【リーダーインタビュー】杉本 浩司様|「不動産屋がここまでやるか!」が合言葉。地域密着の強みを活かし、八王子エリアでNo.1の地位を確立。
不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。
今回インタビューを行ったのは、株式会社エスエストラストの代表取締役社長である杉本 浩司様です。地域密着型の不動産管理と仲介事業を中心に成長を遂げてきた同社は、八王子エリアで管理戸数と店舗数でNo.1を達成しています。今回のインタビューでは、同社の成長の背景や地域社会に対する熱い想いについて詳しくお話を伺いました。
- 1大村社長からの助言が経営のバトンを受け取るきっかけに。自主管理のオーナー様に訪問を重ね、管理契約を獲得した経験が大きな財産。
- 1不動産業界を選ばれたきっかけや、社長に至るまでの経緯について、杉本様ご自身のキャリアをお聞かせいただけますでしょうか?
- 1これまでのキャリアのなかで分岐点となった出来事などはございますか?また、株式会社エスエストラストでの、印象的な経験や重要だった決断についてもお聞かせいただけますでしょうか?
- 2八王子を盛り上げるために、様々な取り組みへ挑戦。その結果、管理戸数と店舗数で「エリアNo.1」を達成。
- 2八王子エリアを盛り上げるために「八王子Jリーグプロジェクトの立ち上げ」や「地域イベントの協賛」「地元ネタ看板」「大学での特別授業」「ブラジルダイニングノッサ」など多岐にわたる取り組みを展開されています。八王子エリアに対してどのような想いをお持ちなのか、それぞれどのようなことをされているのかをお聞かせください。
- 2貴社は、八王子エリアでNo.1を目指され、管理戸数や店舗数において実際にエリアNo.1を達成されています。エリアでのトップを実現することができた要因について、ぜひお聞かせください。
- 2貴社は「全従業員とその家族の幸せを物心ともに追求し、業界の質的向上、地域社会に貢献する」という理念を掲げられています。この企業理念に込められた想いについて、詳しくお聞かせください。また、カルチャーブックを作成し、社内にその理念を浸透させるために力を注いでいらっしゃいます。カルチャーブックを作成された背景や目的についても、ぜひ詳しくお聞かせください。
- 2不動産賃貸管理業務はまだまだアナログが主流かと思います。そんななか、不動産業界もようやくDX化へと進み始めました。杉本様は不動産業界のテック化、DX化について、どのようなお考えをお持ちでしょうか?課題などはございますか?
- 3合言葉は「不動産屋がここまでやるか!」。地域との連携をより一層深め、管理戸数10,000戸を目指す。
- 3杉本様が社員の方々と一緒に働くうえで、何を大切にされていますでしょうか。
- 3杉本様、また株式会社エスエストラストとして、今後のビジョンや想いをお聞かせください。
- 4まとめ
- 5本記事取材のインタビュイー様
- 6会社紹介
大村社長からの助言が経営のバトンを受け取るきっかけに。自主管理のオーナー様に訪問を重ね、管理契約を獲得した経験が大きな財産。
不動産業界を選ばれたきっかけや、社長に至るまでの経緯について、杉本様ご自身のキャリアをお聞かせいただけますでしょうか?
高校を卒業した後、私はプロサッカー選手になる夢を追い求めてブラジルに渡りました。現地のサンパウロ州の2部チームとプロ契約を結ぶことができましたが、競争の激しい環境の中で思うような結果を残すことができず、試合での出場機会も限られていました。プロ契約によって就労ビザが得られ、長期間滞在して挑戦を続けることはできたものの、自分の力不足を感じて帰国することを決意しました。
日本に戻ってからも、プロサッカー選手への夢を捨てきれず、Jリーグチームのプロテストを受け続けました。しかし、望んだ結果は得られず、精神的に厳しい時期が続きました。半年ほどそんな日々を送る中で、父から声をかけられ、父親が経営するエスエストラストで仕事を手伝うようになりました。最初は退去立ち合いなどの簡単な仕事から始め、少しずつ業務に慣れていきました。
その後、会社の役職者が退職し、会社は、父、私、事務スタッフ2人という小規模な体制での運営を余儀なくされました。私は自主管理のオーナー様に訪問を重ね、管理契約を獲得するための営業活動を必死に行いました。この努力が実を結び、少しずつ契約が増えていき、現在のエスエストラストの基盤を築くことができました。今管理している物件の半数近くが、当時私自身が開拓したオーナー様です。この経験が会社を成長させる大きな力となりました。
現在の社員のほとんどは、私が入社してから採用した人材であり、新たな人材とともに、会社が成長していきました。
これまでのキャリアのなかで分岐点となった出来事などはございますか?また、株式会社エスエストラストでの、印象的な経験や重要だった決断についてもお聞かせいただけますでしょうか?
