『不動産』と『VR』で内見を効率化&成約率UP|VR導入で得られるメリット・デメリット
不動産業界において、少しずつ認知度が高まってきたオンライン内見は遠方からでも内見ができる非常に便利なシステムです。
しかし、最近ではオンライン内見をバーチャル空間で行えるVRを使った内見方法も開発されてきています。VRを使うことで、従来行われてきた内見よりもさらに生活イメージが湧くようになり、物件を探している人だけでなくオーナーの評判も良くなったりします。
当記事では不動産業界におけるVRの価値を知ることができるよう、メリット・デメリットなども含めて詳しく解説しています。
VRとは
VRとは『Virtual Reality』の略で、専用ゴーグルを使用して仮想空間にいるような体験ができるシステムです。近年ではゲーム分野だけにとどまらず、スポーツ分野や医療分野においても活用されています。
また、最近ではVRの技術を発展させることで、映像の中を自由に動き回れたり、仮想世界にあるものを動かしてみたりと没入感の高い体験も可能になってきました。
技術の進歩により、不動産業界では内見にVRを導入することで家具を自由に移動させたり、部屋中を移動して物件を視察できたりと、タブレットを使ったオンライン内見以上にリアリティのある内見が体験できる場合もあります。
VRには視聴型と参加型がある
VRには大きく分けると『視聴型』と『参加型』の2通りがあります。それぞれの詳細は以下の通りです。
- 視聴型:流れている3D映像を見るだけで、授業で利用したり医療支援などで使われています。
- 参加型:映像の中を自由に動き回れたり、バーチャルのモノを動かすことができます。
内見で利用するVRは、自由に動き回ったり家具などのモノを動かしたりするので『参加型』です。
VR以外に「AR」という技術もある
VRと似た技術でAR(Augmented Reality:拡張現実)という技術が存在します。ARはVRと違って現実の環境と共存するような仮想環境が設定されているのが特徴で、スマートフォンなどを使って実際に見えている景色にデジタルエレメントを追加し、周りの世界を拡張します。
つまり、VRは全てバーチャルで作られた世界で、ARはレンズ越しの現実世界にバーチャルを融合することで作られる仮想現実の世界のことを言います。
この技術を不動産業界の内見に活かせば、実際に物件へ足を運んだ際に、何もない部屋にバーチャル家具を設置できるので、『現実世界の雰囲気』と『実際に住んだ際のイメージ』の両方を体験できるようになります。
関連記事:オンライン内見とは|メリットとデメリット・実施の流れと注意点
不動産業界にVRを導入で期待できること
VRはスポーツ観戦やゲームなどに利用されるケースが多い技術ですが、不動産業界においてももちろん利用可能です。
例えば、VRで物件を内見できたり、そのVRの中にバーチャルの家具を設置することができます。従来ではオンライン内見というタブレットを活用した内見方法がありましたが、よりリアリティ性の高いものとしてVR内見は非常に便利なシステムです。
VRで物件を内見
VRでの内見は、WEB上で360°建物の外観、内観、周辺環境をバーチャルリアリティで見回すことができます。実際に建物の外観や周辺環境は360°カメラで撮影したものを使うので、あたかもそこに存在しているようなイメージを抱きながら内見が可能です。
これにより、実際に入居希望者と不動産担当者は物件に足を運ぶ必要がなくなり、効率よく内見を進めることができ、1日の内見数が増やせるのもVR内見の特徴です。この辺の特徴や魅力はオンライン内見とあまり変わらないと思います。
VRで内見をする物件にバーチャルで家具を設置
VRで内見をすると部屋の様子を確認できるだけでなく、VRゴーグル内の画面上に間取りや築年数などの情報を表示したり、家具やインテリアの3Dデータを反映し、室内の模様替えを行った場合のパターンを映し出したりすることができます。
そうすることで、通常のVR内見以上に生活感のあふれた空間を体験することが可能です。
通常の内見でも家具などがない状態を確認する場合が多いので一見広く感じますが、いざ住んで家具を配置してみると狭く感じる…なんてことも少なくありません。ですが、VRを利用して一般的な家具のサイズを反映した3Dデータを反映することで、実際に家具を置いたらどんな広さになるかまで体験できます。
