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入居者トラブルの種類|入居時・入居中・退去時別のトラブルと対処方法

入居者トラブルの種類|入居時・入居中・退去時別のトラブルと対処方法

賃貸経営をする中で、押さえておきたいのは入居者トラブルについてです。せっかく満室経営ができていたとしても、入居者とのトラブルが相次ぐと心労が重なりますし、内容によっては家賃収入をスムーズに得られない可能性もあります。

入居者トラブルにはいったいどんな種類があるのか洗い出し、それぞれの解決策や防止策をご紹介することで、スムーズな賃貸経営の一助になればと思います。

目次

入居者トラブルの種類

入居者トラブルが起こるタイミングは、大きく以下の3つに分かれています。

  1. 入居時のトラブル
  2. 入居中のトラブル
  3. 退去時のトラブル

それぞれどのようなものがあるのか具体的に見ていきましょう。

入居時のトラブル

入居時のトラブルで多いのは、なんといっても契約上のトラブルです。

一度申し込んだけど撤回したい場合や、さらにステップが進んで、契約を締結したけれど入居前に解約したい、といった要望を受けたことがある大家さんもいるかもしれません。

平常時は「もっといい物件を見つけたから」「冷静に考えてみたらやはり予算オーバーだった」といった、自分勝手にも感じられるような理由が多いかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の影響下では「大学がオンライン授業になった」「転勤がなくなった」など、やむをえない事情ゆえのキャンセルも発生しています。

どのように対応していくべきなのか、詳しく見てみましょう。

契約上のトラブル

入居予定者から「やはりキャンセルをしたい」という要望があった場合、大家としてはどのように対応するべきなのでしょう。

注意するべきは、そのタイミングです。まず、賃貸借契約は一種の「契約」ですから、双方が合意して契約を締結するまで、入居予定者は入居意思の撤回をすることができます。

一般的に、賃貸借契約を結ぶステップは以下のように進んでいきます。

  1. 内見
  2. 申込書の提出
  3. 入居審査
  4. 重要事項説明・賃貸借契約締結

入居予定者がキャンセルを申し出た場合、4の賃貸借契約締結が完了しているか否かで大家としての対応が異なります

契約締結後であれば、キャンセルは不可能ですので、あくまで「一度入居した後に退去する」といった流れにのっとって処理を行います。

通常は1ヶ月前の退去告知が必要ですので、支払った初期費用から最低1ヶ月分の家賃を差し引くことは認められるといえます。礼金や共益費についても、法律上は返還する必要がありません

一方で、それ以前の2申込書の提出が終わった後などについてはどのようになるでしょうか。

入居予定者がキャンセルを申し出た場合、仲介事業者や大家としては応じる必要があります。

申込時には「申込金」として賃料の1ヶ月程度を先に申し受けるケースがありますが、この申込金は返還する必要があります。

預かり金や申込金の返還を拒否することは、宅地建物取引業法(宅建業法)で禁止されています。売買契約の「手付金」であれば一般的に返還する必要はないのですが、賃貸借契約での「申込金」は返還の必要があるのです。

入居中のトラブル

入居中のトラブル

次に、入居中のトラブルについて詳細に見ていきましょう。

一般的に、入居者とのトラブルで最も多いのが入居をしている最中のトラブルです。大きく分けると、以下の3点が挙げられます。

  • 家賃滞納トラブル
  • 騒音トラブル
  • 設備劣化トラブル

まず、家賃滞納トラブルの詳細について解説します。

家賃滞納トラブル

家賃滞納トラブルは、その名のとおり、入居者からの家賃の支払いが滞っている状態を指します。

日本の賃貸借契約では、入居者の権利が強く保護されており、1~2カ月程度の家賃を滞納しただけでは、強制的な退去をさせることができません

入居時に連帯保証人のサインをもらっている場合、大家は家賃の支払いを連帯保証人に求めることも可能です。家賃保証会社を契約している場合には、家賃保証会社に対応を依頼するのもよいでしょう。

また、家賃を督促する場合は賃貸借契約書が手元にあることが必須です。 特に事態が改善せず、法律の専門家に依頼する場合などは、督促の根拠としてまず契約書を提示する必要があるからです。

過去の例で、親から相続した貸し店舗の家賃を督促しようとしたところ、契約書が見つからない……といったケースもありましたので、大家業をするうえで契約書の保管は大切なものだと肝に銘じ、なくさないようにしましょう。

騒音トラブル

次によくあるのが、騒音トラブルです。

騒音トラブルは大きく分けて2種類あります。

「大きな道路に面していて深夜の騒音で眠れない」「近隣で工事が始まり、日中の騒音がひどい」といった周囲の環境に起因するものから、「上の部屋の住人の足音がうるさい」「隣の部屋で深夜にパーティーが開催されていて眠れない」といった住人に起因するものがあります。

