2025.09.04 RELEASE
郵送・電話8割減「GMO賃貸DX」導入で現場が変わった──サークルホームの成功事例
- オーナーアプリ
- 入居者アプリ
仲介で築いた信頼と提案力を強みに、管理業務の高度化を進めてきた株式会社サークルホーム。属人的だった業務や煩雑な電話・郵送対応に限界を感じ、「GMO賃貸DX」を導入しました。アプリやチャットの活用で現場の負担を軽減し、全社一体でのDX推進を実現しました。業務の効率化がもたらしたのは、単なる生産性向上だけではありません。「考える余白」が生まれたことで、社員が自由に発想し、提案型の管理へと一歩を踏み出しているという同社に、アプリ導入の経緯と今後のビジョンについてお話を伺いました。
仲介で培った視点を武器に──提案型管理へと進化
貴社の事業概要について教えてください。

▲株式会社サークルホーム 専務取締役 䑓 崇宏 氏
当社は、創業から24年目を迎える賃貸管理会社です。現在23期目を迎えており、これまで20年以上にわたって賃貸業界で事業を展開しております。
事業の特徴として、創業から18年間は客付け業務をメインに手がけてきた経緯があります。現在は管理会社として主軸を置いた事業展開を行っておりますが、この長年の客付け経験で培った人脈とノウハウが、当社の大きな財産となっています。
具体的にどのような点を強みだと感じていますか?
長年にわたり入居者様のニーズに応えてきた経験から、当社が手がける物件については他にはないユニークな物件を提供することが可能です。この独自性の高い物件づくりにより、相場よりも高い家賃設定での運営を実現し、オーナー様の収益最大化に貢献しています。また、単なる管理業務にとどまらず、オーナー様に対して物件の価値向上や収益改善に向けた様々な提案や対応を行い、包括的なサービスを提供しています。
当社のアプローチは、営業スキルに頼るのではなく、エリアを深掘りして地域に根ざした信頼構築を重視している点にあります。オーナー様に寄り添う姿勢を大切にし、「相場が合わない」と見なされがちな管理でも丁寧に対応し、仲介店舗出身の強みを生かした客付け力で確実に成約へ導きます。さらに、最新のITを積極的に導入することで、24時間365日入居者募集が可能な体制を整備しました。これにより、従来の営業時間に縛られない効率的な客付けが可能となり、オーナー様により迅速なサービスを提供できるようになっています。
現在はどのようなことに取り組まれているのでしょうか?
当社では、管理会社としての基本的な役割である物件価値の維持管理を通じて、家賃収入の安定や入居率向上を図り、最終的にはオーナー様の資産を次世代へと継承する支援を目指しています。
物件の維持管理だけに留まっていては、どうしても提案の幅が限定されてしまいますよね。そこで発想を転換し、「この取り組みを行っているのであれば、こうしたことも可能になるのでは」という視点から、より広範囲なサービス提案を行うことを心がけています。
具体的には、大規模修繕の提案や相続に関するサポートなど、オーナー様の資産運用全体を見据えた包括的なサービスの提供に取り組んでいます。現在はまだその入り口段階ではありますが、これらの分野での事業展開を積極的に進めている状況です。
先ほども触れましたが、私たちの強みは仲介業務からスタートした経験にあります。この背景により、様々な視点から物件や市場を捉えることができ、条件の見直しや家賃設定の最適化、成約につながる物件づくりなど、オーナー様の資産価値向上のための多様な提案を行うことが可能です。仲介業務で培った豊富なノウハウを活用し、オーナー様一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかなサービスを提供することで、単なる管理業務を超えた価値創造を目指しています。
アナログ業務の限界とDX導入前の課題と苦悩
「GMO賃貸DX」を導入前はどのような課題を抱えていましたか?

