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<15コツ目>なぜ、壁紙の貼り換えの面積は施工業者によって大きく変わるのか

賃貸管理会社にとって、入居者の解約に関連する業務、特に原状回復は重要課題の一つではないかと思います。
今回からは原状回復を中心に解約に関連する現場業務について考えたいと思います。

目次

    解約の流れ

    まずは解約時の業務フローについて確認しておきたいと思います。

    入居者からの解約連絡

    入居者の荷物の搬出

    立合い、鍵の引き渡し

    原状回復工事

    次の入居者の募集

    大原則は上記のとおりですが、管理会社によって入居者の募集開始のタイミングが若干異なったり、解約時の立合いを行わなかったりします。
    以降はこれらの中のポイントとなる部分について、確認していきたいと思います。

    立合い

    引っ越し立合いを行う目的は何でしょうか?
    一つは借主から貸主へのお部屋の引き渡し(返還)の事実を明確にする事にあると思います。
    借主が荷物を搬出し貸主は部屋が空になっている事を確認します。そして、借主が貸主へ鍵を渡します。
    立ち合いにより鍵を引き渡すと言う象徴的なイベントにより、引き渡しを明確にする訳です。

    また、もう一つの立ち合いの目的は原状回復の内容の合意です。
    どの部分までを原状回復する必要があるのかを、貸主と借主で調整する訳ですが、通常は管理会社が貸主の代理で立ち合うかたちが多いようです。

    いずれにしても、立ち合いの目的はこれらのトラブル防止にあります。
    ただ、立ち合い業務による管理会社の負担は小さくありません。
    入居者にしてみれば荷物を搬出次第、立ち合いたいと言う希望も多いため、引っ越し荷物の搬出時間が延びたりすると立ち合い時間もずれる事になります。

    また、春の繁忙期、特に月末はこれらの立ち合い予定が集中し、毎年のように希望に応じきれなくなってしまいます。
    このため、管理会社の方でも工夫が見られます。

    トラブル防止が目的なので、立ち合いを希望者する入居者に対してのみ立ち合うようにしたり、ある程度の原状回復費用や解約時のルールを入居時に決めておいたりして、実質的なトラブルの芽を摘んでおいた上で、立ち合いを減らしたり、無くしたりしています。

    原状回復ガイドライン

    原状回復ガイドラインは国土交通省が平成10年に「原状回復とめぐるトラブルとガイドライン」として公表して以降、数度の改訂が実施され、実用的になってきているので、賃貸管理業界でもかなり定着してきているのでは無いでしょうか。

    → 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

    公表当初は、特にオーナー様にご理解頂く事に苦労していましたが、それも最近はご理解が進んできているように思います。
    このため、公表前と比べ、トラブルは減少傾向にあると思います。

    ここでのポイントは、オーナー様や入居者の方に対して、立ち合いの時にガイドラインを初めて説明するのではなく、特にオーナー様には日頃からご理解頂く努力をする事だと思います。

    室内点検

    入居者が荷物を搬出した後、管理会社が部屋を点検する訳ですが、この点検作業は解約する入居者とのトラブル防止だけではなく、その後の募集準備の意味でも重要な作業となります。
    たった一つの箇所を見る時にも、いくつかの視点で見る必要があります。

    ①対象

    点検する対象(場所)について、後々間違える事の無いように限定します。
    壁であれば、部屋のすべての事なのか、壁の一部の事なのか、台所の設備から水漏れがしているのであれば、どの部分なのか等を明確にします。

    ②状況(当初と現状)

    上記①で限定した部分について、原状回復の必要があるのかないのか、タバコのヤニで変色しているのか日焼けにより変色しているのか、扉の角がどのくらい割れてしまっているのか等、その状況を出来るだけ具体的に記録します。

    汚損しているのか、変色しているのか、破損しているのか、紛失しているのかを明確に記録します。

    また、その変質箇所が今回解約する方が入居する前からあったものなのか、入居後に生じたものなのかを、今回解約する入居者の入居時の記録やその際の、工事内容を参考にしながら、記載します。

    写真や、あるいは対象物が設備であるような場合は動画(動きや音が分かる)があるとさらに良いかと思います。

    ③回復方法(施工内容)

    上記②で確認した状況の変化をどのように原状回復すればいいかを検討します。
    原則的には経過年数に応じた回復までと言う事になります。

    この際、重要な点は入居者との交渉のための原状回復のための回復方法に加えて、実際にリフォーム業者に発注する回復方法も検討しておくと言う事です。
    実際にリフォーム業者に発注する回復方法(施工内容)は、次の入居者の募集のためと言う目的もあるため、原状回復を超える場合があります。
    つまり、見た目を良くしたり既存の設備を流行の設備に交換する事により、次の入居者に早く申し込みをして頂くと言う目的のため、原状回復以上の施工を検討する訳です。

