マンションの不動産取得税はいくら?計算方法や軽減措置・かからないケースも

マンションを購入する際に必ず発生する不動産取得税。課税額は土地と建物それぞれの評価額に応じて計算され、数十万円から数百万円の支払いが発生する可能性があります。ただし、住宅用途であれば軽減措置が適用され、大幅な税額の圧縮も可能です。マンション購入をお考えの方に向けて、不動産取得税の仕組みや計算方法、軽減措置の活用法まで詳しく解説します。
不動産取得税とは
不動産取得税は不動産を取得した際に一度だけ課される地方税です。マンション購入や戸建て住宅の新築など、不動産の取得者全員に原則として課税されます。土地と建物それぞれに課税されるため、マンション購入時は両方の税額を把握しておく必要があります。初めて不動産を購入する方でも理解しやすいよう、基本的な仕組みから説明します。
対象は不動産の所有者になった人すべて
不動産取得税は個人・法人を問わず、新たに不動産の所有者となった全ての人が納税義務者となります。購入や贈与、交換など取得方法は問いません。
納税先は不動産が所在する都道府県となります。マンションの場合、所在地の都道府県税事務所へ納付することになります。なお、納税額の算出には固定資産税評価額が用いられ、実際の取引価格とは異なる点に注意が必要です。
土地・建物の両方に課税される
マンション購入時の不動産取得税は、土地(敷地権)と建物(専有部分)それぞれに課税されます。
敷地権の課税対象額は、マンション全体の土地の評価額を専有面積の割合で按分した金額となります。建物も同様に、専有面積の割合に応じて課税されます。
特にタワーマンションでは、2018年4月1日以降に課税が開始された高さ60メートルを超える物件の場合、建物の課税標準額に階層による補正が加えられます。上層階ほど課税標準額が高く設定され、同じ専有面積でも税額が異なる仕組みとなっています。
マンションの不動産取得税がかからないケース
マンション取得時には原則として不動産取得税が課されますが、特定の取得方法や一定の条件下では非課税となるケースがあります。具体的な事例を見ながら、マンションの不動産取得税が非課税となる場合を解説します。
まず代表的な非課税ケースが相続による取得です。被相続人から相続人へ財産が承継される場合は課税されません。相続によって受け取る財産は遺産の承継と見なされるため、新たな所有権の取得とは異なる扱いとなるためです。
ただし、相続時精算課税制度を使用した生前贈与では、贈与と見なされるため不動産取得税の対象となります。これは通常の贈与と同じ扱いとなるためです。また、遺言による特定遺贈で法定相続人以外の人物が取得した場合も課税対象となります。
法人の合併や分割による取得も、一定の条件を満たせば非課税となります。会社法に基づく適格合併や適格分割によってマンションの所有権が移転する場合は実質的な取得とは見なされず、不動産取得税は課されません。
公共事業のために土地収用された場合の代替不動産取得も非課税です。道路建設などの公共事業により強制的に収用された不動産の代わりとして取得するマンションには、不動産取得税は課されません。これは公共の利益のために私有財産を提供した所有者への配慮といえます。
災害により住宅が滅失し、その代替として新たにマンションを取得する場合も非課税となります。災害発生から原則3年以内に代替となるマンションを取得する必要があります。被災者の生活再建を支援する制度として活用されています。
公共の用に供する道路用地として取得する場合も非課税です。マンションの敷地内であっても、不特定多数の人が自由に通行できる私道部分は、公共の用に供する道路として非課税となります。
また、取得する不動産の価格が一定額未満の場合も免税点制度により課税されません。土地は10万円未満、建物は新築・増築・改築で23万円未満、それ以外の取得で12万円未満が免税点となります。
ただし、免税点以下の土地や建物を1年以内に追加取得し、合計額が免税点を超えた場合は課税対象となります。分割して取得することで免税点制度を利用する租税回避行為を防ぐ趣旨です。
なお、非課税措置を受けるためには各自治体が定める期限内に必要書類を添えて申請する必要があります。非課税要件を満たしていても、申請を怠ると通常の課税対象となる可能性もあるため注意が必要です。
