委託管理とは|不動産経営者必見!管理委託した際の業務内容とメリット・デメリット
委託管理とは不動産管理会社に不動産の管理を任せることを指し、オーナーは管理業務以外の部分に労力を費やすことが出来るようになります。
ですが、個人投資家や管理組合にとってマンション管理は楽なものではありません。そのため、一般的には管理会社に委託する「委託管理」という形態をとって管理業務を任せるケースが多いです。
管理を依頼する側はただ任せるのではなく、「管理会社はどういった業務を行っているのか」「任せることでどんなメリット・デメリットがあるのか」を把握しておくことが大切です。そうすることで、どの管理会社に委託するのが適切か、安心して委託できるのはどこかを判断する目安になるので本記事を参考に判断基準を確認してみてください。
委託管理とは
委託管理とは、マンションの管理・運営を行うための方法で、管理・運営を管理会社に委託することを言います。
マンションの管理・運営は管理組合自らが行う『自主管理』が一般的とされていますが、マンションの規模が大きくなるほど自主管理は難しくなるので、管理組合の状況に合わせて『全部委託』か『一部委託』を選択して管理会社に依頼する場合が多いです。
- 全部委託:マンションの管理・運営を管理会社に全て委託する
- 一部委託:管理組合で管理・運営を賄いきれない部分だけ委託する(共用部分の定期清掃・設備点検など)
一部委託の場合、管理組合が行える範囲を残しておくので、組合の管理意識の低下を防ぐことが出来るメリットがあります。
また、委託管理をするのは管理組合だけでなく、マンション1棟を所有するオーナーも含まれます。個人投資家のようなオーナーの場合は複数のマンションを所有する場合が多いので、一人で各マンションの管理を行うことは難しいです。そこで、オーナーは管理会社に委託管理をして、自身の代わりに各マンションの管理・運営をしてもらいます。
不動産管理委託契約
不動産管理委託契約とは、委託管理をする際にオーナーと管理会社が取り交わす契約のことを言います。
管理会社には以下のような義務があるため、管理業務を受諾する場合は正式に契約を取り交わす必要があります。
- マンション管理会社は、管理委託契約の締結前に一定の重要事項を説明しなければならない(マンション管理適正化法第72条)
- マンション管理会社は、管理委託契約の締結するときに、一定事項を記載した書面(通常は管理委託契約書)を遅滞なく交付しなければならない(マンション管理適正化法第73条)
管理会社と結ぶ契約には『一般管理契約』と『サブリース契約』があります。どちらも管理会社に委託管理をする契約であることに変わりないですが、サブリースの場合はマンションをまるごと管理会社に貸し出して家賃の徴収から管理まで全て任せるという契約です。そのため、それぞれの違いを把握したうえで契約方法を決めることが大切です。
一般管理契約
一般管理契約とは、オーナーが管理会社に対してマンションの管理業務の『代行』を依頼する際に行う契約のことを言います。
具体的な業務内容としては以下のようなものが挙げられます。
- 入居時の賃貸契約
- 家賃などの入金管理
- その他事務に関する手続き
- 共用部分の清掃
- 共用設備の保守・点検
一般管理契約では、金額の設定(家賃・敷金・礼金などオーナーの収入に関わるもの)は全てオーナー自身で設定することが出来るので、空室の状況が少なければ比較的高い収益を見込めます。
しかし、金額を自由に設定できる反面、物件周辺の家賃相場などのリサーチをしっかりしておかないと、入居希望者が現れないというリスクがあるので注意が必要です。つまり、高い収益を見込める契約方法ではあるが、入居者が現れるまでは効果が出ず、空室対策などに費用を割かなければならない可能性があります。
また、管理組合の場合は家賃収入を気にする必要がないので、基本的には一般管理契約で管理業務を管理会社に委託します。
サブリース契約
サブリース契約はオーナーが管理会社に管理業務を委託する点は一般管理契約と同じですが、管理会社はオーナーから物件をまるごと借り上げるという点が違う契約方法です。
管理会社に物件をまるごと貸し出すことによって、空室対策や広告活動まで行ってくれる上に、管理会社が直接契約をしてくれるのでほとんど手間なく安心して任せることが出来ます。それだけでなく、サブリース契約の場合『家賃収入の保証』がついており、賃料の相場から数%引かれた保証賃料がオーナーへ毎月支払われるので、安定した収入を得ることが可能です。
ただし注意点として、サブリース契約では家賃をオーナーが自由に設定することが無理なので、家賃を最大化できないというデメリットがあります。また、管理会社に全て任せてしまうため入居者を選定できない問題もあり、モラルの低い入居者が増えてしまう可能性がある点も注意が必要です。
近年サブリース契約のトラブルが増えてきている
家賃保証があって、管理を全て任せっきりにできるというメリットがあるサブリース契約ですが、契約をうまいこと駆使して『契約解除したくてもできない』『家賃の値下げを要求される』といったトラブルも実際に起こっています。
この件に関して国土交通省でも以下のような注意の呼びかけを行っています。
【アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!】
サブリース契約は、サブリース業者がアパート等の賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げるため、一定の賃料収入が見込めることや、管理の手間がかからないことなど、オーナーにとってのメリットがある一方で、近年、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。
サブリース契約をする場合は、契約の相手方から説明を受け、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してから契約してください。
引用:国土交通省
サブリース契約を検討する場合は、リスクを把握したうえで信頼できる管理会社を見定めて契約をすることが大切です。そのためにも、複数の管理会社と関りを持っておくなどして、選択肢の幅を広くしておくことが重要になってくるでしょう。
委託管理を受けた管理会社の業務内容は?