業界全体でDXが加速していく中で、当社としても時代の変化に対応する必要性を強く感じていました。
最大の課題は、新しいサービスや商品を開発し提供していく上で、従来の業務フローが大きな障壁となっていたことです。私たちがお客様に提供しなければならないサービスレベルは、従来型では通用せず、基本的な管理業務は「できて当然」のレベルになっていました。管理会社として各営業担当が丁寧に対応することは選ばれる理由の1つではありますが、それだけでは十分ではなく、プラスアルファでどのような付加価値を提供できるかが、今後オーナー様が管理会社を選ぶ際の重要な判断基準になると考えていました。
しかし、従来のやり方では、新たなサービス開発に取り組む前の日常業務で従業員が疲弊してしまい、本来注力すべき商品開発や付加価値サービスの創造に十分な時間やリソースを割くことができません。この状況を改善するため、システム導入による業務負荷の軽減が不可欠だと判断しました。
入居者やオーナー様への対応でどのような課題があったのでしょうか?
業務面では、入居者様やオーナー様と、電話やFAXでのやりとりが多かったため、情報共有やトラブル対応に多大な時間を要していました。
また、当社はコールセンターではないにも関わらず、まるでコールセンターのスタッフのように電話対応に追われている状態でした。6回線が全て埋まり、電話が鳴りっぱなしという日もありました。各従業員には本来担うべき業務があるにも関わらず、1日の大半を電話対応に費やす状況が常態化していました。その結果「電話に出たくない」「あの人は出ない」といった不公平感や対立を生む原因にもなっていました。
「本来の仕事に集中できない」現場の声
深刻だったのは、電話という手軽なコミュニケーション手段のため、本来当社が対応すべき範囲を大きく超えた相談が数多く寄せられていたことです。たとえば「マンションの電波状況が悪い」といった当社では対応できない技術的な内容や、入居者様の「仕事がなかなか見つからない」といった人生相談まで、業務とはまったく関係のないお問い合わせが頻繁に寄せられていました。
当社は、人生相談を受け付ける窓口ではありませんし、適切な解決策を提供することもできません。しかし、電話という性質上、相手の話を途中で遮ることは難しく、結果として「いつ終わるのだろう」と思いながら、長時間電話を持ち続けるという状況が頻繁に発生していました。これらの問題は単なる時間のロスにとどまらず、従業員にとって精神的な負担も大きく、心理的負担が大きい状況であったと認識しています。
本来であれば重要な管理業務や新たなサービス開発に充てるべき時間が、こうした非効率的な電話対応に奪われてしまい、会社全体の生産性向上を阻む大きな障害となっていました。これらの課題を解決するためにも、より効率的で建設的なコミュニケーション手段の導入が急務であると認識し、「GMO賃貸DX」の導入を決定しました。
賃貸管理DXを実現する「GMO賃貸DX」導入の決め手は“使いやすさ”と“顔の見えるサポート”
類似したサービスもある中で、「GMO賃貸DX」に決めていただいた理由やきっかけがあれば教えてください。

私たちが「GMO賃貸DX」を選択した最大の理由は、GMOインターネットグループという信頼できる企業グループが提供するサービスであることでした。GMOインターネットグループの長年にわたる実績と信頼性は、私たちにとって大きな安心材料となりましたね。実際、導入初期からGMO ReTechの担当者様が丁寧にサポートしてくださり、操作性に関する疑問や不明点にもすぐに対応していただけました。
また、電子契約機能が標準で搭載されていることも重要な決定要因です。今後のデジタル化を考えると、この機能は必要不可欠であり、追加コストなしで利用できる点は魅力的でした。最初の打ち合わせでお話を伺った際にも、使いやすそうだという印象を受け、実際の導入後もその通りでした。
導入前は、複数の類似サービスを比較検討しましたが、他社は費用対効果の面で割に合わないと感じるケースが多くありました。その点、「GMO賃貸DX」は「実際に使う機能」に絞られており、UI/UXもシンプルで、導入してよかったと実感しています。
従来使用していた基幹システムのバージョンアップが非常に遅く、実質的に止まっている状況でした。オンプレミス型のシステムを当社仕様にカスタマイズしてしまっていたため、バージョンアップのたびに多額の費用と時間がかかる状況に悩まされていました。
