IT重説のデメリットとは|問題を回避するための対策や注意点なども解説
IT重説とは、インターネット回線を利用したテレビ通話で賃貸契約における重要事項説明を行うことです。ITを活用して非対面で実施できるため、近年注目されている方法です。
しかし、IT重説はデメリットも抱えています。しっかり理解しておかないとIT重説をスムーズに行うことができず、トラブルにつながりかねません。
今回の記事ではIT重説の定義はもちろん、デメリットや対策、実際に行う方法について解説します。
IT重説とは
IT重説とは、パソコンやスマートフォンなどの端末を利用し対面時と同様に賃貸借契約における重要事項説明を行うことをいいます。
これまでの重要事項説明は宅地建物取引士による対面での説明が原則でしたが、2017年10月1日からパソコンやスマートフォン、タブレット端末などを用いてオンライン上でも実施可能に。これにより、質疑応答できる環境があれば不動産会社に出向かずとも自宅にいながら、重要事項説明を受けられます。
また、対面時と同様に宅地建物取引士が賃借人に対し、重要事項説明書を事前に交付することが必要です。
不動産の契約には重要事項説明が必要
重要事項説明とは、不動産の売買や賃貸契約の際に不動産会社の宅地建物取引業者が買主やお客様に対し、契約前に必ず行う必要がある説明です。
重要事項説明の主な内容は以下の通りです。
- 説明者が宅地建物取引業者の免許保有者であるかの確認事項
- 対象物件に関する確認事項
- 法令上の制限
- ライフラインの設備状況やマンション共有部の管理方法など
- 契約内容に関する事項
その他にも多数説明事項はあります。物件の重要な説明なので、重要事項説明は不動産取引において大事な役割を果たします。
なお、重要事項説明は宅地建物取引士が重要事項の記された書面に記名押印して、宅地建物取引士証を提示した上で口頭にて説明しなければなりません。
IT重説の対象となる契約とは
IT重説の対象となる契約とは、不動産契約のうち「賃貸契約」のみです。(「売買契約」については社会実験中です。)
IT重説を決定したのは国土交通省で、2015年8月~2017年1月までの半年に渡り、「賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」を実施しました。なぜ、賃貸取引に限定したかというと、取引額の小ささの他に説明の時間や書面の枚数、関わる人数などにおいて売買よりも少なく済むことが要因として挙げられます。
半年の実験では、実施件数25,607件のうちトラブル件数が0件という成果を上げ、2017年10月1日より正式にIT重説は運用開始されました。
IT重説の利用状況
IT重説の利用状況を調査したデータでは、利用件数は2017年10月~2019年1月の調査で約25,000件に上りました。利用者の多くが「説明がわかりやすい」「質問しやすい」など好意的な意見だったのです。
IT重説の利用状況について調べたアンケートによると、IT重説の実施件数は毎月増加傾向に。2017年から本格的にIT重説が導入されましたが、数年経過した後もIT重説の利用者が増加しているため、導入には社会的意義があったことが伺えます。
しかし、対面の重説の方がよいと回答する人も依然いることから、日本全国の完全なIT重説化はまだ遠いと考えられます。IT重説を当たり前にするは、導入に踏み切っていない不動産会社のIT重説への理解が求められます。とはいえ、年々利用者は増加傾向であることから、今後もIT重説の社会的認知はますます広がるのではないでしょうか。
国土交通省|IT重説実施直後のアンケート結果
IT重説のデメリット
ようやくですが、本題に入ります。IT重説のデメリットは以下のような点が挙げられます。
- 環境整備が必要
- 通信トラブル
- 静かな場所が必要
- 内容が伝わっているのか分かりづらい
- 手軽であるため内容を軽視される
IT重説は通信機器を利用することが、デメリットの要因と言えるかもしれません。通信機器を使いこなすにはITの知識を必要とします。また、機器トラブルに対応できるかどうかも問われてきます。ITに強い人材が近くにいればよいですが、いない場合は十分に使えるまでに時間がかかってしまうでしょう。
通信機器だけでなく、通信環境の準備も重要課題です。騒がしい場所で行うと音声を聞き取れません。何よりお客様としっかりやり取りができず、理解できなかった…というような最悪の結果を招いてしまいます。
環境整備が必要
IT重説では、パソコンやタブレット端末といった通信機器が必要です。そのため、機器の導入が大前提となります。もし、通信機器を新規購入する場合は、導入コストと手間がかかりますね。事前にどのくらいのコストが掛かるのか計算しておくとよいでしょう。
ただし、現在は通信機器やインターネット環境が充実しているので、導入コスト自体を大きなデメリットと感じる人は少ないかもしれません。
通信トラブル
インターネットを利用したオンラインでのやり取りにおいて、通信トラブルは頻繁に起きます。例えば、画面の映りが悪くなったり、途中で音声が切れたり…といったことが挙げられます。