これまでのキャリアを振り返る中で、大きな分岐点がいくつかありました。最初の分岐点は、ブラジルでプロサッカー選手として挑戦し、その後日本へ帰国した時期です。ブラジルではプロ契約を結んだものの、試合出場の機会は限られ、競争の厳しさと自分の力不足を痛感しました。この経験は私にとって重要な学びとなり、厳しい状況でも自分を律し、逆境に立ち向かう力を養いました。これらの経験は後に不動産業界での経営においても役立つ精神的な糧となりました。
その後、私の人生を大きく変える転機が訪れました。それは、当社がアパマンショップのフランチャイズ加盟を進める中で、同社の大村社長から助言をいただいた時です。ある日、大村社長に決算書を見せた際、「君が社長になったほうがいい」と言われました。当時、私は新規出店に必要な資金を借り入れるために奔走していた最中でしたので、この言葉は私に考えるきっかけをくれたのです。
それから父に「このままでは会社が潰れかねない」と直談判しました。最初は厳しい反応を受けましたが、一か月後、父は私に銀行印を手渡し、「お前が社長をやれ」と任せてくれ、私が29歳の時に経営のバトンを受け取りました。この決断は私のキャリアの中で最も大きな転機であり、エスエストラストを更に成長させるための原動力となりました。
八王子を盛り上げるために、様々な取り組みへ挑戦。その結果、管理戸数と店舗数で「エリアNo.1」を達成。
八王子エリアを盛り上げるために「八王子Jリーグプロジェクトの立ち上げ」や「地域イベントの協賛」「地元ネタ看板」「大学での特別授業」「ブラジルダイニングノッサ」など多岐にわたる取り組みを展開されています。八王子エリアに対してどのような想いをお持ちなのか、それぞれどのようなことをされているのかをお聞かせください。
当社が八王子で展開する様々な取り組みは、地域を活性化させるために生まれたものです。例えば、地元ネタ看板を始めたきっかけは、金沢にある「のうか不動産」へのベンチマーク視察でした。苗加社長は、ユニークな看板で話題性を持たせ、地元に密着した企業活動を行っており、そのスタイルに感銘を受けました。苗加社長から許可をいただき、私たちも八王子で面白い看板を設置したところ、地域メディアにも取り上げられ、広告効果が高まったと感じています。看板のコンセプトは、八王子の活気や文化にふさわしい「面白さ」を追求することです
また、私はもともとサッカー選手としてのキャリアを目指していました。プロとしての夢は一度断念しましたが、サッカーに対する情熱は失われていません。そのような背景と地元を盛り上げたい思いを込めたプロジェクトとして、八王子にはこれまでブラジル料理を提供する店がなかったことから、ブラジル文化とサッカーをテーマにしたブラジル料理店「NossA」を開店しました。「NossA」は単なる飲食店にとどまらず、地域の人々が集まり交流する場となり、さらにサッカー関係者が集うきっかけにもなりました。この活動を通じて、八王子に拠点を置くサッカーチームの経営の話が持ち上がり、最終的に1からプロサッカーチームを立ち上げることになり、「FC NossA八王子」を設立しました。飲食店やサッカーチームの運営は一見、不動産業とは無関係に見えますが、実際には地域企業やスポンサー企業から不動産に関する相談を受けることも少なくありません。このように、地元への深い愛情とコミュニティ活動が結果的に当社の不動産事業にも良い影響を与えています。
さらに、地域イベントへの協賛や、地元の大学での特別授業の実施を通じて、地域の若者や学生と接し、彼らに八王子の魅力を伝えることにも力を入れています。これらの活動を通じて、地域社会の中で「不動産業を超えた価値」を提供し続け、八王子の発展に貢献できるよう、心がけております。
▲エスエストラスト カルチャーブック
貴社は、八王子エリアでNo.1を目指され、管理戸数や店舗数において実際にエリアNo.1を達成されています。エリアでのトップを実現することができた要因について、ぜひお聞かせください。
