デジタル不動産の取引方法|メタバースやNFT・ブロックチェーンについて解説!
「デジタル不動産」という言葉を聞いたことのあるメタバース(インターネット上の仮想空間)やNFT(代替不可能なトークン)に興味のある方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
デジタル不動産とは、メタバースにおける仮想不動産のことです。不動産NFTとも呼ばれ、数億円規模の高額取引もみられるほどの注目を集めています。
この記事では、デジタル不動産の概要と購入方法、活用法をご紹介します。購入のメリットとデメリットについても解説しますので、デジタル不動産での投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
デジタル不動産とは?
デジタル不動産とは、メタバースにある仮想不動産のことを指します。
メタバースやデジタル不動産は、近年注目されている新しい概念です。次に挙げる例からも、世界的に注目を集めていることがわかります。
- 2021年10月、Facebook(フェイスブック)がメタバースを意識した「Meta(メタ)」に社名変更
- 2021年11月、カナダの投資会社が「Decentraland(ディセントラランド)」内のデジタル不動産を約250万ドル(約2億8,450万円)で購入
- 2021年11月、不動産投資ファンドが「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」内のデジタル不動産を430万ドル(約4億8,800万円)で購入
- 2022年2月、イタリアのラグジュアリーブランド「グッチ」が「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」内のデジタル不動産を取得し、「グッチヴォールト」ブランド展開を発表
- 2022年6月、日本政府が閣議決定で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2022年)にて、メタバースの利用拡大のための法整備を推進する旨を発表
ブルームバーグは、2022年のデジタル不動産の市場規模は4,787億ドル、2024年には7,833億ドルに達するとの予測を示しています。
メタバースの概念
メタバースとは、1992年にSF作家のニール・スティーヴンスンによって「Meta(超)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせて作られた造語です。内容としては”インターネット上に構築された仮想の三次元空間で、アバターなどを用いて接する環境”*1とされています。
【メタバースの特徴】*2
● リセット・一時停止・終了することがない ● 実生活と同様に同期的である ● 同時接続ユーザーに制限がない ● 個人や企業が経済活動して利益を得ることが可能 ● デジタルとフィジカル、プライベートとパブリック、オープンとクローズの垣根のない体験となる ● 異なるプラットフォームでも相互に運用可能 ● 個人や企業など幅広い貢献者によって運営される |
メタバースを体感するにはインターネット環境が必須であり、VRゴーグルや専用のコントローラーを使用することで、よりリアルに仮想空間を体験できます。
*1
引用)朝日新聞出版「NFTの教科書」
ブロックチェーンとNFT
これまでのデジタル創作物は簡単にコピーできるのがメリットであり、同時にデメリットでもありました。それを解決するために生まれた技術が「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンはデータをブロック単位で管理し、それをチェーンのように連結させて保管する技術です。そのため、ブロックチェーン内のデータ改ざんは非常に難しいと言われています。
ブロックチェーンで管理されるデジタル創作物のデータは、「NFT」と呼ばれています。NFTは世界に一つだけのデジタル資産であり、ブロックチェーンによって管理することで簡単にコピーが作成できません。
これにより、デジタル創作物にも所有権と価値が生まれ、メタバース上の不動産売買などの取引も可能となっています。
デジタル不動産の取引方法
デジタル不動産を実際に取引する際には、次の準備が必要です。
【デジタル不動産の購入方法】
- 仮想通貨と仮想通貨用の口座を用意する
- 仮想通貨を入れておく財布を用意する
- 不動産を扱うメタバースと接続する
- デジタル不動産の売買ができるマーケットプレイスへ接続する
1仮想通貨と仮想通貨用の口座を用意する
デジタル不動産の売買は、仮想通貨で行われます。
仮想通貨を入手するためには、仮想通貨の取引所に登録し、仮想通貨専用の口座開設が必要です。仮想通貨の口座には、日本国内の口座と海外の口座があります。
