紙の収支報告書からアプリへ|複数の連絡ツールを一元化し、定期報告業務を効率化した小菅不動産の事例
賃貸管理を軸に、仲介、工事、建築コンサル、事業用物件まで幅広く手がける株式会社小菅不動産。「お客様第一主義」を掲げ、地域密着型の強みを活かしながら、時代の変化に合わせたDX推進に取り組んでいます。
管理業法改正や人材確保の課題を背景に、『GMO賃貸DX オーナーアプリ』を導入しました。「周りが導入したから」ではなく、自社のタイミングを見極めた戦略的な選択。その背景には、デジタルとアナログのバランスを取りながら、業務の質を高めていくという明確なビジョンがありました。
導入の決め手から社内での準備プロセス、オーナーへの展開、そして今後の展望について、飯嶋様にお話を伺いました。
地域密着×専門性の高さが強み――小菅不動産の事業概要
貴社の事業内容や特徴について教えてください。

▲株式会社小菅不動産 取締役 飯嶋実 氏
飯嶋様:当社の事業は賃貸管理を中心に展開しています。空室が出た際には他社に仲介をお願いするだけでなく、自社の仲介部門でも募集を行い、賃料アップなどの提案も積極的に行っています。
さらに工事部門も自社で持っており、すべてが賃貸管理を軸にぶら下がっているような体制です。
工事部門を自社で持つ理由は、オーナーの利益を最大化するためです。リフォームを外部に任せた場合、出来上がったものが想定より賃料が取れなかったり、空室期間が長引いてしまったりすることがあります。
そうした失敗をなくすために、自社で工事を手がけることで、賃料を下げるのではなく横ばいもしくは上げていくことを目指しています。過剰に費用をかけすぎて元が取れなくなるオーナーも多いので、適切な投資判断をサポートしています。
また、相続コンサルや建築コンサルも手がけています。建築コンサルは少し独特なやり方で、一般的なメーカー紹介の提案とは逆のアプローチを取っています。
通常は「こんなデザインが可能です、費用はいくらです、収支が合うので建築しましょう」という流れですが、当社は全く逆から計算します。「この地域だったらいくらぐらいまで賃料が取れるのか」「建築費用はいくらかけられるのか」という逆算から入り、オーナーの要望も含めて市場調査を行います。その上で複数のメーカーに候補を出してもらい、プランを依頼して内容を精査し、オーナーに提示しています。
専門部署を設けているのはどのような目的からでしょうか?
飯嶋様:事業用物件については専門スタッフを設けています。契約書の条文や書式のフォーマット作成から、仲介、管理まで、すべて専門スタッフが担当しています。工事部門だけは住宅用と共通ですが、それ以外は完全に別部門として運営しています。
専門スタッフを設ける理由は、事業用物件は専門性が高く、トラブルが多いからです。物件ごと、顧客ごとに特約を作成し、一軒一軒オーダーメイドで対応する必要があります。そのため記載漏れなどのミスが起きやすく、専門スタッフに集中して任せることでミスを防いでいます。
また、法律的な知識も重要です。どのエリアでどんな業種の営業が可能かといった判断を誤ると、開業後にトラブルになるケースがあります。他社でそういった事例も聞いていますが、その損害賠償は誰が負担するのかという深刻な問題になりますので、事前にしっかりと確認することが必要です。
「お客様第一主義」という経営理念について詳しくお聞かせください。
飯嶋様:創業者が残した言葉は「公約と口約」です。口約束でも諾成契約として成立しますから、たとえ口約束であっても基本的には守らなければなりません。一つは契約書による「公約」、もう一つは口頭での「口約」。どちらも守らなければ信用を失うという考え方が、当社の「お客様第一主義」のベースになっています。
創業者は校長を退職してから会社を立ち上げたため、倫理観が非常に強い方でした。その精神を社員にも落とし込んでおり、「まず、お客様ありき」という考え方を常に徹底しています。自分たちが第一ではないということを、全員が意識しています。
具体的な例を挙げると、相場で8万円程度でしか貸せない物件を10万円で募集すれば、当社の仲介手数料や管理手数料も増えます。しかし、それを優先するのは違います。オーナーが利益を得れば、そこから手数料をいただいているわけですから、優先順位はオーナーが先という考え方です。
導入前の課題|紙の収支報告書と複数ツールでの連絡に手間
アプリ導入前はどのような課題を抱えていましたか?

