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【リーダーインタビュー】挽地 裕介様|リノベーションで賃貸の常識を覆す。「住みたい」が「持ちたい」に変わる循環型モデル。

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

 

今回お話を伺ったのは、リズム株式会社の取締役であり、リノベーションバリューデザイン協議会の代表理事も務める挽地裕介様です。入居者視点のリノベーションによって付加価値を高める物件づくりを徹底している同社。その物件には延べ4万人もの入居待ちがあるという驚きの実績を持ち、住まいから投資へとつながる循環型ビジネスモデルで業界の常識を覆しています。従来の常識にとらわれない不動産のあり方と、リノベーションが持つ本来の価値についてお話を伺いました。

目次

    「空室リスク」を解消するリノベーション戦略と価値創造。

    リズム株式会社の特徴について、他の不動産会社とは一線を画すビジネスモデルがあると伺いました。

    ▲リズム株式会社 取締役 挽地 裕介 氏

    リズム株式会社は、リノベーションの部屋を主体とした投資用マンションを販売している会社です。不動産投資家が直面する最大のリスクって何だと思いますか?それは「空室になること」と「家賃が下がること」です。このリスクを回避できる物件を作りたいと考えた結果、リノベーションという選択肢に行き着きました。

    他社と決定的に違うのは、私たちのビジネスモデルが"入居者様ファースト"だということ。投資用マンションを販売して賃貸の部分は仲介会社に任せるというのが一般的ですが、私たちはリノベーションブランドを大切にして、入居者様のために作られた部屋を資産運用の手段としてオーナー様に提供しています。

    入居者様に選ばれる物件づくりが私たちの最大の強みで、物件の仕入れから始まり、販売、賃貸営業までワンストップで手がけています。事業エリアは東京23区内でも葛飾区、足立区、江戸川区を除く20区に特化しています。

    フルスケルトンリノベーションは具体的にどのようなものですか?通常のリフォームとの違いや強みを教えていただけますか?

    私たちがオーナー様にご説明するのは、リフォームはあくまで原状回復、元の形に戻すことであり、リノベーションは新たな価値を提供することだという明確な差別化です。フルスケルトン化を行い、給排水管もすべて交換し、インスペクション(調査)まで行って過去の漏水跡がないかなどを確認します。建物管理までしっかり入り込みながら、良いものをお客様に提供するビジネスモデルをずっと続けてきました。

    仕入れ対象は基本的に築40年程度、1981年以降の新耐震基準を満たす物件ですが、私たちのフルリノベーションとブランド価値によって、築25年程度の物件として、いわば若返った形で金融機関から評価されています。

    販売時の利回りも魅力的で、内装や設備は新築同等にも関わらず利回りは新築物件よりも高くなります。リノベーションで家賃を約25%アップできるため、8万円だった物件が10万円になるイメージですね。

    私たちが強調したいのは「経年良化」という考え方です。フローリングには無垢材を使用しオイル塗装で風合いを出し、壁面はクロスではなく塗装仕上げで補修はタッチアップを行い、時間が経つほど良くなる価値を提供しています。これにより無垢材は10年使っても張り替え不要、綺麗な部分のクロスも張り替えてしまう無駄を省くことで、原状回復費も通常より3万円ほど安くなります。ちょっとした傷や家具跡も「味」として楽しめる。そんな価値観を提案しています。

    「住む場所」から「ライフスタイル」へ。4万人が待つシリーズ展開とREISMブランドの世界。

    36種類ものシリーズ展開があると聞きました。この商品戦略の面白さや成功の秘訣は何でしょうか?