【仮想通貨取引所の一例】
日本国内の取引所 | 海外の取引所 |
GMOコイン | Binance |
DMM Bitcoin | CryptoGT |
ビットフライヤー | Bitfinex |
コインチェック | MEXC Global |
FTX Japan | KuCoin |
日本国内の仮想通貨取引所は金融庁の登録が必要であり、登録業者の一覧はホームページから確認可能です。取引所によって、取り扱いのある仮想通貨の銘柄や利用手数料が異なります。
デジタル不動産取引をお考えの場合は、メタバースで使用されている仮想通貨を調べて、取り扱いのある口座の中からご自身に合ったところを選びましょう。日本円での取引ができない銘柄や口座があり、海外の取引所では日本語対応していないところもありますのでご注意ください。
2仮想通貨を入れておく財布を用意する
仮想通貨の入手後は、仮想通貨を口座から出して保管する財布(ウォレット)が必要です。仮想通貨のウォレットはデジタル上で管理され、大きく「ホットウォレット」「コールドウォレット」の2種類に分けられます。
● ホットウォレット
インターネット上で管理するウォレット。利便性に優れるがセキュリティ面にデメリットがある ● コールドウォレット インターネットに接続せずオフラインで管理するウォレット。ハッキングなどの心配はないが利便性が悪い |
利用するデバイスによってさまざまなウォレットがあり、ウォレット機能を併せ持った取引所もあります。利用できる仮想通貨の種類や利便性、日本語対応の有無などを考慮して、自分の使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
セキュリティに考慮して、複数のウォレットで仮想通貨を管理するのもおすすめの方法です。
【仮想通貨ウォレットの例】
- GMOコイン
- コインチェック
- メタマスク
- bitpay
- Ledger Nano X など
3デジタル不動産を扱うメタバースと接続する
デジタル不動産は、どのようなメタバースでも取り扱いしているわけではありません。そのため、デジタル不動産の取り扱いがあるメタバースを選ぶことが必要です。
メタバースには「BIG4」と呼ばれる大きなメタバースがあり、その4つであればデジタル不動産の取り扱いがあります。デジタル不動産の土地区画は「LAND」という単位で規定。それぞれのメタバースで区画の広さと区画数の上限が定められています。
【デジタル不動産が使えるメタバースの例】
- The Sandbox(ザ・サンドボックス)
- Decentraland(ディセントラランド)
- Somnium Space(ソムニウム・スペース)
- Cryptovoxels(クリプトボクセルズ) など
上記以外のメタバースでも、デジタル不動産の取り扱いをしているところは複数あります。ウォレットの準備をしたあと、デジタル不動産の取引を考えているメタバースプラットフォームのアカウントを作成しておきましょう。
4デジタル不動産が買えるマーケットプレイスに接続する
好きなデザインのデジタル不動産や立地のいい土地を見つけたら、実際に購入手続きに進みます。
デジタル不動産を実際に入手するための方法は、複数あります。
- NFTマーケットプレイスを利用する
メタバース内でNFTの取引ができるプラットフォームを利用する方法です。デジタル不動産の取引では一般的で、初心者でも簡単に購入できます。 - メタバースで直接購入する
メタバースプラットフォームで直接購入する方法です。手続きがやや煩雑であり、流通市場に出る前の購入となるため、リスクが少し高めとなります。 - デジタル不動産を専門で扱う業者を利用する
不動産を専門で扱う業者もいますが、特別な理由がなければNFTマーケットプレイスでの購入が賢明です。
デジタル不動産を買う意味と活用方法
引用元:https://www.voxels.com/map より
デジタル不動産の土地や建物を手に入れたとしても、仮想世界なので実際に住むことはできません。デジタル不動産を所有して活用する方法として、次のことが考えられます。
【デジタル不動産の活用方法】
- 不動産の売買
- 不動産の賃貸
- お店などの運営
- イベントの開催
デジタル不動産の売買
デジタル不動産は、実際の不動産と同様に売買が可能です。
- 土地が安いときに購入して高く売る
- 土地を購入して建築物を建設してから販売する など
カナダのTerraZero社では、 Decentraland内のデジタル不動産を購入する顧客に対して「メタバース住宅ローン」の提供を開始しています。
「物理的に住めるかどうか」というのが実際の不動産との大きな違いですが、不動産投資という意味では、現実社会との差はなくなってきていると言えるでしょう。
