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【リーダーインタビュー】平野 啓介様|お客様に寄り添う資産管理で新たな価値を創出。「柔軟な発想×専門知識」で資産活用の未来を提案。

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

今回お話を伺ったのは、丸八不動産グループの代表である平野啓介様です。不動産管理を核に、税務サービスや資産コンサルティングまでを一貫して提供する同社。顧客の資産全体を見据えたウェルスマネジメントの視点から、地域に根差した不動産サービスを展開する同社の強みと今後の展望についてお話を伺いました。

目次

    投資銀行から不動産管理会社へ。異なる経験を活かした新たな挑戦

    平野様のキャリアについて、また不動産業界に携わるようになったきっかけ教えてください。

    ▲丸八不動産株式会社 代表取締役 平野 啓介氏

    大学院卒業後、不動産の証券化・流動化に特化した投資銀行であるフィンテックグローバルに入社しました。入社当時は17名程度の小規模な会社でしたが、3年後にマザーズ上場を果たし、社員数も200名規模まで成長。その後、リーマンショックを機に業界が大きく変化する中、不良債権投資やM&A業務も担当するようになりました。

    M&Aの話を聞くなかで、業績が好調にも関わらず後継者不在を理由に売却を検討する企業が多いことに気が付き、そこで、自身の家業である丸八不動産の事業承継について考えるようになりました。

    当時はそれなりに忙しく、それでも楽しく仕事をしていたのですが、私は仕事に対する執着がなく、「安定して稼げる仕事なら自家業でもいい」という考えから、約10年のサラリーマン生活を経て丸八不動産に入社しました。

    家業とはいえ、それまでとは違う畑の不動産業界に身を投じ、ご苦労などはありましたか?

    不動産ファンドの運用経験はあったものの、不動産業の現場経験は全くない状態での参画でした。仲介店舗での営業経験もなく、賃貸管理業についても素人同然でしたが、むしろ現場の細かい業務には必要以上に深入りしないことを決めました。

    現場のことは現場のプロフェッショナルに任せ、自身は顧客との関係構築や業務の仕組化に注力。住まいに関わる仕事は、ある意味では常識や良識で判断できる部分も多く、現場を知らなくても経営判断は可能だと考え、特にマンション購入者や資産家の方々の相続・事業承継に関する悩みに寄り添う姿勢を重視しました。

    その結果、金融業界での経験を活かし、お客様の資産形成や運用に関する相談に応じられることが会社の強みとなりました。資産家の方々の考えや気持ちを理解し、資産の承継に関する悩みに寄り添えることで、不動産管理会社というよりも「不動産に強い資産コンサルティング会社」としての独自のポジションを確立。過度に不動産業に偏らずに、お客様との信頼関係を築くことができています。

    「良い場所」「良い商品」「良い市場環境」。3つの軸で展開する不動産経営

    貴社は様々な事業を展開されていますが、現在注力されている分野について教えてください。

    現在は賃貸管理を主軸に、管理戸数の拡大とそれに付随するアパマンショップ事業、プロパンガス事業の拡充に注力しています。

    分譲マンション事業については、最後の供給から7年が経過していますが、これは意図的な判断によるものです。「良い場所」「良い商品」「良い市場環境」という3つの条件が揃った時のみ供給する方針を取っています。現在は工事費高騰による採算性の課題から、様子見の状態です。一般的なマンションデベロッパーは用地仕入れから建設、販売までを循環的に行う必要がありますが、当社は複数の事業を展開している強みを活かし、最適なタイミングでの事業展開が可能です。

    一方で、管理物件の建て替えニーズは増加傾向にあります。5年前までは年間の新築・建て替え案件がほぼゼロでしたが、近年は相続対策や資産の有効活用を目的とした建て替え需要が高まっています。特に、借入金の返済が終わった後も健在なオーナー様や、世代交代を迎えたケースでの建て替えニーズが目立ちます。