飯嶋様:一番の課題は、紙の収支報告書でした。毎月郵送しているため確認が形式的になり、開封していただけないオーナーや、開封しても内容をしっかり確認していただけないケースがありました。セミナーやイベントの案内も同封しているため、情報が埋もれてしまうこともあります。
また、オーナーとの連絡のタイミングが合わないことも課題でした。勤務中の方も多く、地主の場合は畑で作業されていることもあり、なかなか連絡が取れません。すぐつながる方もいれば、10回程度電話してやっとつながる方もおり、退去立会いの確認一つをとっても大きな時間的コストがかかっていました。
当社の場合、社員の休みがローテーション制のため、オーナーからお電話をいただいた際に、担当者が不在というケースもあります。
そうすると連絡が行き違いになり、お互いに時間がかかってしまいます。写真やデータを郵送でお送りしても見ていただけなかったり、メールを送っても気づいてもらえなかったりすることもあります。
さらに、「言った・言わない」といったトラブルも多くあります。書面やメールで履歴を残す方法も、大きな課題になっていました。
そういった中で導入を決断されたきっかけについて教えてください。
飯嶋様:きっかけは、オーナーの世代交代が進んできたことです。若い世代はこういったシステムに興味を示していました。需要と供給のバランスが変わり、徐々に必要性が高まってきたというのが一つ。もう一つは、管理業法の施行など、法律面の変化も大きかったです。
「GMO賃貸DX」を選んだ理由|収支報告書のUIと改善スピード
数あるサービスの中から「GMO賃貸DX」を選んだ理由は何でしょうか?
飯嶋様:最初に重視したのはインターフェース、つまりデザイン性の部分です。他社のアプリは収支の見せ方が投資家向けで、資産管理系のアプリに寄っていました。「GMO賃貸DX」のUIは、賃貸管理会社の業務により適した設計になっておりました。
そして決め手になったのは、改善スピードの速さです。毎月のサポート情報で改善内容が報告されており、このスピード感で進化し続けるなら、長く利用し続けられるという安心と期待が持てました。

▲『GMO賃貸DX オーナーアプリ』収支報告書画面
導入に際して社内での障壁や懸念点はありましたか?
飯嶋様:導入に対する反発は、それほどありませんでした。「業務が増えるのではないか」「ちゃんとやりきれるか」といった心配をする社員はいましたが、導入そのものに頭から反対する人はほとんどいませんでした。普段からDXの必要性については話をしていたので、理解は得られていたと思います。
不安としては、「導入したことでかえってミスが起きるのではないか」ということと、「オーナーに実際に使ってもらえるか」という2点でした。特にミスの防止や業務フローの整備には、かなり時間をかけました。
導入プロセス|3ヶ月かけてミスゼロの仕組みを構築
飯嶋様:導入サポート支援の研修後、社内で実践的な練習を繰り返しました。当社の代表をオーナーに見立てて、実際の物件を使って1ヶ月から1ヶ月半ほど壁打ちを続けました。すると、担当者によって報告の内容や言い方が全く違うということが見えてきました。
これはオーナーも同じように感じるはずです。人によっては「アプリがあるのに結局電話してくる」「直接訪問してくる」となると、結局従来と変わりません。アプリでやり取りする人、電話をかける人、訪問する人とバラバラになってしまっては、かえってミスの元になります。
そこで、何を統一すべきか議論した結果、文章の書き方を揃えようということになり、定型文を作成しました。業務内容ごとに定型文をワードやパワーポイントで用意して、基本的にはそこからコピーして空欄部分だけ埋める形にしました。この準備に3ヶ月ほどかかりました。
また、電話で話した内容も必ず備忘録としてアプリに入力するルールにしています。「ここまでアプリでやり取りして終わり」ではなく、その後電話で話して内容が変わっているかもしれません。それを記録しておかないと、「こうなってましたよね」「いや、電話でこう言ったじゃないですか」という揉め事になります。ミスを恐れすぎかもしれませんが、そこにはかなり時間をかけました。

導入効果と今後の展望|アプリで定期報告業務を効率化
オーナーへの案内はどのように進められましたか?

