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IT重説とは|対応物件のメリットや導入における課題と注意点

従来、対面で行ってきた重説(重要事項説明)は、『IT重説』を導入することでテレビ電話などの媒体を通して遠方からでも説明を受けることが可能になっています。

これにより、物件の契約は『オンライン内見』と組み合わせることで、内見から契約まで顔を合わせずとも完了できるようになりました。

コロナ渦において、対面せずに契約が完了できるIT重説は不動産会社・入居者の双方にとって感染のリスクを減少させることが可能な方法として注目されています。

目次

IT重説とは

IT重説とはIT重説とは、不動産物件の契約時に必要とする重要説明事項(重説)を、パソコンやスマホなどのIT機器を活用して実施することをいいます。対面と同じように説明・質疑応答が行えるような、両者が対話できる環境となっていれば自宅でどこでも重説を受けることが可能です。

従来、重説は対面で行うことが義務付けられていましたが、2017年10月1日より賃貸契約では遠隔で行えるIT重説での運用が可能になりました。その後、2021年4月より売買契約においても運用が可能になったことから、現在では不動産取引全般でIT重説が運用可能となっています。

ですが、IT重説の運用が進んでいるとはいえ、全国の法人として存在する30万以上ある不動産事業者のすべてがIT重説対応物件とは限りません。そのため、不動産会社は積極的にIT重説を導入していけば他社との差別化が図れると同時に、コロナの感染に不安を抱いている人をターゲットに絞って物件の宣伝をしていくこともできます。

重要事項説明とは

『重要事項説明』とは、宅地建物取引業法という法律に定められた手続きで、不動産の売買・賃貸の契約を行う際に必ず必要とする説明のことです。また、重説の目的の一つとして、不動産に関する知識や経験がほとんどない買主・借主が契約の際に不利にならないように保護する点があります。

【重要事項説明の主な内容】

対象物件に関する事項
  • 登記記録に記録された内容
  • 法令に基づく制限の内容
  • 飲用水などのインフラの整備
  • 状況建物の設備の整備状況
  • 耐震診断の内容
  • 石綿使用調査の内容
取引条件に関する事項
  • 賃料以外に必要な金銭 
  • 契約の解除に関する内容
  • 契約期間と更新の内容
  • 用途その他利用の制限の内容
  • 敷金等の精算に関する内容
  • 損害賠償の予定や違約金の内容
  • 支払金や預かり金の保全措置
  • 金銭の貸借のあっせん
  • 管理の委託先

基本的に重説は、国土交通省が提供している『重説に関するガイドライン』に沿って説明されます。これらの重要事項を記載した書面を「重要事項説明書」と呼び、宅地建物取引士は記名押印済みの重要事項説明書を入居予定者に交付したうえで、口頭説明を行う必要があります。

IT重説は売買取引でも利用可能

2017年10月より不動産の賃貸取引のみでIT重説の運用が許可されていましたが、2021年4月より売買取引においても認められました。

経緯としては、2015年8月から1年半にわたり国土交通省の指導のもとで「ITを活用した重要事項説明(IT重説)」に関わる社会実験を実施したことが始まりです。その実験では、賃貸契約において計1,071件のIT重説が実施され、実験内で目立った支障やトラブルが発生しなかったことから、賃貸契約におけるIT重説の運用が2017年10月より本格的に開始されました。

一方、売買契約においては、上記の社会実験でIT重説の実施数がわずか数件にとどまり十分な検証ができなかったことから、2017年10月の時点では運用を開始できませんでした。しかしその後、コロナの影響も重なり急ピッチで検討が重ねられて、無事2021年4月に不動産売買取引でもIT重説を運用することが可能となったのです。

IT重説の流れ

IT重説の流れIT重説は契約において、最も重要な契約内容を説明する時間です。だからこそIT重説の流れを把握し、不動産事業者・入居者の双方がしっかりと事前準備をして万全の環境でIT重説に臨む必要があります。

  1. ①契約者側のIT環境を確認する

マイク・カメラ・スピーカー機能など、IT重説を行うにあたり必要な機材が揃っているか確認する。また、必要であれば事前にアプリやシステムのダウンロードなどをしてもらう。

  1. ②書類一式が契約者側に届く

重要事項説明書・賃貸仮契約書などの書類が届きます。各書類には宅地建物取引士により記名捺印されている必要があります。

  1. ③不動産会社と契約者側の接続テストを行う

映像・音声が途切れないか、宅地建物取引士証が確認できるだけの画質があるかなどをチェックします。当日、スムーズに重説を行うために確認しておきましょう。

  1. ④IT重説の実施

不動産会社側は宅地建物取引士証を提示、契約者側は本人であることを証明するために身分証などを提示してもらい、互いに確認が完了したら重説を開始する。約30〜60分で終わりますが、通信環境が悪く障害が発生した場合は、その場で中断してしまう恐れも念頭に置いておきましょう。

