【リーダーインタビュー】西田光孝様|地道な信頼の積み重ねが、未来を掴む。一歩ずつ着実に、“地域にとって唯一無二の企業”を目指して。
不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、神奈川県厚木市に本社を構える株式会社西田コーポレーションの代表取締役 西田 光孝様です。管理戸数地域No.1を誇る“地域密着企業”としての想いや会社の核、そしてこれからの管理会社に求められることなど、さまざまなお話をお聞きしました。
“お客様志向”で積み上げた信頼が、今の会社を形成。
まずは、御社を創立された経緯からお聞かせください。
「何か事業を興したい」という想いは、学生時代から抱いていました。そうは言っても、具体的なビジョンは描けていなかったため、ひとまずゼネコンに就職したのです。しかし、日々建築現場に通い詰める中、綺麗なモデルルームに不動産会社の方とお客様がニコニコしながら入っていくのを度々目にしまして、「不動産会社は幸せを売っているのだな。私がやりたいのはコレかもしれない」と考えるようになりました。
そこで、まずは不動産会社に転職し、自分に向いていると判断して起業を決意。周りの不動産会社はどこも“殿様商売”の会社が多かったように見受けられたので、私は“お客様の満足を一番に考える不動産会社”になることを心に決め、自宅を登記して不動産仲介業をスタートしました。
結果的にこの“お客様志向”が、功を奏したのです。最初はツテもありません。ですから、たまたま知り合った人に「実は家を探している」とご相談されると物件探しに奔走してご紹介する。そんな地道な営業活動を続けた結果、次々に契約が決まっていったのです。「西田に頼めば、一生懸命探してくれるな」と感じていただけたのでしょうね。
他社との差別化に成功し、 順調なスタートを切られたのですね。
そうですね。起業から3か月後には、街の外れに店舗を構えることもできました。とはいえ、売上は不安定でしたからとても食べていけず、しばらく昼は仲介事業、夜は塾講師のバイトと、二足のわらじを履くような生活を続けていました。
そんな中でも、私という人間をそのまま皆様に知っていただきながらコツコツと続けていったところ、少しずつですが着実にお客様が増えていきました。「この業界は、誠意を尽くして地道に信頼を積み上げていけば、大きな武器がなくてもやっていけるのだ」と肌で感じましたね。
こうして人脈を広げながら、10年間は仲介に専念して基盤を構築。そして少し自信がついたところで徐々に手を広げ、現在のビジネスモデルを創り上げていったのです。
御社ホームページ上で掲載されている「社長ブログ」は、どのようなきっかけで始められたのですか?
会社の規模が大きくなると、私がお客様と直接お話しする機会はどうしても減ってしまいます。そのため、社長ブログを通じて「社長はこういう人なのか」「きっと真面目な会社なのだろう」と少しでも感じていただけるようにブログをスタートしました。かれこれ10年以上、毎月会社や私自身の話だけでなく、不動産業界や社会潮流などに関しても思いのままに綴っていますね。
自己満足かもしれませんが、やはり何でも続けることが大事ですよね。やめたらその時点で、今までの努力が泡になってしまう。
ただ、ホームページも含む“デジタル”は素晴らしい武器である一方で、会社の個性が見えなくなりがちですから、我々の色をブログで出したいという気持ちもあります。
多面的なサービスと幅広い地域貢献で、エリアにとって“唯一無二の会社”を目指す。
改めて、御社の事業についてお聞かせください。
引用元:株式会社西田コーポレーション
弊社の最たる特徴は、厚木市を中心とした神奈川県央エリアに根ざす“地域密着型”の事業展開です。44年にわたり構築してきた地域のネットワークを活かしながら、仲介・管理・建築施工・リフォーム・法人支援・高齢者/障がい者支援などの多面的なサービスを展開し、地域貢献に努めています。
我々は、「この会社なら何を頼んでもしっかりやってくれるから」と地域の方々に頼りにしていただけるような、このエリアにとって“唯一無二の総合不動産会社”になることを目指しているのです。
御社はホームページ上で厚木エリアのさまざまなお店を紹介されていますが、この取り組みも地域貢献の一つでしょうか。
おっしゃるとおりです。紹介しているお店は弊社物件のテナント様や仲介させていただいたテナント様をメインに地域のお店も紹介しており、場所だけではなくビジネス自体を支援したいという思いから、ホームページやオーナー様向け機関紙での“お店紹介”をしています。
▲ご契約物件のテナント様や地域のお店をホームページで紹介
引用元:株式会社西田コーポレーション
そのほか、地域の学生を支援するために独自の奨学金制度を用意したり、市の行事・イベントを支援したり、さらには子どもたちのためのスポーツ支援をしたりと、地域のために幅広い取り組みを進めています。
