【ネクストリーダーインタビュー】井野 広章様|デジタル化が進んでも自主管理家主様や管理会社様との、直接のコミュニケーションが物件紹介における重要なポイント。
新しい波が不動産業界を変革している今、その最前線で活躍する次世代のリーダーたちに焦点を当てた「ネクストリーダーインタビュー」。 最新の市況分析から、彼らが挑戦する取り組み、今後の不動産業界についてなど幅広い内容を伺っていきます。
今回お話を伺ったのは、ハウスコム株式会社 事業戦略室 室長 井野 広章様。
最新の市況から物件ご紹介時の大事な要素などについて幅広くお話を伺いました。
- 1ハウスコム株式会社について
- 1ハウスコム株式会社の業務内容についてお聞かせください。
- 1最近強化されている取り組みなどはございますか。
- 2賃貸不動産市場の市況
- 2貴社は幅広いエリアで事業を展開されていますが、市況全体の人の動きについてどのように見ていらっしゃいますか。
- 2賃料の動きはいかがでしょうか。
- 3今後の賃貸不動産市場で重要な要素
- 3今後の賃貸市場で重要になっていくものはどのようなものとお考えでしょうか。
- 4物件をご紹介する際の大事な要素
- 4物件をご紹介する上で大事にされていることはございますか。
- 4実際にご紹介しやすい物件はどのようなものでしょうか。
- 4反対にご紹介しづらい物件などはございますか。
- 5物件をご紹介する際の課題
- 5物件をご紹介する際に課題に感じていることはございますか。
- 6お客様の意識の変化
- 6お客様の意識や行動の変化を感じることはありますか。
- 6お客様からはどのようなご質問を多くいただきますか。
- 7まとめ
- 8本記事取材のインタビュイー様
ハウスコム株式会社について
ハウスコム株式会社の業務内容についてお聞かせください。
当社は、首都圏を中心に東海、近畿、四国、九州・沖縄地方において賃貸仲介業を行っており、2023年10月末の時点で全国に238店舗を展開しています。2022年度の仲介件数は約82,000件となっており、多くの入居者様にお部屋のご紹介をさせていただきました。
また、2022年の10月に持株会社体制に移行し、子会社11社が各地域の特性に合わせた賃貸仲介ビジネスを展開することにより、各地域の市場に最適化されたサービスを提供し、更なる顧客満足の向上を目指します。
私たちは「住まいを通して人を幸せにする世界を創る」をミッションに掲げています。入居者様に対しては快適な暮らしを提供できるよう、家主様に対しては安定した賃貸経営ができるよう、取り組んでいます。
最近強化されている取り組みなどはございますか。
最近では特に家主様との直接対話と情報交換の場を設けることに力を入れています。賃貸仲介業をメインに行っている当社にとって、家主様との繋がりやご意見を重要視することは、物件を探しているお客様へより良いサービスを提供する上で非常に大事な要素です。
今期(※)、設立25周年を迎えた当社は東京、愛知、大阪で計5回にわたる家主様向けの大規模イベントを開催しました。大規模なイベントでは、当社からの情報発信がメインとなるため、個々の家主様との対話が難しい側面があります。
※2023年11月インタビュー時点
そこで、より密な対話を目指して、家主様一人ひとりの悩みやご意見を伺うために、各事業会社が地域ごとに家主様と直接対話ができる機会を設けています。
今後も家主様との関係強化を重視し、賃貸市場動向や顧客ニーズ、建物の適切なケア方法など家主様にとって有益な情報やサービスを提供していきます。
賃貸不動産市場の市況
貴社は幅広いエリアで事業を展開されていますが、市況全体の人の動きについてどのように見ていらっしゃいますか。
特に「コロナ前」と「コロナ後」で、人の動き方が大きく変わったことがあげられます。コロナ前は、人の動きは比較的予測可能で、就職や転勤、進学が集中する繁忙期シーズンなど、一定の規則性に基づいて人が動いていましたが、コロナ禍においてはこのパターンが崩れました。転勤の減少、オンライン授業の普及、リモートワークの増加などにより、人々の住まいに対するニーズが変化しました。わかりやすい例でいくと、都心からより広い部屋を求めた郊外への移住などです。