基幹システムも変更を検討しており、その基幹システムと「GMO賃貸DX」がデータが自動連携していることも決め手に繋がりました。
変更したことにより、システム側に合わせる形で運用していますが、カスタマイズによる制約から解放され、ストレスを感じることはありません。私たちが求めている機能は、ある程度満足できるレベルで実現されており、現在の状況に満足しています。
導入検討時に感じた「GMO賃貸DX」を選ぶメリットがあれば教えてください。
当社が「GMO賃貸DX」を導入して特に感じているメリットは、GMO ReTechさんが面倒くさがらないという姿勢です。他社の場合、最初の営業担当者は熱心でも、契約が決まった後に対応の温度感が下がってしまうケースをよく目にします。ですが、GMO ReTechさんの場合はそのようなことが一切なく、導入後も一貫して丁寧かつ迅速な対応を続けてくださっており、その誠実さにとても信頼を寄せています。
たとえば、こちらから質問や相談をした際には、すぐに対応していただけるので、非常に信頼感があります。時にはこちら側のミスによる対応依頼にも、変わらぬスピードと丁寧さで応じてくださいます。これは単に担当者個人の対応力というよりも、会社全体として対応力を文化として体現しているように感じています。
システム導入というのは、導入したら終わりではなく、むしろそこからいかに使いこなせるかが大切です。導入側の経営者としては、システムを入れたことで「もうできるはず」と考えがちですが、実際には従業員が他の業務を抱えながら新しいシステムに慣れていく必要があり、なかなか稼働率が上がらないのが現実です。GMO ReTechさんは、そうした現場のリアルをよく理解してくださっており、「稼働率を上げなければ導入の意味がない」という意識を持って伴走してくださっています。
本来であれば、導入側が自力で運用スキームを整備していく必要がありますが、当社が手を動かせていない時なども、「最近どうされていますか?」「どこまで進みましたか?」と、さりげなく確認のご連絡をいただけるのは、非常にありがたい存在です。専任の担当者を何人も確保できない中小企業にとって、こうした背中を押してくれる支援は、大きな支えになります。
また、社内研修についても定期的に実施していただいています。進め方について、「ITが得意じゃない人がいるよね」という前提に立って配慮してくださっています。そのため、ITリテラシーに不安のあるスタッフも安心して参加することができます。このような配慮は、導入を成功に導くための“土台づくり”という意味でも、非常に助かっています。

逆に、社内で導入時の障壁や懸念点などは何かありましたか?
私たちが「GMO賃貸DX」を導入する際には、社内で賛成派と反対派に分かれる状況がありました。これは率直に言ってしまえば、変化への抵抗感です。
スタッフの中には、言葉に出さなくても抵抗感を感じている人たちがいることは明らかでした。今までで行ってきた業務が普通だと思っている社員からすると、「なんで今新しいものを入れなければいけないのか」という疑問を持つのも自然な反応です。特に、チャットでのやり取りについては、「電話ではないやり取りでうまくコミュニケーションが図れるのか」といった不安の声もありました。昔ながらのやり方を好む方もやはりいらっしゃるので、導入当初はなかなか理解を得るのが難しい時期もありましたね。
しかし、現在では、そうした変化の波を乗り越えて、細かい部分まで使いこなせるようになってきました。「使ってみると意外と便利」「慣れてきたら快適」という声が社内で多く聞かれるようになりました。実際に使いこなす中で、小さな成功体験や利便性の実感が積み重なり、当初の不安や懸念は次第に払拭されていきました。
「もし元のやり方に戻れるとしたら戻りたいか?」という問いに対し、ほとんどのスタッフが「戻りたくない」と答えると思います。少なくとも現場では、「もう以前の状態には戻りたくない」というのが本音ではないでしょうか。
社内の反対派の声を変えるために、具体的にどんな取り組みをされたのでしょうか。
新しいシステムに対して消極的な姿勢を示すスタッフに、どのように働きかけ、理解を得ていくかという点は、私たちにとって大きな課題でした。
