【リーダーインタビュー】秋田住宅流通センター 北嶋 暢哉 様|元教育者が描く地方不動産の未来図。人口減少に立ち向かう「学び続ける組織」の創り方
不動産業界の変化と将来性について、業界全体を幅広い視点で捉え、明確な方向性を持って業界を牽引するトップリーダーたちが、今後の不動産業界の進路を語る特別企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、秋田県で住生活事業を展開する株式会社秋田住宅流通センターの代表取締役社長 北嶋暢哉様です。不動産の現場力を強みに地域密着で信頼を築いてきたこれまでのお取り組みや考え方についてお話を聞きました。
教育者から経営者へ―52歳で決意した業界転身
まずはご経歴についてお聞かせください。不動産業界に携わるきっかけや転機となった出来事はどのようなものでしたか?
▲株式会社秋田住宅流通センター 代表取締役社長 北嶋 暢哉 氏
私が不動産業界へ転身した経緯は、継承を求められたわけでも、自ら志願したわけでもありません。当時私は52歳で教員として働いており、教頭2年目を迎えていました。以前父に手伝いを申し出た際は「来なくていい」と断られていたため、家業に関わることはないと思っていたのです。しかしある日、80歳間近となった父が仕事で苦労している様子を見て再び手伝いを提案したところ、向き直って今度は「うん」と答えられました。
しかしその後、私たち親子の間には1ヶ月間会話が途絶え……。同居していながらも、「余計なことを聞いてしまったのではないか」と後悔し、自分なりの心の整理に時間を要しました。教育は天職だと信じて取り組んできた仕事でしたので、気持ちの整理は最後まで完全にはつきませんでした。
転機となったのは、1ヶ月後に行われた人事異動希望調査でした。教頭を辞めることで教育委員会に大きな迷惑をかけることを考慮し、11月頃に退職の意思を表明しました。ただし、校長と事務長以外には一切伝えず、友人にも秘密にして新聞発表まで隠し通しました。
当時の心境はどのようなものだったのでしょうか?また、代表に就任されてから、そういった不安を解消するまでにどのくらいかかりましたか?
当時は不安に満ちていました。自分の将来が見えず、不動産業界についても全く分からない状態でした。商売の才能があるかどうかも疑問でしたし、生徒とは異なる社員との関わり方についても手探り状態でした。すべてが未知数の中でのスタートだったと思います。
代表就任時、私は組織構造の大幅な見直しを行いました。当社は、課長職は多数いるものの部長職が少ない状況でした。そこで各部署において核となる社員を見定め、「この部署は君を」「この部署は君を」という形でリーダーを指名し、部署の責任者として配置しました。現在、その時に抜擢した人たちが会社の中心となって活躍してくれています。
この組織変更は、明確な経営課題の認識から生まれたものです。会長が社長を務めていた時代は、すべての指示が会長から直接社員に伝達される仕組みでした。しかし私は「そうではなく、ある程度の方針は示しますが、各部署で自ら考えて行動してほしい」と考えていました。そのため部署のリーダーを決定し、「やり方は君たちに任せる」という形で実行責任を与えました。
組織変革にはハレーションがつきものですが、私はこれを解決するため頻繁に相談会議を開催しました。どのように進めるかについて話し合う場を設け、私の考えていることや実現したいことが伝わるよう、継続的にコミュニケーションの機会を作りました。この取り組みにより、組織全体の理解と協力を得られたと考えています。
現在、部長に昇格した方々が秋田住宅流通センターの中核として大活躍しており、この組織変革が成功したことを実感しています。
企業理念について、どのように事業に反映されているか教えてください。
▲現在の企業理念
当初は「人と人、人と街を結ぶ」という企業理念を掲げていましたが、最近は「感謝の輪でしあわせを結ぶ」という表現に変更し、社員とはこの新しい理念で進めています。以前の「豊かな未来の実現」という表現は分かりにくく解説が必要でしたが、「感謝の輪でしあわせを結ぶ」の方が実際の戦略に落とし込みやすいため、現在は主にこちらを使用しています。
この理念の背景には、「働くことを通し、みんなに幸せになってほしい」という考えがあります。当初は心豊かになることも含めて「豊かな未来」という表現を使用していましたが、実践面を重視し「感謝の輪でしあわせを結ぶ」に集約しました。
感謝の輪は、相続サポートセンターや家族信託といった当社の全事業につながっています。実は、私が教職を離れ不動産業界に入るきっかけの一つに、会長が自宅でよく「感謝の輪」の話をしていたことがありました。そのような会社であればいいなと思い、現在もその感謝の輪を大切にし続けています。
「感謝の輪」について具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか。また「感謝の輪」を戦略に活かした結果、「これは良かった」と感じた具体的なエピソードはありますか?