    ④費用

    原状回復工事が一般のリフォーム工事と異なる点は、1件当たりの工事金額が低い事と工事数が多く、工期が短い事です。
    管理会社は効率的にこれらの多くの工事を消化するために、各施工業者と予め発注単価を取り決めた上で事実上特命発注(相見積もりせず特定の業者に発注)するのが通常です。

    工事金額を決定づける要素は単価×数量なので、この際注意しなければならないのは、数量の計測ルールや仕様の確認です。
    壁紙貼り換えの計測ルールは施工業者によって異なる事がよくあります。
    業者によって面積の異なる原因は以下のようなケースです。

    ・開口部分
    業者によって、壁の全体面積から壁紙を貼らない窓やドアの面積を差し引くのか、あるいはその面積をどう計測するのかと言う事が異なるからです。

    ・柄合わせ
    壁紙の柄によっては柄合わせのため、端切れが多く生じます。
    このため、その分も含めて面積に入れられたケースも以前ありました。
    原状回復で使用する壁紙は量産品なので、内装業者の原価のほとんどは、実は人件費です。
    このあたりを考慮して計測ルールを統一した方が良いと思います。

    ・単価を安く見せるため
    上記に挙げたように原状回復工事は単価だけそろえて、特命発注となるケースが多いため、競合他社に比べ、単価を低くして特命業者となった上で、代わりに面積を多めにして自分たちが損をしないように請求をしてくるケースです。

    一方、仕様の面で施工業者ごとに異なるケースが多いのが塗装工事です。

    塗装工事の場合、その仕様が、既存の塗装を剝がすのか、予め清掃や洗浄をするのか、下地の凹凸の補修までするのか、シーラーなどと呼ばれる下塗りをするのか、塗料は何度塗ってもらえるのか等、様々な部分で異なってきます。

    私が以前経験したケースでは、価格の低い施工業者で施工してもらったあと、たった1年で塗装が剥がれてしまったケースもありました。
    単価だけで施工業者を選定してしまうと、思わぬトラブルが生じてしまう事があるので、ある程度の知識をもって発注した方が良いかと思います。

    ⑤負担割合

    これは借主との費用負担の取り決め方法です。

    借主は原状を回復して貸主に部屋を返さなければなりませんので、一般的には長く住めば住むほど、借主に多くの費用負担が生じます。一方で通常損耗(通常の日常生活を送る中で生じた傷や汚れ)の範囲も長く住めば住むほど多くなり、こちらは借主負担ではありません。

    簡単に言えば、長く住んで頂いた入居者ほど、原状回復と通常損耗が複合的になり、負担割合の決定が難しくなる訳です。

    また、解釈に食い違いが生じやすいのは室内の内装にカビの発生した場合です。
    カビの原因は貸主(建物の構造上)でも借主(加湿器や洗濯物の室内干しの多用)でも生じます。このため、負担割合の決定に食い違いが生じやすくなる訳です。
    ただ、上記でご紹介した原状回復ガイドラインが公表されてから、以前と比べずいぶんと交渉がスムーズになったと思います。

    ⑥対処

    上記③でご説明したように、室内点検で工事内容を検討するに当たって、原状回復の費用負担がどうなるかと言う課題と、実際にどのようにリフォーム工事をするかと言う2つの課題が生じます。
    このうち、実際にどのようにリフォーム工事を行うのかと言う視点では、いくつかのポイントがあります。

    ・リーシング
    今後、空室の増加が予想される中で、どのようにリフォーム工事を行えば、早く入居者が決まるのかと言う視点です。

    ・設備の更新
    2020年の民法改正により、入居中に設備が故障した場合の賃料の減額が明確化されました。

    これにより、入居者が入ってから、設備の故障が生じると賃料が減額になるリスクが生じる事になりました。このため、空室のリフォーム工事の期間内で古くなった設備を交換してしまおうと言う視点です。

    ・維持管理
    今後の部屋の維持管理を簡単にしたり、修繕費等の費用負担を少なくしようと言う視点です。

    例えば壁や床に埋まってしまっている配管(隠ぺい配管)を露出させたり、点検口を設置したりする作業です。
    また、照明設備の費用負担を無くすために、既存設備として設置されていた照明設備を撤去して引っ掛けシーリング(ワンタッチで照明設備が取り付けられる金具)にする場合もあります。
    以上、ご紹介したように解約時の室内点検は様々な意味で重要なポイントです。

    入居者が居住中の室内はなかなか入る機会がありません。
    空室と言う機会を使って、効率的な室内点検を実施する事をお勧めいたします。

    まとめ

    今回は入居者の解約時の業務、特に原状回復について、ご紹介してきました。
    貸主借主の具体的な費用負担区分についての説明は原状回復ガイドラインに譲るとして、そこに至る室内点検の重要性についてお伝えしました。

    次回は引っ越しの後の残置物や鍵、その後の募集業務との連携について、ご紹介したいと思います。

    以上

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