非課税措置の適用可否について不明な点がある場合は、物件所在地の都道府県税事務所に事前相談することをお勧めします。制度を正しく理解し、適切な手続きを行うことで、無用な課税を避けることができます。
マンションの不動産取得税の計算方法
マンションの不動産取得税は、土地と建物それぞれについて固定資産税評価額をもとに計算されます。
項目 | 計算式 |
土地 | 固定資産税評価額×1/2×3% |
建物 | 固定資産税評価額×3% |
土地の場合、固定資産税評価額の2分の1に税率3%を乗じて計算します。建物は固定資産税評価額に税率3%を乗じます。
固定資産税評価額は実勢価格の約7割程度に設定されるのが一般的で、2027年3月31日までは特例として税率が3%に軽減されています。
たとえば、土地の評価額が1,000万円、建物の評価額が3,000万円の場合、以下のように計算されます。
土地:1,000万円×1/2×3%=15万円
建物:3,000万円×3%=90万円
合計:105万円
マンションの不動産取得税に係る軽減措置
マンションの不動産取得税には様々な軽減措置が設けられており、条件を満たすことで税負担を大きく抑えることができます。軽減措置の適用を受けるには、物件が一定の要件を満たし、取得から原則60日以内に申請する必要があります。申請時には不動産の登記事項証明書や売買契約書の写しなどが必要となるため、早めの準備が重要です。
軽減措置には主に下記があります。
- マンションの土地の軽減措置
- 新築マンションの建物の軽減措置
- 中古マンションの建物の軽減措置
マンションの土地の軽減措置
マンションの土地部分に対する不動産取得税は、複数の軽減措置を組み合わせることで税負担を大きく抑えることができます。
土地の軽減措置では、次の2つの金額のうち高い方が税額から控除されます。第一の基準額は45,000円で、第二の基準額は土地1平方メートルあたりの価格に住宅の床面積の2倍(上限200平方メートル)を掛け、さらに税率3%を乗じた金額となります。
宅地評価土地の場合は、2027年3月31日までの特例により評価額が2分の1に軽減されます。マンションの敷地は通常宅地として評価されるため、固定資産税評価額の2分の1に税率3%を掛けた金額から、上記の控除額を差し引いて最終的な税額が決まります。
新築マンションの建物の軽減措置
新築マンションの建物部分では、固定資産税評価額から1,200万円を控除できる制度が設けられています。建物の評価額から1,200万円を差し引いた額に税率3%を乗じて税額が算出されます。
さらに認定長期優良住宅に該当する場合は、控除額が1,300万円に拡大されます。長期優良住宅とは、耐久性や省エネ性能、耐震性能などが一定基準を満たす良質な住宅として認定された物件を指します。
軽減措置の適用には床面積要件があり、専有面積が50平方メートル以上240平方メートル以下である必要があります。なお、この床面積にはバルコニーは含まれず、専有部分の面積に共用部分の面積を専有面積割合で按分した面積となります。
参考:
東京都主税局|不動産取得税
東京都主税局|不動産取得税における認定長期優良住宅の特例について
東京都主税局|新築未使用の住宅と土地を同時に購入した場合
中古マンションの建物の軽減措置
中古マンションの建物では、新築時期によって控除額が段階的に設定されています。1997年4月1日以降に新築された物件では1,200万円、1989年4月1日から1997年3月31日までは1,000万円の控除が適用されます。
それ以前の物件では、1985年7月1日から1989年3月31日までが450万円、1981年7月1日から1985年6月30日までが420万円の控除となります。
新築の年月日 | 控除額 |
1981年7月1日(昭和56年)~1985年6月30日(昭和60年) | 420万円 |
1985年7月1日 (昭和60年)~1989年3月31日(平成元年) | 450万円 |
1989年4月1日(平成元年)~1997年3月31日(平成9年) | 1,000万円 |
1997年4月1日(平成9年)以降 | 1,200万円 |
また、1981年以前に建築された物件については、新耐震基準への適合証明が必要となります。適合証明には建築士による耐震診断が必須で、取得日前2年以内に調査が完了している必要があります。