引用元:株式会社西田コーポレーション┃NISHIDA BLOG
例えば、スポーツ支援では県央エリアの中学校野球部員を対象に、プロ野球のOBが直接テクニックを指導する野球教室の主催をしています。
子ども達にとって、素晴らしい経験になりますね。
そうですね。誰もが経験できることではありませんから、一生の宝物になればいいなぁと。 練習の様子はローカルテレビで放映されるため、子どもたちはもちろんご家族も大変喜んでくださっています。子どもたちのキラキラした眼差しを見ていると、我々も心が洗われるような清々しい気持ちになりますね。
あまり大規模なことはできないかもしれませんが、これからも地域の皆様に喜びや感動をご提供できるような支援に力を尽くしていきます。
まさに、地域から必要とされる企業でいらっしゃると感じます。
引用元:NISHIDAファンド
ありがとうございます。そうであるために、努力したいと思っています。
なお、最近は厚木の賃貸市場を盛り上げるために「ファンド」も立ち上げました。これは、弊社が扱っている物件を小口化して“弊社との共同出資者”を募集し、賃貸利益を出資者に分配する仕組み。つまり、出資者である地域の皆様からすると、少額から不動産投資ができるわけです。
まず3年契約で一つ商品を出してみたところ、少額出資でリスクが少ない・安定して収益が得られる・相続税対策もできると皆様に喜んでいただくことができまして。「ぜひ続けて欲しい」という声が多かったため、今後も継続する予定です。共同事業ということで皆様との絆も深まりますし、街の未来を見据えながら積極的に展開していきたいですね。
「再開発プロジェクト」は、地域への恩返し。本厚木がさらに魅力と活気溢れる街へ。
本厚木エリアは、今年「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」第一位にランクインしました。背景には、どのようなことがあると思われますか?
本厚木は神奈川県央の中核都市であり、交通の便が良いのでさまざまなお店や公共施設、オフィスなどが集中していて、昼間人口が多く非常に賑わっています。
これに加え、子育て支援などの生活福祉も充実しているほか、少し足をのばせば豊かな自然も残っています。家賃相場も安いですし、暮らしやすい環境が整っているのではないでしょうか。
実際に、コロナ禍において転入者の増加などの変化は感じられましたか?
どうでしょう…やはり店舗などはちらほら空きが出てしまっていますね。
ただ、2021年の3月に、弊社企画の“14階建て大型マンション”が本厚木駅前に完成しまして。賃貸住宅107戸にテナントも併設され、家賃もある程度するのですが、ありがたいことに完成前に満室になりました。
実はこの物件のオーナー様は個人の方です。相当なリスクを承知で我々を信じて任せてくださいまして。万が一採算が取れなかったら我々が責任を取ることも想定していましたが、無事に結果が出せてホッと胸を撫で下ろしました。それと同時に、コロナ禍でこれだけの大型物件が満室になる“本厚木”という街の魅力を改めて実感できましたね。
とはいえ、本厚木にも大きな課題があります。実は、駅前の風景は40年以上変わっていません。南口はつい最近再開発が完了したものの、北口は旧態依然としたまま。ビルは老巧化し、安全性も懸念されています。
そこで我々は、本厚木駅北口に再び活気を取り戻そうと、13年ほど前から「再開発プロジェクト」推進の旗を振り続けてきたのです。
駅北口の再開発プロジェクトについて、詳しくお聞かせください。
再開発プロジェクトは、13年前に現市長が就任された際、私が市長室へ出向いて直談判したところからのスタートでした。
「私が地権者さん達を説得して回りますから、ぜひお力を貸してください」と。 地権者さんは何十人といらっしゃるので、大変な労力が必要でした。100回を超える勉強会や訪問説明を行いましたが、やはりそれぞれのご意見がありますから、少し進んでは振り出しに戻るようなことを繰り返しました。
それでも現在、ようやく「準備組合」が設立され、いよいよ動き出す運びとなってきたのです。まだ詳しくお伝えできないのが残念ですが、非常に壮大な計画が進んでおり、皆様が「ぜひ行ってみたい」と感じる街に生まれ変わると確信しています。
このプロジェクトには、地域に生かされてきた企業として“恩返し”の気持ちを込めています。もちろん我々のビジネスにも好影響があるとはいえ、仕事としての損得を超え、私の“ライフワークの総仕上げ”として精魂込めて取り組んでいくつもりです。
ITの進化で平準化が進む不動産管理会社。“オーナー様への提案力”が、差別化の鍵に。
不動産業界のIT化の現状については、どのように見ていらっしゃいますか?