この課題に対応するため、私たちは定期的な社内勉強会を積極的に実施しました。GMO ReTechさんや基幹システム会社さんにもご協力いただき、外部講師による研修も含めて継続的に学びの機会を設けています。これらの勉強会は導入当初だけでなく、現在も継続しており、今後も定期的に実施していく予定です。
もちろん、スタッフごとに、習得のスピードの差があるため、外部研修だけで全員が十分に理解できるとは限りません。そこで社内でも個別のフォローアップを行うようにしています。一人ひとりのペースに合わせたサポートを心がけることで、全員がシステムを使いこなせるよう努めました。
このような地道な取り組みの結果、当初は抵抗感を示していたスタッフも徐々にシステムの利便性を実感し、現在では積極的に活用してくれるようになっています。導入時の苦労はありましたが、継続的な教育とサポートの積み重ねこそが、社内の意識改革につながったと思います。
電話削減と顧客満足を実現する「GMO賃貸DX」の活用
アプリ導入に際してオーナー様にはどのように案内されていましたか?工夫した点などあればお聞かせください。

新規のオーナー様については、管理契約を結ぶ時点で「当社はオーナーアプリで収支報告書を送ります」という説明を行い、電子契約の承諾も同時に進めています。最初の段階から「当社の運用方針」として明確にお伝えしているため、ほとんどの方が抵抗なく、スムーズに導入していただけています。
一方、昔からお付き合いのあるオーナー様については、担当者の説明が不十分な場合に誤解を招くこともありました。中には「絶対に嫌だ」とおっしゃる方も何人かいらっしゃるため、そうした方々にはアプリ導入プロジェクトメンバーが直接対応し、アプリ導入に関するすべてのお問い合わせを受け持ちました。必要に応じて訪問のうえ操作方法をご案内したり、お電話にて「このボタンを押してください」「次はこうしてください」といった具体的な操作説明を丁寧に行うなど、個別対応を徹底しました。
また、2025年6月から収支報告書の紙での郵送を停止するという大きな方針転換を実施しました。これに備え、数ヶ月前から定期的に案内文を送付し、移行に向けた準備を進めてきました。ただ、実際に郵送をやめた際には、ある程度の苦情は来るだろうと想定していました。
しかし、蓋を開けてみると想定していたような苦情はほとんど寄せられませんでした。事前に繰り返しお知らせしていたこともあり、多くのオーナー様にご理解いただけたのだと思います。結果的に大きなトラブルもなく移行を完了できたことは、私たちにとっても大きな安心材料となりました。
入居者様に対しても何か取り組みはされているのでしょうか?
入居者様へのアプリ普及については、毎週月曜日にアカウント発行を行っています。ただ、最初のアカウント発行後は登録者数の伸びが徐々に鈍化し、このままでは普及が進まないという課題に直面しました。
そこで、全入居者様向けにダイレクトメールを送付することも検討しましたが、コスト面のハードルが高く、まずは手軽にできる施策として物件へのポスター掲出を開始しました。
この取り組みが功を奏し、最近では登録者数が急増しています。今週だけで新たに300人の入居者様が登録されており、これは物件の目立つ場所に大きなポスターを掲出した効果だと考えています。加えて、メールとポスターで同時に案内が届くことで、「信頼できるものだ」という安心感を持っていただけているようです。
現在、約40物件にポスターの設置が完了しています。なお、戸建てや区分所有物件など、掲示スペースが確保できない物件については、ポストへの手紙投函という形で案内を行いました。
この取り組みでのポイントは、「自分の担当物件だけ対応してください」という指示は出していないことです。結果として、社内の全スタッフが積極的に協力し、通勤途中に対象の物件があれば、ポスター掲出をしてくれています。この取り組みを通じて自分たちがどのような商品を取り扱っているのかを実際に見てもらう良い機会にもなっています。
また、「この物件に行ってみたら、こうだった」といった現場の様子をスタッフ間で共有する場面も多く、皆が前向きに、そして楽しみながら取り組んでいる様子が見受けられました。
こうした取り組みを通じて、思いがけない副次的効果も生まれています。それは、全社的に「入居者アプリを推進しよう」という共通認識が浸透し、社内の一体感がより強まったことです。結果として、単なる業務改善にとどまらず、会社全体の組織力向上にもつながる貴重な取り組みとなっております。
実際に導入後、オーナー様からの反応はいかがでしたか?