その結果、コロナ禍が明けた今では、人の動きがコロナ前とは異なり、予測が難しくなっています。活動が再開され、急激な動きが見られたかと思えば、その動きがなくなったりするため、過去の傾向と比較がしづらくなっています。そのような背景もあり、首都圏、東海、近畿、四国、九州・沖縄など、私たちの出店エリアにおいても、人の動きについての傾向を顕著に感じることはやや難しくなっています。
賃料の動きはいかがでしょうか。
全般的に賃料は上昇傾向にあります。コロナ禍で居住用物件の供給が一時鈍化したことや人件費や資材のコスト上昇が大きく影響しています。特に、ファミリー向けの比較的広い間取りの物件ほど賃料上昇の傾向は強いです。東海圏では以前に一度賃料が上がったため他の地域と比較すると最近の賃料上昇は少し緩やかです。1都3県では、都内中心部の賃料が上昇しても、今までは郊外への影響は限定的でしたが、最近では郊外にも賃料上昇の波が及んでいます。
そのような状況ですので、お客様からお問合せいただく物件の賃料も上がっていますし、実際にご契約される賃料帯も上がっています。
今後の賃貸不動産市場で重要な要素
今後の賃貸市場で重要になっていくものはどのようなものとお考えでしょうか。
今後の賃貸不動産市場では、人口減少・少子高齢化や外国人の増加に伴うグローバル化に対応することが重要な要素となるのではないでしょうか。
特に外国人労働者は年々増えていますし、留学生もコロナ前の水準まで回復していくということを考えると、外国籍の方の対応というのはどう考えても増えていくからです。先日、ある大学の関係者とお話させていただく機会があったのですが、特定の学部で行っていた交換留学プログラムを他の学部で実施し、留学生の定員を増やしたいというお話をされていました。
また、日本での学びを終えた留学生がそのまま日本の企業に就職するケースが今後増えていくことを踏まえると、長期にわたり日本で生活する際のサポートが行える体制も重要です。実際に当社では、外国籍の方が契約する割合が年々増加しています。外国籍の営業担当も増加しており、これらのニーズに対応するための準備を着々と進めています。
外国籍の方がスムーズにお部屋探しが出来る体制を作るためには家主様へのサポート体制も非常に大事です。外国籍の方に入居いただいても、文化や考え方の違いなどでトラブルが起こってしまい、家主様が困ってしまっては本末転倒です。外国籍の入居者様と家主様が相互に理解しあえる体制の構築に向けてどんなサポートが出来るかが今後の大事なポイントになると考えています。
物件をご紹介する際の大事な要素
物件をご紹介する上で大事にされていることはございますか。
当社のミッションは「住まいを通して人を幸せにする世界を創る」です。賃貸物件をご紹介する上で大事なことはお客様が「不便なこと」「困っていること」「これから困るであろうこと」をしっかりと把握し、解決出来る物件をご紹介させていただくことです。お部屋が綺麗なことや広いこと、家賃が安いということも大事ではあるのですが、それよりも「課題を解決することが出来るか」ということを考え物件のご紹介を行っています。
実際にご紹介しやすい物件はどのようなものでしょうか。
自主管理家主様の物件と管理会社様が管理する物件で、ご紹介のしやすい物件は異なります。
自主管理家主様の物件をご紹介する際は、普段からお話しさせていただく機会が多いと、物件のご紹介もしやすくなります。「普段からお話しをしているから優先的にご紹介しよう」というわけではなく、普段からお話しをさせていただいていると、家主様の人柄などを我々がより理解することが出来るためです。
どういうことかと言いますと、我々は物件をご紹介する際は、「ご希望に沿っているか」や先ほどお話しをした「課題を解決できるか」に加えて、「家主様と相性が良いか」という点も重要視しています。自主管理家主様の物件では、入居後に家主様と入居者様が直接関わる機会があり、家主様と相性が合わない場合、残念ながら早期退去に繋がってしまうケースもあります。両者の良好な関係構築を目指すことは、家主様、入居者様の双方にとって大事な要素です。
管理会社様が管理する物件の場合では、コミュニケーションがスムーズに取れる管理会社様ですと、ご紹介がしやすくなります。こちらからご連絡した際にレスポンスが速かったり、丁寧に対応してくださる管理会社様は、入居者様にも良い対応をしてくださると思いますので、仲介会社としても安心してご紹介することが出来るのです。