感謝の輪の構成員は、まず入居者の方々です。「いいお部屋が見つかった」と喜んでいただけること、オーナー様には「満室になってよかった」と喜んでもらえること、関わる業者の方々にも「いい仕事ができた」と喜んでもらえること、そして何より社員が「ありがとう」と言われて喜んでいる、これらすべてが感謝の輪なのです。この輪をどんどん強く大きくしていこうと話しています。
様々な課題に対して、この理念が自然に浸透していることを実感しています。たとえば高齢者の住居問題や孤独死の問題を考える際も「オーナー様も困るよね、保証人の遺族も困るし、みんな困るよね」という視点で、それをどう解決するかを自然に考えるようになりました。
また、イノベーションを通じて喜んでもらえることも大きな要素です。とくに変化を感じるのは、社員が「どちらか一方だけが利益を上げる」「一方だけが儲かる」「一方だけが喜ぶ」といった提案を選ばなくなったことです。
これは特定のエピソードというより、組織全体に自然に浸透した結果だと感じています。意図的に教え込んだわけではなく、理念が組織に根付くことで、社員が自然とそのような判断をするようになりました。
理念を社員の主体的な行動に結びつけるために、どのような仕組みを作られているのでしょうか?
まだ途中段階ですが、昨年初めて事業発展計画書を作成し、それを冊子として社員に配布しました。社員は何かの際に時々見返していますし、私も計画書の内容を繰り返し伝えることで理念の浸透を図っています。
次回の事業発展計画書は10月に作成予定です。この計画書は対外的には開示せず、内部限定の内容も含まれているため社内資料として扱っています。
社員成長が会社成長の原動力―独自の人材育成戦略
相続サポートセンターの運営を通じて得られた具体的な学びや成果はありますか?

相続サポートセンターの立ち上げ当初は、私自身が相続セミナーを定期的に開催し、オーナー様や地域の方々に向けて音頭を取っていました。すると興味深いことに、オーナー様が私ではなく社員に相談に行くようになったのです。それを見た社員たちも「自分たちも勉強したい」と言い出し、「社長はどこでどうやって覚えたのですか」と聞いてきましたので、私の学習方法を教えました。
現在、当社には相続診断士の上級資格者が3人、相続診断士が8人ほどいて、かなり人数が増えました。今年もさらに2人が研修に入る予定です。これが非常に大きな成果だと感じています。社内全体がそのようなムードになりました。
私自身は入社前に不動産関連の資格は何も持っていませんでした。その後、賃貸不動産経営管理士、上級相続支援コンサルタント、日本FP協会のAFP、宅地建物取引士、CPMを取得しました。このうち次の資格は1年間猛勉強して取得しました。2月にFP、5月に相続支援コンサルタント、10月に宅建士、11月に経営管理士という順序でした。
夜は時間の確保が難しかったので、早朝の時間を活用しました。若い頃から朝方でしたので朝5時起床は苦になりませんでした。
代表に就任されてから、とくに力を入れて強化された分野はありますか?タウン情報誌を手がけられていますが、マーケティング面にも力を入れられているのでしょうか?
私は会社の各分野を少しずつ強化していますが、最初に取り組んだのは働き方改革でした。会社に来て真っ先に思ったのは、「働き方があまり良くない」ということです。
マーケティングは、タウン情報事業で必要になるため勉強しました。名刺には記載していませんが(タウン情報の名刺には書いてあります)、マーケティングに関する資格を取得し、ブランドとは何かやブランディングについて学びました。
ロゴなどのデザインにも意図的に強弱をつけているのですが、これは当社の社員向けに配慮したものです。
就任当初、夜遅くまで働くような労働環境があったということでしょうか?
そのとおりです。残業も多かったですし、社員を大切にするにはもう少しやり方があると感じました。給料面もそうですし、労働時間の削減、有給休暇の取得促進、繁忙期の対応方法など、思いついたところをどんどん改善していきました。中小企業だからこそ積極的にできたと思います。
社員が家族に「うちの会社本当にいいよ」と言えるようになってほしいと願っています。実際に一度退職した社員が「うちがいい」と戻ってきたこともあります。
地元クラブのブラウブリッツ秋田の活動について教えていただけますか?
