福徳不動産 福島卓社長|実務経験を経ずに副社長就任。自社開発システム「Realsaber」で業界に新風を
不動産業界の変化と将来性について、業界全体を幅広い視点で捉え、明確な方向性を持って業界を牽引するトップリーダーたちが、今後の不動産業界の進路を語る特別企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、長崎を拠点に不動産管理業を展開する株式会社福徳不動産の代表取締役社長であり、同社が開発した不動産管理システム「Realsaber(リアルセーバー)」を展開するSKYWALKER株式会社の代表取締役社長も務める福島卓氏です。大和ハウス工業での営業経験を経て、実務経験を経ずに副社長へ就任という異例のキャリアを歩んできました。自社開発システム「Realsaber」で業界に新風を吹き込む同社の取り組みについて、詳しくお話を伺いました。
実務経験を経ずに歩んだ経営者への道
まずは福徳不動産に入社されるまでの経緯と、入社後のキャリアについてお聞かせください。
▲株式会社福徳不動産 代表取締役社長/SKYWALKER株式会社 代表取締役社長 福島 卓
大学卒業後、大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス工業)に入社し、3年半ほどアパートの建築営業に従事していました。営業の現場で多くの経験を積む中で、「このまま同じ環境でキャリアを重ねていくことが、自分にとって本当に良いのだろうか」と考えるようになり、将来について見つめ直すようになったんです。転職も選択肢のひとつとして検討していましたが、ちょうど父が創業した福徳不動産がまだ10年も経っていない時期でもありました。
大和ハウス工業時代に感じていた課題意識や、「こうしたらもっと良くなるのではないか」という想いを自分の手で形にできる環境は、家業である福徳不動産ではないかと考え、入社を決意しました。入社当時は、社員数50〜60人ほどの組織でしたが、現在は170人規模まで成長しています。
福徳不動産の沿革と現在の事業規模について伺えますでしょうか。
祖父が福徳商事という会社を70年前に設立し、その中に不動産部がありました。その後、父が不動産部を法人化し、現在の福徳不動産を設立しました。
本拠地は長崎で、主に長崎県内で売買、賃貸、管理のほか、新築マンション企画、商業店舗(ドラッグストアなど)の事業も展開しています。
実務経験を経ずに副社長、そして社長に就任されたとのことですが、珍しいキャリアの歩みですね。
賃貸契約などの現場実務を担当した経験はありません。ただし、これは会長の方針によるもので、経営と実務は求められる役割が異なるという考えに基づいています。
会長は「社長の仕事は現場業務を行うことではなく、組織全体の方向性を示し、最終的な意思決定を行うことにある」と考えていました。現場の業務に深く関わるよりも、会社全体を俯瞰しながら判断する立場であるべきだ、という考え方です。
その方針のもと、入社時から副社長として経営に携わり、約1年〜1年半後に社長に就任しました。
「好きこそものの上手なれ」を体現するマネジメント
マネジメント方針について詳しく教えてください。社員が自分で部署を選べる制度について、具体的にどのように運用されているのでしょうか?

当社では、「好きこそものの上手なれ」という考え方を大切にしています。まずは入社後に基本をしっかり身につけてもらい、そのうえで自分の興味や得意なことを軸にやりたい仕事へ挑戦できる環境を整えています。
人事から一方的に配属を決めることはほとんどなく、社員自身がキャリアを選択する仕組みです。毎年人事異動のタイミングがあり、一定のレベルに達した社員は面談を通じて希望を伝え、目指す業務内容に応じた部署へ異動できます。具体的な部署名で希望を出す社員もいれば、「こういう役割に挑戦したい」と役割ベースで希望を伝える社員もいます。
また、若手社員が多い賃貸部門では、育成にも力を入れています。経験を積んだ本社社員が各店長と連携し、研修プログラムを設計。実務研修と座学研修(委員会形式)を組み合わせ、繁忙期を除いて月に複数回実施しています。
若手社員が多い中で、長期就業をどのように考えていますか?
