【最新】ZEH住宅の補助金一覧|対象者や申請条件・補助金額を解説
エネルギー問題への関心が高まる中、注目を集めているのがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅です。政府は2030年までに新築住宅の標準的な仕様としてZEHの普及を目指しており、その普及促進のために様々な補助金制度を設けています。
省エネと快適な暮らしの両立を実現するZEH住宅。その建築・購入時に活用できる補助金制度について、詳しく見ていきましょう。
ZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは

ZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:ゼッチ)とは、高い断熱性能と高効率な設備機器により、快適な室内環境と大幅な省エネを両立させながら、太陽光発電などの創エネにより年間の一次エネルギー消費量を正味でゼロ以下にする住宅を指します。
具体的には、住宅の高断熱化や日射遮蔽、LED照明や高効率給湯器などの省エネ設備の導入により、エネルギー消費量を大幅に削減します。その上で屋根に設置した太陽光発電システムで電力を創り出し、使用するエネルギー量以上の発電を行うことで、年間のエネルギー収支をプラスにします。
これにより、住宅全体での一次エネルギー消費量(空調、給湯、照明、換気などの消費エネルギーから太陽光発電による創エネを差し引いた値)を実質的にゼロ以下とすることが可能です。

ZEH住宅の基準
資源エネルギー庁によると、ZEH住宅の基準は以下①~④のすべてに適合した住宅を指します。
| 1. ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA 値[W/m2K] 1・2地域:0.40 以下、3地域:0.50以下、4~7地域:0.60 以下)
2. 再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減 3. 再生可能エネルギーを導入(容量不問) 4. 再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減 |
外皮性能は、住宅の断熱性能を示すUA値(外皮平均熱貫流率)と、夏の日射による熱の影響を示すηA値(平均日射熱取得率)で評価されます。
一次エネルギー消費量については、基準一次エネルギー消費量からの削減率に応じて、「ZEH」(100%以上)、「Nearly ZEH」(75%以上100%未満)、「ZEH Ready」(50%以上75%未満)、「ZEH Oriented」(20%以上)の4段階に分類されます。
もっとも高いレベルの「ZEH」では、断熱性能を確保した上で、暖冷房、換気、給湯、照明などの一次エネルギー消費量を再生可能エネルギーにより100%以上相殺することが求められます。
ZEH住宅が注目される理由
ZEH住宅が注目される背景には、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現への取り組みが大きく関係しています。家庭部門のCO2排出量は2022年度時点で日本全体の約15%を占めており、住宅の脱炭素化は温室効果ガス削減の重要な施策として位置づけられています。
この目標達成に向けて、2025年度には全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられることとなり、ZEH住宅の普及は今後さらに加速するとの予測です。国は2030年までにハウスメーカーなどが新築する注文戸建住宅の半数以上をZEH化する目標を掲げています。
さらに近年の電気料金高騰を受けて、太陽光発電による創エネと高い省エネ性能を組み合わせたZEH住宅は、光熱費削減の有効な対策としても注目を集めています。一般的な住宅と比べて年間の光熱費を抑えられることから、長期的な経済的メリットも期待できます。
ZEH住宅の建築における課題
ZEH住宅推進の動きが著しい一方で、ZEH住宅の建築における課題も挙がっています。
主な課題は以下の4点です。
- 建築コストの増加
- 設備メンテナンス費用
- 間取り・設備の制限
- 耐震性への配慮
ZEH住宅の建築において、特に大きな課題となるのが建築コストの上昇です。高性能な断熱材や省エネ設備、太陽光発電システムの導入により、一般的な住宅と比べて200〜300万円程度の追加費用が必要となります。また、太陽光パネルや高効率設備機器は定期的なメンテナンスが必要で、これらの維持管理費用も将来的な負担となります。
設計面では、太陽光パネルの設置のために南向きの十分な屋根面積が必要となり、敷地条件や建物の形状に制約が生じる場合があります。また、断熱材の厚みにより壁が厚くなることで、実質的な居住面積が減少する可能性があることも懸念点です。
さらに、屋根への太陽光パネルの設置は建物への重量負荷となるため、耐震性能を考慮した構造設計が必要です。これらの要因が、ZEH住宅の普及における技術的・経済的なハードルとなっています。
ZEH住宅の補助金とは

