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【専門家インタビュー】滝沢 潔様|スマートロックやスマートエントランスが創り出す、不動産業界の明るい未来と価値

物理カギを不要にするIoTの「スマートロック」。安全で便利な暮らしを叶え、不動産業界の課題解決にも寄与できるとして近年大きな注目を集めています。

今回お話いただいたのは、スマートロック市場をけん引する株式会社ライナフの代表取締役 滝沢 潔様です。弊社のエバンジェリスト後田より、ライナフのサービスやスマートロック・スマートエントランスの可能性について伺いました。

目次

すべての不動産を輝かせるために、モノづくりの道へ。

Q.まずは、自己紹介をお願いします。

私は、不動産テック企業である株式会社ライナフの代表取締役を務めています。当社を立ち上げたのは30歳の時。実は、もともと大学卒業時点で「30歳で起業しよう」と決めていたのです。少しでも誰かの役に立ちたい。そのために“大きな会社”を作ろうと。

そこで、20代のうちに少なくとも1,000万円の開業資金を貯めようと不動産投資のプロを目指すことにしました。まずは、不動産について学ぶために新卒で不動産ベンチャーへ入社。そして2年後、借り入れについても学ぶために信託銀行へ転職し7年間勤めました。その一方で、24歳から不動産投資を始め、4棟の物件のオーナーになったのです。30歳になる頃には、目標金額を大きく超えて1億円程度の含み益を出せるまでになりました

そして「さあ起業しよう」と思ったときに、結局自分が一番興味・愛情を持てたのが「不動産」だったので、そのまま不動産ビジネスの道に足を踏み入れたわけです。

Q.なぜ「スマートロック」というモノづくりを選ばれたのですか?


「空室の有効活用」を叶える仕組みを作りたかったからです。というのも、不動産オーナーが最も怖いのは「空室」なんですよ。私自身、全物件フルローンで購入していたため、空室率50%を超えると毎月高額の持ち出しが発生してしまい、空室が出るたびに冷や汗をかいていました。

そこで、「何とか空室を収益化しなければ」と考えて思いついたのが、“時間単位の貸し出し”です。ただし、時間単位で貸し出すためには、鍵の受け渡しを含む「入退室管理」が必須。しかし、複数の物件に複数の空室がある場合、個人で全空室の入退室管理をするのは不可能です。そこで、「入退室管理を無人で行えれば…と考えたのが、スマートロック開発のきっかけになりました。

スマートロックをドアに取り付けることで、時間単位・週単位で貸し出しができたり、会員専用のレンタルスペースを創れたり…と空室の使い道が大きく広がる。要は、このように「モノ」で不動産に新たな価値・可能性を与えられるビジネスに挑戦してみたかったのです。

Q.空室は不動産業界の大きな課題ですよね。

そうですね。私は、空室を見るたびに「可哀想だなぁ」と胸が痛みます。なんだか部屋自体がしょんぼりとして見え、「早く誰かに住んでほしいよね…」と。こんなことを周囲に言ってもなかなか理解してもらえないんですけどね(笑)。

今でも忘れられないのが、新卒で入社した不動産ベンチャー企業社長の「生まれてきた不動産に罪はない」という言葉。これは、本当にそのとおりで、空室になっているのは不動産が悪いのではなく、適切なリノベーションを行えず、活用方法を見いだせなかった“人間”が悪いのです。

ですから、日本中の空室がいち早く有効活用されるように、そしてすべての不動産が輝けるように力を尽くしたいと日々思っています。

暮らしも業務効率も大きく変える、ライナフのスマートロック。

Q.御社のサービスについてお聞かせください。


  引用元:株式会社ライナフ  

当社のサービスは、3つのカテゴリーに分かれています。

  • 「スマートロックシリーズ」
  • 「スマートリーシング」
  • 「スマートルーミング」

 まず「スマートロックシリーズ」は、通信機能を持たせた鍵=スマートロックのシリーズです。中でも最新版のスマートロックが、「NinjaLockM」。アプリ・パスワード・ICカード(交通系など)の3パターンで解錠できるほか、緊急時は従来の鍵も使えるので、入居者にとってはとにかく便利で安心な商品です。

不動産会社側のメリットとしては、「工事中」「空室中」「入居中」などの“運用モード”を変更することで、カギの権限を簡単に切り替えられるのが大きいですね。例えば、「空室中」にすると管理会社には“マスター権限”が、仲介業者には“期間限定権限”が付与されます。そして「入居中」にすると、入居者のみに権限を付与できます。

運用モードを変えればそれまでの鍵は一切使えなくなるので、鍵交換は不要。もちろん鍵の受け渡しも不要ですし、複製される心配がないためセキュリティ面も向上します。 さらに、据え付け型ながら簡単に取り付けられるほか、鍵メーカー「美和ロック」さんとの共同開発で耐久性が高いのも特徴です。

Q.なぜ共同開発をされたのでしょうか?