    私たちならではの戦略は、リノベーション物件をシリーズ化していることです。現在36種類のシリーズを展開しており、それに対して延べ4万人のウェイティングリストがあります。

    Kitchenシリーズ

    特に人気なのは「Kitchenシリーズ」。ワンルームなのに3メートルもあるキッチンが特徴です。この部屋は、キッチンの横はベッドスペースしかないのですが、今の若い方たちは外食よりも自宅での時間を大切にしたり、友人を招いたりする傾向があります。自分に合ったライフスタイルが具体的にイメージされた結果「Kitchenシリーズ」だけで7,000人もの方がウェイティングリストに登録してくださっています。

    ▲リズムが誇るリノベーションシリーズ

    この戦略の画期的な点は、立地に関係なく入居者を獲得できることです。例えば本好きの方に人気の「Hondanaシリーズ」。こちらに待機者がいる場合、その方が門前仲町の「Honadanaシリーズ」の物件を希望していても、荻窪に「Hondanaシリーズ」の物件を作れば住んでいただけるケースが多いんです。従来の不動産選びは路線や通勤距離が基準でしたが、私たちはデザインコンセプトで選ぶという新しい価値観を作り上げました。

    自社サイトでは入居中の物件も全て見られて、ウェイティングリストに登録ができるシステムになっています。空室になると待機者に連絡が行くので、大手の不動産ポータルサイトなどに掲載する前に決まってしまうことも少なくありません。

    住まいだけでなく、ライフスタイル全体を提案するREISMブランドについてもう少し詳しく聞かせていただけますか?

    ▲右)インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木 明人

    リノベーションで入居者様に届けるブランドを作っているという考えから、箱だけでなくライフスタイルそのものを届けたいという思いがありました。

    その一環として、REISM CLOTHES(アパレル)やREISM SELECT(雑貨・家具のECサイト)、REISM STAND(カフェ)などを展開しています。私はアパレル業界で10年の経験があり、その知見を活かしてこれらのサービスの立ち上げに携わってきました。

    REISM STAND

    基本的にREISM STANDはアンテナショップとして古着と雑貨の直接販売をしており、REISM SELECTはECサイトです。入居者の賃貸借契約はこちらのオフィスに来ていただいて行うのですが、その際にこうしたサービスがあることをご案内しています。照明やソファが欲しいというニーズに対して、REISM SELECTで購入いただけるようにしています。

    REISM SELECT

    また、入居して3ヶ月以内の方を対象にウェルカムパーティーを開催し、ブランドコンセプトの説明やメンテナンス講座も行っています。リノベーション物件にお住まいの方々は、インテリアが好きなど共通の趣味・嗜好があるので話も合いやすく、入居者様がイベントを企画し楽しむコミュニティも形成されています。

    さらに特徴的なのは「住む人から持つ人へ」という循環型モデルです。入居者様から数名、実際にオーナー様になった事例もあります。ワンルームしか提供していないので、ライフステージが変わると退去される方もいますが、将来的にはオーナー様として戻ってきていただきたいという思いがあるため、入居中に資産運用の大切さに気づいていただけるようなアプローチも行っています。

    不動産業界の再定義へ。リノベーションの価値を社会基盤に。

    最近では不動産業界でもDXが注目されていますが、貴社ではどのような取り組みをされているのでしょうか?

    データをいかに活用するかは、私たちのような仕入れから賃貸管理までワンストップで行う会社にとって死活問題です。以前は部署ごとにデータが分断されていて、共用サーバーの各部署フォルダに個別に保存していました。これではいけないと思い、約5年前にSalesforceを導入して基幹システムを構築し、物件とお客様の情報を一元管理できる環境を整えました。

    ここでいう「お客様」とは入居者様とオーナー様の両方を指します。「住む人から持つ人に」というビジョンのもと、入居者様のデータを将来の資産運用提案につなげる取り組みも進めています。

    具体的には、登録されたリードの行動パターンから賃貸と投資のどちらかにカテゴライズし、Salesforceで設計したシナリオを分析することで、リアルイベントの企画や商談に活かしたりしています。マーケティングにデータを積極的に活用していますね。