通信トラブルを起こすとIT重説は円滑に進みません。何らかの理由で通信ができない場合は国土交通省が定める遵守事項に従って、重説を中断させなければいけません。重説の続きは、通信できる状況になってから再開します。もしくは対面に切り替えることも検討するとよいでしょう。
参考:国土交通省|ITを活用した重要事項説明に係る社会実験のためのガイドライン概要
静かな場所が必要
オンラインで音声を聞き取ることになるので、集中力が必要です。よって、喫茶店や人込みの中だと雑音が入ったり、落ち着かなかったりと決して良いとは言えない状況になりがちかもしれません。
最もよい場所は、自分しかいない空間です。出来るだけ一人になれるスペースを見つけつつ、通信環境も整っている場所がベストでしょう。
内容が伝わっているのか分かりづらい
IT重説はオンライン上で行われるため、対面のようなリアルな反応が受け取れません。そのため、説明した内容がきちんと理解されているのかが分かりにくいです。
また、お客様が質問のタイミングを逸していることもあるでしょう。そのため、IT重説を実施する際は、お客様の反応をこまめに確認することが必要です。
手軽であるため内容を軽視される
お客様が自宅で重説を受けるとなると、リラックスしすぎて大事な部分を聞き逃してしまうこともあるかもしれません。聞き逃し部分があれば、重説の理解は十分ではないため、後々になって問題が起きることも考えられます。
また近年、内覧や契約まで遠隔で済ませることも出来るようになったため、入居後に「説明と違う!」といったクレームが出るかもしれないので注意が必要です。
IT重説のデメリットへの対策
IT重説のデメリットへの対策は以下のような点が挙げられます。
- 性能の良い機器・回線を用意
- 他の社員などがいない部屋を用意
- お客様とコミュニケーションをしっかり取る
IT重説のデメリットを少しでも軽減するためにできることは、まずは通信環境の整備と静かな部屋の準備です。どちらが欠けても良質な重説は実施できません。
さらに重説を良いものにするには、積極的なお客様とのコミュニケーションです。コミュニケーションがスムーズに行われれば、IT重説への評価が高まるだけでなく、お客様の信頼を得ることにつながります。
デメリットへの対策は、IT重説を導入する際に意識しておきたいポイントです。
性能の良い機器・回線を用意
重説の途中で通信トラブルを起こさないように、性能がよい機器や通信状況を用意しておくことが大切です。
機器購入や回線の準備が高額と感じる場合は、IT重説をする日だけレンタル機器とレンタルWi-Fiで対応するという方法もあります。
他の社員などが居ない部屋を用意
周囲の声や雑音で重説が中断しないように、他の社員がいない部屋を用意しましょう。遮音性の高い部屋だとよりオンライン環境には適しています。
IT重説のための部屋が確保できるのがベストだと言えますが、難しいようであれば、時間制で使用時間を区切って会議室などを利用しても良いでしょう。
お客様とコミュニケーションをしっかり取る
IT重説はオンラインで行われるため、お客様と直接顔を合わせる機会が少ないです。よって連絡は密に取り合うことが重要です。
また、スケジュール管理を徹底するとお客様に安心してもらえるので、信頼関係が生まれて良い取り引きができるでしょう。
IT重説にはメリットもある
IT重説のメリットは以下の点が挙げられます。
- 日程調整がしやすい
- 移動時間が不要
- 利便性による集客効果
ここまでデメリット面を述べてきましたが、メリットもしっかりあります。移動の手間がなくなるだけでなく日程も調整できる点は大きなメリットでしょう。また時間や場所に融通がきくため、多忙なお客様であっても利用できる方法だといえます。
日程調整がしやすい
不動産会社に出向いて重説をうけるとなると、日程調整が必要になります。しかし、スケジュールを組むのも一苦労な人もいるでしょう。
また、宅地建物取引士の資格保有者からでないと重説を受けられないため、宅地建物取引士とのスケジュール調整も考えなくてはいけません。
その点では、IT重説はオンライン上で行えるので、時間や日にちの調整がしやすくなります。
移動時間が不要
IT重説が導入される以前は対面による説明が義務付けられていました。そのため、不動産会社までどんなに遠くても出向く必要があり、時間がかかってしまうといった点はネックでした。
対してIT重説はオンライン環境が整えられれば、場所は問われません。よって、移動時間が省けるため、時間を有効に使うことができます。
また、移動が困難な人にとっても移動時間がないIT重説はメリットと言えるでしょう。
利便性による集客効果
対面による重説では面談日程の調整が難しい人もいます。なぜなら、不動産会社の営業時間で行ける時間を調整をしなければならないため、忙しい人にとっては都合がつきにくく、時間の確保に苦労することもあります。
このような場合、日程調整がスムーズに行かず、取り引きに時間がかかります。対面による重説の煩わしさと言えるでしょう。
この日程調整の柔軟性がお客様の利便性につながり、集客効果に反映されると考えられます。
もっとメリットを知りたい方は、下記の記事からチェックしてみてください。
▼IT重説のメリットについて先知りたい方はこちらの記事からどうぞ!
