【リーダーインタビュー】兄弟二人三脚の経営で進めるDX化と管理戸数拡大。オーナー様との信頼関係を軸に、不動産管理の新たな価値を創出。
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不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。
今回お話を伺ったのは、株式会社ストライド 代表取締役 濵本 信和様と取締役 濱本広士様です。大阪を中心に約4,300戸の管理物件を有し、高い入居率を誇る同社。兄弟二人三脚で経営に取り組み、DX化の推進や業務効率化に注力しながら、5年後には8,000戸の管理を目指しています。不動産管理のデジタル革新と、管理会社としての本質的な価値の追求について語っていただきました。
- 1兄弟だからこそ描ける事業戦略
- 1お二人のご経歴や不動産業に携われたきっかけをお聞かせください。
- 1ストライドは前代表から事業継承したと聞いております。その経緯をお聞かせください。
- 1ご兄弟で一緒に事業を始めるという例はありますが、途中から参画されるというのは珍しいと思います。ご苦労された点や、印象的なできごとがあれば教えて下さい。
- 24,300戸の実績が物語る管理の本質。横割り組織とチーム力で実現する高品質サービス
- 2貴社の強みや現在強化しているポイントについて教えていただけますか?
- 2資格取得に積極的に取り組まれているそうですが、その背景について教えていただけますか?
- 2現在、貴社で考えている新サービスや管理業務の改善案はありますか?
- 2社員やメンバーの方と一緒に働く上で、大切にしていることは何ですか?
- 3システム導入から運用最適化へ。不動産管理業務のデジタル化が抱える現実と展望
- 3さきほどデジタル化を推進されたお話がありました。DX化に関して、現在の取り組まれていることがあれば、具体的に教えてください。
- 3不動産のDX化において、特に困っている点や今後改善していきたい点はありますか?
- 4賃料と利回りから読み解く大阪の不動産市場。収益性向上とオーナー様との関係構築がキーに
- 4現在の不動産のマーケット、特に大阪のマーケットをどのように見ていますか?
- 4管理戸数を増やす際には、売買やファンド経由、既存オーナーからの切り替えなど、さまざまな方法があると思います。具体的には、どのような方法を取られていますか?
- 5社員と顧客の幸福を追求し、持続可能な成長を目指す
- 5今後、貴社をどのように発展させていきたいと考えていますか?将来のビジョンについて教えてください。
- 6まとめ
- 7本記事取材のインタビュイー様
- 8会社紹介
兄弟だからこそ描ける事業戦略
お二人のご経歴や不動産業に携われたきっかけをお聞かせください。
▲株式会社ストライド 代表取締役 濵本 信和氏
信和様:25歳の頃に危機感を抱き、不動産業界で稼ぐことができるのではないかと考え、おおきに商店グループの不動産仲介店舗に入社しました。約20年にわたり仲介店舗の拡大に携わり、その後管理専門の新規受託部署への異動を経て、その部署を基盤としてストライドを本格的な管理会社へと移行しました。
広士様:40歳手前まで父が経営する貿易会社で約15年間、韓国との貿易業務などに従事していました。その後、おおきに商店から火災保険代理店の立ち上げのお誘いを受け、その業務に携わりました。そして4年後に管理会社の業務も手伝って欲しいという依頼があり、不動産管理を不動産業の根幹と考えていた私は、弟の信和とも相談の上、ストライドに参画することを決意しました。
ストライドは前代表から事業継承したと聞いております。その経緯をお聞かせください。
信和様:前代表が事業の方向性の違いから経営を手放したいという話が持ち上がったときと、私がストライドに入社するタイミングが一致したのです。そこでその機会に事業承継という形で、ストライドの経営を任せていただくことになりました。兄弟で力を合わせ、新たな一歩を踏み出すことになった転機でした。
ご兄弟で一緒に事業を始めるという例はありますが、途中から参画されるというのは珍しいと思います。ご苦労された点や、印象的なできごとがあれば教えて下さい。
信和様:最初は、兄が参画することで立場の違いからくる意見のぶつかり合いが多くありました。やはり、身内だからこそ感情的になったり、仕事に徹しきれなかったりする場面もありました。ただ、目指す方向性が同じだったことが救いで、お互いの役割を尊重しながら改善を進めてきました。現在では、会社の成長という共通目標に向けて、感情を排除し、互いに敬意を持ちながら協力できる体制が整ったと感じています。
広士様:私が印象に残っているのは、入社当時のアナログな社内体制です。デジタル化が進む中、このままでは厳しい状況になると感じ、社員全員のデジタル化推進を提案しました。まずは入居者対応の課から始めて、紙ベースの業務のデジタル化を進めましたが、当初は半信半疑の反応もありました。しかし、身内という関係性を活かして強い意志で推進したことで、結果的に会社の大きな改善につながりました。
4,300戸の実績が物語る管理の本質。横割り組織とチーム力で実現する高品質サービス
貴社の強みや現在強化しているポイントについて教えていただけますか?
