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管理不全土地の詳細と土地基本方針|管理不全土地による悪影響と対策を徹底解説

管理不全土地の詳細と土地基本方針|管理不全土地による悪影響と対策を徹底解説

管理不全土地は適切な運用がされていない土地のことを指し、放置しておくと雑草の繁茂や害虫の発生により近隣に悪影響を及ぼす可能性があるとして問題視されています。

令和2年に策定された土地基本方針では管理不全土地に対する対処を目指して、被害を受けている方や行政が関与できる仕組みになりましたが、なかなか管理不全土地とそうでない土地の境界線が曖昧で仕組みが機能しない状態が続いていました。ですが、令和3年に実施された内容の更新ではその曖昧な部分の改善がされて関与しやすい仕組みになりました。

そこで当記事ではそれらの更新内容と、管理不全土地による悪影響を受けてしまった場合の対処法についてご紹介します。

目次

    管理不全土地とは

    草むらと道路

    管理不全土地とは適正な管理がされないことで、草木の繁茂、害虫の発生等により周辺の住民・環境に悪影響を及ぼす、またはその恐れのある土地のことを指します。

    管理不全土地が発生する背景には、土地の利用・管理の担い手の減少や土地所有者等の利用・管理意向の低下があるとされており、そもそも土地の所有者が土地に対して関心・意識を持っていないことが発生する原因であると言われています。

    そこで、国は管理不全土地が悪影響を及ぼさない状態に維持・改善するために基本方針を策定しました。

    管理不全土地が及ぼす悪影響

    管理不全土地の可能性を秘めている土地が付近にある場合、事前にどのような悪影響を及ぼす可能性があるのか把握しておく必要があります。そうすることで事前に対策ができますし、万が一自社が管理する物件の住人からクレームが来たとしてもスムーズな対応をすることが可能です。

    【管理不全土地が及ぼす悪影響】

    • 敷地外への雑草・雑木の繁茂
    • 落ち葉の散乱
    • 草木の越境
    • 害虫の発生
    • ごみなどの廃棄、それらによる悪臭
    • 放置車両
    • ハチの巣
    • 野生動物の棲みつき
    • 防犯面の悪化
    • 砂埃

    基本的に人害は少なく、放置することによる雑草や木のゴミ、虫の発生による悪影響が多いです。特に虫や野生動物の棲みつきに関しては、種類によっては命に関わる場合もあるので、管理不全土地の所有者に一存するのではなく近隣住民も意識的に対策を施す必要があるでしょう。

    管理不全土地と土地基本方針(令和2年)

    リストにチェックマークを書き込む手の画像

    令和2年に策定された『土地基本方針』は管理不全土地を何とかするべく検討されたもので、良好な環境の形成・保全や災害の防止を目的として作られています。

    この基本方針では、周辺に悪影響を与える管理不全土地の適正な管理を土地所有者等自身に促すとともに、必要に応じて地方公共団体や地域住民など土地所有者等以外の者が、適正な管理を確保できるようにするための内容が記されています。

    令和2年に策定された土地基本方針の詳細

    令和2年に策定された土地基本方針の詳細内容は以下の通りです。

    【土地基本方針の主な内容】

    • 低未利用土地の需要喚起と取引のマッチング、有効利用の誘導
      →低未利用地の適切な利用・管理を促進するための税制特例措置やランドバンクの活用等の推進
    • 管理不全土地等対策の促進等を図る取組の推進
      →管理不全の空き地・空き家対策の推進
      →法務省における民法・不動産登記法改正の検討(相続登記の申請の義務化、共有制度・財産管理制度・相隣関係規定の見直し等)
    • 土地の境界及び所有者情報の明確化
      →国土調査事業十箇年計画に基づき、新たな調査手続の活用、地域特性に応じた効率的な調査手法の導入を促進し、地籍調査を 円滑化・迅速化
      →オンライン化の取組も含めた各種台帳連携等による土地・不動産に関する情報基盤の整備・充実

    これらの内容は、地方自治体が管理不全土地の適正な利用・管理を促進するための需要創出・喚起及び取得支援のための措置や、土地の適正な管理を土地所有者等自身に促すことを示しています。また、必要に応じて地方公共団体や地域住民など、土地所有者等以外の者が適正な管理を確保できるようにするための措置についても記されています。

    令和3年5月に土地基本方針の内容が更新

    住宅地の中の空き地

    令和2年に策定された土地基本方針では、管理不全土地による侵害や危険が及ぶ近隣の土地の所有者は、管理不全土地の所有者に対し、所有権に基づく妨害排除請求等を行使することができるが、管理人による管理は想定されていないので想定外の範囲で管理不全土地の対処を請求できない状況でした。

    しかし令和3年に行われた内容の更新では、所有者不明土地の発生予防の強化や、必要に応じて地方公共団体等が円滑に直接対応を行うことを可能とするような内容が加わりました。

    これにより、従来まで曖昧だった管理不全土地とそうでない土地の線引きを、比較的はっきりさせる方針となったので、今まで地方自治体が直接対処できなかった土地に対しても対処できる幅が広がりました。

    令和3年に相隣関係規定が改正

    家の模型に境界線が引いてある画像

    管理不全土地が悪影響を及ぼす問題と合わせて、隣地使用権に関する問題も注目されています。

    従来の民法における相隣関係規定では、土地の所有者は所定の目的のために必要な範囲内で、他人の所有する『隣地の使用を請求することができる』とされていました。しかし実際のところ、隣地の所有者が行方不明の場合は使用することができるか否かは必ずしも明確では無いという問題点がありました。

