【アンケート調査】ペット可物件において管理会社が直面する問題とは│ランキング形式で紹介
コロナ禍をきっかけにペットブームが起こり、新たにペット飼い始める人が増えました。それに伴ってペット可物件の需要も高まっています。一方で、ペットの飼育に起因するさまざまなトラブルは、物件管理の課題となります。
今回は、ペット可物件の管理運営に関する問題と対策を、全国の管理会社を対象に実施したアンケート調査の結果からランキング形式でご紹介します。
ペット可物件の管理で最も対応に苦慮する問題

出典:GMO賃貸DX WEBメディア編集部独自調べ(N=100)
ペット可物件の管理で最も対応に苦慮する問題をアンケート調査した結果は次のようになりました。
第1位:鳴き声によるご近所トラブル
第2位:無断でのペット数増加
第3位:退去時の原状回復費用に関するトラブル
第4位:共用部での排泄物の処理不備
第5位:臭気対策の不十分さ
第6位:許可されていない動物種の密かな飼育
第7位:エレベーター内でのペットとの接触トラブル
第8位:ベランダからの抜け毛・餌の飛散
第9位:共用部での放し飼い
第10位:規定サイズを超える大型犬の飼育
以下では、アンケート結果の理由について具体例を交えて解説していきます。
第1位:鳴き声によるご近所トラブル
鳴き声に関するトラブルが第1位となった背景には、集合住宅ならではの構造やライフスタイルの変化といった要因があります。
上下階や隣接する部屋への音の伝わりやすさから、特に飼い主不在時の吠え声は近隣トラブルに発展しやすいためです。早朝・深夜の鳴き声は生活リズムの異なる入居者間の軋轢を生む原因ともなりかねません。
また、リモートワークで在宅時間が長くなっていることも影響すると考えられます。
主な対策は以下の通りです。
- 防音性の高い集合住宅を指定
- 入居時の説明と同意書の取得
- 定期的なしつけ教室の開催
- 近隣住戸への事前説明と理解促進
- トラブル発生時のサポート体制
前提として入居時に「ペット可」物件であることを説明し、鳴き声などが聞こえる可能性がある点を強調して伝えておきましょう。
トラブル発生時には管理会社による仲介と専門家のアドバイスを取り入れ建設的に解決策を探ることが大切です。周りに迷惑をかけ続ける飼い主には退去を検討してもいいかもしれません。
第2位:無断でのペット数増加
第2位は無断でのペット数増です。
契約時に申告した頭数を超えて飼育するケースや、猫など繁殖力の強いペットの子どもが増えるケース、知り合いに頼まれたペットの一時的な預かりが常態化するケースなどが挙げられます。
主な対策は以下の通りです。
- 定期的な飼育状況のチェック
- 避妊・去勢手術の義務付け
- ペット登録証の発行と更新
- 飼育できる頭数のルール化(賃貸借契約書に明記するなど)
- 増加時の事前申請制度を導入
特にペット登録証の発行は、写真付きの身分証明として機能し、無断での飼育増加を防ぐ効果があります。
また、避妊・去勢手術の義務付けは、予期せぬ繁殖を防ぐだけでなく、ペットの健康管理の観点からも推奨される取り組みです。
第3位:退去時の原状回復費用に関するトラブル
ペットによる傷や臭いの除去に関するコスト負担や責任範囲について、入居者、不動産オーナー、管理会社との間で認識違いがあることで起こるトラブルです。
特に長期入居の場合、通常使用による劣化とペットによる損傷の区別が難しく、退去時にトラブルとなりやすいでしょう。
主な対策は以下の通りです。
- 入居時の室内状況の記録
- 専用クリーニング費用の事前説明
- 退去時の費用明細の明確化
特に入居時の写真付き記録は、退去時のトラブル防止に効果的です。
また、トラブルを防ぐためには国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従って責任範囲を明確にし、入居時に説明すべきでしょう。
