管理規約と使用細則の違いは?規約作成時の注意点と作成依頼を出した場合の相場を紹介
管理規約は住民が快適なマンションライフを維持するために作成されたマンションのルールです。各マンションに適した管理規約を作成しないと、ルールを守らない住民が現れたり、住民間のトラブルを適切に対処できなかったりと様々な問題が発生してしまうので『マンション標準管理規約』に則って適切な管理規約を作成しなくてはなりません。
管理規約はマンションの快適な環境を維持するために必要な取り決めです。多くの人が集合して住んでいるマンションでは、管理規約のような取り決めがないと、揉め事があった際に対処が難しくなります。
そこで当記事ではマンションを運営していく上で、管理規約の必要性と、管理規約と使用細則の違いの解説をしているので、マンション内で揉め事が多くて悩んでいる組合があるようでしたら参考にしてみてください。
また、管理規約・使用細則の見直しについても依頼した際の相場と併せて説明しているので確認してください。
管理規約とは
管理規約とは、快適なマンションライフを維持するため、国土交通省が作成した『マンション標準管理規約』を基に作成されたマンションのルールのことを指します。
基本的に管理規約では、『建物の区分所有等に関する法律』によって、区分所有者間の所有関係や、権利・義務などの基本的な事柄が定められています。また、それら基本事項に加えて個々のマンションの状況や置かれた環境に合わせてルールを追加している場合がほとんどです。
具体的には以下のような内容が管理規約では定められています。
- 共用部分の範囲・使用方法
- 理事会の権限・義務
- 管理組合の運営について
管理規約は、全ての区分所有者に対して有効で、相続や売買で新たに区分所有者になった人も対象となります。他に、賃借人についても建物等の使用方法に関しては管理規約の対象者と同じ義務を負います。
マンション標準管理規約とは
マンション標準管理規約とは国土交通省が管理規約の標準モデルとして作成したもので、マンションの維持・管理において基本的なルールを定めた管理規約を作成・変更する際の参考になります。マンション標準管理規約では以下のような内容を記載しています。
- 敷地、建物、付属施設の範囲
- 共用部分の範囲
- 敷地・付属施設・共用部分に関する各区分所有者の持つ共有持分の割合
- 専用使用権の範囲
- 敷地利用権と専有部分の分離処分の可否
- 使用細則(使用に関する詳細な規則)の設定
- 集会、管理組合、理事会、会計等に関する事項
注意点として、国土交通省はマンション標準管理規約への変更は強制しておらず、あくまでも参考にすることで各マンションにおける独自の管理規約を作っていただくことを目的としています。
また、マンション標準管理規約には以下の3つのパターンに分類されており、参考にする場合は属するマンションがどこに分類されるのか確認してからマンション標準管理規約を参考にするようにしてください。
- 単棟型:住居専用のマンションで、1つの敷地に1棟のマンションがある場合を想定してつくられたもの
- 団地型:複数の建物が存在するマンション群かつ全体で敷地を共有している場合を想定してつくられたもの
- 複合用途型:マンションの一部分が店舗または事務所など、居住以外のスペースがある場合を想定してつくられたもの
管理規約が適応される場所
管理組合の目的が『建物およびその敷地ならびに付属施設の管理』であることから、以下の3箇所で管理規約が適応されます。
【管理規約が適応される場所】
- 建物(占有部分・共用部分)
- 敷地
- 付属施設
管理規約ではマンションの共用部分のように区分所有者全員で使う箇所でのみ適応される…と思われるケースが多いですが、実は専有部分も適応箇所として定められています。そのため、専有部分の管理・使用についても合理的な範囲で一定の制限をすることが可能です。
管理規約の必要性
マンションのような集合住宅には、家族形態や生活スタイルが全く違う人たちがそれぞれ住んでいます。そのため、明確なルールが決められていないとトラブルが発生しやすいマンションになってしまいます。