▲株式会社ストライド 取締役 濱本 広士氏
信和様:現在、約4,300戸の物件を管理しており、賃貸マンションから事務所のテナントビル、スナックビルまで多様な物件を取り扱っています。当社の最大の強みは客付けに注力している点です。新型コロナウイルス禍が終わり事務所やテナント需要が急激に伸びている中、そのスピード感に対応しながら、短期サイクルで信用調査を行い、高賃料の入居率向上に特化しています。現在、テナントビルの入居率は約96%に達しており、このリーシング力が当社の核となっています。また、共用部の改修工事や内装リノベーションなども手がけ、客付けが難しい物件に対してはテナント仕様の提案や民泊利用の提案なども行っています。
広士様:当社の強みは、オーナー様目線と入居者様目線の両方で対応できる点です。オーナー様に対しては、入居付けに注力し、入居率向上を目的とした提案を行っています。この目的を見失うことなく、逆算して取り組むことで成果を上げています。一方、入居者様に対してはGMO賃貸DX入居者アプリを活用するなど試行錯誤を重ねており、まだ満足度100点とは言えませんが、私が入社した頃に比べて対応スピードはデジタル化によって大きく改善しました。
資格取得に積極的に取り組まれているそうですが、その背景について教えていただけますか?
信和様:賃貸不動産経営管理士やマンション管理士などの資格がありますが、業務に直結する実務的な知識がより重要だと考えています。特に消防やビルメンテナンスの知識は、日々の管理業務において必須のものとなっています。
広士様:約1年半から2年前から本格的に資格取得に取り組んでいます。不動産管理に関する資格の取得を進めています。これは、今後の事業展開において資格保有者が会社にとって必須になると考えているからです。まだ取り組み始めたばかりですが、さらに改善を進めていきたいと考えています。
現在、貴社で考えている新サービスや管理業務の改善案はありますか?
信和様:やはり近畿圏内だけでの管理戸数の増加には限界があるため、対応エリアの拡大を検討しています。入金管理や契約、リーシング業務については問題なく対応できますが、現地確認や工事、入居者対応といった業務では、地元企業との協力が不可欠です。そのため、地元企業とのビジネスマッチングができるようなサービスがあればいいなと感じています。
また外回りやオーナー様訪問の部隊には、力を入れています。ここには積極的に費用をかけていて、どんどん外に出てもらっています。もちろん成果の報告は必要ですが、それだけでなく、オーナー様訪問で得た気づきや学びを共有することも重視しており、社内の伝達ツール「トークノート」を活用して、メンバー間の情報共有を積極的に行っています。
社員やメンバーの方と一緒に働く上で、大切にしていることは何ですか?
信和様:物件管理には契約や工事など様々な業務があり、一つのチームとして協力して進めることが重要だと考えています。当社では、一般的な管理会社で見られる物件ごとの縦割り体制ではなく、業務ごとの横割りで担当を割り当てる方式を採用しています。この方法は情報共有面で課題もありますが、効率的に業務を進められる利点があります。そのため、チームとしての一体感を持って進めることを特に大切にしています。
広士様:立場や役職は業務上の役割に過ぎないと考えています。何かを達成する際に重要なのは、人と人とのつながりです。そのため、立場や役職を前提にものを言うようなことは極力避け、フラットな関係性で業務に取り組むことを心がけています。
システム導入から運用最適化へ。不動産管理業務のデジタル化が抱える現実と展望
さきほどデジタル化を推進されたお話がありました。DX化に関して、現在の取り組まれていることがあれば、具体的に教えてください。
信和様:現在、RPAの導入を進めています。管理会社では同じような作業が多いため、業務効率化を目指して自社でソフトウェアを開発していますが、まだ導入したばかりで本格的な活用には至っていない状況です。
広士様:kintoneを活用して業務のデジタル化を推進しています。オーナー様からの多様な要望、例えば解約に関する細かなリクエストにも柔軟に対応できるよう、独自のアプリを開発しています。kintoneは拡張性と自由度が高いため、オーナー様のニーズに合わせた細やかな対応が可能です。
不動産のDX化において、特に困っている点や今後改善していきたい点はありますか?
広士様:最も大きな課題は、様々なアプリや基幹システムの選別と活用方法の最適化です。現在kintoneを活用してアプリを開発していると申し上げましたが、多すぎるアプリが逆に業務効率を下げてしまうケースも出てきています。そのため、作りすぎたアプリの整理を進めていますが、この作業自体にも時間がかかっているのが現状です。
さらに、業界全体のDX化のスピードが速い中、個人レベルでは対応できても、会社全体としての対応にはハードルを感じています。社内教育や学びの場を設けることで、この課題を解決していきたいと考えています。
また社内のDX化を進める上で、日々のルーティン業務と並行して新しい取り組みを行う時間の確保が大きな課題となっています。しかし、業務効率化は避けて通れない命題であり、着実に一歩ずつ前進していきたいと考えています。
賃料と利回りから読み解く大阪の不動産市場。収益性向上とオーナー様との関係構築がキーに
現在の不動産のマーケット、特に大阪のマーケットをどのように見ていますか?
