【リーダーインタビュー】村上 幸生様|オーナー様のニーズに寄り添い、win-winの関係を構築。「収益不動産の駆け込み寺」として、オーナー様の課題解決に努める。
不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。
今回インタビューを行ったのは、株式会社Con Spirito(コンスピリート)の代表取締役である村上 幸生様です。デジタル化の推進や新しい取り組みに対する前向きな姿勢、そしてオーナー様とのwin-winの関係を構築するための取り組みなどについてお話を伺いました。
- 1夢の実現を目指し、不動産投資業界へ
- 1不動産業界に飛び込むことになったきかっけや独立した経緯など、ご自身の歩まれてきたキャリアをお聞かせください。
- 2困っているオーナー様がいたら助けることができる不動産会社を目指し、日々の業務に取り組む
- 2貴社の強みをお聞かせください。
- 2「収益不動産の駆け込み寺」であることを理念に掲げていらっしゃいます。困っているオーナー様がいたら助けることができる不動産会社を目指しているとのことですが、その想いについて詳しくお聞かせください。
- 2家賃滞納率が高い、管理不全で建物がボロボロなど、他社が積極的に引き受けない物件の管理を引き受け、100棟以上の物件運営を正常化させた実績があると伺いました。なぜ、貴社はそのような物件の運営を正常化させることができるのでしょうか?
- 3お客様との繋がりで、積極的なデジタル化導入が可能に
- 3テレワークやRPAなど効率化に繋がる取り組みを業界内でいち早く取り入れています。こういった取り組みに積極的な背景をお聞かせください。
- 3デジタル化の取り組みは社内の人員で対応されているのでしょうか?
- 4管理会社の質を高め、管理会社の価値を理解してもらう必要がある
- 4金利の上昇や株価の動向を踏まえ、今後の不動産市場をどのように見ていますか?
- 4不動産管理の現場で直面している課題についてお聞かせください。
- 4不動産業界全体で感じている課題は何かございますか。
- 5社員の自主性を尊重し、会社全体で更なる高みへ
- 5貴社は社員教育にかなり力を入れていると感じます。教育に関する方針や、特に力を入れている点についてお聞かせください。
- 5トレーラーハウス、台湾支社設立、ホームステージングなど多くの新しい取り組みを実行されています。
- 6お客様の満足度が何より大事。お客様の満足度を高めるためには、社員の働きやすさが重要
- 6貴社のビジョンや将来の目指す姿についてお聞かせください。
- 6毎月の数値目標や中長期計画は設定されていないのでしょうか?
- 6村上様ご自身がチャレンジしていきたいことはありますでしょうか?
- 6最後に読者のみなさんへメッセージをいただけますか。
- 7まとめ
- 8本記事取材のインタビュイー様
夢の実現を目指し、不動産投資業界へ
不動産業界に飛び込むことになったきかっけや独立した経緯など、ご自身の歩まれてきたキャリアをお聞かせください。
私のキャリアは、金融機関勤務から始まりました。約3年間金融機関で勤務し、不動産担保ローンの融資業務や債権回収に従事していましたが、バーテンダーのアルバイトをしていた経験から、いつかは自分自身のバーを経営したいという夢を持っていました。その夢を実現するには資金が必要だったため、自分のスキルを最大限に活かして収入を得られる業界を考え、選択したのが不動産投資業界になります。
最初のステップとして、大手デベロッパーに入社し、マンション投資の営業及び管理職として3年間のキャリアを積みました。その後、ある出会いを通じて不動産投資会社の立ち上げに誘われ、創立メンバーとして参加しました。わずか3名でスタートした会社は、順調に成長し10年程で従業員数が100名を超える規模へと発展しました。
しかし、成長とともに「売上至上主義」の風潮が強まり、私の価値観とは合わなくなっていきました。私は、売上だけを追求するのではなく、持続可能なビジネスモデルを追求したいという想いから、17年前に株式会社コンスピリートを設立しました。
困っているオーナー様がいたら助けることができる不動産会社を目指し、日々の業務に取り組む
貴社の強みをお聞かせください。
当社の強みは、単に宅地建物取引士や建築士、CPM、そしてファイナンシャルプランナーなど、各種専門資格を持つスタッフがいるということだけではありません。長年の現場経験を積み上げてきた専門家たちがチームを形成し、オーナー様の課題解決に一丸となり取り組んでいることです。