ZEH住宅向けの補助金制度は、住宅の脱炭素化を促進し、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネルギー性能の高い住宅の普及を後押しすることが目的です。国土交通省や経済産業省、環境省などが、ZEH住宅の新築やリフォームに対して様々な補助制度を設けており、建築主の経済的負担を軽減しています。
この制度が導入された背景には、ZEH住宅の建築コストが従来の住宅と比べて高額になることが、普及の大きな障壁となっていることがあります。政府は補助金によって初期投資の負担を軽減し、高性能住宅の標準化を目指しています。特に、2025年の省エネ基準適合義務化を控え、住宅市場の円滑な移行を促すため、補助金制度の充実が図られています。
ZEH住宅の補助金一覧

2025年度の主要なZEH補助金について、以下一覧にまとめました。
ZEH住宅の補助金一覧
| 区分 | 支援事業 | 申請対象者 | 対象となる住宅 | 補助額 |
| 新築戸建住宅を建築・購入等する個人が対象の補助事業 | ZEH支援事業 |
|
ZEH | 55万円/戸+α |
| ZEH+ | 90万円/戸+α | |||
| 新築集合住宅を開発する事業者等が対象の補助事業 | 高層ZEH-M支援事業 | ― | 住宅用途部分が6層~20層のZEH-M |
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| 中層ZEH-M支援事業 | ― | 住宅用途部分が4層~5層のZEH-M |
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| 低層ZEH-M促進事業 | ― | 住宅用途部分が1層~3層のZEH-M |
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参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
2025年度のZEH住宅補助金は、前年度からの制度を継続しながら、より一層の省エネ住宅普及を目指す内容となっています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ZEH支援事業の概要
ZEH支援事業は戸建住宅において、ZEH、ZEH+の各区分で、住宅の省エネ性能に応じた補助を行う制度です。補助対象となるには、ZEH基準を満たす外皮性能と、一次エネルギー消費量の基準値からの削減率を達成する必要があります。
ZEH支援事業の概要
| ZEH | ZEH+ | |
| 対象となる住宅 |
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| 交付要件 | ①戸建住宅における『ZEH』の定義を満たしていること ②SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(建築、設計又は販売)する住宅であること |
①戸建住宅における『ZEH』の定義を満たしていること
I.一次エネルギー消費量削減率(再エネ除く):30%以上 一次エネルギー消費量削減率(再エネ等含む):100%以上(※) (1)再生可能エネルギーの自家消費の拡大措置 (2)高度エネルギーマネジメント (※)Nearly ZEH+は75%以上100%未満 ②SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(建築、設計又は販売)する住宅であること |
| 補助額 | 55万円/戸 | 90万円/戸 |
| 採択方式 | 先着方式 | 先着方式 |
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
補助金の申請には、ZEHビルダー/プランナーとして登録された事業者が関与することが必須条件です。これらの事業者は、ZEHに関する技術・知見を有し、一定の実績を持つ事業者として国に登録されています。
また、ZEHとZEH+では追加設備によって以下の加算がされます。
ZEH・ZEH+の追加補助額および補助対象における追加設備等による加算
| 追加設備等 | 追加補助額 |
| 直交集成板(CLT) |
定額90万円/戸 |
| 地中熱ヒートポンプ・システム |
定額90万円/戸 |
| 蓄電システム | 上限20万円/戸 |
| PVTシステム | 65万円/戸、80万円/戸、90万円/戸 (注)方式、パネル面積により異なる |
| 太陽熱利用システム(液体集熱式) | 12万円/戸、15万円/戸 (注)パネル面積により異なる |
| 太陽熱利用システム(空気集熱式) | 定額60万円/戸 |
| 再生可能エネルギー有効活用のため昼間に沸き上げをシフトする機能を有する給湯器 | 定額2万円/戸 (注)パネル面積により異なる |