導入前に懸念していたのは、ご高齢のオーナー様がITツールを使いこなせるかという点でした。しかし、実際には「ご利用いただけなさそう」と思っていた方が、意外にもITに詳しく、「使いやすいね」という声を多くいただいています。また、もともとITに詳しくない方からも、アプリの操作性について「便利で使いやすい」という評価をいただくことが多く、予想以上に好評です。
なかでも、海外にお住まいのオーナー様からの反応は非常に好意的でした。海外在住オーナー様からは、「時差を気にせず連絡できるようになり、本当に助かっている」とのお言葉をいただきました。
これは海外の方に限った話ではなく、日中お忙しくて電話での連絡が取りづらいオーナー様にとっても、チャット機能によってコミュニケーションが格段にスムーズになったと感じています。従来は、お互いの都合が合わずに何日も連絡が取れないこともありましたが、アプリ導入後はこのようなタイムラグがほとんどなくなりました。
特に改善が大きかったのは、収支報告書の閲覧に関するやり取りです。以前は、毎月メールや郵送で月次報告書をお送りしていたにもかかわらず、年末になると「1年分をまとめて送ってほしい」と依頼されることが頻繁にありました。メールが削除されていたり、見失ってしまったりすることが原因で、結果として年末に膨大な量の書類を再送する必要があり、私たちにとっても大きな負担となっていました。
現在はアプリを通じて、オーナー様が必要なタイミングでいつでも収支報告書を確認できる環境が整ったため、この再送作業が完全に不要になりました。年末も税理士への確認依頼を行うだけで済むようになり、業務の効率化と精神的負担の軽減の両面で大きな効果を感じています。
導入されてみて、業務に関してはどのような効果を感じていますか?
オーナーアプリを運用開始してから約1年が経過し、入居者アプリも本格運用を始めて2ヶ月が経ちましたが、すでに大きな効果を実感しています。
今月より、収支報告書の郵送を完全に廃止したことで、コスト削減と業務効率化の両面で成果が現れています。まず、印紙代や郵送にかかる輸送費が大幅に削減されました。特に電帳法の施行以降は、書類の保管が複雑化し、メール送付であっても保存作業が必要でしたが、その手間も一掃されました。
具体的な数値で見ると、導入前は毎月約8人のスタッフがそれぞれ8〜10時間をかけて300件の明細書の印刷・封入・郵送作業を行っていました。郵送コストも後納郵便・印紙・印刷代を含めて月額約7万円かかっていました。
導入後は、作業人数が約3人に減少し、作業時間もそれぞれ1〜2時間程度まで短縮されました。郵送作業件数も40件まで減少し、残りはすべてアプリで対応しています。その結果、郵送コストは月額約1万円まで削減することができました。これにより、月額で約6万円のコスト削減と、延べ60時間以上の作業時間短縮を実現したことになります。
細かな部分では、プリントアウトにかかる費用の削減も挙げられます。以前は、毎月19日前後になるとスタッフ全員が残業して収支報告書の封入作業を行い、「19日は休めない」という雰囲気が社内に定着していました。現在では、そのような作業も不要となり、時間的・精神的な余裕が生まれています。さらに、封入ミスによって異なる物件の書類が混在するトラブルも完全になくなりました。以前は、こうしたミスによりオーナー様にご迷惑をおかけすることもありましたが、アプリ導入によって解消されています。
現在、オーナーアプリの利用率は全体の約8割に達しており、未利用のオーナー様に対しても引き続き利用促進を図っていく予定です。この普及活動を効果的に進めるため、全社員がいつでも普及状況を一目で把握できるように社内ツールのトップページにログイン件数やログイン率を表示しています。こうした取り組みにより、社内全体でアプリ普及への意識を共有し、取り組む姿勢の統一が図られています。このように数値で可視化することで、全員が同じ目標に向かって進むことができ、チームとしての一体感も生まれています。