ある方の結婚式でブラウブリッツ秋田の社長の隣に座りました。私が前職でサッカー部の顧問をしていたことがあり、サッカーの話に熱が入りました。翌日、当時の教え子を連れ、2人で来社されました。喜んでスポンサーになりました。現在、教え子2人がジュニアのコーチをしており、常務も教え子なのでスポンサーとしての役目を果たしたいと強く思っております。
様々な広告・協賛方法がある中で、横断幕を掲げる方法なども考えましたが、私はマッチスポンサーを選択しました。試合一つをオーナー様、入居者様、社員みんなで応援し、楽しく盛り上げていきたいと思ったからです。また、個人的に生ビールを飲みたいですので、いつも7月のホームゲームのマッチスポンサーになっています。
そのときはグループ会社のタウン情報がブースやキッチンカーと交渉し、その日だけ利用できる特別な商品券を準備します。住宅流通センター発行の商品券(2025年は1枚400円券)をオーナー様、入居者様、社員に複数枚配布し、「これでビール飲んでね」「何々食べてね」という形で楽しんでもらっています。業者さんにも喜んでもらえる企画を作りながら活動を続けています。
アナログからデジタルへ―段階的DX推進の現実
デジタル化やIT化について、入社時と比べてどのような取り組みを進められていますか?

会社に入って最初に驚いたのは、紙の多さでした。データベースではなく、カードがたくさんありました。「これが無くなったらどうするんだろう」と心配になったのがIT化を始めるきっかけでした。しかし、進捗は非常に遅く、一歩進むのに何年もかかっています。社員の中には慣れ親しんだ方法を変えたくないという気持ちが強かったです。
IT化やデジタル化で、これまでに成功したと手応えを感じている取り組みはありますか?
グループウェアを7年ほど前に導入した際は、当初「なぜOutlookも開いて、こちらも開かなければいけないのですか」と大きなブーイングがありました。しかし現在では、Outlookよりもグループウェアの方が社内情報に限られるので使いやすいと感じ、好まれるようになりました。まだ、機能のすべてを使いこなせていないので、もう少し時間が必要だと思います。
社内の申請やワークフローは、以前は紙で回していましたが、現在は電子化が進んでいます。ただし、まだ一部では紙での業務フローが残っています。
最初の頃は会長が書類をチェックしていたため紙でなければならなかったのですが、会長が書類確認から離れるようになったことで、電子化が大幅に進みました。会長は数字を見る目が素晴らしく、違和感があると「あ、これおかしい」とすぐに発見してくれていました。長年の経験による勘で、数字の異常を素早く察知する能力は本当に素晴らしいものでした。
申し込み業務の電子化は現在どの程度進んでいるのでしょうか?
申し込み業務は少しずつ電子化が始まっています。契約についても電子契約を開始していますが、オーナー様が電子契約を嫌がる場合は従来通り紙で行うため、オーナー様の許可が必要な状況です。しかし、全体的には少しずつ進んでいます。
更新契約はまだ紙で行っています。DX化するには意識改革と専用アプリなどが必要になってくると考えています。
売買は、基本的に電子化が進んでおり、募集から契約までの流れは電子化されています。ただし、売買契約書はまだ紙で作成しています。これは内容が複雑で、説明も注意深く行わなければならないためです。とくに住宅ローンの場合、金融機関がまだ電子契約に慣れていない部分もあります。フラット35などでは電子契約になってきていますが、全体的には徐々に進んでいく段階だと思います。
施工管理において、どのような管理システムを活用されていますか?
アンドパッドなどのサービスを使ってDXを進めていますが、なかなか思うように進んでいません。業者さんがなかなか使ってくれないのと、50代の方々がどうしても「紙の方がいい」と言われるため、苦労しています。
とくに一人親方のような方にお願いしている場合は厳しい状況です。お嬢さんがいる場合は代わりに操作してくれることもありますが、親方自身に使ってもらうのは難しいのが現状です。
今後、さらに強化したい、または新たに取り組みたいと考えているDXの分野はありますか?
一番力を入れたいのはオーナーCRMです。現在、皆さんに使ってもらえるよう取り組んでいます。みんなを巻き込んで運営をスタートさせる方針で進めています。
現在のフェーズとしては、まず皆さんに履歴を入力してもらうことから始めています。「忘れないうちに、一日の終わりになど自分なりに時間を作り入れていこう」と声をかけ、システムに慣れてもらうことを重視しています。慣れていないと入力作業が進まないためです。
まずは紙のデータを入力する期間を設け、その後不要なものを削除していくという段階的なアプローチで進めています。5年後にはきっと、みんなが「やっていて良かった」と思えるようなデータが蓄積されると期待しています。
地域課題と向き合う―秋田の未来を支える企業戦略
社員教育においてとくに重視している部分について、改めて詳しく教えていただけますか?

