【専門家インタビュー】舛田 香穂様|【エイブル】不動産賃貸業界“初”ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とプロモーショナル・ライセンス契約で、PRを超えた「新しい価値」を生み出したい。
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とのプロモーショナル・ライセンス契約を締結し、様々な企画を打ち出している株式会社エイブル。
今回は、2023年に登場したばかりの「ミッキーデザイン キー」をはじめとするこれまでの企画ほか、不動産業界がキャラクターとプロモーション展開する意義や可能性、今後の展望までを株式会社エイブルホールディングス事業企画推進室 CRMグループ Dプロジェクト担当・舛田 香穂 様に伺いました。
不動産賃貸業界で“初”のウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とのプロモーショナル・ライセンス契約。「Dプロジェクト」で、PR展開を担当
貴社の事業内容についてお聞かせください
エイブルグループは、賃貸仲介サービス業と物件管理ほか、リフォーム、パーキング、引越運送、人材派遣など幅広い事業を展開しています。
私は、グループ事業のサポートなどを担う株式会社エイブルホールディングスの「事業企画推進室 CRMグループ Dプロジェクト」に所属しています。
舛田さんがいらっしゃる「事業企画推進室 CRMグループ Dプロジェクト」はどのような部署ですか?
Dプロジェクトは、「Hello Happiness!」をスローガンに、ディズニーキャンペーンやプロモーションを企画・運営する部署です。つまり、Dプロジェクトの「D」はディズニーのことですね。
2018年、親会社である株式会社エイブル&パートナーズが、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とプロモーショナル・ライセンス契約したことがはじまりです。
その後ディズニーの専属部署が発足。エイブルの店舗に近いエイブルホールディングスにて、企画・運営を行っています。
2018年は、エイブルの創業50周年の節目にあたるため、ディズニーとライセンス契約させて頂いたのは、大きいことだったと思います。 なお、ディズニーとのプロモーショナル・ライセンス契約は、国内の不動産賃貸仲介業界としては初の試みです。
Dプロジェクトにおける舛田様の主な業務内容をお聞かせください。
Dプロジェクトには現在4人のメンバーがいますが、個人プレーというよりは、チーム全体で企画・運営を進めています。
業務内容は、「ディズニー」「ピクサー」のキャラクターを使った販促品の製作から、キャラクターをフック とした来店促進・成約促進、キャンペーンの実施まで幅広いです。
なお、2023年にリリースした「ミッキーデザイン キー」は、私も企画当初から入っていて、開発からプロモーション施策の企画・運営までをしました。
多彩なグッズにミッキーデザインルーム。Dプロジェクトのこれまでの歩み
Dプロジェクトがこれまでに展開した企画を教えてください。
ミッキーデザインルームへの「お試し入居キャンペーン」は反響が大きかったですね。
空間全体にミッキーマウスがデザインされたお部屋に入居できるキャンペーンで、第4弾まで実施しました。
3部屋の用意に対して、多い時には1回で3,000件ぐらいの応募があり、この企画をきっかけに、ディズニーファンの方にも、そうではない方にも弊社の企画を知っていただくきっかけになった企画かと思います。
また、クリアファイルをはじめ、プリンセスのキャラクターがプリントされたルームランタンなど、すでに多くのグッズも登場していますが、特に2023年はディズニー創立100周年にあたるので、今年しか作れない限定デザイングッズをプレゼントするキャンペーンも実施しました。
そして、この2023年というタイミングで「ミッキーデザイン キー」がリリースできた点は、大きな成果ですね。
2023年「ミッキーデザイン キー」登場。進学・新社会人・結婚などの記念やプレゼントに好評
「ミッキーデザイン キー」とはどんなものでしょうか?
「ミッキーデザイン キー」は、鍵のヘッド部分にミッキーマウスがデザインされたエイブルオリジナルデザインの鍵です。
エイブルの直営店舗(一部店舗を除く)にて、施工対象物件をご契約いただいたお客様を対象に「ミッキーデザイン キー」の鍵交換サービス(有料)をご提供しています。
こちらの鍵は、ご入居いただくドアに合わせて「Opnus製 メモリス」「ウエスト製 ディンプルキー」どちらかのデザインを施工いたします。
さらに、「ミッキーデザイン キー」をお申込みいただいた方限定で、記念ノベルティ(キーオブジェ)をプレゼントしています。
開発のきっかけをお聞かせください。
普通のノベルティを製作してお渡しする施策だけでも、ディズニーファンの皆様には喜んでいただけるかもしれません。
しかし、賃貸仲介業でディズニーライセンスを組めるのは当社だけですから「賃貸だからこそできるサービスをやりたいね」という話を、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社様との会議の場でご提案しました。
そして、会議の話し合いの中で「鍵がいいのでは」というアイデアが出てきたのです。
鍵は、お部屋と関連付けやすい商品ですし、常に持ち歩くことができます。また、家に入る瞬間のわくわく感を演出する意味でも、鍵は適していますので「ミッキーマウスの顔の形をした鍵を作ってみよう」ということで、今回リリースさせていただきました。
開発期間はどのくらいだったのでしょうか?