具体的にどのような業務改善効果が見られたのか、お聞かせください。
システム導入により実現した紙ベースの業務削減は、想像以上に多岐にわたっています。
以前までは、解約手続きについて入居者様から紙で解約届を送っていただき、それをもとに管理業務を進めていましたが、現在はウェブ上で申請が可能となり、事務処理が大幅に軽減されました。
中でも特に大きな変化があったのは、鍵の受領証の廃止です。従来は当然のように鍵の受領証をもらっていましたが、現在は、入居者様に鍵をお渡しする際、アプリにログインしていただいた上で、本数と鍵番号をチャットで送信する形に切り替え、書面での受領証は完全廃止しました。思い切って変更したものの、これまでのところ一切問題は発生しておらず、クレームもありません。
このように業務フローを見直す中で、「これまで当たり前に行っていた業務は本当に必要なのか?」という原点に立ち返ることができました。鍵の受領証に関しても、「当然もらうべきもの」と思い込んでいたところから、「そもそも必要なのか?」という視点で再考することで、思い切った見直しにつながりました。
そしてこの過程を通じて、私たちの業務に対する意識そのものも大きく変わってきたと感じています。システム導入による効率化の真の価値は、単なる作業の置き換えにとどまらず、業務の前提を問い直す機会になるという点にあると改めて実感しました。
振り返ってみると、これまで「なんとなくやっていたこと」や「引き継いだからそのまま続けていたこと」が多かったことに気づきました。そうした無意識の積み重ねをひとつずつ見直していくことで、本当に必要な業務に集中できる体制へと着実に進化していると感じています。
チャット機能による効果についてはいかがでしょうか?
アプリのチャット機能で最も効果を感じているのは、コミュニケーションの透明性が高まったことです。
オーナー様対応では、すべてのやり取りが文字で記録に残るため、「言った・言わない」といったトラブルがなくなり、双方が安心してやり取りできるようになりました。
導入前には予想していなかった大きなメリットとしては、ワークフロー機能の活用になります。オーナー様への見積提出や承認依頼が格段にスムーズになり、従来の郵送やFAXと比べてレスポンスが大幅に向上しました。
工事内容の確認や相談は、トピック機能を活用し、「入居申し込み」や「原状回復工事」などカテゴリごとに分類し、修繕案件は個別にトピックを立てて管理し、完了後は「書き込み不可」にすることで、情報の整理と検索性を両立しています。
「あの件の詳細はどこに記録されているか」を瞬時に特定でき、継続性のある対応が可能になりました。オーナー様にとっても、案件ごとに明確に分類されたチャットにより、必要な情報へのアクセスが容易になっています。
運用方針としては、過度に厳格なルールを設けるよりも、「後から情報を探しやすくする」という目的を最優先に、状況に応じて柔軟に活用することを心がけています。
他にも業務効率が改善された作業があれば教えてください。
データ保存作業の大幅な簡素化です。以前使用していたシステムでは、送金後でも内容を自由に変更できたため、改ざん防止目的で、収支報告書や関連書類をすべてPDFに変換し、別の場所に保存するという煩雑な作業が発生していました。毎回多くの時間を要し、スタッフの大きな負担となっていました。
現在のシステムでは、送金処理を行った後、基本的にデータ変更できないため、こうした二重保存の手間がなくなりました。さらに、チャットで送信した写真や書類も自動的にアプリ内に保存されるため、別途保存し直す手間もありません。
オーナー様にとっても必要な書類をスムーズに確認できる環境が整っています。
アプリ導入後、社内コミュニケーションに変化はありましたか?