飯嶋様:初期は、デジタルツールへの関心が高いオーナー約50名を選定し、導入案内を行いました。事前説明では、アプリの利便性や収支報告の見やすさを丁寧にお伝えしたところ、約9割のオーナーから前向きな反応をいただき、「うちを最初にしてほしい」と積極的に利用を希望される方もいらっしゃいました。
現在は個別にアプリ登録と利用方法のご案内を進めており、今後は対象を広げ、他のオーナーへも順次展開していく予定です。
導入によって期待している効果について教えてください。
飯嶋様:例えば工事の工程表などをアプリで送れるため、紙で渡して紛失されたり、後から見返せなかったりという問題がなくなります。これまでは、連絡を入れてポストに投函するのか、直接お渡しするのか、説明に伺うのか、一回一回判断していました。
アプリ導入後は、「ご提案をお送りしますので、ご確認ください。ご説明が必要でしたらお伺いします」とアプリで送っておけば、オーナーから返信が来るという流れになります。この時間差の短縮は大きいと考えています。
退去の立ち会いや工事の確認といった連絡も、オーナーの都合のよいタイミングで返信していただけるようになります。休憩時間や移動中など、オーナーのペースで確認・返信できるため、双方にとって負担が軽減されると期待しています。
「GMO賃貸DX」を通じて、今後どのような賃貸管理を実現していきたいですか?
飯嶋様:導入の目的として「アナログでできることを増やす」という考えがあります。当社は大手ではなく地場の業者なので、その良さは捨てない方がいいと思っています。だからこそ、業務の質を上げたいのです。
人手が減れば質の維持だけで精一杯かもしれませんが、できれば質を向上させたい。例えば、効率化で生まれた時間を使って現場に行く機会を増やしたり、これまで偏りがちだったオーナー訪問を均等に巡回できるようにしたり、新しい取り組みにも手を回せるようになります。
大手のように潤沢な人材や資本があるわけではないので、どこに時間を使うかが重要です。こうした当社の良さをもっと発揮していくこと、そして攻めの戦略を立てる時間を作ること。それが目標でありゴールです。
アプリ導入を検討している同業の皆さまへアドバイスをお願いします。
飯嶋様:成長戦略の観点から言えば、事業を拡大して人を増やしていくとしても、一人当たりの業務量の比率は変わりません。それ以上に効率を上げたい、業務を拡大したいというのであれば、早めに決断する必要があると思います。
一方、現実的な観点から言えば、人手不足が進む中で、今やっておかないと後でもっと大変になるということです。コロナ禍でZoomをはじめとしたデジタルツールが浸透したおかげで、オーナーの抵抗感も少なくなっています。
今が一番導入しやすいタイミングだと思います。これを逃すと、また導入のハードルが上がってしまって、後から「あの時やっておけばよかった」となりかねません。
他社は、社内の理解を得るのに苦労したという話を聞きます。特に、長年勤めていて一定の権限を持っている方、自分のやり方を変えたくないと考える方など、影響力のあるキーパーソンをどう巻き込むかが重要だと思います。

会社紹介
株式会社小菅不動産は、賃貸管理を中心に、仲介、工事、建築コンサル、相続コンサル、事業用物件まで幅広く手がける不動産管理会社です。「公約と口約」を創業の理念とし、「お客様第一主義」を掲げ、オーナーの利益を最優先に考えた提案を行っています。事業用物件については専門部隊を設け、高い専門性を活かしたサービスを提供。地域密着型の強みを活かしながら、デジタル化を戦略的に推進し、アナログな良さとの両立を図りながら業務の質向上に取り組んでいます。
■会社名
株式会社小菅不動産
https://www.kosuge.co.jp/
■所在地
〒242-0014
神奈川県大和市上和田975番地