    また、自社サイトの独自ウェイティングシステムも私たちのDXの一環です。入居中の物件も全て閲覧できるようにして、「この部屋が空いたら教えてください」という単純だけど強力な仕組みを作りました。その結果、1,000戸の物件に対して4万人もの登録者を集めることができました。データを味方につけることで、外部サイトに依存せずに完結するビジネスモデルを確立しています。

    最後に、挽地様から見た不動産業界の未来と、貴社が目指すビジョンについてお聞かせください。

    私たちがリノベーションにこだわっている理由は単純で、中古不動産の価値を見直してほしいからです。日本は残念ながら新築至上主義の傾向が強く、古いものは悪いものというイメージがまだまだ根強い。でも古くても素晴らしいもの、大切に残していくべきものがあると信じています。そうした価値を多くの方に認めていただける不動産業界にしていきたいのです。

    その思いを形にするため、リノベーションバリューデザイン協議会を立ち上げました。嬉しいことに、国交省の住宅ストック事業に2024年5月に採択されました。2025年1月にはフルリノベーションの認定証発行スキームが整い、これから加盟店を増やしていく予定です。

    一般社団法人リノベーションバリューデザイン協議会

    協議会に参加し独自基準の認定が得られると新たな物件評価やワンストップ保証サービスが受けられるようになります。これによって、表面的なリフォームだけで「リノベーション」と称する業者と一線を画し、本物のリノベーションに適切な評価を与える基準を作りたいと考えています。

    現在は弊社が代表起案者ですが、将来的には全国展開を目指しています。国交省からも「日本全国に広げてほしい」と言われており、中古不動産の価値向上に本気で取り組む正当な会社を増やしていきたいですね。

    私たちのビジョンは、「新築か中古か」という二元論を超えることです。その間にある「再生する」というリノベーションの価値観によって、古くても新たな価値を生み出せる社会に変えていきたいというビジョンが、私たちの挑戦を支えています。

    まとめ

    アパレルからリノベーション不動産へと転身した挽地氏のインタビューからは、「入居者様ファースト」という揺るぎない信念が伝わってきました。36種類ものシリーズ展開で4万人のウェイティングリストを築き上げた戦略的思考と、築古物件に新たな価値を吹き込む「経年良化」というこだわり。そして何より印象的だったのは、「住む人から持つ人へ」という循環型ビジョンです。単なる賃貸業や投資用物件販売に留まらない、都市生活のあり方そのものを変えようとする挑戦に、不動産業界の新たな可能性を感じました。

    本記事取材のインタビュイー様

    リズム株式会社
    取締役 挽地 裕介 氏

    1980年佐賀県生まれ。2003年法政大学卒業後、大手アパレル会社に入社し、店舗運営や新規出店業務を担当。その後マーチャンダイザーとして活躍しながら、経営企画室で事業会社の新設に携わる。アパレル業界で培った経験を活かし、2013年にリヴァックス株式会社(現リズム株式会社)に転職。マーケティング責任者としてリノベーション企画やコーポレートブランド管理、新規事業立ち上げなどを手がける。現在はリズム株式会社取締役として、リノベーション事業を推進。2024年には、中古不動産の価値を広めるため一般社団法人リノベーションバリューデザイン協議会を設立し、代表理事を務める。宅地建物取引士の資格も保有。

    会社紹介

    リズム株式会社
    https://www.re-ism.co.jp/

    リズム株式会社は、東京・渋谷を拠点に、リノベーションによる中古ワンルームマンションの再生とライフスタイル提案を手がける不動産会社です。物件の仕入れからリノベーション、販売、賃貸管理までを一貫して内製化し、入居者とオーナー双方に価値を提供する循環型モデルを構築。36種類以上のシリーズ展開を通じて、住まい選びに“楽しさ”と“個性”を付加しています。また、無垢材や塗装を用いたフルスケルトンリノベーションや、入居者とのコミュニティ形成にも注力し、「東京暮らしをもっと豊かに、自由に」することを目指しています。

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