スマートホームの市場規模・普及率は?日本と世界を比較|今後の市場規模の動向予測も紹介!
スマートスピーカーをはじめとした、インターネットに接続して利便性を高める設備や家電が「スマートホーム」です。世界においてスマートホーム市場は拡大傾向が続いているにもかかわらず、日本での普及はそれほど進んでいません。
この記事では、スマートホームの市場や世界との比較、今後の展望について解説します。普及のための課題についてもご紹介しますので、スマートホームの現状や今後の展望が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
スマートホームとは?
スマートホームとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の技術を使い、便利で快適に過ごせる家を実現するシステムのこと。簡単に言うと、スマートフォン・タブレット・スマートスピーカーなどと住宅設備や家電をインターネットでつなぎ、遠隔操作することで便利な生活を実現する技術です。
家電や住宅設備を一括操作できるため管理しやすくなる、遠隔で家の鍵や室内カメラの確認ができるためセキュリティ対策ができるなど、導入によるさまざまなメリットがあります。スマートホーム対応の家電製品も多く出ており、生活に必要なところからスマートホーム化に取り組むことが可能です。
【スマートホーム家電の一例】
- ロボット掃除機
- エアコン
- 室内カメラ
- インターホン
- 照明機器 など
スマートホームは「スマートハウス」と混同されがちですが、スマートホームは住宅システムのことであり、スマートハウスは省エネや節約を追求した住宅そのもの。内容はまったく違いますので、ご注意ください。
スマートホームの市場規模
スマートホームの普及率は、現状では日本と海外で大きく異なっています。
日本のスマートホーム普及率
日本においては、スマートホームはまだまだ普及していないと言わざるを得ません。
スマートホームの実現には、インターネット環境とスマートフォンなどの操作端末が必要です。
2020年時点で日本国内のインターネット普及率は83.4%、スマートフォンの普及率は89.4%と、スマートホームの普及には十分な布石があります。また、スマートホームを「知っている」「聞いたことがある」方の割合は68%と、認知度もそれなりに高いのです。
しかし、実際に利用されているスマートホーム家電は、一番多いスマートスピーカーでも12.5%、その他の機器では2%程度かそれ以下の利用率です。
これらのデータから、日本国内では利用できる環境と認知度はありますが、実際に利用する方は少ないことがわかります。
海外のスマートホーム普及率
一方、海外におけるスマートホームの普及率は日本より高く、今後も急速な拡大が見込まれています。
ドイツの調査会社「Statista」によると、2017年のスマートホームの世界市場は約3.6兆円であり、2030年には45兆円にまで成長すると予測されています。
中でも、スマートホームの先進国となっているのはアメリカです。現在のスマートホーム普及率は35.6%を超えており、年間約700万戸の住宅がスマートホーム化されていくと考えられています。
アメリカの年代別スマートホーム製品所有者を見ると、32歳以下が43%、55歳以上でも所有率は24%です。若年層は生活の利便性やエンターテインメント性を求め、高齢者は見守りやセキュリティの導入に積極的であるなど、スマートホームが生活の一部になりつつあることがうかがえます。
スマートホーム普及の課題
日本国内のスマートホーム普及率が伸び悩んでいる理由として考えられるのは、以下の点です。
【国内のスマートホーム普及率が伸びない理由】
- 海外と生活環境に違いがある
- メーカーごとに規格の壁がある
- ネット環境の強化が必要である
- 人材が不足している
海外と生活環境に違いがある
海外との住環境の違いが、スマートホームの普及を阻む一因だと考えられます。
海外と日本を比較した際、空き巣や窃盗の犯罪率に大きな差があります。人口10万人での空き巣の犯罪率を見てみると、アメリカでは536.3件、イギリスでは685.4件と、海外では軒並み500件を超えている一方、日本では73.8件と圧倒的に少ない数値です。
また、住宅の広さも海外と比較すると狭い家が多い傾向であり、家の隅々まで目を配りやすい環境です。