| 電気自動車(PHEVを含む)の充電設備又は充放電設備 | 上限10万円/戸 |
| 高度エネルギーマネジメント | 定額2万円/戸 |
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
さらにZEH+では、選択要件によって以下の追加補助額が設定されています。
なお、ハイグレード仕様とは断熱等性能等級6以上の外皮性能を有し、かつ一次エネルギー消費量(再生可能エネルギー等を除く)が基準一次エネルギー消費量から30%以上削減した住宅を指します。
高層ZEH-M支援事業の概要
高層ZEH-M支援事業は、6階建以上の高層集合住宅を対象に、省エネルギー性能の高い集合住宅の普及を促進するための補助制度です。一般的な戸建住宅のZEHと比べて、高層建築物特有の課題(日射量の制約や設備スペースの確保など)があることを考慮し、より柔軟な基準が設定されています。
高層ZEH-M支援事業の概要
| 対象となる住宅 |
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| 交付要件 | 1.集合住宅におけるZEHの定義を満たしていることかつ、 以下のⅠ~Ⅲを満たしていること
Ⅰ.住宅用途部分が6層以上20層以下の集合住宅であること 2.補助事業者は以下のいずれかであること Ⅰ.SIIに登録されているZEHデベロッパー(建築主) |
| 補助額 | 補助対象経費の1/3以内 ※事業期間は最長4年とする(上限:3億円/年、8億円/事業、40万円/戸又は50万円/戸(ハイグレード仕様を満たす場合)、補助事業の費用対効果) |
| 追加補助 | 高層ZEH-Mに以下の設備等を導入する場合、補助額を加算
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| 採択方式 | 採択審査方式 審査により採択案件を決定する(申請は住棟単位) |
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
中層ZEH-M支援事業の概要
中層ZEH-M支援事業は、4階以上5階以下の集合住宅を対象とした、省エネルギー性能の高い集合住宅の普及を促進するための補助制度です。一般的な戸建ZEHと比べて、共用部分のエネルギー消費や複数階での断熱性能確保など、集合住宅特有の課題に対応した基準が設けられています。
中層ZEH-M支援事業の概要
| 対象となる住宅 |
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| 交付要件 | 1.集合住宅におけるZEHの定義を満たしていることかつ、以下のⅠ~Ⅲを満たしていること
Ⅰ.住宅用途部分が4層以上5層以下の集合住宅であること 2.補助事業者は以下のいずれかであること Ⅰ.SIIに登録されているZEHデベロッパー(建築主) ※累積申請住戸数に制限あり |
| 補助額 | 40万円/戸又は50万円/戸(ハイグレード仕様を満たす場合) ※事業期間は最長4年とする(上限:3億円/年、8億円/事業) |
| 追加補助 | 中層ZEH-Mに以下の設備等を導入する場合、補助額を加算
|
| 採択方式 | 先着方式 |
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
低層ZEH-M促進事業の概要
低層ZEH-M促進事業は、3階建て以下の集合住宅(アパート・マンションなど)を対象に、ZEHレベルの省エネ性能を備えた賃貸住宅や分譲マンションの普及を支援する制度です。一般的な戸建ZEHと同様、高い断熱性能と省エネ設備に加え、再生可能エネルギーの導入により、建物全体でのエネルギー収支をゼロ以下にすることを目指しています。
低層ZEH-M支援事業の概要
| 対象となる住宅 |
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| 交付要件 | 1.集合住宅におけるZEHの定義を満たしていることかつ、以下のⅠ~Ⅲを満たしていること
Ⅰ.住宅用途部分が3層以下の集合住宅であること 2.補助事業者は以下のいずれかであること Ⅰ.SIIに登録されているZEHデベロッパー(建築主) ※累積申請住戸数に制限あり |
| 補助額 | 40万円/戸 ※事業期間は最長3年とする(上限:3億円/年、6億円/事業) |
| 追加補助 | 低層ZEH-Mに以下の設備等を導入する場合、補助額を加算
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| 採択方式 | 先着方式 一般公募及び新規取り組みZEHデベロッパー向け公募に分けて実施する(申請は住棟単位) |
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
ZEH住宅の補助金の申請手順