不動産業界にVRを導入するメリット
不動産業界にVRを導入するメリットは以下です。
【不動産業界にVRを導入するメリット】
- 遠方の入居希望者にも宣伝できる
- (仲介・管理会社の)業務効率が上がる
- 成約率の上昇が見込める
- 宣伝効果・集客効果を見込める
- 空室対策に繋がる
- オーナーに対して手数料以外のメリットを提示できる
内見の質が高まることを前提に、遠方の入居希望者でも実施ができたり、オーナーに対してVR内見を利用しているというアピールをすることもできます。特に、『成約率の上昇が見込める』という点については、内見の質が上がれば一段と部屋のイメージがしやすくなるという理由から説明できます。つまり、不動産会社にとって成約率アップは最も大きなメリットになるので、検討する余地はあるかと思います。
遠方の入居希望者に対しても宣伝できる
VR内見を実施することで、遠方の入居希望者でも物件の宣伝を行えます。
地域密着型の営業方法ももちろん悪いことではありません。ですが、効率よく空室対策を行えれば遠く住む人に対しての宣伝を可能にするVR内見は積極的に実施していく方がいいでしょう。
例えば、転勤や上京が決まっている人はなかなか現地へ赴くことが難しいなか、なるべく早い段階で家を決めなくてはいけない場合が多いです。そこで、画像や間取り図しかない状態では決められるものも決めきれません。
遠方の入居希望者向けに宣伝ができるようになれば、集客効果も見込めて空室対策にも繋がります。
業務効率が上がる
VRを利用すれば内見などの時間的制約が省けるようになります。その結果として、業務効率の改善が期待できるメリットがあります。
例えば、 VRを利用することで『物件への訪問』と『物件への移動』にかかる時間が必要なくなり、不動産業者は成約までに必要な時間を大幅に短縮できます。また、非対面で業務を行うと対面でのやり取りより入居希望者との雑談が減るので、必要な情報のやり取りだけで済む場合が多く、無駄な時間を使わずに効率よく業務が進められます。
また、物件によっては店舗でVR内見をすぐに実施できるので、そこで素早く契約に繋がることもあり、スピード感ある営業ができるようになるのも大きなメリットです。
成約率の上昇が見込める
VRの利用によって従来の内見に比べると時間の制約は減少するので、一件にかかる内見時間が減ることで1日にこなせる内見の数が増えて業務効率が上がります。
そして業務効率が上がると、業務に使う時間を大幅に削れます。そうすると、削ることができた時間をさらに営業や宣伝などに使うことができるので、従来以上に営業件数が増えて成約率が自然と高くなる期待が見込めます。
宣伝効果・集客効果を見込める
VRは比較的新しい技術なので、導入するだけで他の不動産会社との差別化を図れます。
また、VRを用いることはWEB上で物件の内見ができるようになったり、他社とは違う宣伝効果になったりすることで集客効果を見込めます。
さらに、VRの手軽さゆえに内見希望者の増加を見込める点も集客効果につなげることが可能です。
空室対策に繋がる
物件の募集がかけられていたとしても、退去日になっていなければ対象物件に入居者がまだ住んでいる場合があります。そういった場合は、従来だと退去してから内見をしなくてはならず、効率よく入居者の入れ替えができませんでした。
しかし、VRの内見が可能になれば対象物件のバーチャルデータを保存しておくことで、いつでも入居希望者が内見を実施することが可能です。そうすることで退去日に合わせて入居者の予定を決めておけるので、無駄なく空室対策が行えます。
空室率の低下は不動産会社にとってもオーナーにとっても最重要課題と言える問題なので、それが改善できる可能性が高まるのであればVRは積極的に取り入れる価値のある技術であると言えるでしょう。
オーナーに対して手数料以外のメリットを提示できる
不動産管理会社間の競争がある中で、各管理会社は手数料以外のサービス内容でオーナー向けのメリットを提示することが求められています。
そこでVRを導入していれば『空室対策に繋がる』ことや、『他社にない技術を持ち合わせている』という点で、オーナーにアピールできます。また、新技術を入れるだけでも業務に対して積極的な投資ができる会社とみなされてオーナーの評判が上がるかもしれません。