管理会社に管理業務の委託をする契約を交わす際に、管理委託契約書が発行されます。基本的にはその書面に管理業務が記されているので、すでに業務委託を済ませている場合はぜひ一度確認してみてください。
下記の内容は一般的な委託管理(全部委託)において、契約書に記されている業務内容です。
事務管理に関する業務 |
【基本事務】
【基本事務以外】
|
---|---|
管理員業務 |
|
清掃業務 |
|
建物・設備管理業務 |
|
マンションの形態、設備などによって契約内容は変わってきますが、一般的にはこれらの内容が記されています。追加でその他の管理業務を依頼したい場合は、管理会社に相談することで受けてもらえる可能性がありますが、追加料金が発生する場合が多いので注意が必要です。
委託管理のメリット
委託管理をすることで、管理業務の手間を減らせるのはもちろんのこと、他にも以下のようなメリットがあります。
【委託管理のメリット】
- プロの管理方法を自主管理でも生かせる
- 遠方の物件でも所有できる
管理業者に委託していれば、実際にどういった管理を行っているのかを直接聞くこともできますし、契約書を通して確認が出来ます。また、その知識を自主管理する物件に生かすこともできるので、委託管理している物件を減らし、自主管理へ移行することで管理会社への委託費用を減らすことも可能になります。
さらに、委託管理は遠方の物件であるほど効果を発揮します。自身で足を運べない場所こそ管理会社に委託することで安心して物件を所有することができます。
管理業務を行わなくて良い
委託管理による大きなメリットの一つとして、複雑な管理業務から解放されるという点があります。クレーム対応や家賃回収、定期点検・設備保全など全て任せることが出来るので、管理組合で話し合う手間、オーナー自身で管理を行うという手間が省けます。
また、手間を排除することで管理組合であれば他の大きな議題に時間を費やせますし、オーナーであれば自分自身の時間を増やせるので精神的ゆとりを持つことが出来ます。
特に、専業オーナーではなく兼業として不動産収入を得ている方にとっては、もう一方の仕事の時間を削られるのは致命的なので、少しでも時間を削ることが可能になる委託管理はうまく利用していきたい管理方法の一つです。
プロの管理方法を自主管理でも生かせる
管理会社は賃貸管理のプロフェッショナルです。不動産のことだけでなく法律や経営に関するノウハウを所有する人が在籍しているので、効率的な方法で管理を行っています。
例えば管理業務の中にはクレーム対応や空室対策、入居者選定などがあり、これらは不動産収益の最大化・自主管理を目指す上でも必ず学んでおくべき内容です。
自主管理は委託管理費用を節約できるので収益の最大化のためにはなるべく活用していきたい管理方法ですが、知識が乏しいうちに行うと無駄な管理業務などを取り入れたり、効率化が図れなかったりといったデメリットがあります。そのため、不動産管理初心者は、まず管理委託をしてプロの方法を学んでから自主管理に切り替えていくのが無難でしょう。
遠方の物件でも所有できる
委託管理をすることで、地方にある物件の管理を任せることが出来るので安心して物件を所有しておけます。また、マイホーム所有者が一時的に転勤となった場合でも、管理会社に賃貸運営を任せることができるので、遠方から管理を任せたい場合は委託管理が便利です。
また、遠方じゃなくても複数の物件を所有していると、自主管理をした場合すべての物件を回るのに移動時間だけでかなりかかってしまうので、そういった時間を削減するためにも委託管理はおすすめです。
委託管理のデメリット
委託管理は、管理業務の手間を削減したり、遠方でも物件運営を行うことが出来たりするメリットがある反面、業者選び次第で管理の質に影響が出るなどのデメリットもあります。
【委託管理のデメリット】
- 管理委託費用が掛かる
- 自主管理に移行しづらくなる
- 質の高い業者選びが必要
外部に委託するので費用が掛かるのはもちろんのこと、管理を任せっきりにすることでいざ委託費削減を意気込んだ際に、管理能力が低下しており自身では全然管理ができない…という問題が発生してしまう可能性も考えられます。