ZEH住宅の補助金申請から交付までの基本的な流れは、以下の通りです。
- ZEHビルダー/プランナーの選定
ZEHはZEHビルダーに認定された建築業者しか建てることができません。まずは登録事業者からZEH認定ビルダーを選定し、契約を締結しましょう。 - 交付申請
ZEH認定ビルダーに手続き代行者として申請を行ってもらいます。この際、ZEHポータルへアクセスし、ユーザー登録を行います。 - 交付決定の受領
ZEH補助金の交付が決定したら、着工が可能です。 - 補助金の交付
住宅が完成後、補助金を受け取ります。
ZEH補助金の申請には、下記の書類が必要です。
| 必須書類 | 個人 | 法人 |
| 配置図 | 〇 | 〇 |
| 本人確認書類 | 〇 | - |
| 手続代行委任状 | 〇 | - |
| 役員名簿 | - | 〇 |
| 財務諸表等 | - | 〇 |
上記のほか、以下に該当する住宅の場合は追加で書類を用意しなければなりません。
| 都市部狭小地等のZEH Oriented申請の場合 | CLT、地中熱ヒートポンプ・システム、PVTシステムまたは液体集熱式太陽熱利用システムを補助対象住宅に導入する場合 | リースの場合 |
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特に重要な注意点として、必ず着工前の交付申請が必要であり、事後申請は認められません。また、申請期限や予算枠には制限があるため、早めの準備と申請が推奨されます。
さらに、補助金交付後も一定期間の事業報告や維持管理が求められる点にも留意が必要です。
ZEH住宅の補助金申請スケジュール

出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
2025年度のZEH住宅補助金の申請は、4月から開始されています。申請受付は、交付申請、完了実績報告ともにオンラインシステムを通じて行われ、予算額に達し次第、受付終了です。近年は省エネ住宅への関心が高まっていることから、申請が集中することが予想されています。
申請は先着順での受付となるため、計画している方は早めにZEH認定ビルダー/プランナーに相談し、必要書類の準備を進めることが重要です。
2025年4月から省エネ基準適合が義務化

2025年4月から、すべての新築住宅において建築物省エネ法に基づく省エネ基準への適合が義務化されます。これにより、一定の断熱性能や省エネ性能を確保することが建築条件となり、従来の省エネ基準に適合しない住宅は建築できなくなります。
この義務化はZEH住宅の普及を後押しする形となります。ZEH住宅は省エネ基準を大きく上回る性能を持つため、義務化後の基準を十分に満たしており、今後のスタンダードとなることが期待されているのです。特に、太陽光発電の設置も推奨されることから、ZEHのような高性能住宅への移行が加速すると予想されます。
住宅市場においては、省エネ性能の確保に伴うコスト増加が予想されますが、長期的に見れば光熱費削減や資産価値の維持向上につながります。また、すでに多くのハウスメーカーがZEH仕様を標準化しており、市場全体の省エネ化が進むと考えられています。
まとめ
ZEH住宅とは、高い断熱性能と高効率な設備機器により、快適な室内環境と大幅な省エネを両立させ、太陽光発電などの創エネにより年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にする住宅です。2025年4月から、すべての新築住宅において省エネ基準への適合が義務化されることになり、今後はZEHのような高性能住宅への移行が加速していくと見られます。
一方で、建築コストの増加や設備メンテナンス費用、設計上の制限など課題もありますが、長期的には光熱費削減や資産価値の維持向上につながることから、さらなる普及が期待されています。