若い社員が多いこともあり、それぞれの人生設計を尊重する風土があります。福徳不動産でキャリアを重ねる道もあれば、新たな環境に挑戦する道や独立という選択肢もある。その中で「ここで働きたい」と自然に思ってもらえる会社でありたいと考えています。
そのために大切にしているのは、常に新しいことに挑戦でき、成長を実感できる環境であること。そして社内コミュニケーションが円滑で、働きやすい環境が整っていること、さらに努力が正当に評価され、報酬にしっかり反映されることです。こうした条件が揃うことで、結果として長く活躍してもらえると考えています。
長崎市場での圧倒的な強み
福島社長が考える、長崎市場の特徴について教えてください。

長崎全体では人口が減少している一方で、中心部の人口は大幅に増加しており、不動産価格はこの20年でおよそ2倍に上昇しています。
長崎は斜面地が多く、平地は限られています。福徳不動産ではその中でも平地の物件に特化し、斜面地の案件についてはお受けしていません。平地は南北に縦長に広がっており、エリアの選定が事業戦略上の重要なポイントになっています。
入居率98.7%という高い水準を維持できている要因は何でしょうか?また、貴社の事業内容と成長の要因についても教えてください。
サブリース物件の入居率は98.7%、全管理物件を合わせても約95%と非常に高い水準を維持しています。その背景には、長崎中心部への人口集中が続いていることが大きく影響しています。
オーナー様とのリレーションについては、大規模なオーナー会などは実施せず、基本的に個別対応を重視しています。年に一度、社員紹介や組織体制の変更などをご案内する程度に留めています。一方で、複数棟を保有されているオーナー様や大規模投資を行っているオーナー様には、特別なご案内を行うなど、関係性に応じた対応も行なっています。
会社の成長要因としては、会長が営業活動に積極的に取り組み、新築マンションの受注を拡大してきたことが挙げられます。当社は建設会社ではありませんが、建設コンサルティングの立場から建設会社を紹介し、その後の管理までを一貫して提案するビジネスモデルで事業を拡大してきました。商業店舗事業においても、土地の取得段階から関与し、建築受注やBM(ビルマネジメント)までを手がけています。
業界の課題を解決する「Realsaber」の誕生
IT化・DXに取り組むようになった背景を教えてください。既存システムにはどのような課題があったのでしょうか?

入社当時から『Forbes』などのビジネス誌を読み、海外の動向にも関心を持っていました。アメリカではZillowをはじめとした不動産テック企業が次々と台頭していましたが、当時の日本にはそのような存在はほとんどありませんでした。5〜10年後には日本でも同様の動きが起こるだろうと考え、福徳不動産としても早い段階から、デジタル化に取り組む必要があると感じていました。社歴が比較的浅い当社が、他社と同じことをしていては差別化が難しい。そこで強みを作る手段として、デジタル領域に注力する方針を打ち出しました。
当時利用していた既存システムは、機能の不足を補うためにパート社員を配置する必要があり、業務負担が大きい状況でした。また、他社サービスとのAPI連携も十分に進んでおらず、管理戸数の増加に比例して業務工数が膨らんでいく構造的な課題も抱えていました。こうした状況を抜本的に解決するため、ゼロから自社開発に踏み切る決断をしました。
基盤としてSalesforceを選んだ理由は、その高い拡張性と汎用性にあります。コスト面だけを見れば他にも選択肢はありましたが、将来的な発展性や実現したい機能の幅を考えた時に、最も自由度の高いプラットフォームがSalesforceでした。初期投資が大きくても、理想とする仕組みを本気で形にできる環境を選ぶことを重視しました。
開発体制と開発期間について詳しく教えてください。
外部の専門家に頼るのではなく、社員を中心に社内メンバーだけで議論を重ねながら開発を進めてきました。
福徳不動産にはもともと情報システム部があり、父の代から在籍している社員に加え、社長就任後に採用した経験者がいたことが大きな強みでした。まず実務経験のある技術者を採用し、その後に新卒社員を迎えて育成していく形で、開発体制を構築していきました。
2019年にSalesforceを導入し、本格的な開発をスタート。完成までには3〜4年を要しました。App Exchangeへの登録にあたっては認証取得にも時間がかかりましたが、現在はi-SPとの並行運用を進めている段階です。2026年の1月〜2月を目処に並行運用を終了し、業務の約9割を「Realsaber」へ移行する予定です。なお、特殊処理が必要な一部の業務は引き続きi-SPで運用していきます。
「Realsaber」の開発コンセプトと機能について教えてください。
▲「Realsaber」
開発当初から、将来的な外販も視野に入れて設計を進めてきました。社内利用だけを前提にした仕組みではなく、外部にも提供できるレベルのシンプルさと汎用性を備えていなければ、本当の意味で使いやすいシステムにはならないと考えたからです。実際に販売できるかどうかは当時まだ分かりませんでしたが、「自社でも使え、世の中でも通用するものを作る」ことを目標に開発を進めました。
不動産管理の基幹システムは会社規模によって求められる機能の幅が大きく異なります。管理戸数が小さいうちは業務パターンも限定的ですが、1万戸を超えてくると対応すべきケースが急激に増え、システムの柔軟性が業務効率を左右します。「Realsaber」は、福徳不動産の規模(管理戸数1万戸超)での運用を前提に開発しており、現在ご提案している企業も2万戸規模の会社が中心です。一方で、機能を標準化しているため、規模の大小を問わず活用できる設計になっています。
機能面では、退去時の精算、家賃の集金・送金データ作成、各種請求書作成、工事関係の処理など、不動産管理会社の管理部門が担う主要な業務をシステム内で一貫して完結できる構成となっています。
他社システムとの違いはどこにありますか?