より高品質なスマートロックを開発するためです。というのも、初代スマートロックの開発でモノづくりの難しさを実感しまして。特に、鍵は品質基準がきわめて厳しく、不良率0.1%であっても許されません。たとえ1,000人に1人でも、真冬に「鍵が使えず家に入れなかった」となれば大問題ですから。

ここまでの品質を求められると、ベンチャーができるモノづくりの域を超えてしまう。そこで、優れた技術力を持ち高いレベルで品質チェックができる「美和ロック」さんと、ITの知見がある当社とで協同してサービスを開発するに至りました。  

Q.お互いの強みや知見を活かして開発されたのですね。

おっしゃるとおりです。なお、「スマートロックシリーズ」の中にはマンションのオートロックエントランスをスマートに解錠できる商品もあります。それが、スマートエントランス「NinjaEntrance」です。

大規模な工事不要で設置でき、アプリやパスワードのほか、遠隔操作でも解錠できます。また、別途リリースしている「顔認証用デバイス」を使えば、顔認証による解錠も可能です。

期間限定デジタルキーの発行や解錠履歴の記録もできるため、工事業者・内覧業者などの出入りもこれ一つで安全に管理できます。

宅配物も食材も、セキュアに玄関先へ。

Q.御社は、「NinjaEntrance」を活用した「置き配」の普及に取り組まれていますよね。この背景をお聞かせください。

近年、日本の宅配便取り扱い個数は爆発的に増え続けています。それに伴い「再配達」も増加しており、国交省によると再配達のために年間1.8億時間=9万人分もの労働時間が費やされているのが現状です。

このまま再配達が増え続ければ物流コストがますます上昇し、それに比例して宅配の配達料金もどんどん高くなっていきます。つまり、最終的には消費者に跳ね返ってくると。また、再配達のトラックからは大量のCO2が排出されるため、地球環境への影響もより深刻化します。

そこで当社はこれらの環境・社会課題の解決を目指し、さまざまな宅配業者・通販業者と連携して「置き配」普及に取り組み始めたわけです。「置き配」の最大の障壁はオートロックの共用エントランスなので、「NinjaEntrance」と宅配業者のシステムを連携させ、配送ドライバー専用のアプリからオートロックの一時解錠ができる仕組みを作りました。

これにより、ドライバーは楽々入館できますし、入館履歴もきちんと残るので安全な置き配を実現できます。もちろんCO2排出量の削減にも繋がりますから、「SDGs」にも貢献できると考えています。

Q.「NinjaEntrance」は、荷物の置き配以外にもさまざまな活用方法がありそうです。

GMO ReTech株式会社 エバンジェリスト 後田博幸

そうですね。例えばスマートロックと併用すれば、不在時に家事代行サービスの人を家に上げることもできます。

また、最近テレビで見て面白いなぁと思ったのが、毎朝焼き立ての美味しいパンを玄関先に届けてくれるというもの。これもひとつの置き配の形ですが、豊かな暮らしを叶える素晴らしいサービスですよね。

このサービスにも、やはり「NinjaEntrance」をご活用いただけるかと。スマートエントランスにより、パンに限らず野菜でも何でも、あらゆる便利なサービスが入ってこられるようになれば良いなと思います。

入居前も入居後も、便利にスマートに。

Q.「スマートリーシング」「スマートルーミング」についてもお聞かせください。

スマートリーシング」は、入居前のリーシング業務を効率化する管理会社向けサービスのカテゴリーで、次の2種類をご用意しています。  

  • スマート物確」…物件確認の電話に24時間365日自動応答できるサービス
  • スマート内覧」…スマートロック・スマートエントランスと連動させた内覧予約サービス

「スマート物確」には “物件名の音声認識”に特化させた自社開発AIを用いているため、複雑な物件名でも素早く理解して物件特定ができます。また、「スマート内覧」はWebカレンダーから内覧受付した上で“デジタルキー”を発行できるほか、「アットホーム」の入居申込システムと連動し、内覧後の入居申し込みまでを一気通貫で備えています。

