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【リーダーインタビュー】田村 穂様|リーディングカンパニーとして、家主様、入居者様の更なる満足度向上を目指す。実現の鍵は「従業員ファースト」。

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

今回インタビューを行ったのは、ハウスコム株式会社の代表取締役社長執行役員である田村 穂様です。同社は、M&AやDX化を通じて成長を加速させています。また、「従業員ファースト」に基づき、従業員エンゲージメントを高めることでお客様へのサービス向上を図っています。今後のビジョンや業界全体の発展に向けた展望についてもお話しいただきました。

目次

歴代の社長との繋がりが社長を目指すきっかけに。困難を乗り越えた経験が何よりの財産。

大学在学中に宅地建物取引士を取得されたきっかけや社長に至る経緯など、ご自身の歩まれてきたキャリアをお聞かせください。

大学在学中に宅地建物取引士の資格を取得したのは、昔から不動産業界に対する興味があったからです。また、高校時代の同級生が不動産会社に就職することが決まっており、その影響もありました。

最初に就職したのは投資用マンションの営業の会社でした。その後、1994年にハウスコムに入社し、町田店の営業担当からスタートしました。当時はまだ20店舗ほどしかなく、店長やエリアマネージャーを経て、入社から約10年後に取締役を経験し、2014年に社長に就任しました。

これまでのキャリアの中で、社長を目指すきっかけとなった出来事はなんでしたか?

歴代の社長たちと近い距離で仕事をしていた経験です。ハウスコムがまだ小さな会社だった頃は、社長との距離が非常に近く、その影響力を身近に感じることができました。特に、大東建託の創業者である多田勝美さんがハウスコムの社長を務めていた際に、直接仕事をする機会がありました。この経験が私にとって非常に貴重であり、社長としてのビジョンやリーダーシップを学ぶ大きな機会となりました。

今までの仕事の中で、最も苦労した経験や印象に残っている出来事をお聞かせください。

最も苦労し、印象に残っていることは、大きな赤字を社員全員で協力し、1年で黒字化したことです。当時、親会社である大東建託の出身で、当社の社長であった中島敏行さんからその年度の最終日である3月31日に直接「今期は黒字化できそうだ」と連絡を受けた時は、「会社の成長に貢献することができた」と感じた瞬間でした。今でも非常に印象に残っています。

黒字化を達成するために、急速に拡大していた店舗数を半分ほどに減らしました。その過程で、共に働いていた同僚が大東建託に戻ったり、退職したりすることがありました。また、今では考えられませんが、給料の減給も実施しなければならない状況でした。そういった困難を乗り越えての黒字化だったので、本当に嬉しかったです。

他社管理物件の取り扱い開始が転換点。更なる成長のために、仲介店舗の拡大を進める。

取扱物件数は54.5万件、お客様からのお問い合わせ件数は約64.5万件、仲介件数は 7.7万件と素晴らしい実績を残されています。賃貸業界のリーディングカンパニーになれたポイントをお聞かせください。

賃貸業界のリーディングカンパニーとなれたのは、2000年頃から他社管理物件の取り扱いを開始したことが大きな要因です。特に大東建託と競合する会社との取引を拡大し、大東建託依存から脱却できたことが大きな転換点でした。当時の社長である多田勝美さんから「より利益を高めるためには何ができるのか?」と問われた際に、他社管理物件の客付けが議論され、正式に会社の方針として承認されました。

この取り組みを実現するまでには多くの苦労がありました。他社管理物件を取り扱うために各社様との信頼関係の構築や、社内の体制整備など、数々の課題を克服しなければなりませんでした。しかし、この課題を乗り越えることで、現在の取扱物件数や仲介件数を達成するための基盤が整いました。

他社管理物件の取り扱いを始めたことで、お客様に対する提案の幅が広がり、より多様なニーズに対応できるようになりました。このことが、お客様からの信頼を得ることに繋がり、問い合わせ件数の増加や仲介件数の向上に大きく寄与しました。現在では、多くの管理会社と物件情報の連動をさせていただいており、そのおかげで素晴らしい実績を残すことができているのです。

2021年には「株式会社宅都」、2023年には「株式会社シーアールエヌ」を子会社化されています。今後もM&Aは継続されていくのでしょうか。

今後もM&Aを通じて仲介店舗の拡大を図っていきたいと考えています。これにより、全国各地で質の高いサービスを提供する体制を強化していきます。管理の強化についても検討していますが、当社には管理のノウハウが不足しているため、管理会社のM&Aには高いハードルがあります。しかし、収益性を多様化し、従業員の働く場所を広げるために、管理の強化は必要です。現在の仲介件数を管理物件で網羅することは難しいですが、大東建託からノウハウを学びながら取り組んでいます。

