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新型コロナでの不動産業界への影響|短期と長期のリスク

新型コロナでの不動産業界への影響|短期と長期のリスク

新型コロナウイルスのパンデミックが経済に与える影響は、非常に大きなものがあります。たとえば、2020年4~6月期の日本の国内総生産(GDP)は、前期比で年率27.8%も縮小しました。これは戦後最悪の景気後退だといわれています。 経済全体が冷え込むと、不動産業界にも大きな影響が出てきます。

本記事では、不動産業界において、長期的・短期的にどのような影響を受けるのか、どのように対応していけばよいのかを解説します。

目次

    コロナが不動産業界に与えた影響とは

    新型コロナでの不動産業界への影響|短期と長期のリスク

    株式会社帝国データバンクの「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)によると、不動産業界の85%以上がマイナスの影響を受けていると発表されています。

    国内で「マイナスの影響」を見込む企業を業界別で比べてみると、「運輸・倉庫」の87.5%、「製造」の85.7%に次いで、「不動産業界」は3番目に影響を受けています。

    不動産市場は、大きく分けて「賃貸市場」と「売買市場」の2種類があります。以下では、それぞれについて詳しく説明します。

    ※参考資料:新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年7月)

    賃貸市況への影響

    賃貸市場をみると、まず2020年3月には、日本でも新型コロナウイルスの感染者が発覚し、徐々に社会が自粛モードになりました。2月後半から3月の間は、卒業や入学、入社、転勤などで賃貸物件が最も借りられるシーズンでしたが、かろうじて緊急事態宣言とは重なりませんでした。 しかし、大学がオンライン授業になったり、多くの企業がリモートワークを導入した結果、入居者が決まるはずの賃貸物件の入居が埋まらないケースも見られました。緊急事態宣言が発令された4月7日から5月25日にかけては、物件がまったく動かず、厳しい状況に追い込まれた不動産仲介業者が多かったです。

    これは、現在の不動産業界がIT化していないことも理由の一つといわれています。賃貸物件を契約するためには、内見、申し込み、契約などの手順を踏む必要があります。しかし、これらの手続きをオンラインのみで完結させるのは難しいというのが現状です。

    そのため、新型コロナウイルスの影響で外出自粛をすることで、物件を借りる人が減ってしまいました。ただし、緊急事態宣言が解除されたあとは、その反動で賃貸住宅の需要は回復を見せているといわれています。

    関連記事:不動産賃貸経営の電子契約について

    売買市況への影響

    事業用物件であるホテルや民泊、大型の会議室、シェアオフィス、レストランなどが集まっている商業ビルは、外出自粛や渡航制限により壊滅的な打撃を受けたといえます。一方、新築や中古を含む住宅市場は、緊急事態宣言の解除後は再度活況をみせています。

    戦後最大の景気後退を招いた新型コロナウイルスの流行ですが、2008年のリーマンショックの時と異なるのは、不動産の価格が下落していない点です。

    リーマンショックの時にまず被害を受けたのは金融機関でした。そのため、法人・個人ともに住宅用の融資を受けることが難しくなり、貸しはがしなどが発生しました。 その結果、不動産の購入者が激減し、収益物件の価格が大幅に下落しました。金融機関の経営悪化が、実体経済にも悪影響を及ぼしてしまったのがリーマンショックでした。

    一方、今回の新型コロナウイルスの流行で先にダメージを受けたのは実体経済でした。対策として、政府は1,000兆円を超える財政出動や、無制限の金融緩和を行いました。 金融機関からも無利子の融資をするなどの動きがあり、不動産を買い支える資金は潤沢に市場に出回っている状態です。

    すでに、日経平均株価が新型コロナウイルス以前の水準まで回復してきていることも大きく、今後も新型コロナウイルスによって不動産価格が急落するリスクは低いといえそうです。

    賃貸不動産の短期的リスク

    賃貸不動産の短期的リスク

    比較的リスクが低い賃貸不動産ですが、業種によっては短期的なリスクも考えられます。テナントの退去と、区分マンション投資への影響は見逃せません。

    テナント退去

    賃貸不動産のなかでも短期的リスクが考えられるのが、事業用物件のテナントの退去です。

    商業ビルの中には、特定の業種の店が集まって入居している物件があります。たとえば、飲食店やバー、パブ、カラオケ、ナイトクラブなどです。 外出自粛の関係で、アパレル業界なども厳しい経営状況に追い込まれています。

    こうした業種がテナントとして入居していた場合には、急に「家賃が払えない」という理由で退去せざるを得ないケースも出てくるでしょう。家賃の支払いができない場合への対応として「一時的にテナント代を無料にする、もしくは支払いを延期することで入居し続けてもらう」などの方針を取るオーナーもいます。 テナントの退去が相次ぎ空室が続くと、オーナーも共倒れになりかねません。