    ただし、建て替え提案においては立地を重視し、30年、40年先を見据えた提案を心がけています。場所によっては、建て替えではなく売却を提案することもあります。「この先、長期的にお手伝いできる場所で事業を行いましょう」という提案を心がけており、長期的なお付き合いを前提とした事業だからこそ、慎重に判断しています。

    浜松で長らく事業をされていますが、浜松という地域の魅力、特徴などを教えて下さい。

    浜松市は、ほどよい都会と田舎のバランスが魅力の街です。東京、名古屋、大阪へのアクセスも良好で、生活環境も充実しています。

    特筆すべき強みは、ヤマハやスズキをはじめとする自動車関連産業の集積です。この産業基盤の強さは、人口動態にも表れています。20年前には同規模だった静岡市との比較で、静岡市が10万人減少する中、浜松市は微減に留まっています。

    また、温暖な気候も特徴の一つです。メディアの住みたい街ランキングに上位に来ることは少ないものの、完全な田舎暮らしとは異なり、都会的な利便性と自然豊かな環境が両立した住みやすい街といえます。

    就業機会が豊富で、暮らしやすい環境が整っているため、長期的な居住地として高いポテンシャルを持つ地域だと考えています。

    遊休不動産を地域の魅力に。「KAGIYAビル」が描く地方都市再生の未来図

    貴社で手掛けている「KAGIYAビル」の再開発事業について詳しくお聞かせください。

    ▲左)インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人

    不動産デベロッパーとして取り組んでいる再開発事業の一つのきっかけが「KAGIYAビル」です。この事業は、約25年前にIDEEの創業者である黒崎輝男氏が始めた「Rプロジェクト」に学生時代にボランティアでお手伝いさせてもらったときの経験からインスピレーションを得ています。黒崎氏は、リノベーションという言葉がまだ一般的でない時代に、都市をリサイクルするというコンセプトでプロジェクトを展開していました。

    当社の場合、古いビルを取得した際、壁や柱を共有した共同ビルであるがゆえに取り壊しが困難なケースがあります。特に地方都市では1階以外のテナント誘致が課題となるため、デザインや話題性のある人材を誘致することで価値を創出する戦略を取っています。

    KAGIYAビル

    KAGIYAビルでは、地元で有名な写真家・若木信吾氏と協力し、若木氏がオーナーの「BOOKS AND PRINTS」という本屋の移転を誘致。若木氏の「いい町にはいい本屋があるべき」という理念に共感し、家賃を抑える代わりに月1回のイベント開催をお願いし協力を得ています。

    クラフトビールのパブも経営されているとお聞きしました。

    Octagon Brewing

    クラフトビールの需要の高まりに着目し、「Octagon Brewing」というブリューパブを立ち上げ、醸造所とパブをオープンしました。現在はパブ部門をテナントに貸し出し、醸造は自社で行う形態を取っています。

    KAGIYAビルも含め、これらの取り組みは、近隣の地主やビルオーナーへの広告宣伝としても機能しており、再生のノウハウを求める方々への提案にもつながっています。単なる収益物件としてではなく、地域の価値向上に寄与する再開発のモデルケースとして展開しています。

    属人化を防ぎ、生産性を向上。段階的に進める不動産管理のDX推進

    不動産業界のDX、IT化について、貴社の取り組みや展望をお聞かせください。

    この10年間、業界全体が生産性向上を課題としてきました。売上が頭打ちとなる中、限られた人員でいかに効率的にアウトプットを増やすかが焦点となっています。

    当社でも、特に入居者様とのコミュニケーション効率化に注力してきました。従来は「高齢の大家さんが多いから」「職人さんはアナログが当たり前」といった固定観念がありましたが、むしろウェットな付き合いの時間を確保するためにも、その他の業務のデジタル化は必要不可欠だと考えています。

    具体的には、基幹システムの刷新による入居者管理の効率化、顧客とのコミュニケーション記録の電子化などを進めています。世代交代に伴い、オーナー様からもデジタル化の要望が増えており、メールやチャットでのやり取りを希望する方も増加しています。