これまで、家主様からの管理依頼は大東建託に任せていましたが、2年前から自社での管理に挑戦しています。この取り組みにより、将来的には管理業務の効率化と品質向上を目指します。まずはここからスタートし、徐々に管理業務を強化していきます。

さらに、仲介店舗も引き続き増やしていく予定です。大阪ハウスコム(2021年にM&Aした宅都の仲介部門)は前期に単体で黒字化を達成し、統合プロセス化は順調に進んでいます。この成功を基に、今後も店舗を増やし、さらなる成長を目指していきます。

家主様、入居者様の満足度向上の鍵は「従業員ファースト」。今期はこのキーワードで従業員エンゲージメントの向上に取り組む。

昨年は「ハウスコム25周年家主様感謝イベント」「家主様とのエリア別スモール家主様会」を開催されたと拝見しました。重点方針の「家主様との接点拡大」についてお聞かせください。

昨年設立25周年を迎えた当社は、家主様に喜んでいただくためのイベントを行いたいと考え、東京、愛知、大阪で計5回にわたる家主様向けの大規模イベントを開催しました。また、それとは別に、より密な対話を目指して「エリア別スモール家主様会」も開催しました。「エリア別スモール家主様会」はコロナ前から開催しており、とても好評をいただいています。今年度は50回を超える開催を予定しており、多くの家主様にご参加いただきたいと思っています。

今後も家主様との接点を拡大していき、数多くの家主様へ感謝の気持ちをお伝えするだけでなく、賃貸経営に役立つ情報をお届けしていきます。

ビジョンやロゴなどに込められた想いについて詳しくお聞かせください。

当社は賃貸仲介業をメインに行っており、その地域の情報をしっかり収集し、お客様に提供することが大切だと考えています。会社のロゴは、新しい生活を始める方々にとっての「地域の玄関」としての役割を果たしていきたいという当社の想いをイメージしたものです。地域に密着したサービスを提供することで、地域社会に貢献し、家主様と入居者様双方の満足度を高めることを目指しています。新しい生活を始める方々に安心して住まいを提供できるよう、地域の情報を活用し、最適な物件をご提案させていただいています。

また、家主様に対しては、地域のニーズや市場動向を踏まえたアドバイスを行い、物件の価値を維持および向上させるためのサポートを提供しています。家主様と入居者様双方の満足度を高めることが、最終的には当社の利益向上にも繋がると考えています。

貴社の既存サービスに「こういう付加価値をつけたい」といった構想があればお聞かせください。

当社では、お客様の満足度向上だけでなく、従業員視点でのアプローチを重視しており、今期は「従業員ファースト」がキーワードです。従業員エンゲージメントを高めることで、お客様への提供価値も向上すると考えており、働きやすい環境を整え、成長を支援する取り組みを強化しています。

お客様への具体的な新しい提供価値として、入居後のサービス展開が重要だと考えています。従来の売り切り型のビジネスモデルから、継続的な関係を築くリテンションモデルへの転換が必要です。特に都心部では、管理会社と仲介会社が別会社であることが多く、入居後の数か月間は仲介会社がお客様の要望に対応するケースもあります。お客様からは、仲介会社と管理会社は一つの不動産会社として見られることも多く、私たちが垣根を超えてお客様に向き合うことが、お客様満足度向上に繋がるのではないでしょうか。

引用元:ハウスコム

従業員が接客に集中できる環境を整えるためDXを促進。協議会を通して業界全体の効率化も目指す。

現在の不動産賃貸マーケット全体をどのように捉えていらっしゃいますか?

▲インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人

賃貸マーケットは売買マーケットに比べて取引件数は多いですが、1件あたりの収益性が低いことが大きな課題です。この構造を改善するためには、高付加価値サービスを提供することで収益性を高めていくことが必要不可欠です。

また、当社は外国人留学生の支援を行っていますが、今後は外国人労働者の増加も予想され、これが賃貸市場に大きな影響を与えるでしょう。外国人労働者の増加により、多様なニーズが生まれ、それに対応する新しいサービスが必要となります。これが賃貸不動産業界全体の発展に寄与することが期待されます。

