賃貸借契約書に印紙は必要?建物・土地・駐車場など種類別にわかりやすく解説
不動産では様々な契約書を作成しますが、契約書の作成や締結の際に悩むものの1つに「印紙」があります。
印紙は契約の内容や対象によって、必要な金額や貼り付け不要かが変わってきます。
基本的に課税対象となる文書を作成して契約を交わす場合には、印紙税を納めなければなりません。印紙は正式には「収入印紙」と呼びますが、その印紙税を納めるために使用する証票です。
契約書に収入印紙を貼ることを怠り、印紙税を納めなかった場合には、罰金として過怠税が課せられます。
契約の際には印紙の必要の有無と金額をしっかり確認し、貼り忘れのないように気をつけましょう。
賃貸借契約書の印紙は必要か?
不動産の契約で多く取り交わされる「賃貸借契約」ですが、契約の内容や対象によって、印紙の金額や必要の有無が異なります。
今回は、不動産に関連する以下の契約書について、印紙が必要な場合と不要な場合について解説します。
- 建物の賃貸借契約書
- 土地の賃貸借契約書
- 駐車場の賃貸借契約書
- 車両賃貸借契約書
- 動産売買契約書
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建物の賃貸借契約書
建物の賃貸借契約書では、単に建物の貸し借りをするのみの契約の場合には、印紙を貼り付ける必要はありません。
ただし、契約書に追加で条件を記載する場合、印紙が必要になる可能性があります。
- 内容に敷地の面積が記載される場合
- ビルなどの賃貸借契約を結ぶ場合
それぞれの場合に分けて、印紙が必要になるのかを詳しく見ていきましょう。
【内容に敷地の面積が記載される場合】→必要なし
建物の賃貸借契約書では、物件を特定するために、契約書に対象となる建物の敷地面積を記載することがあります。
しかし、それはその建物や物件の住所や使用範囲などを定めるためのものです。これだけでは単に建物を貸し借りするだけの契約にとどまるため、印紙を貼る必要はありません。
【ビルなどの賃貸借契約を結ぶ場合】→必要あり
ビルといった建物の賃貸借契約を結ぶ場合には、賃貸の金額が大きくなることから、借主があらかじめ賃料の何倍もの金額を協力金や保証金として貸主に預ける場合があります。
協力金や保証金を預け、「一定期間の経過後に一括もしくは分割で返還する」といった条項が記載されている賃貸借契約書は、印紙税額第1号の3文書「消費貸借に関する契約書」に該当します。
このような賃貸借契約書では建物以外にかかる協力金や保証金の金額に対して、印紙の貼り付けが必要となります。
土地の賃貸借契約書
一方で、土地の賃貸借契約書では単に土地の貸し借りをするだけの契約でも印紙が必要となります。
- 土地そのものの場合
- 土地に建つ施設を利用する場合
- 農地の場合
ただし、一部わかりにくいケースがありますので、印紙が必要かどうかをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
【土地そのものの場合】→必要あり
土地そのものの賃貸借契約書には、印紙を貼り付ける必要があります。印紙税の金額は文書に記載された契約金額によって異なります。
印紙の対象となる契約金額は「地上権または土地の賃貸借の設定または譲渡の対価たる金額」と定められています。
具体的には、貸主が借主に返還する必要がない以下のようなお金のやりとりです。
- 名義変更料
- 手数料
- 権利金
- 更新料
なお、対象となる金額がその土地の価格だと勘違いする方がいますが、土地の金額に応じた印紙税は支払う必要はありませんので、間違えないように注意しましょう。
また、敷金や預り金、土地の使用対価として支払う「地代」は、5万円に満たない場合には印紙の貼り付けが不要です。ただし、5万円以上「契約金額の記載のない」場合には、200円の印紙を貼る必要があるので覚えておきましょう。
【土地に建つ施設に利用する場合】→必要なし
土地自体の契約ではなく、土地の上にある施設を単に利用するだけの契約の場合は、建物の契約と同様に印紙は必要ありません。
【農地の場合】→必要あり
賃貸借契約を結ぶ土地の用途が農地の場合も通常の土地の賃貸借契約と同様に印紙が必要となります。
駐車場の賃貸借契約書
駐車場の賃貸借契約書でも、建物や土地に建つ施設として契約するのか、土地として契約するにかによって、印紙の必要の有無が異なります。
- 駐車場として土地を賃貸借する場合
- 車庫を賃貸借する場合
- 駐車場の一定の場所に駐車する契約の場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【駐車場として土地を賃貸借する場合】→状況によって異なる
駐車場の賃貸借契約書では、賃貸借の対象によって印紙が必要な場合と不要な場合に分かれるという点に注意が必要です。
借主が土地を借りて駐車場として利用する場合、通常の「土地の賃貸借契約」と同様の扱いとなり、印紙が必要です。
借主が駐車場としてあらかじめ整備されているアスファルトの敷地や区画割場所を借りて、駐車場としてその土地を利用する場合は、土地ではなく「土地に建つ施設の賃貸借契約」とみなされます。
この場合には、建物の賃貸借契約と同様で、印紙は不要となります。
【車庫を賃貸借する場合】→必要なし
駐車場の賃貸借に関連して、車庫を対象に賃貸借契約を結ぶ場合にも印紙は不要です。
車庫も駐車場と同様に「土地に建つ施設」の賃貸借契約とみなされ、建物の賃貸借契約と同様の扱いとなるためです。
【駐車場の一定の場所に駐車する契約の場合】→必要なし
同様に、駐車を目的に駐車場のみを借りる場合にも、駐車場自体は「土地に建つ施設」という扱いとなりますので、印紙は不要となります。
車両賃貸借契約書
「車両賃貸契約書」の締結では、単に車両の賃貸借契約を行うのみの場合、印紙は不要です。
ただし、単に車を貸し付けるだけでなく付随して業務が発生する場合、その業務に対して印紙が必要となる場合があります。
例えば、自社で購入した車を単に業者に貸すだけではなく、その車を使用して運送を委託する場合などです。
運送業者に自社の車を貸す際は「車両賃貸契約書」を作成しますが、付随して物品を倉庫まで運ぶ業務を委託する場合は、「運送」という業務が発生します。
こうした契約の場合には、別途「運送に関する契約書」を作成する必要があり、運送契約に対して印紙を貼って印紙税を支払う必要があるのです。
動産売買契約書(機械売買契約書等)
今回は不動産に関する賃貸借契約書の印紙について取り上げましたが、駐車場や車庫、車両などの賃貸借契約に関連して、一部売買を伴う契約も想定されるため、動産売買契約書(機械売買契約書)の契約についても解説します。
動産売買契約書(機械売買契約書)の契約に関しては、単に機械を購入するのみの場合、契約書上に印紙を貼る必要はありません。
一方で、機械の購入に伴い、請負業務が発生する場合には、その分の契約に対して印紙が必要になります。
例えば、駐車場に車庫を取り付ける場合です。機械一式として車庫を購入する場合は「動産売買契約書」に印紙は不要ですが、付随して設置や取り付けなどの請負業務を委託する場合には、その請負契約の部分に対して印紙を貼り印紙税を支払う必要があります。
「賃貸料の受取書」にも印紙が必要?