信和様:大阪の中心部では収益物件の利回りが年々低下しており、管理会社としても厳しい状況に直面しています。この状況を打開するためには、収益マンションの価値向上が不可欠です。私たちは単なる管理会社の役割を超えて、アセットマネジメントの視点を持ち、物件のバリューアップを目指すことが重要だと考えています。管理の枠を超えた価値提供こそが、今後の本質的な課題解決につながると確信しています。
広士様:賃料増額に関して、東京と大阪では大きな文化の違いがあります。大阪では更新時の賃料増額に対するハードルが高く、家主様からの要望も多くはありません。ただし、賃料相場は少しずつ上昇傾向にあり、長期入居者の賃料が市場相場と乖離しているケースも見られます。そのため、賃料相場を見据えながら、家主様への提案を進め、徐々に調整を行っている状況です。
業界全体の最大の課題は、いま代表が言った通り、利回りの低下により物件の動きが鈍くなり、不動産の購入自体が難しくなってきている点です。特に収益物件については、単なる住居用不動産とは異なり、収益性の向上が重要な課題となっています。管理会社としても、オーナー様の収益向上に向けた具体的な提案や改善策を提示していく必要性を強く感じています。
管理戸数を増やす際には、売買やファンド経由、既存オーナーからの切り替えなど、さまざまな方法があると思います。具体的には、どのような方法を取られていますか?
広士様:現在は既存のオーナー様への手厚いサービス提供を重視し、その方々からの紹介による管理物件の獲得を主軸としています。以前はDMでのアプローチや紹介営業が中心でしたが、既存オーナー様へのサービス品質を高め、そこからの紹介による拡大にシフトしています。
また、オーナー様が購入を希望される物件のリノベーションによる再生なども手がけており、その物件の管理も併せて受託させていただくようなケースもあります。主に大阪や近畿圏のオーナー様が中心で、頻繁に訪問させていただきながら関係性を深めています。
社員と顧客の幸福を追求し、持続可能な成長を目指す
今後、貴社をどのように発展させていきたいと考えていますか?将来のビジョンについて教えてください。
信和様:会社の存続は最も重要な目的ですが、それと同時に「稼げる会社」であることも大切だと考えています。この「稼げる」というのは、単に収益を上げるだけでなく、社員一人ひとりがやりがいを感じられ、充実した仕事環境と幸福感を得られるということです。そのような環境を整えた上で、持続的な収益を生み出し、未来につなげていきたいと考えています。
広士様:具体的な目標として、5年後の2029年に管理戸数8,000室の達成を掲げています。もちろん最終的には1万室も視野に入れていますが、まずは8,000室という分かりやすい目標を定めました。管理戸数の増加は、当社への信用が高まっている証でもあります。現在は大阪を拠点としていますが、将来的には全国展開も視野に入れています。そのためにはスピード感を持って取り組む必要があり、スタッフの育成や評価体制の整備も重要です。
また、業者や入居者様、オーナー様との関係を大切にすることが、成長への鍵だと考えています。これらのつながりをしっかりと築き上げることで、会社の大きな成長につなげていきたいと思います。現在掲げている目標は通過点に過ぎず、より大きな未来を見据えて、兄弟二人三脚で邁進していく所存です。
まとめ
▲写真左)インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人
兄弟の異なる視点と経験を活かしながら、従来の管理会社の枠を超えた価値創造に挑むストライドの挑戦。DXの推進と人間関係の深化という、一見相反する要素を巧みに融合させながら、96%という高い入居率を実現する実績は圧巻です。濵本信和様と濱本広士様が描く「稼げる会社」の本質は、単なる収益性だけでなく、社員の幸福とオーナー様の満足を両立する点にあります。5年後の8,000室という目標に向けて、二人三脚で歩む未来に大きな期待を抱きました。
本記事取材のインタビュイー様
写真右)株式会社ストライド 代表取締役
濵本 信和氏
1978年6月生まれ、大阪市出身。25歳から賃貸不動産会社に入社。十数店舗のエリアマネージャーとして統括し、その後、管理部門の新規受託部署の立ち上げに参画。2018年10月にストライドの営業譲渡を受け、代表取締役に就任。
写真左)同取締役
濱本 広士氏
1973年2月生まれ、大阪市出身。2014年 火災保険代理店 立ち上げ及び運用に従事。業務の効率化と顧客対応の改善を通じて、事業の基盤を構築し成長に寄与。2020年2月にストライドの管理課責任者として入社。管理部門全般の運営を担い、業務プロセスの見直しや組織強化を推進。2024年 ストライドの取締役に就任。
会社紹介
株式会社ストライド
HP:https://stride-inc.jp/company/
2012年に大阪市中央区に設立された株式会社ストライドは、「stride(歩幅)」という社名に込められた通り、日々一歩ずつ成長することを理念に掲げる不動産管理会社です。設立時1,200室だった管理戸数は、手厚いサービスと確かな実績により、現在4,500戸まで拡大。賃貸マンションから事務所のテナントビルまで、多様な物件を管理しています。東洋テック株式会社との業務提携による24時間365日の緊急対応体制、リーシング業務の強化、建物の資産価値向上など、オーナー様と入居者様双方の視点に立ったトータルコンサルティングを提供。「信頼と安心のパートナー」として、不動産管理の新たな価値創造に挑戦し続けています。