不動産業界にVRを導入するデメリット
不動産業界にVRを導入するメリットがある反面、以下のようなデメリットも存在します。
【不動産業界にVRを導入するデメリット】
- 専用の機材が必要
- 物件の雰囲気・肌感を知ることができない
- 周辺環境の確認ができない
VRのデメリットはなんといっても肌でその場の雰囲気を感じることができないところにあるでしょう。VRは実際に住んだ際の景色は再現できますが、ニオイなどは感じられないので、そういった点にシビアな方に向けては宣伝効果の意味を持ちません。
専用の機材が必要
VRを実施するには不動産会社側がある程度の機材を揃える必要があります。主に必要とされる機材は以下の通りです。
【VRに必要な機材】
- 360°カメラ
VRコンテンツを作るには絶対に必要となる機材です。約2万円あれば購入できるカメラで、導入コストとしてはあまり高く無い設備になります。しかし、カメラの性能次第では費用が大幅にUPする可能性もあるので、最低限必要とする性能を調べてから購入するようにしましょう。 - 一脚
一般的に、カメラに使う脚は三脚の場合が多いですが、360°カメラを使う場合は一脚を選択しましょう。三脚だとカメラの性質上、脚が映り込んでしまうのでVR内見には向かない設備となっています。 - VRゴーグル
VRゴーグルは店舗でVR内見をしてもらう際に必要です。遠隔でやる場合はスマートフォンなどを使って実施するので必要ありませんが、実際に店舗に物件を探しにきた人向けに宣伝をするのであれば設備しておいたほうがいいでしょう。
費用自体は全体的にあまり高くつかないので導入ハードルは低めです。ですが、あまり費用を抑えすぎるとカメラの性能が落ちたりするので最低限の品質は確保できるように対象品の下調べはしておくようにしましょう。
物件の雰囲気・肌感を知ることができない
VRでは部屋のニオイやフローリングの質感・壁の傷、日光がどれだけ部屋に入ってくるかなどは再現できません。
他にも、室内設備の建てつけの良し悪しや、配置が自分にしっくりくるかなど、実際に肌で感じる部分においてはVR技術が進歩しても再現が難しいので、そういった点が気になるお客様がいた場合は実際に物件へ足を運んでもらう必要があります。
どうしても遠方で足を運ぶことができなかった場合は、担当者複数名を連れて物件の感想を述べてもらうなど客観的な意見を集めて提示したりするのも一つの方法です。
周辺環境の確認ができない
不動産会社によってはVR内見で周辺の景観などを最低限確認することができない場合があります。しかし、周辺が静かな場所なのか、近所にスーパーがあるか、共有部分の管理が行き届いているかなどの情報は確認することができません。
なので、不動産会社としては周辺環境がどんな場所なのか情報を提供できるように、口コミなどをまとめた資料を用意することで喜んでもらえたりもします。特に治安に関する情報は気にする方が多いので、事前に安心できるような情報を準備して置けると好ましいです。
まとめ
VRとは360°カメラを使って撮影した風景をスマホ、もしくは専用ゴーグルを使って視聴できる技術のことを指します。不動産会社はこの技術を使うことで、オンライン内見をグレードアップさせたような『VR内見』を提供できるようになりました。
これにより、VR内見は入居希望者にとって物件の中をよりリアルにイメージしやすくなるメリットがあり、不動産会社にとっては業務効率の向上や成約率のUPなどのメリットがあって双方にとってプラスな技術となっています。
ただ、VR内見は生身でしか感じることのできないニオイや、部屋の雰囲気を肌で感じられないので、そういった部分を気にしてしまう方には向かない内見方法です。
この記事のポイント
最後に、この記事のポイントを確認して今後に活かせるようにしておきましょう。補足情報を増やすなどして、いかに不足する情報をVRと合わせて提供できるかが重要です。
- VRとは撮影した風景をスマホ、もしくは専用ゴーグルを使って視聴できる技術!
- VRを導入のメリットー『物件の宣伝範囲の広域化』『成約率の上昇』『現場に行かないことによる業務効率UP』『空室対策』『オーナーからの評価UP』
- 専用機材が必要になったり、現場の空気感を感じ取れなかったりするなどのデメリットがある