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不動産賃貸借契約の電子化のメリット~社会実験を経て広がる「オンライン化」導入の見通し

不動産賃貸借契約の電子化のメリット~社会実験を経て広がる「オンライン化」導入の見通し

近年、あらゆる業界に浸透しているペーパーレス化。不動産業界も例外ではなく、ペーパーレス化やデジタル化に向けた意識が高まっています。

中でも特に注目を集めているのが、賃貸借契約の電子化です。書面契約から電子契約に切り替えることで、業務効率化やコスト削減などさまざまなメリットを享受できるといわれています。

契約の電子化のメリットと直面している課題、今後の展望について解説していきます。

目次

賃貸借契約の電子化の流れ

不動産賃貸借契約の電子化のメリット~社会実験を経て広がる「オンライン化」導入の見通し

日本国内で賃貸借契約の電子化が進むきっかけとなったのは、2017年10月より本格運用がスタートした「重要事項説明の対面原則」の規制緩和、通称「IT重説」です。

IT重説とは、不動産契約における重要事項説明(重説)を、パソコンやスマートフォンなどの機器を活用して行うことです。テレビ電話やビデオチャットなどを通じ、対面せずとも重要事項説明を行えるため、不動産事業者・入居予定者双方の負担が軽減されます。

しかし、重要事項説明をオンラインで行ったとしても、書面での契約手続きが必要な工程もあり、事業者はいまだ契約手続きに時間や労力を割かざるを得ないのが現状です。

そこで、現在新たに進められているのが「書面交付の電子化の社会実験」です。この社会実験を経て書面交付の電子化が本格運用されれば、賃貸借契約手続きをオンラインで完結できるようになり、業務効率化が大きく進みます。

「IT重説」重要事項説明の対面原則の規制緩和

IT重説は、オンライン環境さえ整っていればどこでも重要事項説明を実施できるため、入居予定者はわざわざ来店する必要がなくなり、契約手続き時の負担を大きく軽減できます。

また不動産事業者にとっても、重要事項説明のアポイント調整がしやすくなるほか、IT重説の様子を録画・録音することで契約後のトラブルに備えられるなど、メリットが大きいです。

従来、重要事項説明は、「宅地建物取引士が入居予定者に対面で行う」ことが義務付けられていました。しかし、2013年に政府が社会全体のIT化を推し進めるべく「世界最先端IT国家創造宣言」を出したことを受け、不動産業界でもITを活用した非対面での重要事項説明について検討が開始されました。

そして、2015年8月からおよそ1年半にわたり、国土交通省主導のもとで社会実験という形で試験的に運用されました。この社会実験を経て、2017年10月よりIT重説は本格運用に至ったのです。

なお、現在IT重説は賃貸取引に限定されており、売買取引については従来通りの対面説明が義務付けられています。

関連記事:IT重説とは~対応物件普及の背景にあるメリットと課題

完全電子化へ~国土交通省による社会実験

賃貸借契約におけるIT重説の本格運用がスタートしたことで、入居予定者・不動産事業者ともにさまざまなメリットを享受できるようになりました。

ただ、重要事項説明をオンラインで行う場合、下記について書面での交付が必須となっており、重要事項説明の実施前に入居予定者へ書面を郵送し、実施後に記名押印済みの書面を返送してもらう必要があります。

  • 重要事項説明書(35条書面)
  • 賃貸借契約書(37条書面)

そのため、事業者からは「結局掛かる手間がそれほど変わらない」という声も聞かれます。

そこで契約手続きのさらなる簡素化を図るべく進められているのが「賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付」です。つまり書面交付の電子化です。具体的には、35条書面・37条書面を電子データ化して入居予定者に送付、もしくはインターネット上にアップロードし、入居予定者はそのデータに電子署名を行う、という内容です。

この書面交付の電子化が実現すると、賃貸借契約手続きはオンラインで完結できるようになり、事業者の負担はさらに軽減されます。

電子書面交付の実現を目指し、まずは2019年10月から3ヶ月間にわたって、国土交通省主導のもとで電子書面交付にかかわる社会実験が行われました。実験後のアンケートでは、契約手続きのスピーディーさが評価された一方で、電子データ作成時のトラブルや操作方法などいくつかの問題点も指摘されています。

それに対して国土交通省は、問題点の改善に向けて社会実験のガイドラインを改定。改定版のガイドラインに従った新たな社会実験が、2020年9月~2021年3月まで実施される予定となっています。

アメリカではいち早く電子契約化が進む

不動産取引における電子契約化の流れは、日本国内に限定されたものではありません。IT先進国であるアメリカでは、すでに賃貸取引だけではなく売買取引においても電子契約が広く普及しており、今やその普及率は約80%にものぼるといわれています。

アメリカで電子署名にかかわる法律が施行されたのは、1990年代から2000年にかけてです。日本でも2001年には電子署名にかかわる法律が施行されていますが、押印文化が根付いていたことからペーパーレスへの心理的な抵抗もあり、電子契約はなかなか普及しませんでした。一方でアメリカは、元々押印文化もなく合理主義であるため、利便性の高い電子契約をさまざまな取引において積極的に導入していきました。

また、アメリカでは2000年代前半と早くから「不動産事業者のニーズに合致した電子契約サービス」が提供されていたほか、セミナーの開催・トラブル時の相談窓口設置など現場へのサポート体制が充実していたことも、急速に電子契約化が進んだ理由であると考えられます。