つまり、スマートリーシング」を使えば、物確から内覧、申し込みまで一気に自動化できるんです。これは、当社ならではの大きな強みですね。

そしてスマートルーミング」は、入居後の管理・入居者の暮らしをスマートにするサービスのカテゴリー。スマートロック・スマートエントランスを一元管理する入居者管理システム「スマートルーミング」をご用意しています。

入居募集、入退去、修繕、所有者変更など、集合住宅のライフサイクルに合わせた機能をフルスペックで提供します。「ライナフGate」やその他スマートロックとあわせて、非接触・非対面管理を可能にし、不動産会社様の業務効率化を支援します。また他の入居者アプリとAPI連携できるのも特徴です。  

Q.導入事例はありますか?

例えば「スマート内覧」の場合、導入した物件は内覧数が平均約1.2倍増えたというデータが取れています。

仲介会社からすれば、内覧受付に時間がかからず物理キーも不要で楽に内覧できるため、忙しいときほどスマート内覧対応物件を選んでくださるようです。 また、内覧回数はもちろん、滞在時間など内覧履歴の分析もできるので、オーナーさんへのレポートや営業に活かせるという声もありました。

そもそもスマート内覧は管理会社さんのご要望をもとに創り上げたサービスなので、便利にお使いいただけると思います。

モノづくり×ITが創り出す、居心地の良さ

Q.御社の掲げる「もっと、居心地の良い場所へ。」というメッセージには、どんな想いが込められているのですか?

このメッセ―ジには、2つの意味を込めています。  

  • もっと居心地の良い場所へ住み替えましょう
  • 今いる場所を、もっと居心地良くアップデートしましょう

当社は、1を叶えるために「スマートリーシング」事業を、そして2を叶えるために「スマートルーミング」事業を展開しています。 “居心地の良さ”は「ハードウェア=形のあるモノ」と「ソフトウェア=形のないモノ」が組み合わさって創られるものですが、そのどちらも開発できるのが当社の大きな強みです

これからも、モノづくりとITサービスの両輪で、居心地の良さ・豊かな暮らしを創り出していきたいと考えています。

不動産業界を進化させる、「不動産共通ID」。

Q.今後の不動産テックの可能性について、どうお考えですか?

「ようやくこの流れが来そうだな」と感じているのが、APIを使ったデータ連携です。

不動産テックにはさまざまな領域がありますから、一社がすべてのテックサービスを仕切るのは無理がある。そのため、APIの活用により各社のデータやサービスをうまく連携させる方向性に向かうことができれば、テックサービスの可能性はより広がると思います。

なお、当社の「置き配」普及への取り組みも、テックサービス同士ではないものの、サービス間の連携を叶えるひとつの手法ですね。スマートエントランス「NinjaEntrance」の活用により、物流業界はスムーズに置き配を実施できる。

一方で、不動産業界は入居者の利便性を高めながら、「日々何人の配送ドライバーが入館しているか」というデータも取れる。このデータは、例えば宅配ボックスの設計や設置計画などに役立てることが可能です。

そう考えると業界内はもちろん、他業界とも連携を図ることで、設計・建築の段階から不動産を進化させられると言えますね。

Q.「不動産テック協会」理事としての想いや抱負をお聞かせください。

現在最も力を入れているのが、日本中の不動産に“共通ID”を付与する「不動産共通ID」という取り組みです。これは、会社経営と同じくらいの情熱をもって推し進めています。この不動産共通IDを用いれば、各社がもつ不動産情報を簡単に紐づけられるようになる。つまり、まさに今お話した“連携”を実現できるんです。 引用元:不動産テック協会  

例えば現在、デベロッパーのもつ“物件の設計・建築時の情報”は、仲介・管理会社には共有されていません。そのため、仲介・管理会社はパンフレット等から地道に調べるしかない。しかし、不動産共通IDが物件に付与されれば、IDひとつであらゆる情報を簡単に共有し合えるようになります。今までは倉庫で保管してあるデータが、欲しい人にきちんと行き渡るわけです。

建築から管理まで同じグループ企業であればデータは無料で共有されるでしょうし、グループ外の企業であれば“販売”という形で共有されれば良い。このような世界観が実現してはじめて、不動産業界は次のステップに進めるのだと思います。