教員だった経験から、まず社員に学ぶ楽しさを知ってもらいたいと思っています。知識を増やしたり、経験を積んだりすること、そして何より資格を持ったりすることで自信がつくことを知ってもらいたかったのですが、最初はなかなか学習に向かってもらえませんでした。
最初の抵抗は「個人の資格に会社が補助するのはおかしいのでは」という声から始まりました。しかし私は「会社としては宅地建物取引士が増えることが会社の強さになる」と説明し、「勉強したい人を応援しよう」ということで、ユーキャンのような教材費の補助を始めました。日建学院は20万円ほどするため全額は厳しいですので、会社で決めた額を補助しています。
これを続けていて気づいたのは、社員の成長が会社の成長と本当に同じだということです。社員が成長すると会社も成長することを実感し、ますます力を入れています。経理から「研修費の経費が増えている」と言われますが、「これは経費ではない、投資だ」と答えています。
宅地建物取引士になると資格手当も出ますが、そもそもこの資格を持つことで仕事のレベルが上がり、根本的な成長につながります。社員の成長を見ているのは本当に楽しいです。
現在、みんな積極的に勉強したがっており、「どこどこの研修に行きたい人」と募ると多くの人が手を挙げます。人数を限定せざるを得ないため、「2人ぐらいで」と制限することもあります。複数の人が手を挙げた時は、何を見たいかをしっかり質問して選考しています。
採用において、入り口が重要だと思いますが、とくに気をつけている点はありますか?
7、8年ほど前から新卒採用を始め、現在は新卒採用に最も力を入れています。10月から内定者研修を半年間しっかり行い、さらに1ヶ月半ほどの集中研修を実施して、5月下旬から配属するという流れで人材育成をしています。
先輩社員にとって新人教育は通常業務の他に行うことになりますし、どう教育して良いかわからない状態からのスタートでしたが、数年続けていると、新卒で入社した社員が指導できるようになり、指導することでさらに成長できることに気づいたようです。
新卒採用の取り組みの中で、とくに「これをやってよかった」と感じていることはありますか?
内定者の頃から交流の場を設けたり、内定者研修の振り返りをZoomを使って行ったりしています。同期のつながりが非常に強く、悩みを同期同士で支え合ったり相談したりしています。同期の結束が強いため、若い人の離職率も非常に少ないです。
退職理由は、結婚して県外に転居するケースがほとんどです。最近では奥さんが仙台に転勤するため旦那がついていくという、従来とは逆のパターンもありました。本業において賃貸物件の退去理由として「県外で就職するため」という理由が目立つようになってきており、人口減少と人手不足の進行を非常に心配しています。
世の中ではテレワークも考えるようにとなっていますが、どうしても現地での対応が必要なため難しい面があります。地域に根ざした事業が中心のため、地域密着戦略が基本となっています。
地域貢献として取り組まれている就職支援事業について、グループ会社との連携も含めて詳しく教えていただけますか?
就職支援事業を始めたのは比較的早い時期で、秋田の子どもたちの県外就職が多いことがきっかけです。その理由の一つが秋田の企業を意外と知らないことでした。テレビコマーシャルで流れている会社は知っていても、製造業などはほとんど知らない状況でした。まず知ってもらわなければ選んでもらえないだろうと考え、秋田県の企業を紹介する事業を始めました。
最初は40社ほどの紹介でしたが、昨年は110社を超え、今年は121社の企業を紹介します。
コロナ前には公立高校の体育館でブースを出して体験エキスポを開催していましたが、コロナで高校への立ち入りができなくなり中止していました。それから4年が経った今年、当社の会社説明会に来た高校生に「当社をどこで知りましたか?」と尋ねたところ、4年前のエキスポに参加した企業の名前だけを覚えていて来てくれたとのことでした。効果があると感じましたので、来年はエキスポを復活させようと考えています。
「ママブロック」という課題があります。これは母親が「あの会社は薦めない」と就職を阻止することで、当社でも社員が普通に「ママブロックされる」という表現を使うほど一般的です。最近では入社式に親御さんを連れてくる会社もあると聞いて、時代の変化を実感しています。そのため、保護者やお母さんたちにも知ってもらえる冊子やホームページを作成し、宣伝していく必要があると感じています。
若い世代に向けてメッセージをお願いします。
私が若い世代に一番伝えたいのは「働くって何?」ということを考えてほしいということです。中学生の前でも高校生の前でも、必ず「何のために働くのですか」から話を始めます。学生たちとはそういった話がしやすいと感じています。
中学生からのフィードバックでは、「今からスタートです。これからちゃんと考えてね」という形で終わることが多いのですが、途中で意図的に突っ込んだ質問をします。たとえば「お金のため」と答えた中学生には「なんでお金が必要なの?」と問いかけますと、「幸せになりたい」という方向に話が進みます。そこで切り上げて「今日はたくさんの会社が来ていますから、いっぱい話を聞いてね」と促します。
こうした話は先生からはなかなか聞けない内容だと思います。元教頭だった人が社長をしていて、そんな話をすると学生たちも興味津々聞いてくれます。昔から校長先生の話は長くて難しいものですが、自分のこととして考えるよう工夫して話をしています。
持続可能な成長モデルの構築
秋田のまちづくりにおいて、企業としてどのような役割を果たしていきたいですか?