賃貸借契約の電子化のメリット

賃貸借契約を電子化することで得られるメリットは主に以下の4つです。

  • 業務効率化・省力化
  • コスト削減効果
  • 「非接触」型業務への対応
  • コンプライアンスの強化

業務効率化・省力化

賃貸借契約の電子化により、不動産事業者の業務は大きく効率化されます。

賃貸借契約の手続きを書面で行う場合、書面の作成・印刷・押印・収入印紙の貼り付け・郵送・保管など多くの手間が掛かってしまいます。また、賃貸借契約の手続きには、入居者・大家・仲介会社・管理会社と多くの人が関わっているものです。そのため、書面郵送の際は仲介会社→大家→仲介会社→入居者などと、相互に郵送をするのに期間を要することから、契約処理に長い期間が掛かってしまうのもデメリットです。

一方で、契約手続きを電子化した場合は、書面を電子データ化して入居者や大家にメールで送付、もしくはインターネット上にアップロードしてメールで共有し、電子署名を行ってもらうだけで完結します。メールのやり取りだけで済むため、書面印刷から保管までの一連の手続きを省略でき、契約処理に要する期間も大きく短縮できます。さらに、契約書類は電子データとしてパソコン上に保存しておけるため、書面の保管スペースを確保する必要がなくなることもメリットといえます。

また、契約手続きの効率化による生産性の向上は、社会問題となっている長時間労働の是正にも寄与すると考えられています。

コスト削減効果

書面でのやり取りが発生しないため、用紙代・インク代・印刷代・切手代・封筒代・郵送代などの費用、書面を保管するための費用が掛かりません。また、郵送作業や保管作業に割かれていた人件費もカットすることができます。

さらに、印紙税も削減されます。賃貸借契約書は、「印紙税法第2条」により印紙税の対象文書であると定められています。しかし、課税対象となるのは書面の文書のみ。電子データ化された文書は対象外であり、収入印紙は不要と解釈されています。

「非接触」型業務への対応

新型コロナウイルスの感染拡大により、人との接触を伴う業務から「非接触」型業務への転換が求められています。これは不動産業界も例外ではなく、社員と顧客双方の安全確保のために、新たな非接触型のサービスをいち早く検討・導入しなければなりません。

賃貸借契約の電子化は、非接触型業務の実現そのものです。社員と入居予定者の接触機会を減らすことで飛沫感染を防げるのはもちろんのこと、書面の受け渡しによるウイルスの媒介も防止できます。

また、書面での契約手続きは社員が出社せざるを得ないのに対し、電子契約は場所を問わずに行える点もメリットになるでしょう。

コンプライアンスの強化

従来の書面での契約手続きでは、重要書類の破損や紛失、改ざんなどのリスクがつきものでした。しかし、電子契約の場合は書類をパソコン上に保存できるため、書類の破損や紛失の心配は不要になります。万が一に備えて外部のデータセンターなどに保管しておけば、天災が発生したとしても書類滅失のリスクも抑えられます。

さらに、データへのアクセス履歴を把握できるようにしておけば、データ改ざんなどの不正も防止できます。

賃貸借契約の電子化の課題

賃貸借契約の電子化には大きなメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。

業務フローの変更が必要

これまでの書面から、新たに電子契約に切り替える業務フローの変更においては、電子化について社内全体の理解を得るのはもちろんのこと、新たなマニュアル作成や、変更後の現場のフォローアップなどが不可欠です。新たな業務フローをうまく機能させるための環境を整えなければなりません。

契約相手の理解を得る必要がある

電子契約を結ぶには、契約相手の同意が必須です。相手側が書面契約にこだわりがある場合、対応してもらえないケースもあります。また、相手側も電子契約を結ぶための環境整備が必要になるため、環境整備に時間がかかってしまう可能性があります。

セキュリティ対策

電子契約システムの導入には、厳重なセキュリティ対策が欠かせません。電子契約で締結された契約書はデータとして保存されます。このデータ管理が杜撰であった場合は、外部からの不正アクセスによってデータが漏洩してしまう危険性も考えられるためです。

安心して電子契約を利用するために、セキュリティ対策を最優先事項として強化する必要があります。

賃貸借契約の電子化の今後

国土交通省では、現在行われている電子書面交付の社会実験が終了次第、問題点を十分に検証したうえで今後の方向性について検討を行うとしています。検討後は改正法案の作成を進め、2021年以降に電子書面交付の導入を目指す予定です。

将来的には内見から申し込み、重要事項説明、契約まで、さまざまなフローがオンライン化されると予想されており、賃貸の電子契約は今後さらなる普及が見込まれます。

関連記事:不動産テックとは?管理会社のDXや今後の展望について分かりやすく解説

まとめ

働き方改革が叫ばれている昨今、不動産業界でも古い慣習を見直していく必要があります。賃貸借契約の電子化は、より働きやすい環境に整えていくための大きな一歩となるでしょう。また、顧客にとっても非常に利便性の高いサービスであるため、いち早く導入することで他社との差別化も図れます。

現在、電子契約における技術開発は目覚ましく進化しています。GMO賃貸DXの不動産管理会社向けオーナーアプリでは、オーナー・入居者それぞれとスムーズに電子契約を結べるのはもちろん、アプリを通じてオーナーとの情報共有や売却査定依頼の管理なども簡単に行えます。

自社の目的や課題に適した電子契約サービスを見極め、これからの時代に沿った契約形態への刷新に向け、ぜひGMO賃貸DXの導入をご検討ください。

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