社内での情報共有が劇的に改善されたことですね。従来は、オーナー様とのやり取りが担当者個人のメモ帳や記憶に依存しており、「いつ連絡が来た件なのか分からない」「どういう内容だったのか詳細が不明」といった情報の断片化が常に問題となっていました。何かトラブルが発生した際には、関連情報を一から探し出さなければならず、非効率な状況でした。
現在では、チャットでのやり取りがチーム全体で共有できるため、担当者以外のスタッフも案件の経緯を把握できるようになりました。これにより、担当者が不在の際でも他のスタッフが適切に対応できる体制が整い、社内から「だいぶ楽になった」という声が多く上がっています。
これからの賃貸管理の姿──「GMO賃貸DX」で描く未来
今後、「GMO賃貸DX」を活用して、どのような賃貸管理を実現したいとお考えでしょうか?

「GMO賃貸DX」を通じて私たちが目指しているのは、業務効率化によって生まれた時間を、新たなサービスや価値の創造に振り向けることです。これまで業務の約95%を日常の対応に費やしていましたが、アプリの活用によりようやく「考える余白」が生まれつつあります。
従来は「こうした取り組みをしてみたい」というアイデアがあっても、目の前の業務を優先せざるを得ず、実行に移すことができませんでした。30年、40年とその状態が続くことを考えると、正直なところ希望を持ちにくい環境でした。
しかし今は、業務に追われるだけではなく、仕事をより充実させる方向に進める可能性が見えてきています。特に事務系のスタッフは営業のように成果が数値に現れにくいため、やりがいや成長の機会が限られていました。今後は、業務の中で見つけた改善点や新たな発想をスタッフ自身が提案し、実行に移せるような環境づくりを進めていきたいと考えています。
これまでは「指示をこなす」ことが中心でしたが、今後は若い世代が主体的に動ける職場に変えていくことが大きな課題であり、目標でもあります。創造的で、面白みのある会社へと進化させていきたいと思っています。
最後に、賃貸DX導入を検討している同業社に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。
率直に申し上げて、「導入しない」という選択肢は、もはや存在しないと考えています。
DXの導入は確かに負荷のかかるプロセスですが、時間が経てば経つほどハードルは高くなります。なぜなら、システムでできることが日々増え、後から導入する場合には、覚えること・変えるべき業務フローがさらに増えてしまうからです。
一番の課題は、既存業務をシステムに置き換えるための「意識の切り替え」と「運用変更」です。一気に覚えることが多く、初期の負担は決して軽くありません。ただし、だからこそ“今すぐに着手すること”が、最も効率的で現実的な選択肢になります。
最近では「DX」という言葉自体は少し落ち着いてきた印象がありますが、現場での実感はむしろ逆です。私たちの会社でも、システム導入をきっかけにAIツールを自然と活用し始めるなど、想像以上の相乗効果が現れています。
DXは単なるITツールの導入ではなく、組織の意識改革と創造性を高める投資です。同業の皆様にも、早い段階での取り組みを強くおすすめいたします。

会社紹介
株式会社サークルホームは、神奈川県横浜市を拠点に、2002年の設立以来、賃貸仲介と管理の両輪で事業を展開する不動産会社です。代表の村谷英郎氏が主導し、仲介力と管理力を兼ね備えた独自のサービスモデルで、オーナー様・入居者様・自社を円滑に循環する関係を築くことを志向しています。業界トップクラスの募集力を背景に「24時間365日対応」「家賃滞納保証付き一括管理」「資産運用支援」など、賃貸経営に付随するすべての負担を一任できる体制を整備。これにより、オーナー様は安心して収益を維持でき、入居者様には快適な住環境の提供を実現しています。
■会社名
株式会社サークルホーム
https://www.circlehome.co.jp/
■所在地
〒220-0004
神奈川県横浜市西区北幸2丁目10番33号 MIテラス横浜西口8階