Q.業界の可能性を広げる、素晴らしい取り組みですよね。

ありがとうございます。この取り組みは、日本の不動産価格の上昇にも繋がるはずです。データのやり取りが活性化して不動産業界の透明性が高まれば、不動産の価値も高まりますから。

現在日本の不動産業界にはデータ共有の慣習がなく、各不動産の細かな情報は残念なことに売買のたびにほぼリセットされてしまいます。つまり、オーナーは不動産を購入する際に、過去にその物件で発生した問題や入居者トラブルなどのリスク要因を知ることができません。すると当然ながら不安が残るので、あまり大きなお金は掛けたくないとなり、不動産全体の価格が下がってしまうわけです。

これと真逆なのが、アメリカの不動産業界。アメリカの不動産は売買を繰り返しても情報がすべて引き継がれていくため、オーナーはリスク要因を踏まえた上で購入できます。だから、安心して大金を出せる。これが、アメリカの不動産価格が日本よりも高い理由なのです。

日本の不動産の価格・価値を上げて市場拡大を図るためにも、情報の透明性を高める「不動産共通ID」は必須であると確信しています。

人生をかけて、新しいモノを創り続けたい。

Q.御社の今後の展望をお聞かせください。

今後は「スマートエントランス」に注力していきたいと考えています。

2021年5月、ウォークスルーで顔認証するエントランスソリューション「ライナフGateを発売しました。これは顔認証でエントランスを解錠できる「顔認証デバイス」の進化版で、顔認証のみならずQRコード・パスワード・NFCカードでも解錠できるようになります。ウォークスルーで認証できるのも大きな特徴です。

「ライナフGate」を使うと、例えばマンションに荷物を配送する際に、配送ドライバーは荷物のQRコードを「ライナフGate」にかざすだけで、共用エントランスへの出入りを一時的に可能にし、置き配で指定された場所まで安全に荷物を届けられると。セキュリティを担保しながらも、より利便性を向上させます

Q.御社は次々と新たな事に挑戦されていますよね。その原動力はどこから来るのですか?

当社が、そして私が最も大事にしているのは“まだ世の中にないモノや価値”を生み出すこと。私はそのために仕事をしている、さらに言うとそのために生きていると思っています。いくら大きな利益が見込めるとしても、すでに普及しているモノ・他社でも提供できるサービスは、人生をかけてチャレンジする価値を感じません。

だからこそ、常に挑戦を続けています。そのぶん失敗や苦労もたくさんありますが、それも含めて人生の楽しさかなと。

また、失敗や苦労は、結局その事業への参入障壁です。当社が簡単に事業をスタートできたなら、他社も簡単にスタートできる=競合が増えてしまう。逆に、当社が苦労の末に事業を軌道に乗せられたとしたら、他社も同じように苦労を重ねるはずです。ですから、苦労や失敗は悪いことではないとポジティブに捉えています。

Q.最後に、滝沢様ご自身の展望はいかがでしょうか。

今後は「不動産共通ID」を含む、不動産業界・テック業界全体を良くするための活動に時間を割いていきたいですね。それが、結果的に当社が伸びるための土壌作りになるのかなと。

固い畑に種をまいても上手く育ちませんから、まずは土を耕す必要がある。最近やっと、この土を耕す作業に労力を掛けられるようになりました。

それは当社が成長し、営業や管理、開発などのさまざまな仕事を社内メンバーに任せられるようになったから。メンバーへの感謝の気持ちを忘れずに、私自身はもう一つ高い視座で、業界の未来を見据えて邁進していこうと考えています。

まとめ

不動産の可能性を大きく広げる、スマートロック。住まいの利便性やセキュリティへのニーズが高まる中、今後もますます普及が進みそうです。

インタビュアー:GMO ReTech株式会社 エバンジェリスト 後田博幸(写真左)

本記事取材のインタビュイー様

滝沢 潔 氏
株式会社ライナフ  代表取締役
不動産テック協会 理事
1982年生まれ。神奈川県出身。
三井住友信託銀行で資産運用相談、不動産投資セミナーの講師などに従事した後、2014年に不動産向けシステム開発会社の株式会社ライナフを設立。 物理キーを必要としない、スマートロックの「NinjaLock」、物件確認の電話を自動音声で応答する「スマート物確」、内覧の煩雑さを解消する「スマート内覧」などを次々と開発。 AI、IoT技術を使った不動産管理リューションを展開している。
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