一般的には、特定の専門家の意見が重要視され、様々な視点で課題を分析されることはあまりありませんが、当社では異なります。多様な専門家の集合知を生かし、オーナー様の希望する利回りや要望に応えるための包括的な提案をさせていただいています。多様な視点から最適なソリューションを提供できることが当社の強みです。
「収益不動産の駆け込み寺」であることを理念に掲げていらっしゃいます。困っているオーナー様がいたら助けることができる不動産会社を目指しているとのことですが、その想いについて詳しくお聞かせください。
不動産業界に限らず言えることかもしれませんが、不動産業界はオーナー様との関係がwin-winでなければならない、という考え方が少し欠けているように思います。この業界は、しばしば、「このようにすれば利益が出る」という一方的な提案が強い傾向にあります。サラリーマン時代にも、この点に大きな疑問を抱いていました。
一方で、IT業界のお客様と仕事をしていると、彼らはまずお客様が何を求めているのか、どのような商品が適しているのかをしっかり考えています。そして、自分が提供する商品やサービスがどのようなお客様にとって価値があるのかを考慮することで、自然とwin-winの関係が築かれているのです。
この考え方を参考に、困っているオーナー様がいたら助けることができる不動産会社を目指し、「収益不動産の駆け込み寺」であることを理念に掲げました。賃管管理業務というのは不動産を保有する上で必ず必要になるものです。賃管管理業務を通じてオーナー様との信頼関係を築き上げ、その上で、オーナー様一人ひとりのニーズに合わせて柔軟に対応をさせていただき、長期にわたる関係性を築いていきたいと考えています。
家賃滞納率が高い、管理不全で建物がボロボロなど、他社が積極的に引き受けない物件の管理を引き受け、100棟以上の物件運営を正常化させた実績があると伺いました。なぜ、貴社はそのような物件の運営を正常化させることができるのでしょうか?
他社が積極的に引き受けない物件を当社が引き受け、物件運営を正常化させることは会社理念の実現だと考えています。
実際に物件再生プロジェクトを進める中では、業界での長年の経験が生きていると感じています。相談を受けた際は、問題がある管理会社にアプローチし、人脈や関係性を駆使して問題解決が出来た例もあります。また、オーナー様と当社の専門家との間で具体的な対話を重ね、資金不足に直面しているオーナー様に対して、限られた資源でどう対処するかを一緒に考えてきました。
大手の場合、すぐに売上につながるかどうかで物事を判断する傾向がありますが、当社は初期に赤字が出る場合でも、将来的にどう改善させていけるかを見据えたアプローチを取ります。最終的には、物件が再生することでオーナー様と当社の双方にメリットが生まれるwin-winの関係を築けることが、当社の強みです。
お客様との繋がりで、積極的なデジタル化導入が可能に
テレワークやRPAなど効率化に繋がる取り組みを業界内でいち早く取り入れています。こういった取り組みに積極的な背景をお聞かせください。
私は20代の頃からIT関連のお客様と多く接してきた経験があり、デジタル化に取り組むことに対して違和感は感じていませんでした。実際、不動産業界がどれだけデジタル化に後れを取っているかをお客様から指摘されることも少なくありませんでした。
不動産業界において、当社の取り組みが比較的早いと評価されることはありがたいですが、IT業界のお客様たちの視点からすれば、私は彼らの後を追っているだけに過ぎません。幸い、成功例や失敗例を直接聞くことができる環境にあるため、それらを参考にしながらスムーズにデジタル化を進めることができています。
デジタル化の取り組みは社内の人員で対応されているのでしょうか?
デジタル化の取り組みを始めた当初は、外部の力を借りる形で進めていましたが、実際にはその方法だけでは対応が難しいことが判明したため、現在は自社でエンジニアを採用しています。これにより、迅速にデジタル化の課題に対処できるようになりました。
当社でエンジニアの方を教育することは出来ないため、入社時にはIT系のお客様に研修をやっていただくケースもあります。当社は本当にお客様との繋がりに支えられていると日々感じています。
管理会社の質を高め、管理会社の価値を理解してもらう必要がある
金利の上昇や株価の動向を踏まえ、今後の不動産市場をどのように見ていますか?