耐震基準適合証明書の他にも、住宅性能評価書や既存住宅売買瑕疵保険の加入証明書でも代替可能です。ただし建物検査や保険加入時期についても、取得日前2年以内という期限があります。
軽減措置を受けるには床面積要件も満たす必要があり、新築マンション同様50平方メートル以上240平方メートル以下という条件があります。この面積要件は共用部分を含めた課税床面積で判断されます。
中古マンションならではの要件として、取得者自身の居住用であることも条件となります。投資用や賃貸用として購入する場合は、築年数に関係なく軽減措置の対象外となるので注意が必要です。
マンションの不動産取得税の計算シミュレーション
マンションの不動産取得税額は、新築か中古か、軽減措置の適用有無によって大きく変動します。実際の計算例を見ていくことで、より具体的な税額のイメージをつかむことができます。
新築マンション購入時のシミュレーション
土地の固定資産税評価額2,000万円、建物の固定資産税評価額4,000万円、土地面積80平方メートル、建物の専有面積90平方メートルの新築マンションを例に計算してみましょう。
【条件】
- 土地の固定資産税評価額:2,000万円
- 建物の固定資産税評価額:4,000万円
- 土地面積:80㎡
- 建物の専有面積:90㎡
まず建物については、評価額4,000万円から1,200万円を控除し、税率3%を乗じると、84万円となります。
土地については、評価額2,000万円を2分の1にし、さらに床面積による控除を適用します。90平方メートル×2=180平方メートルが控除計算の基準となり、最終的な税額は大幅に軽減されます。
中古マンション購入時のシミュレーション
1995年3月31日新築の中古マンションで、土地の固定資産税評価額2,000万円、建物の固定資産税評価額4,000万円、土地面積80平方メートル、建物の専有面積90平方メートルの場合を見てみましょう。
【条件】
- 新築年月日:1995年3月31日
- 土地の固定資産税評価額:2,000万円
- 建物の固定資産税評価額:4,000万円
- 土地面積:80㎡
- 建物の専有面積:90㎡
新築時期が1989年4月1日から1997年3月31日の間であるため、建物は1,000万円の控除が適用されます。4,000万円から1,000万円を引いた3,000万円に税率3%を乗じて、90万円が建物の税額となります。
土地部分は新築マンションと同様の計算方法となりますが、床面積要件や耐震基準を満たしていることが軽減措置適用の条件となります。
マンションの不動産取得税の納税方法
マンション取得後の不動産取得税は、申告から納付まで一連の流れに沿って手続きを進めます。納付までのスケジュールを理解し、支払い漏れのないよう計画的に準備することが大切です。
① 役場または県税事務所に申告する
不動産取得税の申告は、マンションの引き渡しを受けた日から一定期間内に行う必要があります。申告期限は都道府県によって異なり、東京都では30日以内、他の自治体では60日以内といった具合です。
申告の際には、不動産取得申告書に必要事項を記入し、売買契約書の写しや登記事項証明書などの添付書類とともに提出します。窓口での申告のほか、郵送での申告も可能です。
② 送付されてきた納税通知書で支払う
申告から約3~6ヶ月後に納税通知書が送付されます。通知書には納付すべき税額と納期限が記載されており、納期限は通常、通知書発行日から30日程度です。
納付方法は都道府県税事務所や金融機関の窓口のほか、コンビニエンスストアでの支払いも可能です。また、クレジットカードやスマートフォン決済アプリなどによる電子納付にも対応している自治体が増えています。
期限内に納付されない場合は延滞金が発生し、督促を経ても納付がない場合は差し押さえなどの滞納処分の対象となる可能性もあります。やむを得ない事情で納期限までの納付が困難な場合は、早めに税務署に相談することをお勧めします。
まとめ
マンション購入時の不動産取得税は、適切な知識と準備があれば大きな負担軽減が可能です。特に住宅用途での取得については、土地・建物それぞれに手厚い軽減措置が用意されています。
早めに概算額を把握し、必要書類を準備することで、スムーズな手続きと納税が実現できます。不動産取得税制度の理解を深め、賢く活用することで、マンション購入時の支出を適切にコントロールすることができるでしょう。