大きな特長のひとつは、さまざまな外部サービスとAPIで柔軟に連携できる点です。不動産会社ごとに導入しているツールや運用フローは異なるため、特定の環境に縛られず接続できる拡張性を重視しています。
また、不動産会社としての実務経験をもとに開発しているため、現場の細かな業務フローに配慮した設計になっている点も強みです。いわば、“痒いところに手が届く”機能の積み重ねによって、全体として使いやすいシステムを目指しています。もちろん、まだ発展途上の部分もあり、機能面は継続的に改善を重ねています。
さらに現在は、AI機能の開発にも取り組んでいます。「Realsaber」の機能を拡張する形で、SalesforceのAgent Forceを活用したAI機能の実装を進めています。入居者対応など、これまで人手で行っていた業務の一部を自動化することを目指しており、社内の専門メンバーが中心となって開発を進めているところです。
営業・サポート体制はどのように構築しているのでしょうか?
現在は事業立ち上げ期にあたり、社員のネットワークやSalesforceからのご紹介を通じて案件をいただいている段階です。無理な営業活動を行うのではなく、ご縁のある企業様との信頼関係を大切にしながら、着実に導入を進めています。
サポート体制については、自社だけで完結させるのではなく、全国にパートナー企業のネットワークを構築していく計画です。サポートと一口に言っても、製品機能に関する技術的な対応、操作方法などの基本サポート、実務に関わるデータ処理支援、さらにはAPI連携などのシステム面での支援まで、複数の領域があります。それぞれの特性に応じて役割を分担できる体制づくりを進めています。
ITベンダー企業だけでは不動産実務の細かな運用までは把握しきれない場合もあるため、福徳不動産が持つ現場知見と連携しながら、実務に即したサポートを提供できる体制を整えていきます。
パートナー企業との連携構想についてはどのようにお考えですか?
今後、導入企業が増えてきた段階で、企業同士をつなぐネットワークの構築を目指しています。単なるシステム提供にとどまらず、企業間での情報共有や送客など、事業面での連携が生まれる関係性を築ければ理想的だと考えています。
また、導入企業の中からパートナーとして協力いただく体制づくりも進めています。不動産会社が新たに導入を検討する際、ベンダーの説明だけでなく、実際に活用している企業の声を聞けることは大きな安心材料になります。現在は鹿児島の企業様に導入いただいており、今後パートナーとして連携を深めていく予定です。
今後の連携予定としては、オーナー様向けサービスや賃貸仲介分野などを想定しています(賃貸仲介では現在イタンジと連携)。そのほかにも、双方にメリットのある分野については、業界のさまざまな企業と積極的に連携したいと考えています。営業面、管理面の両面から協力関係を広げていく方針です。
地域密着×デジタル化で描く未来
地域貢献・官民連携の取り組みについて教えてください。

これまでに長崎県との官民連携による再開発プロジェクトに2回取り組んできました。直近では2026年1月、隣接する諫早市において約2万坪規模の再開発プロジェクトが採択されています。
本プロジェクトは主に県営住宅の再開発を軸としたもので、敷地の大部分を県が所有しています。その中で福徳不動産は、遊休地などを活用した賃貸住宅の建設や、ドラッグストアの誘致などを担当。他企業も参画し、温泉施設を含む複合的な開発エリアとなる計画です。第1弾として、長崎市中心部にあった県営住宅の再開発もすでに実施しています。
今後10〜20年後の福徳不動産について、どのようなビジョンをお持ちでしょうか?