当社は、八王子を心から愛し、この地域に密着して活動することを常に大切にしてきました。八王子は「八王子愛」という言葉があるほど、個性的でユニークな街です。地域に対する情熱を持って日々の業務に取り組んでいます。かつて、他エリアへの進出を検討した時期もありましたが、地域で圧倒的な存在感を示すために特定のエリアに集中する戦略を選びました。
このような決断のきっかけとなったのは、アパマンショップの大村社長とブラジルへ視察旅行に行った際の経験です。その時、大村社長から「何でNo.1になるのか」という質問を投げかけられました。この問いかけを受けて、広範囲で成功を目指すのではなく、特定の地域でのNo.1を目指すことの方が現実的であり、私にとっても意義があることだと気づきました。日本全国でNo.1を目指すのは難しいかもしれないが、八王子という地域に絞ることで実現可能な目標が見えてきたのです。
その後、当社は八王子に特化した戦略を展開し、地域のオーナー様や住民との関係を深めていきました。地域の人々と信頼関係を築き、「お客様に信頼され、尊敬され、一生のお付き合いをしたい」という想いに基づいた誠実な対応を心がけました。また、現場での迅速な対応や、地域のニーズに合わせたサービスを提供することによって、他社との差別化を図りました。特に、情報のアンテナを高く張り巡らせ、地域の動向に敏感に対応することで、地元住民のみなさまにとって信頼できる存在となるよう努めました。こうした努力が実を結び、管理戸数や店舗数において八王子エリアNo.1の地位を確立するため、邁進中です。社員一人ひとりも、地域密着型の姿勢を共有し、日々の業務に取り組んでいます。これらの活動が会社の成長とエリアでの地位を支えていると感じています。
貴社は「全従業員とその家族の幸せを物心ともに追求し、業界の質的向上、地域社会に貢献する」という理念を掲げられています。この企業理念に込められた想いについて、詳しくお聞かせください。また、カルチャーブックを作成し、社内にその理念を浸透させるために力を注いでいらっしゃいます。カルチャーブックを作成された背景や目的についても、ぜひ詳しくお聞かせください。
▲エスエストラスト カルチャーブック
当社のカルチャーブック作成のきっかけは、アパマンショップの大村社長から「経営計画書はありますか?」と尋ねられたことに遡ります。当時は、経営理念や方針を体系化したものは存在していませんでした。このアドバイスを契機として、全社員に配布できる経営計画書を作成し、毎年更新するようになりました。しかし、よりデザイン性を持たせ、社員のみならず新卒採用時や銀行、関係会社にも配布できる内容にするために、現行のカルチャーブックの形へと進化しました。
このカルチャーブックは、会社が目指す姿や経営方針、そして大切にすべき価値観や過去の取り組みを網羅しており、社員全員に理解してもらいたい要素をまとめています。これにより、会社全体の理念が浸透し、単なるトップダウンの指示ではなく、社員一人ひとりが自発的に行動する自走型の組織を目指しています。
「全従業員とその家族の幸せを物心ともに追求し、業界の質的向上、地域社会に貢献する」という理念は、社員だけでなくその家族までを含めた幸福を目指すことを表しており、京セラを真似た経営理念です。社員が心身ともに充実していることで、業務に対しても誠意を持ち、お客様に対しても質の高いサービスを提供できると考えています。また、業界の質的向上と地域社会への貢献を追求することで、単なる利益追求型の企業ではなく、地域と共に成長し続ける企業としての在り方を実現しようとしています。
▲エスエストラスト カルチャーブック
不動産賃貸管理業務はまだまだアナログが主流かと思います。そんななか、不動産業界もようやくDX化へと進み始めました。杉本様は不動産業界のテック化、DX化について、どのようなお考えをお持ちでしょうか?課題などはございますか?