    支援策として始まった「家賃支援給付金」は、新型コロナウイルスの影響を受けて、資金繰りが厳しい中小企業などを主な対象にした支援制度です。申請日の直前1か月以内に支払った賃料などをもとに、法人には最大600万円、個人事業者には最大300万円が給付されます。

    案連記事:【アンケート調査】大家さんが嫌がる管理会社の特徴|ランキング形式で紹介

    区分マンション投資への影響

    次に影響を受ける可能性があるのが、いわゆる「区分マンション」の投資です。マンション内の部屋を一室単位で購入し、投資用物件として運用するものです。

    中古の区分マンションの場合、すぐ近くに比較されやすいライバル物件が数多く存在することがあり、不動産の市況や相場の影響を受けやすいと考えられています。そのため、今回の新型コロナウイルスの影響で、周辺の物件が価格を下げて売りに出された場合は、それにつられて所有している自分の物件の価値も下がる可能性があるのです。 コロナ禍で急いで売りに出しても、売れにくいか相場よりも低い価格で売却せざるを得なくなる可能性が考えられます。

    一方で、買い手側は新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからない不安から、物件を買い控える傾向があります。また、「より価格が下がるのではないか」と期待して、物件に目星をつけて待っている投資家もいるのです。

    このような状況では、新たに物件を買おうとしている投資家にとってはチャンスになる可能性があります。事情により相場よりも安い価格でも「どうしても売りたい」という売り手がいるなら、買い手側にとっては有利になることがあるからです。

    賃貸不動産の長期的リスク

    賃貸不動産の長期的リスク

     

    賃貸不動産の長期的なリスクや影響について考えられるものとして、次の2つが挙げられます。

    • オフィスの賃貸需要低下
    • 国内の投資用不動産への影響

    オフィスの賃貸需要低下

    「Withコロナ」時代はオフィスがいらなくなるという声を聞くこともあります。しかし一方で、「在宅勤務が続いて、顔を合わせることの大切さを実感した」という意見も根強いです。都心のオフィス賃料については、データに変化が表れています。

    2020年9月10日の日経電子版によると、7年近く上がり続けてきた東京都心のオフィスビルの賃料が下落に転じたといわれています。仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が発表した8月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の平均募集賃料は、3.3平方メートルあたり2万2,822円で、前月比0.83%の下落となりました。また、空室率は2018年2月以来となる3%台にまで上昇したのです。 同記事では、その理由を「賃料の上昇が止まったのは、新型コロナウイルスの感染拡大で解約が目立つ中型や小型の物件などで、賃料を下げて募集する大家が増えてきたためではないか」と分析しています。

    たしかに、東京都内で新型コロナウイルスの感染者数が増え続けている現在、一時的にオフィスを解約する事業主がいても不思議ではありません。しかし私自身の意見は、「withコロナ」の手段や生活様式が確立されたあとは、またリアルのオフィスに戻ってくる事業主も多いのではないかと考えています。 今回の新型コロナウイルスによる外出自粛では、個人や企業は大きな影響を受けた一方で、あらためてリアルの価値を見直しているのではないかと思うからです。

    ※参考資料:東京ビジネス地区/最新市況

    国内の投資用不動産への影響

    新型コロナウイルスは悪い影響をもたらした一方で、国内の不動産に対して、これまで潜在的にあった需要を大きく顕在化させたとも捉えられます。

    たとえば、住居でみると、活動自粛により在宅勤務が続くことで自宅にいる時間が増えたことから、夫婦でも働きやすく、より広い部屋への住み替えが進んだり、リフォームなどで自宅を拡充する動きがみられています。ほかにも、20代を中心に在宅勤務が続くことに閉塞感を感じ、人との交流を求めてシェアハウスを探す動きもあるようです。

    また、事業用の不動産でも、新たな投資の機会になりえます。新型コロナウイルスの影響で社会全体が活動を制限されたことで、今後は「オフィス中心の仕事」から「在宅を併用した働き方」に変化が進み、オンラインとリアルをうまく融合したオフィスや店舗がさらに求められると考えられます。 たとえば、オフィスでは個人席のないフリーアドレス制の執務室や、個室型で複数企業が入居するコワーキングスペース、ウェブ会議が前提の会議室、イベント向けのバーチャル配信スタジオなどが、これから求められてくるでしょう。

    「Withコロナ」や「Afterコロナ」の世界を見据えて、不動産業界でも新しい次の投資機会を見つけるタイミングがきているともいえます。

    まとめ

    本記事では、新型コロナウイルスが不動産業界に与える短期、長期のリスクや影響について説明しました。新たな生活様式が求められる「Withコロナ」時代。不動産業界にも大小さまざまな変化が訪れてきています。あらためて不動産の「リアル」の価値を見出し、この苦境を前向きに乗り越えていければと思います。

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