  1. ⑤契約者側から不動産会社へ必要書類一式を返送する

IT重説が完了したら必要書類一式を契約者側は返送します。

  1. ⑥鍵の引き渡し・入居

後日契約者側に鍵が送られてきて、入居が可能になります。

IT重説のメリット

IT重説のメリットIT重説を導入することにより、遠方でも重説を受けることが可能で、入居者側にとっては予定が立てやすくなると同時に、最低限の労力で物件の契約まで進められるようになりました。IT重説を導入すべきか検討している場合は、以下のメリットを確認してから導入すべきか検討してみてください。

【IT重説のメリット】

  • スマホなどの端末さえあれば利用可能
  • 現地に行く必要がなく余分な出費がかからない
  • 録画して残すことができる
  • 遠方でもスムーズに契約まで完了できる

希望する物件から遠方にいる人との契約になるほどIT重説の便利さが際立ちます。なぜなら、契約をすることが決まっている状態でわざわざ遠方から重説を受けに来ていただくのは交通費も勿体無いですし、時間的にも無駄が多くなってしまい、入居者に対して余計な労力を使わせてしまうからです。

スマホなどの端末さえあれば利用可能

IT重説はスマホやパソコンなどのテレビ通話機能が使える端末と通信回線さえあれば利用できます。スマホやパソコンで受けられることで、特別な機材を揃えて入居者へ提供するといった手間も省けるので、好きなタイミングでIT重説を実施することが可能です。

また、IT重説直前で契約者が急用で外出してしまっても、開始時間にネットが繋がるスマホさえ持っていれば外でも実施することができるという大きなメリットがあります。

現地に行く必要がなく余分な出費・労力がかからない

IT重説を利用すれば、契約者は店舗へ足を運ぶ必要がないので交通費などを節約できる上に、移動時間を大幅カットすることもできます。

また、転居を希望する人の中には物件や店舗へ行くこと自体に負担を感じる人もいるので、そういった人たちにとってはIT重説の対応可否は物件選びの決め手となる可能性が高いです。

基本的に重説内容は重要事項説明書でも確認ができますし、対面の必要性はありません。そのため「非対面で実施できる」ということを前面に打ち出し、来店したり物件へ行くことに負担を感じる人たちをターゲットにすれば集客効果を高めることにも繋がります。

記録を録画して残すことができる

IT重説はスマホやパソコンなどの媒体を利用するので、重説中の映像を録画することができます。重説でしっかり説明していたかを証拠として残すことができるので、退去時などに揉める可能性が減少されます。

記録を残すことは不動産会社にとって保険の役割を担っており、契約者側にとっては後から確認して理解を深めることに利用できるといった役割を持っていますので、双方にとって録画をしておくことは有益なことです。

ただし、契約者の中には録画・録音に抵抗がある方もいますので、録画・録音をする際は国土交通省による『賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明 実施マニュアル概要』をもとに、適切な対応をとってください。

IT重説には、取引士、説明の相手方、貸主等の個人情報が含まれる場合があるため、録画・録音する場合には、利用目的を可能な限り明らかにして、宅建業者と説明の相手方の双方了解のもとで行う。 説明中に、録画・録音をすることが不適切であると判断される情報が含まれる場合には、適宜、録画・録音を中断する 旨を説明の相手方にも伝え、必要に応じて録画・録音の再開を行う。 宅建業者が録画・録音により記録を残す場合、説明の相手方の求めに応じて、その複製を提供する。 ○ 宅建業者が取得した録画・録音記録については、個人情報の保護に関する法律に則った管理が必要となり、IT重 説以外で取得した個人情報と併せて、適切な管理を行うことが求められる。

遠方でもスムーズに契約まで完了できる

転職・上京を希望していて遠方に住んでいる方は、従来だと内見で1回、重説のために1回の合計2回(内見が複数回ある場合はさらに増加)不動産屋へ出向く必要がありました。しかし、オンライン内見とIT重説が利用できることになってからは、最初から最後まで遠隔で済ませることができるようになり、最小限の労力で円滑に入居まで進められるようになりました。

IT重説が利用できることによって、飛行機・電車の遅延、交通渋滞などで時間に間に合わず、当日に重要事項説明をキャンセルするようなケースも減り、スムーズに契約まで進められるようになったのは双方にとって大きなメリットです。

関連記事:オンライン内見とは|メリットとデメリット・実施の流れと注意点

IT重説のデメリットと対策方法

IT重説のデメリットと対策方法IT重説は契約者にとって、お手軽に利用できて便利なものです。しかし、便利な反面で通信環境に影響を受けたり、事前準備に手間がかかったりと、デメリットも存在するので認識しておきましょう。

【IT重説のデメリット】

  • 通信環境が悪いと途切れたりする
  • Web会議システムをインストールするなどの手間がある
  • 重説を軽視する可能性がある

IT機器を活用する以上、契約者に通信環境を整えてもらったりシステムのインストールをしてもらったりと、前準備をしっかりしておいてもらう必要があります。特に通信環境の悪化はIT重説を中断する可能性があるので、特に気をつけてもらうように契約者へ念押ししておきましょう。

