不動産取引でブロックチェーンを活用するメリット|ブロックチェーンの仕組みをわかりやすく解説!
ブロックチェーンという言葉を聞くと、仮想通貨を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、ブロックチェーンは仮想通貨に限った話ではなく、不動産業界にも大きな影響を与える革新的な技術であることをご存じでしょうか。
この記事では、ブロックチェーン技術とはどのようなものなのか、不動産取引にブロックチェーンを活用するメリットなどをご紹介します。
ブロックチェーン技術とは?
ブロックチェーン技術とは、2008年頃にビットコインの生みの親とされる「サトシ・ナカモト」氏により提唱された技術です。
総務省が公表した「平成30年版 情報通信白書」によると、ブロックチェーン技術とは、情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、「ビットコイン」等の仮想通貨に用いられている基盤技術であるとされています。
仮想通貨を成立させる中核の技術として誕生し、主に金融業界で使用されていましたが、昨今は非金融業界でもブロックチェーン技術が広く使用されるようになってきました。
ブロックチェーン技術が誕生したことによって何ができるようになったのか、詳しく見ていきましょう。
ブロックチェーンによってできるようになったこと
ブロックチェーン技術が画期的な技術であると注目される理由は、以下の3点です。
- データの改ざんができない
- データを誰でも見ることができる
- 一元管理ではなく当事者全員で管理できる
ブロックチェーン技術では、ハッシュや電子署名という暗号技術を用いることによりデータの改ざんを容易に検出することが可能。多数の参加者が全員の取引記録をコピーして記録しており、一部のシステムがダウンしても全体がダウンすることなく、取引の記録が証拠として残り続けます。
つまり、ブロックチェーン技術は透明性が高く、不正利用されにくいのが大きな魅力です。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンが従来の金融機関の管理体制とはどのように違うのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
金融機関は個人のさまざまな取引記録を集中管理しており、このような管理体制を「中央集権型」と呼びます。しかし、この体制では管理者である金融機関が情報を改ざん・削除したとしても他の人は確認できません。
ブロックチェーンは、高度な暗号化技術によってネット上における個人のさまざまな取引記録を1つのブロックにまとめるのが特徴。不特定多数のブロックチェーンネットワーク参加者が鎖のようにつながったブロック(取引記録)を分散管理しているため、このような管理体制を「分散型」と呼びます。
従来のような集中管理を行う管理者を排除し、取引記録の管理者を分散することで中央集権型管理体制の問題点をカバーしているのです。
ブロックチェーンが活用されている業界
ブロックチェーンは以下のようにさまざまな業界で活用されています。
- 自動車業界
- 流通・小売業界
- 食品業界
- 医療業界
- 不動産業界
- 金融業界
例えば、自動車業界では、ブロックチェーンでデータを共有することによって不具合や法令違反を起こした部品を迅速に洗い出し、リコールまでの期間を短縮、早期発見につなげることによって製品の品質や安全性を向上。また、食品業界では、ブロックチェーンを用いることによって食品の流通経路の可視化で安全性の向上を図っています。
特に不動産業界は不動産関連会社授業員の年齢層が他の業界と比べて高い傾向があり、アナログ体質が残っているとされているため、ブロックチェーン技術を取り入れることによってできることの余地が大きく、得られる恩恵も大きい業界だと言えるでしょう。
ブロックチェーンを活用した不動産取引のメリット
不動産業でブロックチェーンを活用すると言っても、具体的にどのような業務で活用できるのか分からないという方も多いかもしれません。ブロックチェーンが活用できる不動産業務として、以下の3つが挙げられます。
- 取引
- 送金
- 不動産登記
上記は従来アナログ的に行われてきた業務ですが、ブロックチェーンを活用することにどのようなメリットがあるのでしょうか。不動産取引にブロックチェーンを活用するメリットは、主に以下の5点です。
【不動産取引にブロックチェーンを活用するメリット】
● 契約をスピーディに行える ● セキュリティの強化 ● 情報の透明化 ● 場を流動化できる ● 取引を自動化できる |
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
契約をスピーディに行える
不動産取引では、必要書類の取得に手間と時間がかかります。また、手続きごとに何かと手数料がかかるため、取引にかかる費用がかさみやすい点が難点です。