基本的な方向性は変わりません。長崎・佐賀の2県においてシェアを高めていく、いわば「深く、狭く掘り進める」地域密着型の戦略をこれからも継続していきます。
そのうえで、収益性の向上を図るために管理戸数の拡大を進めると同時に、デジタル化による業務効率の向上をさらに追求していきます。管理規模が拡大するほどに効率性が高まり、結果として持続的な成長につながる。そうした事業基盤を確立していきたいと考えています。
「Realsaber」・SKYWALKERとしての展望についてもお聞かせください。
今後は、日本全国の不動産管理会社の中で、価値を感じていただける企業へ着実に導入を広げていきたいと考えています。従来の基幹システムのようにベンダー主導で完結するのではなく、不動産会社同士が補完し合いながら発展していくエコシステムの構築を目指しています。
その一例として、GMO ReTechが提供する「GMO賃貸DX」とのデータ連携もスタートしました。「Realsaber」と「GMO賃貸DX」を接続することで、管理データの二重入力を削減し、情報の一元化を実現しています。これは単なるシステム連携ではなく、管理業務の効率化とデータ活用を同時に進める取り組みです。現在は連携開始を記念したキャンペーンも展開しており、両サービスの導入を後押しする体制を整えています。
その一環として、導入企業にパートナーとして参画していただき、不動産会社同士でシステム活用の知見や課題解決の方法を共有できるネットワークづくりを進めていきます。同じ業界だからこそ生まれる情報交換やつながりが、新たなビジネス機会につながる可能性もあります。将来的には、そうした関係性が広がる業界内のプラットフォームのような存在を目指していきたいと考えています。
また、導入提案の際には、福徳不動産の社員とSKYWALKERのメンバーが同行する体制を取っています。不動産実務を深く理解している立場と、システムの専門性を持つ立場の両方が同席することで、現場に即した具体的な議論が可能になります。実務の細かなニュアンスは経験に基づく理解が欠かせないため、この相談しやすさという点でも大きな特長になっています。
まとめ

実務経験なしで副社長に就任し、社長へ。異例のキャリアを歩んできた福島社長が率いる株式会社福徳不動産は、長崎という地域に深く根ざしながら、最先端のデジタル技術で業界に新風を吹き込んでいます。「好きこそものの上手なれ」を体現するマネジメントで社員の自主性を重視し、サブリース入居率98.7%という圧倒的な実績を築いてきた同社。その強みを活かして自社開発した不動産管理システム「Realsaber」は、不動産会社が作った不動産会社のためのシステムとして、業界に新たな選択肢を提供しています。
とりわけ印象的だったのは、「不動産実務を本当に理解している人と不動産会社が話せることが重要」という言葉に象徴される、実務を知る者だからこそできるサポート体制の構築です。ITベンダーと不動産会社の間に立ち、導入企業同士をつなぐネットワークを構築することで、業界全体の底上げを目指す姿勢は、多くの不動産会社にとって参考になるものでした。地域密着と全国展開、アナログとデジタル。一見相反する要素を高いレベルで両立させながら、福徳不動産は今後も成長を続けていくことでしょう。
本記事取材のインタビュイー様

株式会社福徳不動産 代表取締役社長
SKYWALKER株式会社 代表取締役社長
福島 卓 氏
大和ハウス工業で建築営業を経験後、父が経営する福徳不動産に入社。実務経験なしで入社時から副社長に就任し、約1年〜1年半後に社長に就任という異例のキャリアを歩む。「社長の仕事は判断すること」という会長の方針のもと、デジタル化を差別化戦略の軸に据え、Salesforceベースの不動産管理システム「Realsaber」を自社開発。長崎・佐賀での地域密着戦略と全国展開を両立させ、不動産業界に新たな価値を提供している。
会社紹介
株式会社 福徳不動産
https://www.fukutoku-estate.com/
株式会社福徳不動産は、70年前に設立された福徳商事の不動産部を法人化した会社として、長崎を拠点に不動産管理業を展開。売買、賃貸、管理に加え、商業店舗(ドラッグストア等)の事業も手がけています。サブリース入居率98.7%、全管理物件でも95%という高い入居率を誇り、長崎県との官民連携再開発プロジェクトも複数実施。自社開発の不動産管理システム「Realsaber」を展開し、不動産会社による不動産会社のためのシステムとして全国の不動産管理会社へ提供。「深く、狭く掘り進める」地域密着戦略とデジタル化による効率化を両立させ、持続的な成長を目指しています。