周囲の環境に起因するもので、例えば道路や線路などが騒音の発生原である場合には、大家個人としての対応には限界があります。入居者本人に窓を閉めてもらう、防音カーテンを導入してもらうなどの工夫をしてもらう必要があるかもしれません。一方で、工事などの一時的な環境の変化が原因である場合には、工事の責任者などに工事時間を縮めてもらえないか、常識の範囲内で交渉することが可能です。

現在、大規模な工事については近隣への影響を考慮して、事前に工事の責任者が挨拶に来るケースがほとんどです。また、工事時間も夜間や深夜は避けて設定されているケースが多いですが、万が一そうでない場合には、管理組合などからクレームを入れることで改善される可能性があります。

住人が騒音の発生源である場合は、事情をよく聞いたうえで、まずは張り紙などで注意喚起をするとともに、管理会社から個別に注意を促してもらうとよいでしょう。

関連記事:騒音注意文の正しい書き方や例文を紹介|騒音トラブルを一刻も早く沈静化させるために知っておくべきポイントとリスク

設備劣化トラブル

入居後に、使えるはずの設備が劣化によって使えない、といった状態が発生するのが設備劣化トラブルです。

  • 給湯器が故障してお湯が出ない
  • エアコンやヒーターが故障してしまった

上記のような内容がほとんどですが、真冬や酷暑の中ではすぐに対応しないと生死にかかわる場合もあります。

備え付けの設備については、大家に修繕義務があります。自身がすぐに現地に赴くか、難しい場合はすぐに管理会社に対応を依頼しましょう。

また、以下のケースを放置すると、建物全体が大きなダメージを受けてしまう場合もあります。

  • 白アリが出た
  • 雨漏りがしている

いち早く、専門業者の点検を手配して、対応を検討するとよいでしょう。

退去時のトラブル

退去時のトラブル

最後に挙げられるのが、退去時のトラブルです。

退去時のトラブルには、主に以下の3点が挙げられます。

  • 原状回復トラブル
  • 敷金トラブル
  • 中途解約時の違約金トラブル

また、2020年の民放(債権法)改正によって、賃貸事業が大きく変わったため、注意点についても解説します。

原状回復トラブル

2020年の債権法の改正では、大家と入居者の関係に大きな影響がありました。

これまでは、原状回復義務の範囲について明確に定めていなかったため、退去時のトラブルの原因となっていました。

例えば、窓から差し込む日差しで日焼けして退色してしまった壁紙を、大家が入居者の退去時に「原状回復義務がある」として敷金から張替え費用を差し引いたところ「経年変化のはずだ」と入居者が反論してトラブルになった、などといった具合です。

改正後は、賃借人が負う原状回復義務について、「通常損耗」や「経年変化」による部分についてはその義務を負わないという条文が明記されました。

具体的にどのようなケースが「通常損耗」や「経年変化」に該当するのかは、国土交通省がガイドラインを設けていますので、必ず目を通しておきましょう。

敷金トラブル

原状回復トラブルと合わせて、敷金返還トラブルも退去時のトラブルとして多く発生していました。

今回の改正民法第622条の2によって、敷金は「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定められました。

これによって、敷金に関しての決まりは、以下のように明文化されています。

  • 借主の賃料滞納などの債務不履行があった際にその弁済に充てる
  • 契約終了などによる明渡しの際には、敷金から修繕費などの債務不履行額を差し引いた額を借主に返還しなければならない

これまでは「礼金」や「保証金」といった敷金以外の名称で金銭の支払いが生じることがあり、その合計額について関東圏と関西圏など、地域により慣習に差がありましたが、改正法ではその名目に関わらず“担保目的であれば敷金とする“と定めています。

このほか“敷金の返還時期”、“返還の範囲”については以下のように定めています。

敷金の返還時期
賃貸借が終了して賃貸物の返還がされた時点で敷金返還債務が生じる
返還の範囲
受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額

他の名目で預かった金銭でも、何かあった際の担保として申し受けた場合には、返還の義務が生じる可能性がありますので、申込書や賃貸借契約書の文言には注意が必要です。

判断に迷うなら、現在の契約書の内容を弁護士などの専門家に見てもらうのがよいでしょう。

中途解約時の違約金トラブル

賃貸借契約の期間は2年間が一般的です。しかし途中で解約をする場合に、違約金が定められているケースがあります。

ほとんどの居住用の賃貸物件では、解約の予告期間を“1ヶ月前に告知”と定めています。その場合、入居者は1ヶ月前までに解約を申し入れる必要があります。

言い換えれば、解約の申し出から1ヶ月の家賃を支払えば、自由に解約できるともいえます。

しかし、一般的な居住用の物件であっても、一部の人気物件や高級物件は2ヶ月前の退去予告が必要な場合もあり、オフィスなどの事業用物件であれば3ヶ月から6ヶ月程度前に解約予告が必要なケースもありえます。