しかし、ブロックチェーンを活用すればユーザー同士が直接取引できるため、仲介者を必要としません。その結果、情報を管理していた機関が不要となり、書類取得にかかっていた手間と時間、費用を大幅に削減する効果が期待できます。
また、従来の不動産取引は業務時間内が原則でしたが、ブロックチェーン技術によって業務時間外でも取引できるようになるため、柔軟な対応が可能となるでしょう。
セキュリティの強化
ブロックチェーンを導入した場合、企業で使用するすべての端末はサーバーを介さずにつながります。つまり、ネットワーク上のすべての取引が各端末の同意がないと更新できないというわけです。
データを修正したり入れ替えたりしたくても、すべての端末の承認がなければできません。万が一、悪意のあるデータ改ざんが実行されそうになった場合でも、すべての端末で承認されない限り実行されることはないので安心です。
また、何らかのトラブルによって一部の端末が故障してデータにアクセスできなくなったという場合でも、他の端末がデータをカバーしてくれます。
改ざんが不可能であることによってセキュリティが強化されるだけでなく、エラーにも対応できる点はブロックチェーン活用の強みだと言えるでしょう。
情報の透明化
不動産会社は不動産に関する情報量を多く抱えていますが、公開を制限していることも多く、消費者は一部の情報しか入手できません。こうした情報の不均衡性は大きな問題となっており、消費者が安心して取引するためにも情報の透明化を図ることは大きな課題でした。
ブロックチェーンは、誰もがブロック内に記録されているデータにアクセスできますし、アクセスできる情報は改ざんできず永遠に残ります。
不動産会社だけが持っていた情報を消費者も共有できることで、情報の不均衡性がなくなるため、安心して取引できるようになるでしょう。
市場を流動化できる
不動産は売買する人が限られており、取引金額も高額になりがちなので、市場の流動性はあまり高くありません。また、契約関連手続きに手間と時間がかかりやすいことも不動産市場の流動性を低下させている要因です。
ブロックチェーンによって不動産をトークン化(不動産をネット上で売買できる暗号資産に変換すること)できれば、情報の記録だけでなく、所有権の移転やユーザー間での取引が容易になります。
数週間から数ヶ月程度かかっていたプロセスを数日で行えるため、結果的に市場の流動化につながるでしょう。
取引を自動化できる
従来、売買・賃貸契約、代金決済、抵当権の設定といった不動産取引に必要な手続きは、基本的にすべて人の手を介して行われてきました。そのため、手数料が高く、手間と時間がかかるというデメリットがあったのです。
ブロックチェーン技術の1つであるスマートコントラクトを活用すれば、あらかじめプログラムされたルールに従って手続きを自動化することが可能です。
手続きをすべて自動的に行えることで業務の効率化が図れるため、手間を省けるだけでなく、手続きにかかる手数料の削減も期待できるでしょう。
ブロックチェーンを取り入れた事例紹介
日本国内でブロックチェーン技術を活用している不動産会社の事例として、「株式会社LIFULL」「積水ハウス株式会社」などが挙げられます。
株式会社LIFULLは、空き家や所有者不明の不動産問題を解決するために、ブロックチェーンの技術を活用した権利移転記録の実証実験を開始しました。
また、積水ハウス株式会社は、賃貸におけるガス・電気・水道といった生活インフラサービスの手続きの簡素化、お客様情報の入力の簡略化などをブロックチェーン導入によって実現しています。
そのほか、現物不動産をメタバース上に再現し、仮想空間内で不動産取引を行うという事例も見られるようになりました。メタバース不動産の事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
ブロックチェーンと聞くと仮想通貨を想像する人も多いのではないでしょうか。たしかに、元は仮想通貨を成立させる中核の技術として誕生したため、「ブロックチェーン=仮想通貨」と言っても間違いではありません。
しかし、その技術は仮想通貨を含む金融業界以外でも幅広く利用されつつあります。不動産業界でもブロックチェーンを活用した取り組みが広まっており、アナログ体質だと言われる業界に革命をもたらしました。
ブロックチェーンを不動産管理業務に活用することで、契約がスピーディに締結できる、セキュリティを強化できるなどのメリットが得られますが、高度な技術であるため管理業務に取り入れる際は、経験豊富な専門家に相談しながら取り入れるのが賢明です。
この記事のポイント
● ブロックチェーンの大きな特徴
データの改ざんができない、データを誰でも見ることができる、一元管理ではなく当事者全員で管理できるため、透明性が高く、不正利用されにくいのが特徴です。 ● ブロックチェーンは不動産業界でも注目されている 契約がスピーディに締結できるだけでなく、セキュリティ強化・情報の透明化・市場の流動化が実現できます。取引を自動化できるため不動産業界との相性が良く、活用することで業務効率を格段に向上させることが可能です。 |