社大和不動産 代表取締役社長 小山 陽一郎
明治大学商学部を卒業後、電鉄系の不動産会社に就職しました。その後、父が経営していた大和不動産に入社したのですが、少し珍しい経緯がありました。
というのも、父は私の入社の少し前に退職しており、「兄弟順番に社長をやったほうが良い。親子で同じ職場で働くことは、お互いにとって必ずしも最善とは限らない」という考えから、一定の距離を置く選択をしていたのです。代わりに父の弟――私からすると叔父――が社長に就任していました。そのため、父と同じ職場で働いた経験は一度もありません。
入社後は不動産鑑定士の勉強もしながら、武蔵浦和店の賃貸からスタートしました。その後は管理、新店舗の立ち上げ店長、売買、大宮店の店長、賃貸の契約専門部署、管理受託専門部署と、現場のほぼすべてを経験しました。ちょうど40歳で社長に就任したのですが、今年で57歳になり、社長歴はもう16年になります。現場を一通り経験してきたことが、今の経営に確実に生きていると感じています。
社長就任の際、経営の基盤として取り組まれたことはありますか?
ちょうど世代交代するタイミングで、埼玉県経営品質賞の存在を知りました。公益財団法人日本生産性本部が運営するプログラムで、エントリーした初年度は改善点も多く見つかりましたが、2年目に優秀賞、3年目に知事賞を受賞することができました。
▲「日本経営品質賞」
経営品質の考え方の基本は「顧客本位・社員重視・独自能力・社会との調和」の4つです。いわゆる「三方よし」の精神に通じるものがあります。毎年50ページほどの申請書を作成する中で、自社を客観的に見つめ、言語化していく経験は非常に大きなものでした。社長就任にあたっての原点の一つになっていると感じています。その考え方は現在も「経営計画書の中の大和クレド」として毎年作成し、毎朝の朝礼や部門別研修や全体研修会を通じて全社員への浸透を図っています。また、金融機関やビジネスパートナーをお招きしての経営計画発表会でも共有し続けています。
さらに、新しい組織風土づくりと浸透を目的として、新卒の定期採用も始めました。
さいたま市内で貴社のブランドを高めるための取り組みとして、具体的にどんなことをされていますか?
管理物件には当社のロゴマークにちなんで「虹のマーク」の看板を掲げています。また、エリア内のアパートオーナーを市場調査し、毎月発行しているオーナー様向け広報誌「レインボーニュース」を24年にわたり毎月発行し、オーナー様に郵送しています。また、私と経営幹部とで執筆した書籍『地主必見! 9つのケーススタディで学ぶ 土地のお悩み解決メソッド』をお渡ししたりしています。
▲オーナー様向け広報誌「レインボーニュース」と著書の『地主必見! 9つのケーススタディで学ぶ 土地のお悩み解決メソッド』
あわせて「オーナー様感謝の集い」を30年前から開催しており、最近では浦和会場と大宮会場で約400名のオーナー様をお招きして、パーティーを開催しています。
▲「オーナー様感謝の集い」の様子
地域の会合にも積極的に参加し、現場に足を運ぶことを大事にしています。地域のお祭りや商工会議所やロータリークラブ、安全運転管理者協会、法人会など、地域に根ざした活動にはできる限り参加し、清掃活動にも取り組んでいます。
また、管理エリアは自社で迅速に対応できる30分圏内に絞っています。遠方の物件についてはお断りすることもありますが、対応の遅れによってオーナー様にご不便をおかけするよりも、このエリアでのサービス品質を高めていくことを重視しています。さいたま市は毎年約1万人の人口増加が続く成長市場でもあり、この地域にしっかり向き合っていくという考えです。
「部門最適」から「顧客最適」へ
チーム制が生んだ入居率97%超の秘密
貴社の強みである「チーム制」について、導入の背景から教えてください。

以前、オーナー様から「賃貸の担当者は賃料を下げましょうと言い、管理の担当者はリフォームして賃料を上げましょうと言う。売買の担当者は売却を提案する。いったいどういうことなのか」とご指摘をいただいたことがあり、非常に考えさせられました。
当時は、それぞれの部門が個別最適で動いていた状況で、賃貸と管理の間でも連携が十分とは言えない時期がありました。そこで賃貸・管理・売買の各担当者が同じテーブルで議論し、一人のオーナー様に対してチームで向き合う体制へと転換しました。
現在では、そうした取り組みを続ける中で、立場を越えて意見を出し合いながら、オーナー様にとって最適な提案を検討できる組織へと変化してきています。
チーム制の取り組みについては、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
年に1回、原状回復やお問い合わせ対応の話ではなく、1年間のキャッシュフローについてオーナー様としっかり話し合う機会を必ず設けています。アパート・マンションオーナー様にキャッシュフローの改善提案をしてくれる管理会社は少ないので、そこが差別化になっています。
また入居率が落ちていた時期には、管理担当・賃貸担当・オーナー様の3者で現地を一緒に歩くようにしました。オーナー様は意外とご自分の物件を見に行く機会が少なく、実際に現場を見ると「ここは改善したほうが良いですね」と自分事として気づいてもらえる。その場でリフォームや設備更新の話が具体的に進み、商品力が上がって、結果として入居率が上がっていきました。
入居率は小数点第2位まで毎日算出し、RPAで全社員に共有しています。計算方法を統一し、数字を正確に把握することも重要だと考えています。6〜7年前に97%という目標を掲げた当初は、難しいのではないかという声もありましたが、現在ではその水準が定着しつつあります。
エンドユーザー向けの売買から撤退された、と聞きました
そうですね。大手が広告費を含めて圧倒的な資本力を持つ領域で競争するよりも、当社として強みを発揮できる分野に集中すべきだと考えました。そのため、エンドユーザー向けの売買領域からは距離を置き、6〜7年前にオーナーの資産コンサルティングへと舵を切りました。
入居率が安定していなければ、資産コンサルティングの提案も十分に受け入れていただけません。まずは空室対策を徹底し、入居率を維持すること。その上で信頼関係を築き、資産コンサルティングの提案へとつなげていく――この流れを大切にしています。
次世代への資産承継や節税、キャッシュフロー改善など、オーナー様の視点で見ると、賃貸・管理・売買はすべて一体のものとして捉えられるべきだと考えています。
ジョブローテーションと組織文化
個人力と組織力を両立させる仕組み
業界では珍しい「ジョブローテーション」を導入されていると伺いました。経緯など詳しく教えていただけますか。