    また、業務の属人化を防ぎ、ミスを減らすためにも、システムや仕組みの整備は重要です。この5、6年は特に、社内のDX推進に力を入れてきました。ただし、新しいプロダクトの導入については、デファクトスタンダードの見極めを慎重に行い、段階的に進めています。

    税務サービスを入口に広がる、総合的な資産活用支援

    社内税理士事務所の併設から、資産コンサルティングまでのサービス展開についてお聞かせください。

    約600名のオーナー様のうち、200名弱の確定申告を社内の税理士が担当しています。特に地方都市では、富裕層の資産における不動産の比率が高く、不動産管理と税務サービスの一体化は大きな強みとなっています。物件の収支報告書から経費処理まで社内で完結できるため、オーナー様の手間を大幅に削減できます。

    こうした税務サービスを入り口に、建て替えや売却、法人化など、より踏み込んだ資産活用の提案が可能となっています。さらに、保険代理店業務も展開しており、生損保商品の提案も行っています。あくまで不動産を軸としながらも、金融商品の提案や資産運用のアドバイスなど、プライベートバンキング的なサービスも提供することで、「不動産を中心としたウェルスマネジメント」という独自のポジションを確立しています。

    不動産管理だけでは、売却時に顧客との関係が途切れてしまう可能性がありますが、包括的な資産管理サービスを提供することで、長期的な関係構築が可能となります。銀行OBの人材も採用し、金融知識を活かした総合的なコンサルティング体制を整えています。

    確定申告を請け負うことによって資産の運用状況を把握できるということは、その後のウェルスマネジメントにおいても的確なご提案ができるのではないでしょうか?

    そうだと思います。確定申告後には資産状況を分析し、積極的な投資が可能なオーナー様と保守的な運用が望ましいオーナー様を見極め、的確な提案が可能です。オーナー様一人ひとりの状況に応じたオーダーメイドの資産運用プランを提供しています。

    また、オーナー様が物件を売却する際も、次の投資先の提案まで一貫してサポート。投資信託や金融商品の選択について慎重な判断を促すアドバイスから、東京での資産運用の提案まで、幅広いコンサルティングを展開しています。不動産という実物資産を軸としながら、総合的な資産形成・運用のパートナーとして、オーナー様の資産の最大化を目指しています。

    まとめ

    不動産ファンド出身の平野様が語る、地域密着型の不動産管理と資産コンサルティングの融合。お客様との長期的な関係構築を重視し、「不動産に強い資産コンサルティング会社」として独自のポジションを確立されています。税務、金融、保険まで一貫したサービスを提供する姿勢は、まさに次世代の不動産会社の在り方を示唆するものでした。KAGIYAビルの再開発に見られる柔軟な発想と、DX推進による業務効率化への取り組みからは、伝統的な不動産業に新たな価値を創出しようとする意欲を感じました。

    本記事取材のインタビュイー様

    丸八不動産グループ 代表取締役
    平野 啓介 氏
    1979年生まれ。浜松市出身。フィンテックグローバル株式会社で不動産ファンドの組成・運用等に従事した後、2011年に浜松に戻り、家業を継いで現職に。

    会社紹介

    丸八不動産グループ
    HP:https://08fudosan.co.jp/

    丸八不動産グループは、不動産管理から分譲マンションの開発、資産コンサルティングまで多岐にわたるサービスを提供する企業グループです。「伝統と革新」を理念に、浜松市を中心とした地域に根差した活動を展開。アートフォルムシリーズをはじめ、洗練されたデザインと徹底したマーケットリサーチを基にした分譲マンションの開発や、賃貸管理サービスを通じて資産価値の最大化を支援します。また、DX推進や文化発信型再開発事業「KAGIYAビル」など、地域と共に未来を創る企業として、多様な挑戦を続けています。

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