まず、これからの時代IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れません。そもそも不動産業界には効率の悪い業務が多く、特に管理業務は非常に労働集約的です。このような状態からの脱却を図り生産性を高めるためには、テクノロジーの力を最大限に活用すべきだと考えています。
しかし不動産会社がいざIT化を進めようとすると、いくつかの問題が発生する。例えば、業務支援システムは細分化されており、システム同士の連携がほぼできません。つまり、“システム同士を繋げる作業”が別途必要となるため、かえって面倒なことが増えるわけです。さらに、ITは目まぐるしい進歩を続けているため、せっかく導入しても数年後には買い替えが必要になるケースも多い。
現在多くの不動産テック企業がIT化を推進していますが、まずはこうした根本的な問題の解決を図るのが先かなと。特にシステム同士の連携はそこまで難しい話ではないように感じるため、本腰を入れてくださるテック企業さんが出てくれれば良いなと思いますし、それをどの不動産業者も待ち望んでいるのではないでしょうか。
システム間の連携は、早急に取り組むべき課題ですね。GMO ReTechとしてはIT化により“生産性”はもちろん、“利益率”の向上を見据えることも重要だと感じています。
同感です。弊社も、まずはITで業務のスリム化を図り、そのぶん浮いた時間でオーナー様への提案力を高め、利益率を向上させるようなイメージを社員に共有しています。提案業務自体にもITを活用すべきですしね。
そして、オーナー様への提案力は、“オーナー様から選ばれる管理会社”になるためにも欠かせない要素です。今後IT化が進むにつれて、管理会社の仕事は平準化されていくはず。そんな中で、オーナー様の収益を最大化するための的確なアドバイスや手助けができる管理会社は、オーナー様にとって貴重な存在です。
例えば、どんなに小さな修繕のご提案であっても非常に大切だと思いますよ。
「なぜ今修繕が必要か」をきちんとご納得いただかなければなりませんよね。
おっしゃるとおり。例え“古びた電球一個”であっても、急に壊れたらその一個を取り換えるために人が動くとコストが掛かるため、早めにLEDに変えておくべきですよね。
さらに、当然修繕は物件の価値・収益性を大きく左右します。修繕が行き届いていない物件は入居率が落ちますし、売却するにしてもなかなか買い手が付きません。こういったところを、きちんとコンサルティングしていくと。
少し話は逸れますが…オーナー様の中には、このような修繕の費用でお困りの方も多くいらっしゃいます。特に“原状回復費用”は、入居者様の故意過失がない限り、オーナー様の負担になってしまうケースがほとんど。そこで日本賃貸住宅管理協会の神奈川県支部会員5社で、「原状回復の認可共済」を立ち上げたのです。
「原状回復の認可共済」とは、どのような仕組みですか?