貴社は業界内でもいち早くDX化に向けた取り組みをされてきました。現在取り組まれていることや今後の展望などをお聞かせください。

当社では、従業員の体験向上を目指してDXを推進しています。これにより、業務効率を高め、従業員が集客や接客に集中できる環境を整えています。店舗スタッフがより少ない人数で最適な接客をするために、お客様が来店するまでの業務のDX化と契約書の電子化を進めています。現在は店舗スタッフが契約書対応に多くの時間を費やしているため、電子化が進むことでお客様と接する時間が増え、サービスの質が向上します。

また、生成AIの活用にも取り組んでおり、他企業との連携を通じて業務効率化を図っています。これにより、お客様へのサービス向上に注力できるようになることを目指しています。今後もDXを進めることで、従業員とお客様の双方にとってより良いサービスを提供していく方針です。

引用元:ハウスコム

田村様は賃貸管理リーシング推進事業者協議会の会長も務めていらっしゃいます。協議会の取り組み内容や今後の展望についてお聞かせください。

賃貸管理リーシング推進事業者協議会では、賃貸住宅管理業法を軸としたリーシングのルール策定及び順守等により、業界全体の健全な発展に寄与することを目的に、仲介会社と管理会社の役割分担のあり方や業務効率向上を実現する方法について議論しています。仲介会社と管理会社が異なる場合、入居直後のお客様からの問い合わせ対応は、仲介会社が行った方が顧客満足に繋がる場合もあると考えます。

例えばお客様が入居してすぐに、部屋の不具合があった場合、契約をした仲介会社に相談しても「管理会社に連絡してください」と言われてしまう場合が多いです。
入居後、一定の期間は仲介会社が責任をもってこうした相談に対応することができれば、お客様は、新生活をより快適にスタートさせることができます。これを実現するため役割分担を議論しています。
こうした取り組みによって、お客様から見た不動産業界のイメージアップにも繋がると考えています。

会社としては「より良い顧客体験」の提供を。個人としては「業界全体の発展」を目指す。

田村様またはハウスコム株式会社として、今後のテーマや想いをお聞かせください。

ハウスコムとしての今後のテーマは、「従業員ファースト」の取り組みを通じて、全体としてお客様への提供価値を高めることです。従業員のエンゲージメントを向上させて、働きがいを感じながらいきいきとお客様に接することにより、良い顧客体験を提供することを目指していきます。

私個人のテーマは、様々な地域の不動産事業経営者と交流を深めたいと考えています。この交流を通じて、不動産業界全体に対する貢献を実現したいです。特に、賃貸管理リーシング推進事業者協議会などの活動を通じて、業界の発展に寄与し、社会に価値を提供することを目指しています。様々な視点を取り入れることで、業界全体の向上を図っていきたいと考えています。

まとめ

田村様とのインタビューを通じて、ハウスコム株式会社が如何にして賃貸業界のリーディングカンパニーとなったのか、その軌跡とビジョンを深く理解することができました。田村様は、歴代の社長との繋がりや困難を乗り越えた経験を通じてリーダーシップを培い、社長就任後はM&Aを積極的に進めることで企業の成長を推進しました。また、「従業員ファースト」を掲げ、従業員エンゲージメントの向上を通じてお客様への提供価値を高める取り組みを強化しています。DX化や生成AIの活用を通じて、効率的な業務運営と質の高いサービス提供を実現しています。これからも、田村社長のリーダーシップのもと、ハウスコム株式会社は賃貸業界の未来を切り拓いていくことでしょう。

本記事取材のインタビュイー様

ハウスコム株式会社 代表取締役社長執行役員
田村 穂 氏

1965年東京都生まれ。中央大学大学院戦略経営研究科を修了し、経営修士(MBA)を取得。大学在学中に宅地建物取引士の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年にハウスコムに入社。入社1年で店長に抜擢され、その後、常務取締役営業本部長を経験。2014年3月には社長に就任。2016年度には中央大学商学部の客員講師にも就任。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

会社紹介

ハウスコム株式会社HP:https://www.housecom.co.jp/

ハウスコム株式会社は、1998年の設立以来、賃貸仲介を中心に事業を展開しているリーディングカンパニーです。全国展開をしており、ハウスコムグループとして全国に賃貸仲介店舗を198店舗、FC43店舗を持ち、各地域に根ざしたサービスを提供しています。同社は、不動産テックを積極的に取り入れ、働き方改革と業務効率の向上を推進するとともに、EX(従業員体験)とCX(顧客体験)の最適な連携を追求することにより、リアル拠点と不動産DXのシナジーで「地域社会で最も人によりそう住まいのデザインカンパニー」を目指しています。

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