不動産の賃貸
デジタル不動産で入手した土地や建造物は、賃貸として貸し出すこともできます。
- テーマパークを所有してサービス提供業者に貸し出す
- ショッピングモールを建築してテナントを入れる
- 土地を所有して場所をレンタルする など
広さや立地、周辺環境により賃貸価格が変わるなど、デジタル不動産も実際の不動産と同じく、付加価値による価格変動があります。
お店などの運営
仮想空間に購入した土地や建築物内では、店舗運営も可能です
実際に「マクドナルド」「サムスン」「ナイキ」などの大手企業が、メタバースでの店舗運営に参入。店舗運営については各社さまざまな内容で差別化を図っており、実社会でのアプローチとは異なる店舗も数多く見られます。
- アバター(メタバース内での自身のキャラクター)が身につけるアパレルの販売
- メタバース内の店舗で見た商品を実際に購入して届けてもらう
- 企業独自のNFTの販売 など
メタバース内での出店は実店舗と比較して固定費が安く、実店舗で導入されているブランドイメージをより前面に出した店舗を運営できるなど、今後さまざまな工夫が考えられます。
イベントの開催
メタバース内でのイベントも、さまざまな形で開催されています。
2022年3月Decentraland内で「ファッションウィーク」というイベントが開催され、「ドルチェ&ガッバーナ」「エトロ」「トミー・ヒルフィガー」など50のブランドが参加しました。
また「グッチ」「バーバリー」「バレンシアガ」などのブランドも独自でイベントを開催するなど、続々とメタバースに参入が進んでいます。
イベントの参加は基本的に無料で、気に入ったものがあれば仮想通貨にて購入可能です。
今後はライブや著名人の講演など、あらゆるイベントの行われる可能性が高いと考えられ、イベントの内容によっては不動産価格に影響することも大いに考えられるでしょう。
デジタル不動産を買うメリット・デメリット
デジタル不動産を所有するにあたり、考えられるメリットとデメリットについては次の通りです。
デジタル不動産を買うメリット
デジタル不動産の購入メリットとして、次の点が挙げられます。
【デジタル不動産を買うメリット】
● ビジネスチャンスが多く見込める ● 経年劣化や災害などによる費用リスクが基本的にない |
デジタル不動産の運用については、通常の不動産と同じく売買や賃貸で不動産収入を得られます。バーチャル上での売買なので全世界がビジネスの対象となり、可能性の大きさは計り知れません。
メタバース内の建築物はデジタルデータなので、経年劣化することがないのもメリットです。天災などの災害は基本的に考えなくてもよいため、その面では現実世界の不動産と比べて有利だと言えるでしょう。
デジタル不動産を買うデメリット
考えられるデメリットは、次の通りです。
【メタバース不動産を所有するデメリット】
● 仮想通貨相場の影響を受ける ● 一過性のブームの可能性もゼロではない |
メタバース内での支払いは、基本的にすべて仮想通貨です。仮想通貨にもさまざまな銘柄があり、相場は日々変動しています。相場の乱高下は通常の不動産より大きく、ハイリスクハイリターンとなる点は頭に入れておく方がいいでしょう。
また、メタバース自体がまだ新しい分野であり、今後の見通しについては不透明な部分も否定できません。ご自身が所有するメタバースの利用者が減ったり、最悪の場合閉鎖したりした場合は、一気にデジタル不動産の価値が下がってしまいます。
現在のところは大手企業が続々とメタバースに参入しており、大きな市場になっていくと見込まれています。メタバースが今後もなくてはならないものになるか、もしくは一過性のブームとして衰退するか、しっかりと見極めたうえで投資することが大切です。
まとめ
デジタル不動産はメタバース上の仮想不動産であり、実際の不動産と同様に売買や賃貸が可能です。メタバース内の取引は年々増えており、高額取引も少なくありません。
メタバースもデジタル不動産もまだまだ新しい概念であり、今後の見通しについてはどのようになるか見当がつきません。仮想通貨の相場リスクなどもありますが、現状は伸びている市場であり、ビジネスチャンスは多いと考えられます。
メリットとデメリット、リスクをよく見極めたうえで、デジタル不動産の購入を検討するのが賢明だと言えるでしょう。
この記事のポイント
● デジタル不動産とは仮想空間上の仮想不動産
メタバース内の土地(LAND)や建築物を仮想通貨で購入できます。
● 実際にデジタル不動産は高額取引されている 4億円以上で購入された実績があり、不動産投資として注目されています。
● リスクもあるがビジネスチャンスはこれから増える見込みである 現状ではハイリスクハイリターンの投資となるため、しっかりと検討してから購入に踏み切るのが賢明です。 |