「賃貸料の受取書」は営業に関する行為に該当します。
法律上の決まりで、「5万円以上の金銭を受領する場合」には、受領書に印紙を貼らなくてはなりません。そのため、契約金額を確認して適切な印紙税を支払う必要が出てきます。
一方で、5万円未満の契約の場合には、非課税となり印紙を貼る必要はありません。
賃貸借契約書の印紙税額一覧
ここまで、以下の契約書に関して印紙が必要な場合があることを紹介しました。
- ビルなどの賃貸借契約を結ぶ契約書
- 土地賃貸借契約書
- 車両賃貸借契約書
ここでは具体的に必要な印紙税額について紹介します。
ビルや土地などの賃貸借契約は契約金額が大きくなることから、必要となる印紙も高額になる傾向があります。
そのため、必要な印紙の金額をあらかじめ確認しておくことが重要です。
なお、少額の印紙に関しては、一部コンビニエンスストアなどで取り扱っていますが、店舗によって在庫がない、高額のものに関しては取り揃えていないケースもありますので、郵便局での購入をおすすめします。
記載金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満のもの | 非課税 |
10万円以下のもの | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
賃貸借契約書で確認すべき事項
不動産に関する契約書としては、賃貸借契約書が最もよく登場します。
賃貸契約書を作成する際には、後にトラブルが発生しないように、特に以下の項目について事前に貸主と借主の双方で条件を確認して契約書に記載しておくことが大切です。
- 契約期間
- 家賃や共益費などの金額
- 退出する際の敷金の返金に関する取り決め
- 契約更新と解約時の取り扱い
- 更新時に事務手数料などの負担が生じるのか
- 解約するときには何ヵ月前に予告するのか
- 退出の際の賃料は日割りなのか月割りなのか
契約書を結ぶ際には入居時の条件を気にすることが多いですが、解約時の金銭のやりとりや、退去の予告に関する契約の内容にも十分に注意を払いましょう。
特に人気のマンションでは、解約予告が通常は1ヵ月前のところを2ヵ月前に告知しなければならず、予告が遅くなることで余計な家賃が発生してしまう場合があります。
他にも、退去時に日割りではなく月単位の家賃を支払う契約になっている場合もあります。
こうした場合、貸主と借主との間で契約時によく確認しておかないと、後にトラブルになりかねませんので注意が必要です。
また、定期借家契約の場合には原則として契約の更新はできませんので、その点も契約時によく確認しておく必要があります。
賃貸借契約書を紛失したらどうすべき?
締結した賃貸借契約書は、その後にトラブルが生じた際の契約の証拠として使用する可能性がありますので、必ず保管しておきましょう。
万が一、賃貸借契約書を紛失してしまった場合には、貸主と借主の間で協議してコピーをもらうか、再契約の必要があります。
契約に際して仲介会社が入っている場合、仲介会社が保管している賃貸借契約書をコピーさせてもらうこともできるかもしれません。
基本的には誠意をもって相談すれば対応してもらえる場合が多いでしょう。
また、借主は物件を賃貸として借りた場合はオーナーへ返却する必要があります。もし間に不動産管理会社が入っている場合は、借主と不動産会社とで立ち会いなどを実施する場合も。その際に不動産管理会社はすぐに次の借主を探すため、清掃業者などへの「原状回復業務」を一秒でも早く行いたいですよね。そんなときは、「業者さんアプリ for 原状回復」を利用することで、立ち会い〜請求書作成までのフローを可視化し、不動産管理会社の業務負担を軽減することも可能です。
まとめ
このように、不動産に関する契約をする際に、同じ賃貸借契約書や売買契約書であっても印紙が必要な場合と不要な場合があることを解説しました。
印紙税を支払わない場合には過怠税が徴収されることになりますので、納税漏れがないように注意てください。
また、印紙税法の変更により、金額や対象が変わる場合もありますので、税理士や顧問弁護士などの専門家に相談する、最新の情報は国税庁のHPや管轄の税務署の窓口で確認するのが良いでしょう。
近年では書面でのやり取りではなく、「電子契約」での契約も増えてきています。2022年5月からは宅建業法改正により、「駐車場の契約」や「賃貸借恵沢の更新」など一部を電子契約で結ぶことができます。
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