私自身は過去のバブルやリーマンショックも経験しているため、不動産市場がいずれ転換点に達する可能性を常に意識しています。そのため、私が特に重要視しているのは、市場の転換期が訪れたときにどう対応するかです。その時期がいつになるかは予測が難しいため、市場が下落しても影響を受けないような賢い購入や運用戦略を継続的に提案したいと考えています。
金利の上昇は、特に区分マンションのオーナー様にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。区分マンションのオーナー様はサラリーマンの方も多いですが、0.5%程度の金利上昇があった際に耐えられるかどうかは、非常に重要なポイントです。市場の小さな変化から大きな変化につながることは過去にも見られたため、対策をしっかりと考えておく必要があるのではないでしょうか。
不動産管理の現場で直面している課題についてお聞かせください。
管理会社目線だと言われてしまえばそれまでなのですが、一部のオーナー様による管理会社の軽視が課題として挙げられます。安い手数料を優先する傾向がまだ根強く、価格競争に陥る状況は、私たち管理会社にとって避けたい事態です。こういった傾向は少しずつ改善の兆しは見えているのですが、管理サービスの質とその重要性をもっと認識していただきたいと願っています。この問題への意識改革は、まだまだ時間がかかるでしょう。管理会社の価値を広く理解してもらうには、引き続き努力が必要です。
また、法律の厳格化も急務だと考えています。最近では業務管理者の配置が義務付けられるなど、進歩はありますが、まだまだ不十分です。不動産管理業界全体の質を高め、より良いサービスを提供するためには、さらなる法律的な取り組みが必要だと感じています。
不動産業界全体で感じている課題は何かございますか。
不動産業界で最も重要な問題の一つがサブリース契約に関する問題です。特に借地借家法の下でサブリースが守られる状況にあり、これが業界全体にとって大きな課題となっています。サブリース契約によって管理会社が勝手に家賃を下げたり、契約の解除を避ける選択が可能になってしまっています。これは、サブリース会社が借地借家法によって保護されている現状が原因です。
多くのオーナー様が、家賃保証の魅力に安易に引き寄せられてしまっていますが、将来的に物件を売却しようとした際にサブリース契約が障壁となり、価格の低下や売却不能に陥るリスクがあることを理解していないケースが非常に多いです。
この問題に対処するためには、不動産投資の知識やノウハウがもっと広く普及する必要があります。現状では、「サブリース契約の解除ができない」といった相談が後を絶たず、多くの場合、基礎的な説明から始めなければならない状況です。サブリース契約に対して、管理会社が過度に保護される現在の法律体系には明らかな問題があり、この点については早急な見直しが求められています。
社員の自主性を尊重し、会社全体で更なる高みへ
貴社は社員教育にかなり力を入れていると感じます。教育に関する方針や、特に力を入れている点についてお聞かせください。
▲インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人
当社が行っていることはそれほど特別なものではありません。仕事を進める上で新しい学びや知識は必要不可欠だと考えているため、社員が知識を深め、成長できるよう、外部研修への参加を可能な限り支援しています。忙しい日々の中でも、自己啓発や学びに対する意欲を持つ社員に対しては、その環境を整えることに努めています。
例えば、外部の教育機関やセミナーへの参加に関しては、できるだけ経費として認める方針です。社内での教育だけでは視野が狭まりがちです。外部からの新たな知識を取り入れることで、より広い視野で物事を考えられるようになることが重要だと考えています。ただし、外部の情報を鵜呑みにするのではなく、得た知識をもとに自分たちの仕事にどう生かすかを考えるプロセスを大切にしています。
トレーラーハウス、台湾支社設立、ホームステージングなど多くの新しい取り組みを実行されています。
オーナー様にとって価値があり、社員にとって楽しく充実感を感じられるプロジェクトに挑むことを大事にしています。トレーラーハウス事業もその一例で、不動産会社という枠にとどまらず、どのような可能性があるかを探りながら、新しいアイデアを形にしています。
台湾支社の設立も同様で、どのようにすればオーナー様に最大のメリットを提供できるかを考え、それを実現するための一歩として進めました。当社の新しい取り組みは、決して私一人や経営陣だけのアイデアではありません。実際、毎月の1on1のミーティングを通じて、社員から様々なアイデアを収集し、それらを事業に反映させています。トレーラーハウス、ホームステージングも社員からのアイデアで生まれた事業です。
これらの新しい取り組みは、社員の意見や熱意があってこそ実現できるものです。アイデアを出した社員が直接プロジェクトを担う場合もあれば、そのアイデアを実現するために最適な人材を見つける場合もあります。当社は、社員の創造性と熱意を大切にしながら、常に新しい挑戦を続けていくことを目指しています。
お客様の満足度が何より大事。お客様の満足度を高めるためには、社員の働きやすさが重要
貴社のビジョンや将来の目指す姿についてお聞かせください。
当社は従業員数や売上といった具体的な数値目標を中長期で掲げることはしていません。もちろん、目の前の業績指標は重要ですが、大切にしているのは、現在当社のサービスを利用してくれているお客様の満足度です。また、当社で働く社員たちが、仕事に対して楽しみを感じられるかどうかも非常に重要です。企業文化として、「笑って話せる環境」を維持し続けることも大事にしています。
毎月の数値目標や中長期計画は設定されていないのでしょうか?