IT重説とは?対応物件のメリットや導入における課題と注意点
入居希望者がIT重説を行う方法
入居希望者も事前に準備するものがあります。それは不動産会社からの郵送物と通信端末です。不動産会社からの郵送物を手元に置いて、通信端末で宅地建物取引士とやり取りを行います。
IT重説の流れが5つの工程になりますので参考にしてください。
IT重説に必要なもの
IT重説に必要なものは、以下の通りです。
- テレビ電話が可能な端末(パソコン・タブレット・スマ―トフォン)
- 音声通話アプリ(LINE・スカイプ・Zoomなど)
- 不動産会社から郵送される書類
上記のものが必要な理由は、宅地建物取引士による宅地建物取引士証の提示を確認し、音声によって書類の説明を受けるためです。
郵送された書類を手元に置きながら、宅地建物取引士の説明を受けましょう。
IT重説の流れ
IT重説を行う方法は以下の通りです。
- 重要事項説明書を郵送で受け取る
書類が届いたら中身を確かめましょう。もし不明点があれば、不動産会社まで問い合わせておきましょう。 - 通信端末を用意する
不動産会社と調整した日にちと時間がきたら通信端末を用意します。なお音声通話アプリが作動するかどうかテストしておきましょう。不動産会社によって専用アプリをダウンロ―ドする場合もあるので、指示に従いましょう。 - 通信環境の確認
時間になると不動産会社の担当者から連絡がありますので、指示に従って音声や映像の乱れがないか確認しましょう。 - 宅地建物取引士よりIT重説をうける
③の通信状況に問題がなければ、宅地建物取引士からIT重説を受けます。画面に写る宅地建物取引士と宅地建物取引士証が同一人物かどうか、名前と登録番号を読み上げて確認しましょう。なお、重説が終了すると、そのまま物件の契約に移る場合もありますので、契約に入る前に質問したいことがあればすぐに質問しておきましょう。 - 書類に署名と捺印をして返送する
IT重説に問題がなければ、重要事項説明書に署名・捺印します。訂正箇所は二重線を引いて訂正印を押しましょう。最後に重要事項説明書を全体的に見まわして不備がなければ不動産会社の指定する封筒に入れて郵送しましょう。住民票や身分証のコピーが必要な場合もあるので、この時点で何を準備すればいいのか不動産会社に確認しましょう。
IT重説の所要時間は約30分です。質問のやり取りや通信環境の不具合によっては、さらに時間が長引く可能性もあります。
IT重説を行うときの注意点
IT重説を行うときの注意点として国土交通省は6つの事項を「留意すべき事項」と名付けてまとめています。
6つの事項は以下の通りです。
- IT重説実施に関する関係者からの同意
- 相手方のIT環境の確認
- 説明の相手方の本人確認
- 必要に応じて内覧の実施
- 録画・録音した場合の対応
- 個人情報保護法に関する対応
IT重説を実施するには、物件の貸借人から書面にて同意を得る必要があります。また、録画・録音する場合は、宅地建物取引業者とお客様(相手)の双方で了承してもらわなければいけません。録画・録音するのであれば個人情報を適切に管理しなければいけないからです。
参考:国土交通省|ITを活用した重要事項説明に係る社会実験のためのガイドライン概要
まとめ
IT技術を業務に取り入れることで多くの享受を受けられます。しかし、IT重説の使い方を誤ると、賃貸借契約を締結する際にトラブルが生じたり、賃借人に聴き漏れなどが出て重説が不十分に伝わっていたりなどの事態も起こりえます。
IT重説を行う際の注意点やデメリットにきちんと対策をしていれば、不動産テックなどのIT技術の取り入れは積極的に行うべきです。
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IT重説に関して最新の情報を知りたい方はこちらを参考にしてみてください。