委託管理を検討する場合は、デメリットを許容した上で契約するようにしましょう。
委託管理費用がかかる
委託管理をした際に管理委託契約を締結することで『委託管理費用』が発生します。その他にも、修繕工事をした時には修繕費用が発生したり、『システム料』『更新事務手数料』といった追加料金がかかったりもします。
また、委託管理費用においては管理会社によって支払い方法も異なり、毎月固定の固定報酬方式もあれば、家賃収入に応じて変化する変動報酬方式もあります。そのため、マンションの形態・管理会社の支払い方式でそれぞれかかる費用は変化するので、委託管理をする場合は事前に管理会社の料金表をチェックするなどして慎重に管理会社を決めることが大切です。
自主管理に移行しづらくなる
管理会社に管理を任せっぱなしにしていると、オーナー自身の管理能力が低下してしまい自主管理をしようとしたときに全然管理が行えない…という問題が発生する可能性もあります。
また、管理会社自身が常にオーナーの収益向上のために活動しているとも限らないですし、目先の利益を優先してオーナーに不都合な対応をしているかもしれません。そうなると、自主管理に移行したいと考えていても、気づけば物件の管理が個人では対処しきれない状態になっている可能性があります。
そういった状態に陥らないためにも、オーナー自身が管理会社の質を見極め委託して良いかどうかを判断できる目を養っておくことが大切です。
最後まで自主管理をしない方向性だとしても、その物件自体はオーナーのものなので、資産価値を落とさないためにも管理会社に目を光らせておいたり、良し悪しの判断ができるようになったりしておくことは堅実な管理をするためには必要です。
質の高い管理会社選びが必要
委託管理をすると管理業務は全て管理会社に依頼することになるので、管理の質が管理会社の能力に左右されやすいです。
例えば、管理会社の質が悪いとクレーム対応が遅くなったり、共用部の清掃などが綺麗に行われなかったりと入居者にも大きな影響を及ぼします。また、管理会社は数百件もの賃貸物件を抱えていることがほとんどなので、人手不足により管理業務が回らないという場合もあります。
職務怠慢や、やむを得ない事情による管理の質の低下にせよ、入居者に迷惑をかけてしまうことに変わりはないので、委託管理をする際は管理会社の見極めが非常に重要です。そもそも不動産管理会を利用するメリット・デメリットについての記事も下記にまとめてありますので、参考にしてみてください。
参考:賃貸管理とは|業務内容と不動産管理会社を利用するメリット・デメリット
『GMO賃貸DX』のアプリ導入で、管理業務を安心に。
委託管理をする際に管理会社がどんなシステム・サービスを利用して管理を行っているかに注目するのも質が高い業者選びには重要なポイントです。
例えば『GMO賃貸DX』というサービスを導入している管理会社であれば、オーナーと管理会社のコミュニケーションが円滑に進めることが出来るだけでなく、電子契約などによってオーナーと管理会社で行う契約などに関する業務を効率化することが可能になります。
テック化やDX化が進む現代において、『GMO賃貸DX』のようなテクノロジーを導入しているかどうかは、管理会社選びの基準として役立つでしょう。
また、DX化を目指す不動産管理会社にとってアプリを導入することは、オーナーのエンゲージメントを高めたり、社内の業務効率化を図れる第一歩です。まだ周りの管理会社は導入してなさそうだから平気かな…と考えず、アプリを活用して他社と差別化を図っていこうぐらいに考えても損はないかと思います。
まとめ
委託管理をすることによって管理組合・オーナーの手間を大きく削減することが可能になり、管理業務以外の部分に労力を費やすことが出来るのがメリットです。
費用が掛かったり、管理会社次第で管理の質に影響が出たりというデメリットがあるものの、管理組合・オーナーが慎重に管理会社の選定を行えばそういった問題もクリアできます。
もし、これから委託管理を検討している場合は信用できる業者を選ぶために、『どういった管理体制なのか?』『どういったシステム・サービスを導入しているのか?』に注目してみてください。また、下記の資料も無料でダウンロードできますので、ぜひチェックしてみてください。