こうした内容は必ず契約書に記載する必要がありますので、きちんと記載したうえで契約時に説明するようにしましょう。

また、最低となる契約期間を定めている物件もあります。例えば「3ヶ月間は最低期間として居住しないと、違約金として賃料3ヶ月間分を申し受ける」といった短期解約違約金を設定する場合には、賃貸借契約書だけでなく重要事項説明書に特約として記載する必要があります。

契約時、宅建法に基づいて仲介業者が重要事項説明を行う際に、この特約についてよく説明する必要があります

重要事項説明時にきちんと説明していなかった場合など、貸主側に落ち度があれば違約金の請求が認められない場合もあります。

また、最低契約期間が4年、5年などと長すぎる場合、解約を申し出た借主に対して、残り期間の賃料を一括請求するなどといったことは、貸主保護の観点や社会通念上、認められない場合がありますので注意しましょう。

判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。

入居者トラブルの対策方法

入居者トラブルの対策方法

入居者トラブルは、大家としてはなるべく避けたいものです。

予測不可能なトラブルもありますが、最も避けたい家賃の未払いへの対応などは、事前によく審査をすることで避けられる場合があります

  • 入居審査をする
  • 連帯保証人か家賃保証会社を付ける

といった対応を怠らないことが大切です。それぞれに関して詳しく見ていきましょう。

入居審査をする

入居の申し込みがくると、つい入居希望者の収入などに目が向きがちです。しかし固定収入の有無だけでなく、当人の人柄についても仲介業者によく見てもらい、報告してもらうようにしましょう。

仲介業者が大家向けに作成する参考資料の中には、入居希望者の人柄や態度などに言及する欄が設けられています。問い合わせの対応や、内見時の言動など、気になる点があれば細かな点も報告してもらえるように、自社の物件を任せる仲介業者にはよく伝えておきましょう。

例えば、いくら固定収入があって年収の高い入居希望者でも、以下のような言動が見られる場合には注意が必要です。

  • 電話の応対や言葉遣いが雑。すぐに声を荒げる
  • 内見に無連絡で遅刻したり、すっぽかしたりする
  • 内見時に土足で物件に上がるなど基本的なマナーが欠けている

契約後にトラブルを引き起こす可能性もありますので、人柄を考慮して“本当に住んでもらいたいのか”をよく考えて契約するようにしましょう。

連帯保証人をつける

もちろん、家賃滞納を防ぐうえで固定収入があるかという点は重要です。

十分な固定収入がないと判断できる場合には、連帯保証人を必ずつけてもらうか、家賃保証会社に委託するなどといった、家賃が滞納した際に回収をしやすくするための工夫が必要です。

特に連帯保証人は親族であることが多いため、家賃を支払わないことで迷惑をかけたくない、そもそも督促が行くのは恥ずかしい、という意識が働きます。可能な限り、連帯保証人をつけてもらうように交渉しましょう。

入居者トラブルの対処方法

対策を講じたにもかかわらず入居者とのトラブルが起きてしまった場合には、どのように対処すればよいでしょうか。

当事者間の話し合いで解決しない場合は、裁判に持ち込まれることもあります。

ケースごとに、どのように対処すべきなのかご説明します。

賃料滞納者への対処方法

まず、大家側が裁判を起こす可能性があるのは、賃料滞納者に対する法的措置だといえるでしょう。

法テラスでは、簡単な相談を無料で受けることができ、弁護士を紹介してもらえる場合があります。

弁護士への相談となると、敷居が高く感じてしまうかもしれません。

しかし一度、賃料の滞納が発生すると、過去の滞納分を回収してもその時点でまた別の未払い賃料がたまるなど、常態化してしまいがちです。

早めに専門機関へ相談し、内容証明の郵便を送るなどの、必要な措置を講じていきましょう。

賃料滞納者以外の迷惑入居者への対処方法

どんなに入居者審査を注意深く行ったとしても、入居者の中には騒音や共用部の使用ルールを守らないなどの迷惑行為をしてしまう人がいるのも事実です。

そういった場合には、以下のステップを踏んで対処していくことになります。

  1. 自身や管理会社が交渉
  2. 弁護士・司法書士による任意交渉
  3. 訴訟提起

悪質な場合には、逆恨みなどでさらなるトラブルや被害が拡大しかねません。

早めに弁護士・司法書士による任意交渉を依頼し、専門家の助けを借りることを検討しましょう。

まとめ

大家としてはなるべく避けたい入居者トラブル。しかし賃貸管理をしていると、いずれ遭遇してしまうかもしれません。

あらかじめリスクに備えて適切な予防策を講じたうえで、それでもトラブルが発生してしまった場合には、仲介会社や管理会社、専門家などと連携して迅速に対処していきましょう。

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