毎月一定額の掛け金をお支払いいただくことで退去時の原状回復費用が平準化でき、保証対象内の工事であれば費用は共済金が全額適用される仕組みです。また、経費として計上できるようにもなりますし、入居者様との負担交渉も必要ありません。この共済は現在6期目を迎え、順調に回転しています。 ▲「原状回復の認可共済」のスキームイメージ
引用元:PR TIMES
そこで、実はこれに続いて「長期修繕・大規模修繕の共済」を立ち上げる計画も進んでいるのです。オーナー様が待ち望む商品だけに、神奈川だけにとどまってはならずと考え、全国に広げようと、今では全国賃貸管理ビジネス協会が軸になり、日本賃貸住宅管理協会と全国賃貸住宅経営者協会連合会の三団体共同事業として準備しています。
この共済は、個人オーナー様でも分譲マンションの管理組合と同じように大規模修繕費の積み立て、さらに修繕費は経費にできるというもの。これにより、「資金がないから大規模修繕ができない」というケースの減少が期待できます。建物の老朽化が引き起こす悲しい事故も防げますし、“きちんと維持管理された建物”を未来に繋げていけるわけです。
目線は「今」ではなく「先」へ。信頼の積み重ねが、良い結果を生む。
短期的な利益を考えると「修繕は最低限にする」方向に行きがちですが、結局建物の価値を長く維持させるには定期的な大規模修繕が必須ですよね。
そうですね。オーナー様には、ぜひ“先”を見据えて賃貸経営を進めていただくよう、常にお話ししています。
なお、“先を見る”ことは我々にとっても欠かせません。弊社の新入社員にも、「目先の損得で仕事をしても上手くいかない。先を見て、人に喜んでもらえる仕事をやり続けよう」と常々話しています。
“先”を大事にすると、「すぐに売上が出せない」などの悩みは出てくるかもしれませんが、必ず後から大きな結果が返ってきます。結局、地道に信頼を積み上げていくことが、ビジネスとして最も効率が良いのです。信用・信頼が先、利益は後。我々のような地域貢献型の企業は特にそうですね。
そのため弊社は、地域のため・社会のためになる「委員会」をいくつか設置しており、社員はみな委員会活動を行っているのです。先ほどお話した「野球教室」も活動の一つで、直接的に仕事から離れた活動ではありますが、委員会に貢献した分はきちんと会社が評価する仕組みにしています。
社員の意識を、「人に喜んでもらえる仕事」へと向けていらっしゃるのですね。
はい。そこに意識を向け続けてもらうためにも、生産性の向上は欠かせません。生産性が低く休日手当もろくに貰えないようでは、社員は人の幸せを考える余裕がなくなってしまいますので。
生産性を上げて“社員が働きやすい環境”を追求するのは、我々経営者の責任です。全社員が胸を張り、幸せに働ける会社にしていかなければなりませんね。
着実な歩みと、人に尽くす心を大切に。次世代に未来を託し、100年後も続く会社へ。
今後の展望をお聞かせください。
この先、世の中ではDXを含めていろいろな変化が起きるはずです。
しかし、時代がどう変化したとしても、企業に最も必要なのは「お客様からの信頼」。不動産テックサービスも、あくまでも“お客様にご満足いただくためのツール”として活用する。そうすれば、お客様との絆はより深まり、ひいては社員の働きやすさや働きがいにも繫がります。
私も、いつまでも同じやり方で指揮をとっていけるわけではありません。ただし、「西田コーポレーション」には、一歩ずつ着実に歩みを進めながらも挑戦を続け、お客様と社員の喜びを追求する会社であり続けて欲しい。そして、地域になくてはならない会社になって欲しい。そんな未来を、次世代に託したいですね。
人に心を尽くし、歩みを止めずに未来を切り拓いていく。まさに御社の本質ですね。
そうですね。そこを忘れて我々が倒産したら、どれだけのお客様にご迷惑がかかるでしょうか。「お客様のために、そして地域のために潰れてはいけない」。この“核”をきちんと持ち続けていれば、きっと弊社は50年でも100年でも続く会社になるような気がしています。
まとめ
幅広い事業展開と街を元気にする地域貢献で、地元に愛され続けてきた「西田コーポレーション」。西田社長の持つ、歩みを止めない忍耐力と高い機動力、そして何よりも“人との繋がり”を大切にする姿勢は、企業の成長のみならず人生を豊かに生きるためのヒントにもなりそうです。
本記事取材のインタビュイー様
株式会社西田コーポレーション
代表取締役
ゼネコン勤務後、「お客様の満足を一緒に考える不動産会社を」との信念のもと、1977年「有限会社西田商事」を設立。1991年「株式会社西田コーポレーション」に商号変更、2018年にホールディングス化を果たす。
厚木を中心とした神奈川県央エリアに根ざす地域密着型の不動産会社として、賃貸市場を盛り上げるためのファンドや原状回復の認可共済を立ち上げるなど、多面的なサービスを展開。地域貢献をも果たしながら、当該エリアで「唯一無二の総合不動産会社」を目指している。不動産業界や社会潮流についての思いを綴る「社長ブログ」も要注目。