    そこで、令和3年に改正された内容では、管理不全土地の対処において権利の所在などの問題で枝木の伐採や設備の設置など、隣人が行使できなかった部分に対しての緩和が組み込まれました。まだ、完璧に行使しきれない現状ではありますが従来に比べて改正を重ねることで少しずつ行使できる範囲が広がっていくことが期待されています。

    以下では改正が行われた『隣地使用権』『竹木の切除など』『設備設置権・設備使用権』に関する内容を解説します。

    隣地使用権

    従来まで立入が可能とされていたのは、隣地との境界またはその付近における『障壁、建物等の築造・修繕』に限定されていましたが、今回の改正によって『境界標の調査または境界に関する測量と枝の切除(後述)』の場合も追加されました。これにより、隣地に立ち入り可能なケースが増えたのです。

    また、今回の改正で特に注目すべき部分は従来、『隣地の使用を請求することができる』とされていた部分が『隣地を使用することができる』に変更されたことです。これにより、隣地の使用が必要となった場合、隣地所有者の承諾が無くても使用できるようになりました。

    竹木の枝の切除など

    管理不全土地・所有者不明土地では、竹木が繁茂して枝が境界線を越えて自分の土地にかかることがあります。この場合、隣地の所有者等が不明であるときは従来の法では何もできませんでした。

    しかし、今回の改正によって原則として従来のルールを維持しつつも、土地の所有者が自ら切り取ることができるケースを定めました。これにより、以下の3パターンが当てはまる場合において土地の所有者は隣地から伸びてきた枝を自ら切除できると決められています。

    • ①竹木の所有者の切除するよう催告したにもかかわらず、相当期間内に切除しないとき
    • ②竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
    • ③急迫の事情があるとき

    ※切除時は隣地を使用することが可能です。

    設備設置権・設備使用権

    電気・ガス・水道などのライフラインに関する設備を他の土地に設置しなければ供給を受けることができない場合、必要な範囲で他の土地に設備を設置、あるいは他人が所有する設備を使用可能になりました。

    これにより、例えば私道に設備が設置されているが、その私道について相続に伴う登記がされておらず、所有者不明となっているケースについては従来対応できなかったものが対応できるようになりました。

    ただし、設備の設置・使用にあたっては隣地所有者・使用者にあらかじめ通知を行わなければならないとされており、隣地所有者等にとって最も損害の少ないものを選ぶ必要があります。

    管理物件の隣家が管理不全土地だった場合

    パソコンを見て困っている女性

    管理不全土地が所有者の土地に悪影響を及ぼした場合、それに対して竹木の切除など必要な処置を講じることができるようになった旨をここまで解説してきました。これは、管理物件が同等の悪影響を受けた場合も同じように処置を講じることが可能です。

    とはいえ、管理会社としてはそういった処置に対するコストを考えると、できる限り所有者に処理してもらいたいと考える一面もあるので、最低限のコストで対処できる方法があるのであればそれを実施する方向で考えたいと思うのが一般的でしょう。

    管理不全土地の弊害によるクレームの対処法

    管理会社が良く受ける悪影響に対するクレームはどんなものがあるか把握しておきましょう。また、それらに対する解決策も知っておくことで、万が一クレームが発生したとしてもスムーズに対応できるようにしておけば、管理不全土地に対する請求などコストがかかる処置までかかるリスクを最小限に抑えられます。

    【管理会社へ寄せられる管理不全土地に対するクレーム例】

    • 悪臭
      クレームが入ったら、まずは現地を確認して周辺の入居者にも聞き込みをしましょう。どんな臭いが気になるか確認して管理会社が動いていることを見せるのも大切です。そして、管理不全土地の悪臭があまりにもひどい場合は土地所有者、もしくは地方自治体へ請求をして悪臭の原因を取り除きます。もし、軽度であれば隣地との間に消臭効果のあるものを設置してあげるようにするなどしましょう。
    • 虫の発生
      害虫が発生してしまった場合、すぐに害虫駆除の専門業者に依頼し、駆除してもらいましょう。害虫は卵を産むたびにどんどん増えていくので、早めの対処が大切です。また、隣地の枝木の越境によって木の実が落ちることで虫が発生する場合は、こちらの被害状況が明確に分かれば切除することが出来ます。

    もし、上記のこと以外のクレームに対してお悩みがある場合は、以下のサイトでもクレームに対する処理の仕方について解説しているので参考にしてみてください。

    関連記事:管理会社へのクレーム事例と対策|スムーズに対策しないと退去してしまう!?

    まとめ

    管理不全土地とは適正な管理がされておらず、周辺に悪影響を及ぼす可能性のある土地のことを指します。

    こういった土地による被害を抑えるために令和2年に『土地基本方針』というものが策定されました。しかし策定された直後は、そもそも悪影響を及ぼしている土地が本当に管理不全土地なのか所有者が管理していく意思のある土地なのか線引きが曖昧だったこともあり、被害に対してなかなか対処できない実情がありました。

    そこで、令和3年に土地基本方針の内容が更新されて、従来に比べて比較的悪影響を及ぼす土地に対して枝木の伐採や設備の設置など、隣人が行使できなかった部分に対しての緩和が組み込まれました。

    今後も、管理不全土地が増えていくことが予測される中で、随時『土地基本方針』は更新を繰り返され付近の住人が健全な生活を送れるようになっていくことでしょう。

    この記事のポイント

    • 管理不全土地とは適正な管理がされていない、周辺に悪影響を及ぼす可能性のある土地
      管理不全土地は『害虫の発生』『野生動物の棲みつき』『悪臭』などの悪影響を及ぼす可能性があります。
    • 令和3年に土地基本方針の内容が更新
      土地基本方針の内容が更新されたことによって、悪影響を及ぼす管理不全土地に対して行使できなかった部分の緩和が組み込まれたので、枝木の切除など被害の度合いを軽減させることができるようになりました。
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