第4位:共用部での排泄物の処理不備
一部のマナーの悪い飼い主の行為が、悪臭や景観を害するトラブルを引き起こす原因になります。
主な対策は以下の通りです。
- ペット専用の清掃用具の設置
- 処理ルールの明確化
- 監視カメラによる抑止・警告
- 定期的な清掃サービスの実施
ペット専用の清掃用具を常備することで、突然のペットの排泄にも対処できます。また、処理ルールを明確化して入居者に伝えておくことで「マナー違反である」という認識を持たせることも大切です。
第5位:臭気対策の不十分さ
鳴き声と同じく臭気も隣接する部屋とのトラブルになりやすい問題です。特に気密性の高い物件では、換気の問題と相まって深刻化しやすい傾向にあります。
主な対策は以下の通りです。
- ケージ内での飼育依頼
- 排泄物処理(ゴミ出しなど)のルール化
- 匂いが染みついた壁紙などの張り替え
壁紙の張り替えには多額のコストがかかるため、できる限り入居者に協力を仰ぐことが大切です。
第6位:許可されていない動物種の密かな飼育
契約時に認められていない動物種の飼育がトラブルとなる背景には、小動物や爬虫類など、飼育の判断が難しいペットの増加があります。
また、「かわいそう」という感情から、野良猫などを無断で保護するケースも見られるでしょう。
主な対策は以下の通りです。
- 飼育できる動物種のルール化
- 新規ペット飼育時の事前申請制
- 定期的な飼育状況のチェック
- 違反時のペナルティを設定
飼育できる動物種をリスト化しておくと、入居者の誤解を招きません。また、新規ペットの飼育開始時には事前申請を必須とすることで、許可されていないペットの飼育を未然に防げます。
第7位:エレベーター内でのペットとの接触トラブル
エレベーターなど狭い空間での人とペットの接触トラブルは、ペットのしつけ状況やペット同士の威嚇によって引き起こされます。
もし噛みつきなどで怪我を負った場合、訴訟問題に発展する可能性もゼロではありません。
主な対策は以下の通りです。
- ケージ・抱っこの義務付け
- 注意喚起ポスターの掲示
- 乗り合わせ時のマナー周知
抱っこやケージでの移動義務付けは、他の入居者への配慮として効果的でしょう。
第8位:ベランダからの抜け毛・餌の飛散
ベランダで飼育していると抜け毛や餌が飛散して、階下や隣り部屋の住民とのトラブルになるかもしれません。
主な対策は以下の通りです。
- ベランダでの飼育禁止
- 防護ネットの設置義務
特にベランダでの餌やりは禁止とし、室内での給餌を推奨することで、鳥害や虫害の予防にもつながります。また、防護ネットの適切な設置により、餌の飛散を防ぐことができます。
第9位:共用部での放し飼い
エレベーターに限らず、共有部での放し飼いには危険が伴います。
特に「うちの子は大丈夫」という過信から、リードを外して散歩させるケースが後を絶たず、他の入居者との接触事故やトラブルのリスクが高まってしまいます。
主な対策は以下の通りです。
- 共用部でのリード着用義務化
- 違反時のペナルティ設定
- 事故発生時の対応マニュアル整備
- 定期的な巡回
リード着用の義務化は、事故を防ぐ基本として重要です。また、定期的な巡回と指導により、ルールの徹底と意識向上を図ることができるでしょう。
第10位:規定サイズを超える大型犬の飼育
大型犬の飼育が問題視される理由は、吠えた時の声が小型犬より大きい、共有部で抱き上げたりゲージに入れたりすることができないなどが挙げられます。
また、成長に伴って当初の規定サイズを超えてしまうケースもあり、管理上の判断が難しいところでもあります。
主な対策は以下の通りです。
- 体重・体高の明らかな基準を設定
- 大型犬を飼える部屋を限定
- 犬種ごとの成長サイズの確認