そのため、スマートホームの得意分野であるホームセキュリティ分野や「自動開閉カーテン」などの設備に価格相応のメリットを感じられず、普及が思うように進まなかったのではないかと推測できます。
メーカーごとに規格の壁がある
メーカーによって規格が統一されていないことも、普及の足かせとなっています。
さまざまなメーカーによって、多種多様のスマートホーム製品が開発されています。例えば、アメリカでは異なるメーカーの製品を連携させて使用できるサービスを開発するベンチャー企業が現れ、スマートホームの普及につながりました。
一方、日本ではメーカーで複数社の機器と連携を取れるシステムは普及しておらず、それぞれのメーカーに対応したシステムでの操作となるため、利便性をあまり感じられないという課題があります。
複数メーカーの製品が共通のプラットフォームで使えるようになるにはまだ時間がかかると考えられ、利便性を求める方にとっては魅力が弱いと感じるかもしれません。
ネット環境の強化が必要である
スマートホームを構築するためには、安全かつ安定したインターネット環境が必要不可欠です。
スマートホーム製品は、インターネットを利用して操作を実施しますので、インターネットセキュリティの問題は必ず発生します。
不正アクセスによってセキュリティが破られてしまうと、ホームカメラやドアの鍵などのスマートホーム機器への不正アクセスや、スマートフォンからの個人情報漏えいなど、犯罪につながる可能性も否定できません。また、接続機器が増えるとインターネット環境が不安定になり、使いたいときにつながらないといった問題点もあります。
インターネットのセキュリティや安定接続が確保できない場合、スマートホームの構築には支障が出てしまうでしょう。
人材が不足している
日本国内において、スマートホーム製品やIoT機器のシステム構築のできる人材が不足していることも、普及が進まない原因に挙げられます。
スマートホーム関連の製品は精密機器であり、専門知識のある技術者による開発が必要です。システムの不具合やヒューマンエラーなどに対応するため、人材の確保も求められます。
日本国内では人材の絶対数がまだまだ少ないうえ、少子化によって将来的な労働力の減少は避けられません。
安定したシステムを供給するため、人材確保の問題は非常に大きいと言えるでしょう。
スマートホームはこれからどうなる?
スマートホームの将来性と今後の見通しについて、さまざまなレポートをもとに検証してみます。
【富士経済によるスマートホーム2025年の国内の市場予測】
- スマートスピーカー市場:200億円(約12.5倍)
- スマートスピーカー対応照明市場:210億円(約8.9倍)
(いずれも2017年比)
【PEPORTOCEANによる2027年の世界の市場予測】
- 世界のスマートホーム市場は2021年から2027年にかけて約10.4%の成長率が見込まれる
- 2020年は765億ドルの市場に対して、2027年には1,529億ドルに達する予測である
【Statistaによる今後の世界のスマートホーム市場予測】
- 世界のスマートホーム市場は今後うなぎのぼりの成長となると予想される
- 2017年の3.6兆円に対して2030年には29兆円、2040年には45兆円に達すると見込んでいる
いずれのデータを見ても、今後のスマートホーム市場は世界的に拡大すると予想されています。日本においても規模は小さいものの拡大予想となっており、利用の増加に伴って利便性の拡充が期待されているのです。
まとめ
日本国内ではスマートホームの認知は進んでいますが、普及にはまだまだつながっていないのが現状です。特に、アメリカをはじめとした海外との普及率には大きな差があり、海外レベルまで普及させるには解決すべき課題が少なくありません。
アメリカの事例を手本に、例えば若年層にはエンターテインメント性を、高齢者には見守りやセキュリティの導入などを打ち出すことで、普及への足掛かりができる可能性があるでしょう。
この記事のポイント
● スマートホームとは
スマートホームとは、スマートフォン・タブレット・スマートスピーカーなどと住宅設備や家電をインターネットでつなぎ、便利で快適な生活を実現する技術です。
● 日本国内のスマートホーム普及率は伸び悩んでいる 国内で一番普及しているスマートスピーカーでも12%程度と、先進国のアメリカの三分の一程度の普及にとどまっています。
● それでも今後のスマートホーム市場は拡大傾向と予測されている 国内外の研究機関によるといずれも大幅拡大の予想となっており、今後のスマートホーム市場は大きな注目を集めています。 |