毎月の目標はありますが、ノルマとしては設けていません。社員は年間、4半期、そして月ごとの目標を持っており、これらの目標の達成度合いが翌年の給与に反映されます。
中長期的には5年先までの事業計画がありますが、市場の変動や業界の動向に応じて臨機応変に調整しています。そのため、従業員に対して中期経営計画を説明することはしていません。年に1回、今後1年間の目標については説明しています。
特に不動産業界では、ノルマを設定し「絶対に達成しなくてはいけない」となってしまうと、無理な営業活動に繋がってしまうため、そのような手法は採用していません。
村上様ご自身がチャレンジしていきたいことはありますでしょうか?
挑戦していることの一つに、「戦わない姿勢を貫く」ということがあります。お客様に対して対峙するのではなく、お客様に寄り添い、喜ぶサービスを提供しつつも、当社も適正な利益を得るというWin-Winの関係を目指しています。このアプローチで、従来の不動産会社よりも、利益や売上を伸ばせるかどうか、生涯を掛けて挑戦してみたいと思っています。
もう一つの挑戦は、リモートワークの継続と推進です。パンデミック以降、リモートワークを取り入れる企業が増えましたが、最近ではまたリアルな職場への回帰が見られます。当社もリアルでの対面を重視する声がありますが、リモートワークという新たに獲得した「武器」を捨て去ることなく、これを活かした新しい働き方を模索していきたいと考えています。
最後に読者のみなさんへメッセージをいただけますか。
「騙された」と感じる人たちは、メディアの情報に触れる機会が少ない傾向にあります。この時代、インターネットで検索すれば、ほとんどの情報が手に入ります。それにもかかわらず、「どうしてこれで大丈夫だと思ったのか」と問いたくなる場面に遭遇することもあり、この問題を何とかしたいと心から思っています。
ネットで簡単に調べられる今、過去のように「誰かが言っていたから」という理由だけで判断する時代ではありません。大きな買い物をする際には、しっかりと情報を調べ、自分で納得することが重要です。
メディアを通じて情報を得ている皆さんは、自ら積極的に学んでいる方々だと思います。
読者の皆さんには、このような情報をもっと積極的に発信し、周囲に広めていただきたいです。
また、それに見合った倫理観を持って業務を行う不動産会社の存在も必要です。真の不動産のプロフェッショナルとして、責任を持って行動することが求められています。私たちは、ただの「営業のプロ」ではなく、「不動産のプロ」として、業界をリードしていくべきだと考えています。
まとめ
株式会社Con Spiritoの村上幸生様とのインタビューを通じて、オーナー様への強いコミットメントを垣間見ることができました。村上様が語る「収益不動産の駆け込み寺」としての役割は、単にビジネスとして成功すること以上の価値を社会に提供しています。デジタル化の推進、社員教育への投資、そして新しい市場への挑戦は、業界の模範となり、多くの不動産会社に影響を与えることでしょう。Con Spiritoが築き上げていく未来は、不動産業界にとって新たな方向性を示すのではないでしょうか。
本記事取材のインタビュイー様
株式会社Con Spirito 代表取締役
村上 幸生 氏
1972年3月生まれ、東京都三宅島出身。金融機関で不動産担保ローンの担当を3年間経て、大手デベロッパーにてマンション投資の営業職・管理職を3年間経験。その後不動産投資会社の創立メンバーとして誘いを受け、役員に就任。2007年11月に不動産管理を核とする、株式会社Con Spiritoを設立。