入居時には犬種が大人になった時のサイズを確認することが大切でしょう。また、エレベーターなど共有部をなるべく移動しなくて済むよう、1階のみ大型犬可にするといった対策も考えられます。
ペット可物件を管理運営する場合に気を付けるべきポイント

出典:GMO賃貸DX WEBメディア編集部独自調べ(N=100)
ペット可物件を管理運営する場合に気を付けるべきポイントをアンケート調査した結果は次のようになりました。
第1位:飼育可能なペットの明確な基準設定
第2位:騒音・悪臭トラブルへの対応体制
第3位:ペット飼育規約の整備
第4位:ペットによる建物劣化対策
第5位:入退去時の特別対応
それぞれの内容について解説します。
第1位:飼育可能なペットの明確な基準設定
集合住宅でのペット飼育を円滑に運営するには、ルール化が最も重要です。基準にはサイズや種類、頭数の制限だけでなく、避妊・去勢手術や予防接種の義務付けなども含める必要があります。
明確なルールがあることで、入居検討段階でのミスマッチを防ぎ、入居後のトラブルも減少させることができます。
ただし、過度に厳しい基準は入居者の間口を狭めるため、バランスの取れた基準を設けることが大切です。
第2位:騒音・悪臭トラブルへの対応体制
ペットに起因する騒音・悪臭は、近隣トラブルの主な原因となります。
こうした問題については、苦情の受付から解決までの明確な対応フローを整備し、管理会社、飼い主、苦情申立者の三者で建設的な話し合いができる体制を構築するといいでしょう。
問題の度合いを客観的に判断するため、騒音計や臭気測定器を活用することも手段の一つです。
ただし、過度な取り締まりは飼い主との関係悪化を招くリスクがあるため、改善に向けた支援的なアプローチを心がける必要があります。
第3位:ペット飼育規約の整備
ペット飼育規約は、トラブルを未然に防ぎ、快適な共同生活を維持するための指針となります。
規約には飼育条件や禁止事項だけでなく、マナー違反時の指導手順やペナルティまで、具体的に明記する必要があります。
作成時には専門家に監修を依頼し、内容が適切であるかチェックしてもらえるとより安心です。
また、社会情勢や入居者ニーズの変化に応じて定期的な見直しを行い、実態に即した内容に更新することが求められます。
第4位:ペットによる建物劣化対策
ペット可にする以上、引っ掻きや噛みつきなどによる建物劣化対策は必須と言えます。
床材や壁紙には傷つきにくい素材を採用し、共用部には清掃しやすい建材を使用するなど、物件の設計段階から対策するといいでしょう。
また、定期的な点検により劣化箇所を早めに見つけ、劣化が小さいうちに補修することで、大きな修繕への発展を防ぐことができます。
ただし、対策費用は家賃や共益費に反映されるため、入居者の理解を得られる範囲での実施が求められます。
第5位:入退去時の特別対応
ペット可物件の入退去時には、通常の物件とは異なる特別な対応が必要です。
入居時には飼育ペットの詳しい情報登録や室内状況の記録、飼育規約の説明と同意取得などが必要となります。退去時には臭いや傷の状況をチェックし、必要な修繕や特別清掃の範囲を明らかにする必要があります。
こうした対応には時間と手間がかかりますが、トラブルを防ぐために丁寧な実施が求められます。また、原状回復の範囲と費用について、入居時に丁寧な説明を行うことで、退去時のトラブルを防げるでしょう。
まとめ
ペット可物件の管理において、不動産オーナーは鳴き声や臭気といった近隣トラブル、無断での飼育頭数の増加、退去時の原状回復など、さまざまな問題に直面しています。
こうした問題に対して、入居条件の明確化やルールの適正化などの対策が欠かせません。
管理会社、飼い主、他の入居者との良好なコミュニケーションを維持しながら、バランスの取れた運営を心がけることが大切です。