秋田市の最大の課題は人口減少と人材不足で、これはすでに深刻化しています。秋田で働きたい人が本当にいない状況で、これは私たちだけでなく、不動産業界だけの問題でもありません。秋田県全体で行政も含めてみんなで考えていかなければならない大きな課題です。
その中で私たちの立ち位置を考えますと、グループ会社では就職支援事業を行っていますし、秋田で働く人をどう応援していくかが重要です。同級生たちには「みんなで採用しよう、とにかく真剣に採用しよう」と声をかけていますが、なかなか大変な状況です。知事も市長も頑張ってくれていますので、私たちも頑張りたいと思います。
先ほどのマッチスポンサーなども、楽しい取り組みの一つです。秋田に暮らしていて楽しいと思ってもらわなければなりません。県外から戻ってきてくれる人も重要ですが、今いる人たちや子どもたちにもその楽しさを伝えることも大きなポイントだと考えています。
今後の事業展開はどのようにお考えでしょうか。
今後の事業展開は、まず不動産業の中の賃貸、売買、管理を含めて本業をしっかりと強化したいと思います。地域での取り組みとしては、グループで幼稚園・保育園向けにフリーマガジンを発行し、小学生には柔道大会の応援、高校生には就職支援、そして相続相談まで、生まれてから亡くなるまでの幅広い事業を展開しています。
ただし、まだすべてが埋まりきっていません。中学生向けの取り組みや、もう少し様々な年代・層に働きかけるものをやりたいと考えています。幼稚園から小学生、中学生、高校生まで一貫して秋田の良さに気づいてもらい、将来的に戻ってきてもらったり、出て行かないでもらったりという、発想での取り組みを進めたいと思います。
最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。
特別に秋田住宅流通センターへの就職を勧めるということではなく、みんなが幸せを目指して人生を進んでほしいと思っています。そのお手伝いができればと考えています。
まとめ
▲インタビュアー:GMO ReTech株式会社 執行役員 日髙 健
今回のインタビューでは、通常の不動産会社経営者とは異なる視点をお持ちの北嶋社長から貴重なお話を伺うことができました。単に事業を運営するだけでなく、地域の課題を自らの問題として捉え、積極的に解決に取り組もうとする姿勢は非常に印象的でした。
教育者としての経験を活かした人材育成への取り組み、「感謝の輪でしあわせを結ぶ」という理念の実践、そして秋田の人口減少という社会課題に対する真摯な向き合い方など、言葉だけで終わらせることなく具体的な行動に移されている点がとくに印象に残りました。このような経営哲学と実践力を兼ね備えた経営者の方とお話しする機会は稀であり、大変有意義なインタビューとなりました。
本記事取材のインタビュイー様

株式会社秋田住宅流通センター
代表取締役社長 北嶋 暢哉 氏
元教育者という異色の経歴から秋田住宅流通センターの代表取締役に就任した経営者。教頭職を務めていた52歳の時、父親の事業を継承することを決意し、不動産業界へ転身。「感謝の輪でしあわせを結ぶ」という企業理念のもと、社員教育や働き方改革に積極的に取り組み、組織変革を実現。秋田の人口減少という地域課題に真正面から向き合い、グループ会社での就職支援事業やブラウブリッツ秋田のマッチスポンサーなど、地域貢献にも力を注ぐリーダーである。
会社紹介
株式会社秋田住宅流通センター
https://www.ajrc.co.jp/
株式会社秋田住宅流通センター(AJRC)は、秋田市・横手市を中心に、賃貸仲介・管理、不動産売買、資産活用や相続サポート、リフォームまでをワンストップで提供する総合不動産企業です。「感謝の輪でしあわせを結ぶ」を掲げ、地域密着で入居者とオーナー双方を伴走支援。秋田市トップの管理戸数を強みに、駅前から郊外までの複数店舗に加え、不動産売買部・法人営業課を展開し、安心の住まいづくりと持続可能な賃貸経営の実現に取り組んでいます。