アイデア出しからリリースまで、2年くらいかかりました。
鍵の製作では安全性の問題を考慮する必要があり、その上で鍵の金型を作らなければなりません。
このような点をメーカーさんと調整したり、店舗側の運用体制を調整するなどで時間を要しました。
開発するにあたって苦労された点、障壁などはございましたか?
賃貸仲介業でディズニーの鍵を制作する試みが初であったため、色々と難しい点はありましたね。
業界初ということで「どういうデザインができるのか」というところから、安全面・販売体制の整備まで、前例がない中で試行錯誤する苦労がありました。
実際に商品化してみて、舛田様のご感想は?
完成した「ミッキーデザイン キー」が手元に届いたときは「本当にできた」と嬉しかったです。
私自身もすごいディズニー好きですが、これまでに(実際に使用可能な)ディズニーの鍵という商品は存在していなかったのではと思います。
私自身「ミッキーデザイン キー」を愛用していて、この鍵で自分の家の鍵を開けたときは、何とも言えない嬉しさを感じました。そして「本当に鍵ができた」ということに感動を覚えました。
また、家から出るとき・家に帰ってくるときなどに「ミッキーデザイン キー」が目に入ると「今日も頑張ろう」「今日も頑張ったな」と感じることができますね。
このような気持ちになるのは、鍵のヘッド部分にミッキーマウスがデザインされているからこそだと思います。
オーナー様、入居者様の反応はいかがですか?またどんな方が実際にお部屋を借り、この鍵を購入されているのですか?
やはり入居者様向けのサービスということで、現在は賃貸オーナー様よりも、入居者様からの反応が大きいです。
「ミッキーデザイン キー」をご購入くださった方は、ディズニー好きの方が多いですが、それ以外にも大学進学・新社会人・結婚・一人暮らしの記念にご購入いただくケースが多かったです。
実際に「ミッキーデザイン キー」を利用いただいている入居者様からは、「デザインがとてもかわいいですね」「(ディズニーキャラクターの鍵がこれまでになかったので)友達や家族の中でも話題になりました」「使うたびに癒されています」などの嬉しいお言葉をいただいております。
「ミッキーデザイン キー」のリリース後、実際に不動産会社様とのお取引件数は増えましたか?
「ミッキーデザイン キー」はエイブルオリジナル商品になるので、他の不動産会社様への販売は行っていないのですが、雑誌やWebメディアなど様々な媒体で取り上げていただいたり、SNSを通じてディズニーファンの方々に知っていただくことができ、世の中の話題になり、それがエイブルの宣伝にもつながったかと思いますので、その点は非常に良かったです。
「ミッキーデザイン キー」について、今後の展開を教えてください。
ミッキーマウス以外のデザインも増やしていけたらと考えています
私は、ディズニーキャラクターの中ではミニーマウスが1番好きなので、特徴的な耳のデザインなどもぜひ手掛けたいですね。
くらしに新しい価値・体験を提供する。キャラクターライセンスビジネスの可能性
御社のような国内でも大手の不動産賃貸仲介会社が、キャラクターライセンスビジネスを行う意義について、どうお考えですか?
※過去にお配りしたキャンペーンノベルティです。現在はお配りしておりません。
キャラクターライセンスビジネスを行う意義については、当社にとっては大きく分けて3つあるかと思っております。
1つめは、キャラクターを使用するからこそ実現できる「新しいサービス・新しい価値」を世の中に出していける点です。
2つめは、入居者様とオーナー様の双方に、安心や親しみを感じていただける点です。
当社のような賃貸仲介業のサービスは、入居者様とオーナー様をつなぐサービスですので、企業イメージとして安心感・親しみやすさが重要になるかと思います。その意味でもディズニーはイメージにマッチしていますし、同時に、入居者様とオーナー様にワクワクした気持ちを持っていただけますので、大きな意義があるかと思います。
3つめは、エイブルを選んでいただくきっかけとなる点です。ディズニーに親しみを感じる方をはじめ、やはり注目度は高くなりますので、エイブルをご利用いただく1つのきっかけとなれば嬉しいです。
「ミッキーデザイン キー」以外で、これから取り組みたいキャラクターライセンスビジネスの展望をお聞かせください。
第4弾まで実施した、ミッキーデザインルームへの「お試し入居キャンペーン」は好評でしたが、こちらはあくまでも1〜2ヶ月の期間限定です。
個人的には、今後お試しではなく、賃貸物件として本当に住めるようにできたらいいなとは考えています。あくまでも構想段階ですが、ディズニー側と調整を図り、実現できるようにしたいです。 それから、SNSのキャンペーンも展開していきたいですね。
当社のような業界は、お客様が「お部屋を探そう」と思わないと、なかなか接点が持てない部分もあるかと思います。しかし、SNSを使ったグッズのプレゼントキャンペーンなどを通じて、今はお部屋探しをしていない方、今後お部屋探しするかもしれない方などにアプローチすることができるのでは、と思っています。
さらに、ディズニーが開催するイベントに出店する物販催事のような形で、ディズニー ファンの皆様にエイブルをもっと身近に感じていただくような企画もやっていきたいですね。
今後の不動産業界を見据えた際に、消費者に対してキャラクターライセンスビジネスのあるべき姿はどのようなものだとお考えでしょうか?