反対にご紹介しづらい物件などはございますか。
これは自主管理家主様の物件、管理会社様が管理する物件の双方に言えるのですが、エントランスが汚れていたり、共用部に荷物や粗大ごみが放置されている物件は管理体制が行き届いていない印象になりますので、積極的にご紹介することは難しくなってきます。
建物がしっかりとメンテナンスされていないということは建物に興味がないということです。それは入居者様に対しても興味がないということに繋がってくると思っています。そのため、お客様の新生活をサポートする仲介会社としては、そのような点もしっかりと確認しています。お客様の中には「そのあたりは気にしない」という方もいらっしゃるのですが、やはり入居後のトラブルに繋がってしまうケースは多いです。
物件をご紹介する際の課題
物件をご紹介する際に課題に感じていることはございますか。
デジタル化が進んだ結果、空室の確認の手間は軽減された一方で、気軽に管理会社様へのご相談や確認がしづらくなっていると感じています。
仲介会社はお客様からいただいたご相談やご質問に対して、素早く対応することを心掛けています。限られた接客時間の中で「インターネット上の情報だけでは足りない」となった際、管理会社様に電話で確認しようとしても、電話番号が記載されていないため直ぐに確認が出来なかったり、電話しても自動音声になってしまい、担当者の方に繋がるまでに時間が掛かってしまうなどがあります。
業界全体の効率化のためにデジタル化は必要なのですが、2~3割のお客様は相談事項や確認事項がありますので、デジタルの力で効率化しつつも、相談や確認はスムーズに出来るようになるともっと良くなると思います。
お客様の意識の変化
お客様の意識や行動の変化を感じることはありますか。
情報量が増え過ぎて、情報の取捨選択が行いづらくなっているのではないかと感じます。実際にご来店いただくお客様からも、「こういう情報を見たが、実際はどうなのか」という質問は多くいただきます。お客様が入手出来る情報量は年々多くなっているのですが、情報量が多くなるにつれて、事実かどうかわからない情報も増えています。仲介会社の役割として、お客様が調べてきたことや気になっていることに対して、事実かどうかをしっかりとお伝えするというのも重要です。
インターネット上にはお部屋の情報だけでなく、地域の情報、住みやすさの情報など、本当に多くの情報が様々な角度で掲載されています。その掲載されていた情報が「実際のところどうなのか」というのは、その地域に根付いている仲介会社だからこそお伝え出来るのではないでしょうか。
お客様からはどのようなご質問を多くいただきますか。
昔からあるのは「音」についてのご質問です。インターネット上の情報などでは防音性について、アパートはあまり良くなく、マンションなら大丈夫。といったような内容が掲載されていたりします。そのような情報を確認されて「マンションの方がやはり良いのか」というご質問を多くいただきます。ですが、そもそも共同住宅ということを考えると、マンションだからといってよいとは言い切れません。
最近増えたものでは、オンラインゲームが人気なこともあり、インターネット回線のスピードについてご質問やご相談をいただくことが増えました。オンラインゲームをやるお客様の場合は直接住戸に単独回線を引きたいとおっしゃるお客様もいます。
まとめ
ハウスコム株式会社の事業戦略室 室長 井野 広章様へのインタビューを通じて、賃貸不動産市場における現状を深く理解することができました。物件をご紹介する際の大事な要素として、自主管理家主様や管理会社様とのコミュニケーションが重要であることは、皆様の新しい気付きにもなったことと思います。ハウスコム株式会社様が仲介される物件の約7割から8割は管理会社様の物件とのことでした。家主様に限らず、管理会社様も是非、店舗まで足を運び、情報交換をされてはいかがでしょうか。
本記事取材のインタビュイー様
ハウスコム株式会社 事業戦略室 室長
井野 広章氏
■会社名
ハウスコム株式会社
https://www.housecom.co.jp/
■所在地
〒108-0075 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー9階
■電話番号
03-6717-6900
■事業内容
不動産賃貸建物の仲介・管理業務
損害保険代理業