▲インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人
不動産賃貸管理業務は長い間アナログな手法が主流であり、業務プロセスの多くは紙ベースや対面でのやり取りに依存していました。しかし、近年、不動産業界にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せており、当社もその流れに対応しています。具体的には、電子申込書の導入やアウトソーシングを取り入れ、生産性の向上、コスト削減などに努めています。また、アパマン系列のシステムは、長年当社の業務運営において中心的な役割を果たしてきましたが、オーナー様との関係強化を図るため、オーナー様向けのCRMツールの導入など、アパマン系列以外の最新テクノロジーも積極的に取り入れています。
合言葉は「不動産屋がここまでやるか!」。地域との連携をより一層深め、管理戸数10,000戸を目指す。
杉本様が社員の方々と一緒に働くうえで、何を大切にされていますでしょうか。
▲エスエストラスト カルチャーブック
当社の合言葉である、「不動産屋がここまでやるか!」を大切にしています。不動産業は飲食業とは異なり、日々頻繁にお客様と接するわけではなく、引越しなどの人生の節目で初めて接点を持つことが多い業界です。そのため、地域社会の一員として信頼を築くことが最も重要だと考えています。社員一人ひとりが「不動産屋がここまでやるか!」と驚かれるような情熱を持ち、地域に根ざした取り組みを通じて地元の人々に「いいね!」と共感される会社でありたいと願っています。
当社では、サッカーや地域振興などの企画を通じて、社員が自発的に考え、行動し、挑戦する文化を育むことができました。私自身も命令形ではなく、「やるぞー」という前向きなメッセージを社員に伝え、共に汗を流す伴走者としての立場を取っています。私の役割は、現状に満足せず、少し先の未来像を示しながら社員と共に進むことです。
社員には、ただの指示待ちではなく、自ら考えて行動できる力を身につけてほしいと考えています。そのため、ティーチングとコーチングを組み合わせ、気づきを促し、成長を支援しています。これは、かつてサッカーチームで試合に出る選手も出られない選手も、監督やスポンサーも一丸となって「優勝」を目指した経験から学んだことです。目標達成時の一体感や喜びを共有する仲間の絆は非常に大きなものです。会社という組織でもこのような思いを共有し、地域への貢献を果たしたいと考えています。
「面白い」「楽しい」と感じられる職場環境、社員同士が仲良く地元を愛する企業風土、そして「不動産屋がここまでやるか!」というカルチャーを維持しながら、社員が心地よく働ける環境を作り続けること。それが、社員と共に目指すビジョンの実現に繋がると信じています。
杉本様、また株式会社エスエストラストとして、今後のビジョンや想いをお聞かせください。
当社としての今後のビジョンは、管理戸数10,000戸を達成することです。現在の管理戸数は約6,500戸であり、この目標を実現するには多くの挑戦が伴います。特に、東京23区とは異なり、八王子エリアは限られた市場であり、その中でシェアを拡大していくことは容易ではありません。また、八王子エリアには比較的大学が多いですが、少子化の影響で学生人口の減少も進んでおり、これも我々が直面する課題の一つです。
しかし、このような状況でも目標を達成するために、地域との連携をより一層深め、オーナー様や入居者様へのサービス向上を図っていきたいと考えています。地域に密着し、八王子の皆様にとって頼れる存在であり続けることで、管理戸数の増加を実現したいと考えています。私たちは、単に規模を拡大するだけでなく、地域のニーズに応える形で成長していくことを大切にしています。今後も、地域密着型の不動産会社として八王子の発展に寄与し、さらなる信頼と価値を提供し続けていきます。
まとめ
杉本社長の語る強い地域への思い、そして「不動産屋がここまでやるか!」という挑戦的な合言葉が、株式会社エスエストラストを独自の存在へと成長させてきたことが印象的でした。ブラジルでのプロサッカー選手時代から日本帰国後の会社運営に至るまで、逆境を乗り越えてきた経験は、現在の経営にも生かされています。エスエストラストは、管理戸数の拡大やオーナー様との信頼構築において地域に密着した戦略を展開し、その成果を着実に積み上げています。さらに、カルチャーブックや情報発信を通じて社内外での透明性を高める努力は、社員の自発性を促し、全体の業務効率を高めるだけでなく、地域社会全体への信頼構築にも寄与しています。杉本社長が描く未来像と、地域との共生を大切にする経営理念のもとで、地域に貢献し続けるエスエストラストの発展が楽しみです。
本記事取材のインタビュイー様
株式会社エスエストラスト
代表取締役社長 杉本 浩司 氏
1976年⽣まれ。1995年⾼校卒業間もない頃にブラジルへサッカー留学。サンパウロ州2部チームとプロ契約。その後帰国しJリーグプロテストを数チーム受けるも⽟砕。1999年株式会社エスエストラストに⼊社。2005年より代表取締役社⻑に就任。趣味はサッカーとゴルフ。特技はポルトガル語。サッカー⼩僧3⼈の男の⼦の⽗でもある。
会社紹介
株式会社エスエストラスト
HP:https://ss-trust.co.jp/
株式会社エスエストラストは、1992年に設立され、東京都八王子市に本社を構える不動産管理・仲介の総合サービス企業です。同社は、八王子エリアに特化した戦略を掲げ、地域密着型のビジネス展開でエリアNo.1の地位を確立しています。管理戸数は約6,500戸に達し、地域のオーナー様や入居者様に対し、誠実で迅速な対応を心掛けています。「全従業員とその家族の幸せを物心ともに追求し地域社会に貢献する」という理念のもと、エスエストラストは地域の発展に寄与し続けています。新たな目標として管理戸数10,000戸の達成を掲げ、地域のオーナー様や入居者様との信頼をより深め、八王子エリアでのさらなる成長を目指しています。