キャラクターライセンスビジネスは、キャラクターを単なるPRで使用することを超えて「くらしにおける新しい価値を生む」ところまで行けるのではないかと考えています。
やはり「それぞれのキャラクターが持っている世界観・物語性」がありますので、それを生かしたサービスが出てくると、くらしがもっと楽しいものになるのではないでしょうか。
次の50年へ。不動産賃貸業界や社会の課題解決にも意欲
舛田様の、今後のビジョンや想いをお聞かせください。
先ほどお伝えしたことと重複しますが、お試し入居ではなく、ミッキーデザインルームに本当に住めるようにできたらいいなと考えています。
「ディズニーが持つ世界観の中でお部屋を探している」「ディズニーに囲まれたくらしがしたい」と思う一方、実際には実現できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで、ディズニーの世界観のお部屋が登場し、借りたいと思った人に借りていただけるそんなサービスをぜひご提供したいですね。
また、私はサーフィンが趣味なのですが、ゴミが海に浮かんでいるのを目にしたことをきっかけに、SDGsや環境保護にも関心を持つようになりました。
SDGsや環境保護は不動産業界が取り組むべき課題でもありますが、それに関連した大きな課題の1つに「空き家問題」があります。
近年は空き家のリノベーションなども流行していますが「もしも、キャラクターの世界観を活かした空き家リノベーションができたら面白いのでは」と、個人的にはすごく思っているところです。
株式会社エイブルホールディングス様として、今後のビジョンや想いをお聞かせください。
現在は少子高齢化や働き方の変化などにより、多様なニーズが出てくる時代です。
例えば、ワーケーションやアドレスホッパーのような働き方も増えており、これまでのように「数年住んで更新」という形に縛られないお客様もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
「価値観の多様化をチャンスと捉え、すべてのお客様に、より一層行き届いたサービスを提供する」という部分は、弊社の企業理念でもありますので、 色々なお客様のニーズにお応えし、変わっていく世の中に対応できるような会社であり続けたいと思っております。
近年、チャットボットやAIが登場し、不動産業界にもインパクトを与えていますが、お部屋探しはお客様の背景や気持ちを汲んでご提案する「人に寄り添う仕事」として残り続けるのではないでしょうか。
その意味でディズニーは、まさに100年間、人々の生活や人生に寄り添ってきた存在です。私たちエイブルも「お客様に寄り添いながら、一緒に走りたい」という気持ちでやらせていただいています。
不動産賃貸業の今後の発展のために、業界全体で取り組んでいくべきことや、方向性などについてどのようにお考えかお聞かせください。
個人的には、お客様にとってより身近な存在を目指したいですね。
現状ではコンビニエンスストアほど気軽に入れるわけではないので、不動産会社や店舗が入りやすくなったらいいなと思います。
それから、先ほどお話ししたワーケーションやアドレスホッパーなど、賃貸ニーズも多様化していますので、それに対応したサービスを作ることが業界としても重要ですし、私自身も作っていきたいです。これも、間口を広げることにつながるのではないでしょうか。
そして、ディズニーのデザインルームもそうですが、単なる居住空間だけではなく、新しい体験や価値をご提供することが求められてくるかと思います。そうしたニーズにお応えする中で、業界全体も面白くなるのではないでしょうか。
まとめ
Dプロジェクトのミッションは「ディズニーを通じて、エイブルという会社を、もっと多くの方に知っていただく」こと。100年の歴史を持つディズニーは、エイブルにとって目標とも言える存在です。「人に寄り添って、新しい体験や価値を生み出す」というコンセプトは、今後の不動産賃貸業界の発展を考える上で大きなキーワードとなることでしょう。
本記事取材のインタビュイー様