DXを進めていく中で、自部署だけでなく他部署との連携の重要性が一層高まってきました。そこで3年に1回を目安に、原則として全社員を対象としたジョブローテーションを導入しています。現在では6年ほど継続しています。
導入当初は、売上への影響を懸念する声もありました。しかし、短期的には一時的な変化が生じる場合があっても、中長期的には個人のスキル向上と組織力の強化の双方につながると考えています。また、属人化の防止という観点でも重要な取り組みです。人材の流動性が高まる中で、急な休職や環境の変化にも対応できるよう、組織として仕組みで業務を回せる体制づくりを進めています。
制度の浸透にあたっては、まず管理職から先行して実施し、前向きなキャリア形成の一環であるという認識を広げていきました。その結果、現在では自ら異動を希望する社員も増え、ジョブローテーションが組織に定着しつつあります。
属人化に頼らずとも、一人ひとりがお客様から深く信頼される「人間力」を磨くために、日常的に大切にされていることはありますか?
専門能力と人間力の両方を備えないと、お客様からの信頼はいただけないと考えています。毎朝9時から9時15分は全員で会社の清掃を行い、その後15分間はウェブ朝礼で各担当者がスピーチをします。各店の朝礼でも「職場の教養」という冊子をもとに感想を発表するなど、毎日の積み重ねを大事にしています。
また毎月、論語の専門家を招いて勉強会も開催しています。ロールプレイの専門能力研修と合わせて、人としての軸をつくる取り組みを続けています。
10年先を見据えた経営者の視座
DX推進について、今後の方向性を教えてください。

現在、オーナーアプリとCRMの連携強化に取り組んでいます。データを貯めるだけでは意味がなくて、使えるデータを営業効率化・営業戦略にどう結びつけるかが重要です。CRMは短期ではなく中長期の効果を狙うもので、社内ではコンサルティング業務のストックビジネス化のために必要な投資だと説明しています。
将来的にはオーナーアプリ上でライフプランが閲覧できる機能の実装も検討しています。FP会社との連携により、オーナー様の資産情報を一元的に管理できる仕組みを構築し、CRMとの連携も視野に入れながら、より高度な資産提案につなげていく方針です。
最後に、今後10〜20年の大和不動産のビジョンについて教えてください。
地域に根ざした「不動産の町医者」になりたいと思っています。大学病院ではなくていい。かゆいところに手が届く、何でも相談できる、地域に頼られる存在を目指しています。
毎週月曜日に幹部会を開いて、中長期の事業の方向性について継続的に議論を重ねています。単年度と中長期の両方の目線を持つこと――これは社長だけでなく、幹部も一般社員も含めて意識していくことが大切だと考えています。
お客様と社員の双方に満足いただけるような独自のビジネスモデルを磨き上げ、安定的に成長していくこと。地域の「不動産の町医者」として、これからも地域のオーナー様に信頼していただける会社であり続けることが目標です。
まとめ

現場の各職種を経験してきた経営者が率いる大和不動産は、「部門最適から顧客最適へ」というシンプルな原則を徹底することで、さいたま市内でトップクラスの管理戸数と入居率97%超を実現しています。チーム制、ジョブローテーション、毎日の朝礼と論語の勉強会――いずれも派手さはありませんが、着実に組織力を高める取り組みが積み重ねられています。
特に印象的だったのは、「入居率が安定していなければ、資産コンサルティングの提案は受け入れてもらえない」という言葉に象徴される、一貫した戦略の考え方です。足元の信頼を着実に積み重ねた先にこそ、本質的な顧客価値の提供があるという姿勢が、大和不動産の強さを支えています。
オーナーアプリの開発など、10年先を見据えた挑戦も続けながら、地域に根ざした「不動産の町医者」として、同社は今後も進化を続けていきます。
本記事取材のインタビュイー様

株式会社大和不動産
代表取締役社長
小山 陽一郎 氏
明治大学商学部卒業後、電鉄系不動産会社に就職。その後、父が経営する大和不動産に入社し、賃貸・管理・売買・店舗運営など現場の全職種を経験。40歳で社長に就任し、現在17期目。埼玉県経営品質賞(知事賞)受賞。「チーム制による資産コンサルティング」「ジョブローテーション」「毎日の朝礼文化」など独自の経営スタイルでさいたま市の管理市場をリードする。
会社紹介
株式会社大和不動産
https://www.home.co.jp/
さいたま市を中心に賃貸・管理・売買を展開する地域密着型の不動産会社。「顧客最適」の視点から賃貸・管理・売買の担当者がチームを組んでオーナーを支援する体制を構築し、管理物件の入居率97%超を維持。毎年純増1万人のさいたま市場に集中し、30分圏内の管理エリアを徹底。毎月発行の広報誌「レインボーニュース」や書籍出版、論語勉強会など、地域への情報発信と社員の人間力向上にも力を注ぐ。埼玉県経営品質賞(知事賞)受賞。