特に、共用部分の利用や深夜の騒音などに対しては、トラブルが起こりやすく住民間の関係性に問題が発生しやすいので、全員が守るべきルールは決めておく必要があります。
つまり、管理規約は住人同士のトラブルを未然に防ぐと同時に、トラブルが発生した際の責任の所在についてもはっきりさせるための役割として重要なものです。
また、住人同士のトラブルだけでなく管理費の未払いなどに対しても管理規約で定めることが可能なので、積立金・管理費といったマンションの維持に必要となってくる金銭面でのトラブルに対しても管理規約は効力を発揮します。
管理規約・使用細則を守らない住人がいる場合
管理規約・使用細則を守らない住人がいる場合、ルール違反に対する行為の停止などの要求は、管理規約の定めにより理事会内での決議を経て理事長が対象者に伝えるのが一般的です。もし、他の住人に影響を及ぼしてしまう事態になってしまうほど酷い場合は、厳しい処置として専有部分の使用禁止などの対応もできます。
基本的に管理規約を守るのは区分所有者の義務ですが、区分所有者が管理規約をすべて知っているかどうかはわかりません。なので、マンション側は区分所有者全員に規約の理解を促すとともに、専有部分のルールなどをまとめた紙を張り出すなどして対応をすることも大切です。
また、何度注意しても繰り返し規約違反を行うような住人がいる際は、最悪の場合マンション側から訴訟を起こすこともできます。
管理規約と使用細則の違い
管理規約を作成するにあたって、管理規約と使用細則の違いは必ず把握しておくべき内容の一つです。具体的な違いは以下の通りです。
- 管理規約
マンションの管理または使用に関する区分所有者間の基本的な決まりについて定めたもの。一般的に管理組合の『憲法』のようなものと言われています。
- 使用細則
建物・敷地・附属施設の管理や使用について定められる規約以外のルール。規約よりも詳細で具体的な内容。つまり、規約では基本的な決まりを定めておき、それらの基本事項についてより細かくルール化したものを使用細則と言います。
【管理規約と使用細則の具体例】
- 管理規約→ペットの飼育の可否についての取り決め
- 使用細則→ペットを飼育する場合の書類手続き方法。飼育する場合のルール。飼育不可の動物をペットとした場合の罰則について。
管理規約は基本的に変更することが少ないですが、使用細則のような細かいルールはマンションの環境や住人の考え方によって柔軟に変える必要があります。そのため、使用細則の変更については管理規約よりもハードルが低いです。
【管理規約と使用細則の変更について】
- 管理規約:議決権の3/4以上の賛成が必要
- 使用細則:議決権の過半数が必要
管理規約・使用細則で定める例
上記でペットについての具体例で管理規約と使用細則の違いを解説しましたが、その他にも管理規約の例・使用細則の例はいくつかあります。細かい部分で違うところはあれども、基本的に管理規約・使用細則ともに内容は似てくるので、下記で並べた例を参考に各管理組合で反映してみてください。
【管理規約と使用細則の例】
管理規約 | 使用細則 |
・管理規約の設定・変更・廃止
・共用部分の変更 ・建て替えの議決案件 ・議決権の割合について ・費用の負担額 ・管理組合の役員数・任期について ・ペットの飼育可否 |
・マンション全体の細かいルール
・専用部分の修繕などに関する細則 ・会計処理に関する細則 ・駐車場の使用に関する細則 ・自転車置き場に関する使用細則 ・ペットの飼育に関する細則 |
管理規約・使用細則を変更したい場合
管理規約・使用細則を変更したい場合は区分所有者の決議をとる必要があります。
その際、管理規約と使用細則では決議の方法が変わるので、それぞれ決められたルールに則って変更の決議をとってください。決議の詳細は以下の通りです。
- 管理規約:総会で特別決議(3/4以上の賛成)が必要
- 使用細則:普通決議で過半数の賛成が必要
使用細則は基本的に管理規約に基づいて作成が行われるので過半数の決議で済みますが、管理規約の場合は使用細則を決める基のルールになるので3/4以上の賛成が必要になります。