不動産会社としてはデメリットを把握して、いかに不具合の無いように契約者のサポートができるかが重要です。

通信環境が悪いと途切れることがある

インターネットを利用してIT重説を実施するので、通信トラブルは起きやすいです。特に電波が悪い場所で契約者が実施してしまうと、画質が極端に悪くなったり、映像・音声が途中で途切れたりと円滑に重説が行えなくなってしまいます。その他にも雑音がひどい場所だと音割れしてうまく聞き取れないなども発生する可能性があります。

最悪の場合、不動産会社が一時中断、もしくは延期の判断を下して再度日程調整をする可能性もあるので、1回でスムーズに終わらせるためにも回線の環境は万全にしておいてもらわなくてはなりません。

中断・延期にならないためにも、以下の対策方法を取るようにしましょう。

  • 通信環境が良好か確認する

→接続テストが重説実施前にあるのでその時に確認

  • なるべく個室で受けてもらうようにする
  • お子様がいる場合は、一番お昼寝する可能性の高い時間を希望してもらうように勧める

とにかく双方の声の聞こえが良好でないと、重説の内容も理解を深めることができないので、重要な取り交わしであることを強調して、真剣に前準備をしてもらえるようにサポートをしましょう。

Web会議システムをインストールするなどの手間がある

基本的に、中小規模の不動産会社のほとんどは、Zoomのような一般的に認知のあるアプリを利用してIT重説を実施します。

しかし、不動産会社によっては専用のアプリやウェブ会議システムを利用してIT重説を導入しているところもあるので、契約者はそれに合わせてインストールや登録を行わなくてはなりません。そうなると、普段使っていないアプリ・システムを利用することに抵抗がある人は嫌気がさしてしまう可能性が高いです。

そのため、あらかじめ不動産会社側からIT重説では何のアプリを利用しているのか説明しておいた方が、入居希望者も心の準備などができるので安心してIT重説に臨んでもらうことができます。

重説を軽視する可能性がある

IT重説はスマホ一つで利用できるくらいお手軽です。もちろん、特定のアプリをインストールしたり、通信環境を念入りにチェックしたりと、手間に感じやすい部分はあるものの、普段からスマホなどのIT機器を利用している方からすれば、比較的容易にIT重説を受けることができます。

しかし、お手軽さゆえに重説を軽視されてしまうこともあるので、事前に契約者に対して重説を軽視しないように念を押しておく必要があります。とはいえ、実際に当日IT重説を実施した際に契約者がどれだけ真剣に聞いているかは契約者本人にしかわからないので、保険として重説中の映像を録画したり、都度細かく理解できているかを確認したりと気を配ることが重要です。

こちらにも詳しく記載してありますので、デメリットについてもっと深く知りたい方はチェックしてみてください。

関連記事:IT重説のデメリットとは|問題を回避するための対策や注意点なども解説

新型コロナウイルスにおけるIT重説の重要性

新型コロナウイルスにおけるIT重説の重要性2021年8月末現在、新型コロナウイルスの猛威は収まることなく、多くの人に不安を感じさせています。そんな中でも、転勤、上京、新居への引っ越し、と人々は生活のために日々行動をしていかなくてはなりません。

そんな時だからこそ、国土交通省は契約者と不動産会社の担当者が非対面でも契約ができるように、売買契約におけるIT重説の検討を急ピッチで行ってきました。その結果2021年4月に売買契約におけるIT重説が無事開始されて、不動産における取引全般が、非対面でも完結できるようになったのです。

コロナウイルスがいつ終息を迎えるかわからないからこそ、不動産業では「IT重説」「オンライン内見」などのようなIT化の促進を常に意識して努力していかなくてはなりません。

IT重説の詳しいやり方などは下記の記事に記載していますので、詳細や手順を知りたい方はこちらもご覧ください。

【2022年版】IT重説のやり方・導入方法~順守すべきルールと実施サポートアプリ・ツール

まとめ

オンライン環境さえ整っていれば、時間と場所を選ばずに実施できるIT重説。従来よりも手軽に物件契約が行える利便性から、今後も借主・貸主双方からのニーズは高まり、ますます普及が進んでいくと考えられます。

さらに、不動産業界のIT化はこれに留まりません。将来的には内見から契約までのあらゆるフローがオンライン化され、顧客の利便性アップとともに、賃貸契約業務における負担は大幅に削減されるでしょう。

また、IT重説やオンライン内見などを活用した不動産テック化の流れは、今後も進むと考えられています。よければ、こちらの無料資料も参考にしてみてください。

<参考資料>

不動産テックで変革する!これからの不動産管理会社のビジネスモデルとは?

不動産賃貸経営における電子契約の活用ポイントを解説!

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