使用細則のように細かなルールは住民の生活環境、ペットの流行に合わせて柔軟に変更が求められるので、管理規約の変更よりハードルが低くなっているのが特徴です。逆に管理規約の場合は、マンションの根底にある基本原則に近いルールなので普通決議で頻繁に変更が求められることは少ない特徴があります。
管理規約作成時の注意点
管理規約は外部に依頼・作成してもらうことも可能ですが、管理組合で作成することもできます。しかし、法的な部分の知識が乏しいまま作成してしまうと、トラブル発生時に規約がうまく機能しない可能性が高くなります。
なので、管理組合で作成をする場合は以下の内容に注意して作成をするように心がけてください。
- 『規約共用部分』の登記について記載があるか
- 区分所有法・民法に違反した管理規約になっていないか
管理規約はマンションの特性などに合わせて決めることが出来ますが、一部の人に有利になるような規約であったりしてはいけません。なので、基本として区分所有法・民法に違反した規約になっていないかは必ず確認する必要があります。
『規約共用部分』の登記について記載があるか
規約共用部分とは、区分所有建物において、区分所有法では専用部分とすることができるが、管理規約によって共用部分とする場所のことを言います。具体的には『管理人事務室・集会室・駐車場』などが規約共用部分にあたります。
規約共用部分はマンションの共用部分として住人全員で利用する場所なので、個人のものになってはいけません。それを防ぐために『規約共用部分である』と規約で設定した上で登記がされていなければなりません。
もし、竣工時に規約共用部分についての規約が設定されておらず、気づかないまま年月が経ってしまっていた場合はトラブルになる前に早急に登記の手続きをする必要があります。
区分所有法・民法に違反した管理規約になっていないか
管理規約はマンションの中でのルールですが、区分所有法・民法などの法律の枠内で設定される規約です。そのため組合員個人などの一部の人に有利になるような規約を作成することは当然できません。
例えば、『不当に共用部分の使用を禁止』にしたり、『議決で賛否を取らずに書面で賛否をとって総会と同等の効力を持つ』ようにしたりといった規約は法律に反するので作成できません。
管理組合で規約を作成すると、法律のプロが組合にいたりしない限りはこういった規約が作成されるのは珍しいことではありません。なので、管理組合で作成したとしても最終チェックとして専門家に確認をしてもらうことがおすすめです。
管理規約作成・見直しの依頼と相場
管理規約の作成・見直しは管理組合自ら行わずとも、専門家に依頼して代わりにやってもらうことができます。
一般的に作成・見直しを依頼する場合は『マンション管理士事務所』に依頼するのがほとんどです。なので、以下ではマンション管理士事務所に依頼した場合の、おおよその相場をまとめたので参考にしてください。
管理規約作成・見直しの相場 | |
管理規約の新規提案 | 10万円〜 |
管理規約の見直し・改正作業 | 5万円〜 |
事務所によっては単棟型・複合型で費用が変わるところもあったり、作成・改正後にどこまでサポートしてくれるかで費用が変わったりします。
また、同じ管理でも「管理費」について詳しくまとめた記事もあるので、参考にしてみてください。
関連記事:管理費は何に使う?管理費の相場と決め方について詳しく解説
まとめ
管理規約は住人が快適なマンションライフを維持するために作成されたマンションのルールです。各マンションに適した管理規約を作成しないと、ルールを守らない住民が現れたり、住民間のトラブルを適切に対処できなかったりと様々な問題が発生してしまうので『マンション標準管理規約』に則って適切な管理規約を作成しなくてはなりません。
ただし、管理組合自ら作成しようとすると法の知識に詳しい人がいない限りは、問題点を解決できるような内容の規約を作るのはかなり難しいです。そこで、管理規約の作成・見直しを検討する場合は、まず専門家であるマンション管理士に相談するなどして法的な立場から規約についてのアドバイスを受けるのがおすすめです。
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